2008年にXbox 360用ソフトとして発売された、スクウェア・エニックスのRPG『ラスト レムナント』。同作は完全新規タイトルであり、世界同時発売、Unreal Engine 3採用など、当時としては、かなりチャレンジングな環境で作られた大作だった。ゲーム内容もまた挑戦的で、バトルシステムは非常にユニークであり、西欧とアジアのテイストを併せ持つ世界観も、同社のこれまでの作品にはないものだった。とにもかくにも、「新しいものを作ろう」という、開発スタッフの熱が伝わってくるゲームだったのだ。

 Xbox 360版リリース後、翌年(2009年)には、新たな機能を追加したPC版が発売。さらにその後、PS3版がリリースされる予定だったが、残念ながら諸事情により、PS3版は発売中止となってしまった。

 しかし、それから10年――同作のリマスター化が実現。『ラスト レムナント リマスタード』として、プレイステーション4向けに、2018年12月6日より配信開始となった。価格は3980円[税抜](4298円[税込])。

 これを記念し、本記事では、『ラスト レムナント』オリジナル版/リマスター版に携わったクリエイター3名のコメントを紹介する。かつて『ラスト レムナント』に触れた人にも、まだ遊んだことがないという人にも、ぜひお読みいただきたい。

『ラスト レムナント』やり応え抜群の大作が蘇る! 高井浩氏、直良有祐氏、坂本幸一郎氏のメッセージ&秘蔵デザイン画を公開【リマスター版配信記念】_01
『ラスト レムナント』やり応え抜群の大作が蘇る! 高井浩氏、直良有祐氏、坂本幸一郎氏のメッセージ&秘蔵デザイン画を公開【リマスター版配信記念】_02

オリジナル版ディレクター 高井浩氏

ちょっと毛色の違うRPGが遊びたいし作りたい。
自由に戦略を練ることができる、でも思い通りの展開にならない。
こんな思いを叶えるために作り上げたゲームです。
10年を経てもう一度、多くの方にプレイしていただける機会をもらえました。
『ラスト レムナント リマスタード』
歯ごたえのあるRPGにどっぷり浸かりたい方は、ぜひとも遊んでみてください。
10年前楽しんだなぁ、という方も、ぜひもう一度。
じっくりゆっくり楽しんでくださいね!

オリジナル版アートプロデューサー 直良有祐氏

――『ラスト レムナント』は、新規IPかつ世界同時発売、Unreal Engine 3採用という、チャレンジの詰まった作品だったと思います。10年前、チームの皆さんは、どのような目標や意識のもとに開発を進めていたのでしょうか。

新しいハードが出るというタイミングなら、新規IPでの勝負ができそうで、と言う高井さんの考えからスタートを切りました。また、当時エンジンなどの基幹開発は社内でも行われていましたが、リリースのタイミングと積み上げに掛かる期間を天秤に掛けた結果、海外の進んだ既存のエンジンを選択すれば、時間の短縮やノウハウ習得のショートカットができるなどメリットが多かったため、Unreal Engine 3を採用したと記憶してます。ですので、とくに3D系のスタッフが、互いにどれだけ先んじて理解して良い絵を作るのか競い合っていました。

――『ラスト レムナント』のアートはどのようなコンセプトのもとに作られたのですか?

ハイファンタジー寄りでありながら、“レムナント”という不思議なモノを扱うので、ダヴィッドの眼帯や街の様子など、その特徴を活かして、“一見よくあるハイファンタジー”だけど、画面のどこかに独自性を感じてもらえるように心掛けました。

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――デザインするうえで、苦労したキャラクターや種族がいましたら、教えてください。

エミーですね。ネタばれになるので詳しくは語れませんが。
母親であるエマを先にデザインしたのですが、そのくらいの年齢の男性キャラとしてデザインした後に女性へとリファインする手法を取っていたので、かわいらしさなどを盛り込んで娘としてまとめるのに苦労しました。

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種族に関しては、三原くん(三原庸嘉氏)と言う『FFXI』でも活躍したデザイナーがいてくれたので、亜人種全般のデザインを上げてくれてありがたかったです。

ラッシュは当初から学ランモチーフで行きたいと思い、また物語の終盤で装備を見た目でも増やし、成長を表現したいと思っていました。割とクール目な雰囲気にしようと考えていましたが、ダヴィッドにその座を奪われたので、性格に合わせて大分変更しました(笑)。

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こちらはラッシュのデザイン初期稿。髪型は、現在のラッシュとだいぶ趣が異なる。

――リマスター化にあたり、改めて『ラスト レムナント』に触れて思い出したこと、気づいたことはありますか?

先ほど触れましたが女性としてのエマのデザインを確定させるのに、一度旦那さんを描いてちゃんと並べてみてたのをふと思い出しました。“あの戦い”で、エマが指輪にキスをするシーンは、いま見返してみてもいいなーと思ってます。

――『ラスト レムナント リマスタード』新規ビジュアルはどのようなテーマで描かれたのですか?

