東京ゲームショウ2018のセガゲームスブースにて、2018年9月22日にて行われた“SEGA AGES”ステージ。『ゲイングランド』の実機プレイ披露や、『バーチャレーシング』の移植決定決定などで大いに湧いたこのステージだが、中でも注目を集めたのが、事前にツイッターで募集された“SEGA AGES”シリーズへの移植希望タイトルのアンケートの結果発表だ。そこでファミ通.comでは、ステージを終えたばかりの主要開発陣へのインタビューを実施。新発表や、アンケートを受けての感想など、気になる点をぶつけてみた。

移植希望アンケートの影響は!? セガゲームス“SEGA AGES”の開発陣に今後の展望を聞くロングインタビュー_07
ステージを終えたばかりのシニアプロデューサーの下村一誠氏(右端)、スーパーバイザーの奥成洋輔氏(左端)、エムツー代表の堀井直樹氏(左からふたりめ)、そしてプロデューサー/ディレクターの小玉理恵子氏(左から3人め)に加わっていただき、お話を伺った。

移植希望アンケートの結果を受けて

――ステージ出演、お疲れさまでした。早速ですが、ランキング結果を受けての感想をお聞かせいただけますでしょうか?

奥成すごくおもしろかったですね。じつは、言い出しっぺの宣伝担当には「きっと想像以上に投票があるからアンケート集計が大変だよ」と忠告をしていたんですが、案の定凄い数の投票があって、一度はステージでの公開はギブアップしかけていたんです。でも、「東京ゲームショウ用に募集をかけたんだから絶対に出さないと」、とけっきょく私が集計を買って出て、開催前日の終電までコツコツ集計をしていました。あくまで速報で、正式なランキングではありませんが、出せてよかったです。

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東京ゲームショウ2018のステージで発表になったランキング速報。得票順にベスト30までが公表された。

――1位は『ジェットセットラジオ』シリーズとなりました。

小玉集計前から『ジェットセットラジオ』シリーズにたくさん票が集まっているのは気づいていたんですけど……。

奥成シリーズのコンポーザーである長沼英樹さんが全世界のファンに「投票よろしく!」と呼びかけた影響が大きく出ていますね。

小玉私は現在ライセンスの仕事もやっているのですが、海外を中心に『ジェットセットラジオ』のオファーがすごく多いんです。我々が“SEGA AGES”で取り上げるかはわかりませんが、そういった声に応える何かができたらいいなとは思っています。

――以降は『シェンムー』や『パンツァードラグーン』シリーズなど、サターン、ドリームキャストのタイトルが上位に並んでいます。

奥成2016年の東京ゲームショウで発表したランキングは、『セガ 3D復刻アーカイブス2』の購入者アンケートの結果でした。それって、“セガ 3D復刻プロジェクト”をずーっと応援してくださって、僕らの事情をよく理解されているファンの皆さんが「もしまだ続編があるなら、これがほしい」という声でした。もしかしたら、こちらに対する遠慮もあったんではないかなと思います。

――シリーズを追いかけて来たファンだからこその忖度があったかもしれないと(笑)。

奥成はい。ところが今回は、“セガの復刻”という大きなカテゴリな上、これまでそうした復刻タイトルを買ったことがないお客様も含めての、“オール・セガファン”が求める最新事情ということになりました。

堀井(応募した人たちが)これまでよりも全体的に若い印象ですね。

奥成ですので、古くは1980年代のアーケードゲームから、新しいものでは『ワールドチェイン』や『デーモントライヴ』といったサービスを終了したスマートフォン向けタイトルまでと、多種多彩な結果となって「セガで復刻が期待されているタイトルって、こんなに幅広いんだな」というのが確認できました。『甲虫王者ムシキング』シリーズ(14位)も票を集めていますよね。

――すでにサービスが終了してしまったタイトルにまでニーズが及んだ?

奥成そうです。僕らの想像していなかったタイトルもあったので、クラシックなタイトルを対象にしている“SEGA AGES”の枠だけではなく、これからのセガが何を復刻していくかのひとつの指針になったのではないかと思っていますし、それが今回ステージでの発表という形で皆さんと共有できてよかったです。

下村念のために言うと、今回のランキングの上から順を“SEGA AGES”で出すわけではありません。ただ、ユーザーの皆さんが何を求めているかというのは僕らの中にキチンと浸透しましたので、これを元につぎの戦略を立てていきたいと思います。とはいえ、タイトルによっては復刻の難易度が高いモノもありますので、そのための準備が必要です。これまでどおり、ユーザーさんの熱量を元に進めていけると思うので、飽きずに懲りずに応援していただきたいです。

小玉入り口は“SEGA AGES”向けのアンケートですが、それだけはなくて、ユーザーさんが“いまのセガ”に何を求めているかのモノサシになったのかもしれません。復刻という領域を超えて、リメイクや続編がほしいという期待でもあるんだなと。それに、多くの方が熱いメッセージ付きでツイッター投稿をしていただいたので、ひとつひとつ読んでいて感激してしまいました。

奥成小玉がプロデューサー/ディレクターをやっていることを公開した影響もあるかと思うのですが、小玉が過去に手掛けた『エターナルアルカディア』(11位)や『魔法騎士レイアース』、『ディープフィアー』に複数票が投じられていたのも興味深かったですね。

――そういった声を聞いてのお気持ちは?

