ミニじゃない、手軽でもない、だからこそ本物の魅力!

 「往年の名作を遊びたい」というニーズは古くから存在してきた。それに応えるべくメーカー各社が切磋琢磨した結果、いまやスマートフォンが1台あれば、無数の名作を気軽に遊ぶことも可能になっている。

 しかし最近、そんな“より手軽に”な流れに逆行するように、往年のアーケード機を再現した商品“ARCADE1UP”が話題だ。小型化したとはいえけっこうな大きさで、お値段も立派なこの商品、先行予約は瞬く間に予定数に達し、実物が出展された東京ゲームショウ(TGS)2018のタイトーブースは、試遊希望者が列を成す盛況となった。この現象はいったい!? 国内販売を手掛けるタイトーに話を聞いた。

※このインタビューは2018年10月上旬に実施したものです。

ARCADE1UPとは?

 アメリカのTastemakersが、メーカー各社のライセンスを受けて製造する、アップライト型筐体を実物の4分の3サイズで精巧に再現した商品。日本ではタイトーが独占販売権を取得して12月下旬に発売予定。国内展開第1弾は以下の3種類で、それぞれ2種類のゲームを収録する。

【第1弾は3種類!】
○スペースインベーダー(写真左)
○ギャラガ・ギャラクシアン(写真中)
○パックマン・パックマンプラス(写真右)

【SPEC】
■筐体サイズ:幅483×高さ1163×奥行き584ミリ
■筐体重要:約20キログラム
■電源:AC100V 1A 50/60Hz ACアダプター(同梱)
■発売日:2018年12月下旬発売予定
■価格:各58000円[税抜]
※2018年9月26日以降の予約分は出荷が2019年1月以降になる場合があります。

自室に夢のアーケード筐体を! ARCADE1UPの秘話を日本展開の仕掛け人が語る_01

 さらに、第2弾の発売も決定!
○ランペイジ
MIDWAYの名作ゲームを4種収録(ランペイジ/ガントレット/ジャウスト/デイフェンダー)
○アステロイド
ATARIの名作ベクタースキャンゲームを4種収録(アステロイド/メジャーハボック/ルナランダー/テンペスト)
○センチピード
ATARIの名作ボール式コントローラーゲームを4種収録(センチピード/ミサイルコマンド/クリスタルキャッスル/ミリピード)

 第2弾についての詳細は以下の記事を参照してほしい。

金山 富幸氏(かなやま とみゆき)

タイトー 執行役員 マーチャンダイジング事業本部 本部長

萩原 聡氏(はぎわら さとし)

タイトー マーチャンダイジング事業本部 MD本部室 マーケティング・ライセンス課 課長

運命の男は『インベーダー』マニアだった!?

――そもそも、この商品の国内販売をタイトーさんが手掛けることになった経緯を教えてください。
金山ええと、話せば長くなるのですが……僕は『スペースインベーダー』のブランドマネージャーも務めているのですが、『スペースインベーダー』は今年(2018年)の6月16日で、ちょうど40周年を迎えたんですね。そこで今年は、より積極的にライセンスの認可を進めて、世界中でグッズを出していこうと考えて、いろいろと進めていました。そんな中、ARCADE1UPを企画したアメリカの玩具メーカー、Tastemakersのスコット社長が、直接弊社を訪ねて来られたんです。「どうしても『スペースインベーダー』でこの商品を作らせてほしい」と。
――スコットさんは、40周年ということもご存じだったのですか?
金山もちろんです。スコットさんはもともと『スペースインベーダー』がとてもお好きな方なんですよ。それで、「どうしても商品化したいから、ライセンスしてくれ」とお願いされて、ひとまず「検討させてください」と返答したところ、「どうしてもこの場で返事をくれ!」と。「なぜならば、『スペースインベーダー』がライセンスされないなら、この企画がなくなるからだ」と言うんです(笑)。
――強い(笑)。
金山でも、そうやってお話しをしているうちに、ものすごく意気投合する瞬間があったんですよ。スコットさんは『スペースインベーダー』のことをとてもよくご存じで、すごく愛してくださっていることがよくわかりましたから。それで、「わかりました、ライセンスする方向で動きましょう」ということで握手をかわしました。
――すごいスピード感! でも、その時点ではまだ、国内展開のお話にはなっていませんよね?
金山それが、そのときにスコットさんが、「これは欧米で売るつもりだけど、日本ではこんなに大きい製品を売るのは難しいでしょう?」と言われたんです。そこで、僕は物作りの部門を担当していて、キャラクターグッズなども作って販売していましたから、「いやそんなことはないです、なんなら僕がやりましょうか?」と提案したところ、「あなたがやってくれるのなら任せるよ!」と、これもその場ですぐに決まってしまいました(笑)。
――なんと! お話しを伺っていると、まさにタイトーさんならではの展開なのですね。
金山たぶん玩具メーカーさんだと、まずこの大きさの物って、玩具売り場に入らない可能性がありますし、二の足を踏むかもしれないですね。その点タイトーですと、玩具もキャラクターグッズも扱っていますし、販路もあります。ましてや筐体はそれこそお手の物ですし、サイズも実際の筐体の4分の3くらいしかないわけですから。
――うーん、この成り行きには、いろいろと運命的なものを感じます。
金山『スペースインベーダー』が40周年で、ライセンスの門戸を広げたところにちょうどお話しが来たわけですからね。不思議なご縁だなと思いました。

