ほんのり肌寒い10月上旬のデンマーク・コペンハーゲンにて、世界中の取材陣を対象としたIO Interactiveのスタジオツアーが行われた。IO Interactiveといえば、言うまでもなく『ヒットマン』シリーズの開発元で、今回のツアーの目的は発売を間近に控えた同社の最新作『ヒットマン2』の最新情報をお披露目することを目的に企画されたものだ。

『ヒットマン2』スタジオツアー【1】コロンビアの密林を体験。ここはまさに“暗殺の箱庭”だ_10
ダウンタウンの並びのビルにあるIO Interactiveのオフィス。入り口はおとなしめ。

 今年の春に発表されて話題を集めたステルスアクションの『ヒットマン2』。“前作よりも格段に進化した”とのアピールのもと、いくつかの新情報が公開されてきたが(ブリーフケースの復活など!)、さすがにふんだんに情報公開……というわけにはいかなかった。その代表例がロケーション(舞台)。『ヒットマン2』は6つのロケーションが用意されているというのは、早い段階から伝えられていたが、明らかにされた舞台はマイアミのサーキットコースのみ。

※詳細は以下のE3 2018リポート記事を参照のこと。

 E3 2018を経て、8月末にドイツで行われたヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2018のプレゼンでも、残念ながら新たなロケーションの新情報はなし。ただ、最後に“舞台はジャングル”というチラ見せがあり、「さらなる舞台はここなのか」と思っていたところに、今回のスタジオツアーのお話があり、「どうやら新たなるロケーションでのハンズオンがありそう……」とあたりをつけたのだが、その予想は過たず、当日は新ロケーションでのゲームプレイを体験できた。コロンビアの人里離れた村、サンタ・フォルチューナだ。

※詳細は以下のgamescom 2018のリポート記事を参照のこと。

『ヒットマン2』スタジオツアー【1】コロンビアの密林を体験。ここはまさに“暗殺の箱庭”だ_06
ジャングルへようこそ!

 本ステージのターゲットとなるのは、コロンビア最大の麻薬製造組織“デルガド・カルテル”の要人3人。反社会的なカルテル・リーダーであるリコ・デルガドと、そのふたりの補佐官となる広報のエキスパート、アンドレア・マルチネス、そして化学者のホルヘ・フランコ。いわゆる“三首の蛇”だ。エージェント47と敵対する“影のクライアント”とも関係の深い“デルガド・カルテル”は、世界一の麻薬組織として勢力を拡大している。その要となる3人を叩くのが今回のミッション。“デルガド・カルテル”が牛耳る小さな村、サンタ・フォルチューナに、奇しくも3人が揃うこの機会が、“三首の蛇”を一掃する絶好のチャンスというわけだ。

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リコ・デルガド。
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アンドレア・マルチネス。
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ホルヘ・フランコ。

 先述のとおりサンタ・フォルチューナは、コロンビアの青々と熱帯雨林が繁る森の奥深くにある、人里離れた村。麻薬王デルガドの豪華な邸宅が丘の上にどんと構えており、村では地元の住人たちが生活している……というロケーションだ。エージェント47は、そんなサンタ・フォルチューナに単身潜入し、ターゲットを仕留めていくことになるわけだが、いきなりデルガドの邸宅のドアを叩いても入れるわけもなく(当然のこと、記者も門前払いを食らった)、村でいろいろと情報収集をして、ターゲットに近づく方途を探らなければならない。たとえば、“有名なタトゥー職人が村に来ていて、タトゥー愛好家のリコ・デルガドにタトゥーを施そうとしている”、“麻薬の運び屋がフランクと接触することになっている”、“アンドレア・マルチネスは地元のシャーマンに建築現場を除霊してもらおうとしている”といった具合だ。そういった情報を得て47は、そのキャラクターになりすましてターゲットに近づいていくことになる。

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村のバーにいるタトゥー職人が電話をかけるためにひと目のつかない建物の陰に……。まさに飛んで火にいる夏の虫。

 そういった、47の得意とする“変装系”のアプローチのほかに、たとえば、“広場に隣接する崖の上にある銅像の台座のネジが緩んでいる”といったたぐいの情報ももたらされたりする。その日、広場ではターゲットが参加するセレモニーが開かれるという情報を聞かされて、「はは~ん、セレモニー中に銅像を落とせばいいんだな」と、ピンとくるというわけだ。

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備えあれば憂いなし! あとは広場にターゲットが出てくるのを待つだけ……。

 『ヒットマン』シリーズの特徴というと代名詞のようになっているが、少しプレイしてみただけでも、その暗殺手段の多様さに驚かされる。『ヒットマン2』ではそれが極まっており、まさに“暗殺の箱庭”といったところ。目的にいたるまでのルートはひと通りではなく、“選択肢はいくらでもある”という状態に思わずワクワクしてしまうのは、人情というものだろう。食事をするときに料理がひとつしかないよりも、メニューがたくさんあったほうがうれしいのといっしょだ。“暗殺手段の多様さ”は、『ヒットマン』シリーズの魅力の根幹であり、まさにシェフが「種類豊富なメニューを取り揃えました。お好みの料理をお選びください」という状態だと言える。メニューを前にして、「どれにしよう」と選ぶときほど、ワクワクすることはない。それが、腕のいいシェフがいるレストランならば、なおさら。