既知の人には感慨深く、新規の人にはオーソドックスに見えるけどちょっと独特に見えるように心掛けました。また、こだわってリマスターされ、綺麗になった彼らに負けないようにアップデートしました。

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――お気に入りのユニットは誰ですか?

先程から触れてるエミーです(笑)。

――リマスター版をプレイする人に、とくに「ここを見てほしい」と思うポイントはどこですか?

当時もう少し行ける! と思って皆で作ってて届かなかった部分を補うだけでなく、さらにグレードアップしたグラフィックで、ぜひレムナントの世界を隅々まで見てほしいです!

リマスター版ディレクター 坂本幸一郎氏

――『ラスト レムナント リマスタード』開発を決めたきっかけ、経緯を教えてください。

自分は、オリジナル版が発売された当時は、まったく別のプロジェクトに所属していたので、いちプレイヤーとしてプレイして「おもしろい」と思っていました。自分がいま所属している部署はオリジナルタイトルも作りつつ、移植タイトルも検討する部署でして、いま、移植するなら何がいいかと考える中で、『ラスト レムナント』がPS3で出なかったことが引っかかっていたため、移植希望を出しました。今回、幸いにも開発を引き受けてくれる会社が見つかったことも要因としては大きいです。

――スクウェア・エニックスは数々のRPGを手掛けていますが、その中でも、『ラスト レムナント』ならではの魅力はどんなところにあると思いますか?

2点あると思っています。ひとつ目は、まず見た目にインパクトのあるビジュアルです。街に巨大なレムナントがあるというビジュアルと、その世界設定はワクワクします。

ふたつ目はバトルです。集団vs集団という戦闘もさることながら、バトルコマンドが固定化されていないというのは、おそらくスクウェア・エニックスのゲームでも唯一ではないでしょうか?(間違っていたらすいません……)

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――リマスター化にあたり、改めて『ラスト レムナント』をプレイして気づいたこと、驚いたことはありますか?

もともと、面白いと思っていたというのは冒頭にお答えしていますが、そのおもしろさは、おもに世界設定やストーリーに対してでした。今回、移植を担当して思ったのは、ゲーム内のいろいろな要素が思った以上に絡み合っていて、(誤解を恐れずに言えば)とてもよく考えられていることです。

移植に当たり、ストーリーの追加やクエストの追加など、ふつうに考えられることはひと通り検討しましたが、結局全部止めました。その理由は、もともとのバランスが絶妙で、それを崩したくなかったからです。ギルドアドベンチャーもクエストも、ちゃんと考えられて報酬の設定がされていて、いま以上に何か入手する必要がないようになっています。逆に何か追加して、そのバランスが崩れる方がマズイと思いました。

――今回、ゲームエンジンを変更するなど、PC版からさらに手が加えられていますが、開発するうえで、どんなところに苦労しましたか?

いちばんの苦労は見た目ですね。我々は“思い出補正”と呼んでいるのですが、当時のプレイヤーの方にはとてもキレイな印象で思い出に残っているのに、実際のゲーム画面を見るとそうでもないと思ってしまうことが多々あります。これは移植をする上で必ず起こるのですが、このタイトルもオリジナル発売から10年経っていて、ゲームユーザーの方の目が肥えているために起こる現象だと思います。

今回ゲームエンジンを変更し、ライト等の処理に手を入れることで、当時よく見えていなかったテクスチャの詳細が良く見えるようになったり、影がより自然になったりしています。また、自然物の一部はテクスチャを変更して、なるべく最近出ているゲームのクオリティーに近づける作業をしました。これらの作業によって、思い出補正に負けない見た目になったと思います。

――お気に入りのユニットは誰ですか?

パグスです。参謀なので戦闘に参加しなくてもいいはずなんですが、戦闘ではそこそこ強いし、サポートもできて役に立ちます。見た目がかわいいので、戦闘中でも見ていて和みますね。

『ラスト レムナント』やり応え抜群の大作が蘇る! 高井浩氏、直良有祐氏、坂本幸一郎氏のメッセージ&秘蔵デザイン画を公開【リマスター版配信記念】_09

――リマスター版をプレイする人に、とくに「ここを見てほしい」と思うポイントはどこですか?

初めてプレイする方には、ひとまず新しいRPGを楽しむ気持ちで物語を追っていただければ、十分に楽しんでいただける作品だと思います。おそらくバトルはちょっとややこしいと感じると思いますが、プレイするうちにコマンドの使い方がわかってきて楽しめるようになるはずです!(強く押したいところ)

オリジナル版をプレイした方は、ぜひ過去の思い出と比べてみてください。当時の思い出と同じように感じるなら、我々としては成功です。また、とても大ボリュームなゲームなので、当時、物語のエンディングは見たけどクエストを全部終わらせていない、というようなことがあると思います。今回のリマスター版でフィールドを少し速く走れるようにしましたので、ぜひこの機能を使ってオールクリアーを目指していただければと思います。