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想定以上の反響に急遽追加手配!

――発表後の反響はたいへんなものですね。
金山正直なところ、これほどバズるとは思っていませんでした。弊社内でも「これは本当に売れるの?」と懐疑的な声はありましたので(苦笑)。
――もともとは、リアルタイム世代を中心に、狭く熱く支持されるようなイメージだったのでしょうか?
金山そうですね。お客さまの層はおもにふたつかなと想定していました。ひとつは、リアルタイムで体験した世代。『スペースインベーダー』は40年前の作品なので、当時リアルタイムで遊ばれた、40代後半から50代の方々ですね。もうひとつは20代から30代のレトロゲームマニアな方々です。それが蓋を開けると、それらの方々ももちろんですが、もっとライトな方々からの反応がとても強かったんです。
――TGSのタイトーブースは、テレビのニュースなどでも取り上げられていました。やはりテレビの偉い人たちも、「これは!」となって、つい取り上げたくなるのでしょうね(笑)。
金山そうですね(笑)。テレビ局の上層部の方々はリアルタイム世代でよくご存じでしょうし、一方で現場で取材をしていた20代のクルーの方たちも、最近のレトロブームもあって、十分興味を持ってくださっているんです。そこは、まさに狙った通りでした。
――来場者の方々の反応も大きくて、タイトーブースは大盛況でしたね。
金山はい。ブースでアンケートを実施したのですが、これも当初は200人くらいに答えてもらえれば御の字だな、と考えていたのですが……。
萩原最終的に、600名に回答していただけました。と言いますか、600枚しか用紙を用意していなかったので、打ち止めになってしまって(苦笑)。
――アンケートの内容を教えてもらえますか?
萩原お聞きしたのは、年齢や性別などのほかは、「3機種のどれがお気に召したか」、「購入した場合はどこに置くか」、「これらのほかに欲しいタイトルは?」などの簡単なご質問ですね。

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TGSタイトーブースの模様。1980年代のアーケードゲームブーム直撃世代の人たちはもちろん、若者や家族連れまで幅広い世代の人々がプレイを楽しんでいた。

――いちばん人気はどれでしたか?
萩原『スペースインベーダー』がやや多かったです。これは、弊社タイトーのブースで実施したので、皆さんひいきめに書いてくださったのかもしれませんが(笑)。ただおもしろいことに、本当に3種類がほぼ拮抗する結果でした。傾向としては、若い方は『パックマン』、50代などリアルタイム世代の方々からは、『スペースインベーダー』のご支持が厚かったですね。
金山「どこに置きたいですか?」という質問のお答えもすごく特徴的で、「リビングに置く」や「子ども部屋に置く」などの答えもありましたが、いちばん多かったのは「自室に置く」という答えだったんです。自分の部屋を楽しくするアイテムとして受け止めてもらえていることが、とてもうれしいですね。
――これが自分の部屋にあったら……と想像すると、楽しくなりますよね。
萩原皆さん、「置き場所かあ、どうかなぁ」と、ちょっとおっしゃるんです。でも、そこで皆さんに申し上げるのが「これより小さかったらイヤでしょう?」って(笑)。
――確かに!
金山絶妙なんですよね。
萩原この存在感があるから欲しいのであって、皆さん、「確かに、これより小さかったらダメだよなぁ」とおっしゃいますね。