 と、料理の比喩にかこつけて、思わず筆を滑らせてきたが、今回試遊できたサンタ・フォルチューナにおいても、その“暗殺手段の多様さ”を遺憾なく味わうことができた。思わず「どれがいいだろう……」と目移りしてしまうほど。

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変装したときのなりきりぶりはオスカーものの演技力を見せる47。まさにプロ中のプロなのだ。

 とはいえ、 “選択肢はいくらでもある”ということで、「どれを選んだらいいのか、わからなくなるのでは?」と不安になる方もいるかもしれないが、そんな方のために用意されているのが“ミッションストーリー”。これはいわば、解法にいたるためのガイドのようなもので、この“ミッションストーリー”にしたがってプレイを進めていけば、ターゲットまで達することができるようになっている。“ミッションストーリー”はオフにすることもできるので、プレイヤーの好みのままにプレイするのがいいかと思われる。

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解法のガイドともいうべき“ミッションストーリー”。流れにのってプレイするのも、これはこれで楽しい。

 ちなみに記者は“ミッションストーリー”に頼ってプレイ。それでも実際のところは、記者の腕前がからっきしなので、いずれも微妙に中途半端に終わってしまったわけだが……。以下、そんな記者の悪戦苦闘ぶりをいくつかのプレイ動画でご確認いただくとしよう。

【暗殺悪戦苦闘記その1】
 リコ・デルガドに近づくためには、タトゥー職人に変装するのが近道ということで、彼のいるバーに。ジュークボックスなどを触りつつ、機会をうかがう。まさに手探り状態。

【暗殺悪戦苦闘記その2】
 アンドレア・マルチネスが工事のためにシャーマンの祈祷を欲しているとのことで、村の外れにいるシャーマンのコミュニティーに。なかなか機会がつかめずに、ときにシャーマンの話に耳を傾けてみたり……。最後はやや強引に仕留めつつ、(案の定)見つかってしまったので、『ヒットマン2』からの新機能である草むらに隠れるスキルを使うことに。

【暗殺悪戦苦闘記その3】
 工事現場での祈祷を終えて、あたりをふらふらするシャーマン。きびきびと指図をしているアンドレア・マルチネスを暗殺する機会を狙うがなかなか見つからず……。これって何かに似ているなあ……と思ったら、告白のチャンスを探ってソワソワしている男子みたいではないか! 最後は工事現場から離れようとするところを焦って、告白もとい暗殺することに。こんな強引なやりかたがうまくいくはずもなく、周りにモロバレ。草むらに隠れはしてみたものの、このあと倒されてしまったのは言うまでもない。

 “暗殺の箱庭”である『ヒットマン2』だが、“箱庭”に見合った舞台が必要ということで、本作には選りすぐりのロケーション6つが用意されている。ソフトのリリースを間近に控え、そのロケーションは先日明らかにされたが、最初に公開されたマイアミ(アメリカ)と記者が体験したサンタ・フォルチューナ(コロンビア)に加えて、ホークスベイ(ニュージーランド)、スゴール島(北太平洋)、ホイットルトン・クリーク(アメリカ)、ムンバイ(インド)となっている。

 その詳細はわからないが、確実に言えるのはそれぞれ趣向を凝らしたアクションが楽しめるであろうということ。それを象徴するのが、サンタ・フォルチューナであれば、ジャングル。『ヒットマン2』では、“草むらや木の陰に身を隠す”という新要素が追加されているのだが、このサンタ・フォルチューナは、その新要素を体験するにはうってつけのステージと言える。本作では、草むらを移動して敵に見つからないようにしたり、万が一敵に見つかった場合はジャングルに身を隠してやり過ごすといったことが可能となっているのだ。まさにジャングルは47の味方!

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草むらに身を隠すという新機能を遺憾なく披露。画面写真では保護色のように見えるづらいが、まさに草むらに同化している証!

 ニワトリが先か卵が先か……ではないが、この“草むらや木の陰に身を隠す”新要素を実現するために、ジャングルを舞台にしたのでは……と思われるほど(真実はジャングルの中)。いくら“暗殺の箱庭”が優れているといっても、同じような箱庭ばかりが並んでいてもさすがにあまり意味はないわけで、その点IO Interactiveは相当意識的にバラエティーに富んだ箱庭を用意しているのではないかと思われる。E3 2018のときに体験したマイアミも、今回遊んだサンタ・フォルチューナも、それぞれ異なるテイストで、プレイしながらワクワクし通しだった。ほかにどのようなロケーションが待っているのかと思うと、楽しみで仕方がない。

 ちなみに今回のハンズオン、記者たちはおもむろに小部屋に案内され、「さあ、どうぞご自由に!」とばかりに約2時間が与えられた。この手のスタジオツアーの冒頭によくあるゲームのプレゼンは一切なしで、プレイ中の説明もほとんどなし。それは、「とにかくプレイしてみてほしい!」というスタンスが明確で、ゲーム対する自信のほどがうかがえた。プレイしてみて2時間。その自信も無理からぬものがあるなあと思わせるデキだった。