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ドライバー1本あれば、30分程度で組み立て完了。こんなに楽しい組み立て式家具はほかにない!
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思わず声が出る本物の魅力

――Amazonで実施した先行予約もすぐに予定数に達したとか?
金山初回分はTGS2日目のタイミングで完売してしまいました。でも、すぐに緊急手配をしまして、すでに予約していただける状態になっていますよ。
――ネット販売のほかに、店頭販売の予定はありますか?
金山TGSで実物をご覧になった流通様からもたくさんお問い合わせをいただいており、大手量販店様などとも商談を進めておりまして、12月の段階では多くの店舗様に並ぶ予定です。
――実店舗で実物を見られるようになれば、さらに反響がありそうですね。
金山初めて見た方は、皆さん「あっ!」と声を上げますからね(笑)。実際に見ていただいて、触っていただいて、声を上げていただきたいです。あと、パッケージもすごくイカしているんですよ。もともとアメリカ製で、ウォルマートなどの店舗に積み上げるための化粧段ボールなんですが、「これぞアメリカだよね」という感じで、本当にいいんです。パッケージも取っておきたくなると思います。20キロあるので、ひとりで持ち運ぶにはパワーがいりますが、一応、持てるように取っ手がついています
――本場の方々は、お店で買って、車に積んで持って帰るんですね。
金山そうですね。日本はどうかなと思っていたのですが、流通さんとご商談した感じだと、「これくらいなら店頭で在庫してお渡しできますよ」とおっしゃっていました。実際最近は、大きな液晶テレビなどでも、電車で持ち帰っている方がけっこういらっしゃいますからね。

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画像はパッケージと並べたもの。アメリカントイらしい雰囲気がなんともすばらしく、パッケージも捨てずに取っておきたくなる人が多そう。

――米Tastemakersのホームページ(https://www.arcade1up.com/)を見ると、日本とは違ったラインアップが展開されているようですね。日本でも、今後ラインアップを拡充させる予定はありますか?
金山いままさに調整しているところです。シリーズ化はすでに決定していまして、同様のアップライト筐体型で、今後順次発売していく予定です。おそらく、皆さんが期待しているタイトルも発売できるのではないかと思いますよ。

編集部注:このインタビューの後、第2弾のラインアップが発表。記事の冒頭で紹介した通り、すでに予約受付も開始されている。

――楽しみです! 今後の展開のためにも、まずは第1弾の3機種を、たくさんの方にアピールしたいですね。読者の皆さんに、最後のひと押しをお願いします!
金山こんなふうに、触れてみて「あっ」と声がでるものって、あんまり最近ないと思うんです。これがお部屋にあることで、生活に新たなスイッチが入るのではないかと思います。ぜひどれか1台、いや1台じゃなくてもいいですが(笑)、皆さんのおそばに置いてあげてください。
萩原東京ゲームショウでは、あんなに新しいゲームがひしめいている中、たくさんの方が弊社ブースのARCADE1UPを見て、「あーっ!」と声を上げて近寄ってきて、遊んでくださいました。すでにゲーム性は皆さんご存じでしょうし、PCでもネットでも簡単に遊べるはずなのに、あえてわざわざ並んでプレイしてくださって、喜んでアンケートに答えてくださったことに、ものすごく感激したんです。古いレトロなゲームではありますが、単純でわかりやすく、誰でも簡単にプレイできる。それでいて高得点を出すのは難しいという奥深さは、ゲームの原点なのかな、と改めて実感しました。そういったゲーム性も含めて、筐体で遊ぶ楽しさって、ものすごく特別な体験だと思います。ぜひそういった体験を、皆さんにも楽しんでいただければと思います。

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