小玉『ディープフィアー』に関しては、覚えていてくれてありがとうという気持ちです。素敵なアーティストの皆さんに参加していただいたのですが、サターンのかなり末期の発売タイトルなため、埋もれてしまったことが心残りな作品なんです。それこそ復刻できたら素敵だなと思っていますが、いざ出すとなったらいろいろ手を入れないといけないかもしれませんね。私自身も思い出深くて、映画のPR会社さんたちといっしょにシネアド(映画館で本編上映前に流れる広告)をやったり、実写のムービーを作って東京ゲームショウで流したりですとか。当時の宣伝担当だった竹崎(忠氏。竹ちゃんの愛称で活躍した名物広報マン。現在トムス・エンタテイメント 常務取締役 事業本部長)さんとタッグを組んで、末期だったのをいいことに好き放題やっていました(笑)。

堀井竹崎さんも映画好きですもんねぇ。

小玉『エターナルアルカディア』が上位にいるのはとても嬉しいですね。私はもう手掛けられる気力がないので、誰か若い人にがんばってもらいたいです(笑)。当時の大変さを思い出すと滅入っちゃうので。

堀井あれって、続きをやるつもりのある終わりかたでしたよね、明らかに。

小玉ありましたね。またちょっと違う形になっていったりしましたけど。私が携わった中でも一番の開発期間の長さとボリュームがあったタイトルなので、リメイクや復刻するのは大変だろうなと思いますが、いつの日か私の後輩たちがやってくれるに違いない、と言っておきます。

――そうしたリメイクや続編といった希望も“SEGA AGES”の範疇に入るのでしょうか?

奥成今回のアンケートは“SEGA AGES”というくくりで行ったアンケートですけど、昔から応援してくださっている人と、プロジェクトの存在を知らない人の声が渾然一体となっていると思うんです。『ドラゴンフォース』(25位)や『ダイナマイト刑事』(21位)は、プレイステーション2時代の“SEGA AGES版”(※)を遊んでくださった方々もいるでしょう。

※『ドラゴンフォース』『ダイナマイト刑事』はプレイステーション3用のプレイステーション2アーカイブスでも購入可能

――なるほど。
奥成また、『スペースハリアーII』に投じている方は、ベタ移植ではなく『SYSTEM16版 ファンタジーゾーン2』(※)のようなリメイクをしてほしいという声なんでしょう。

※エムツーがセガ・マークIII版をベースに制作した“もしアーケード版があったら”タイトル。

堀井そうなんですよ。(回答が)ホントにカオス。

――これまでの“セガ復刻”を追い続けてきた立場からだと、ちょっと意外な結果な気もします。

奥成とはいえ、一票は一票。今回の速報では1アカウントにつき1タイトルということで、複数タイトルを書いた投票は弾いていますが、それを踏まえてもひとつのリアルな数字だと思います。4月に“SEGA AGES”を発表したときには「将来的にはセガサターンやドリームキャストの復刻も目指したい」と打ち出しましたし、ステージ上でも「すべてのセガのタイトルを出せるまでがんばりたい」という下村の発言もありました。その目標に対して、皆さんが言葉の意味どおりに期待してくださっているのだと思います。

追加発表となった『バーチャレーシング』

――ステージで発表された『バーチャレーシング』についてお伺いします。

堀井3D復刻のころから移植がしたかった『バーチャレーシング』にもうワンチャンスがあってよかったです。ツイッターでは「『Monaco GP』(※)に一回は沸き立ったのにぬか喜びでした!」って声もありましたけど(笑)。

※1979年にセガからリリースされたアーケード向けレーシングゲーム。

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下村一昨年は『くっつけっと』(※)といって誰にも引っかからなかったので、だったら『Monaco GP』にしようと狙った発言が、まさかの反応で(笑)。SEGA AGES 2500版がありましたが、個人的にはオリジナルの『Monaco GP』もいつかはやりたいと思っています。

※テクノソフトがセガサターンとプレイステーション用に発売したアクションパズル。TGS2016でのテクノソフトの権利取得を発表した際に、下村氏が名前を上げた。

奥成第2期の収録フラグ?(笑)

――話を戻しますが、『バーチャレーシング』はセガ3D復刻プロジェクトでも移植作業を行っていましたよね。

堀井もがいた上で実を結ばなかった経緯があるので、今回発表ができたのは感慨深いですね。現状動いているモノがお見せできているわけではないですが、アーケード版を元にしたバージョンの開発作業が、かなり良好に推移しています。

奥成開発状況に関しては、すべてのタイトルが動画でご紹介できなかったことでお察しいただけたらなと(苦笑)。

――エムツーさんへの応援エールが必要そうですね。ところで、発表になった画像が16:9比率でしたが。

奥成アーケード版として最初に稼動したのは、16:9のブラウン管モニターを搭載したデラックス筐体なのでそれをベースにしています。

――オリジナルどおりに対戦も楽しめるのでしょうか?

堀井そこは可能な限りやっていこうと思います。画面分割での対戦も、どこまで人数を増やせるかはわかりませんが、できる限り行います。

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SEGA AGES版『バーチャレーシング』では画面分割による対戦が楽しめる。

――ステージでは「ソースコードが見つかった」との発言もありました。

奥成以前セガ3D復刻プロジェクトを進めていた中で、単体で『バーチャレーシング』を加えようという話も出ていたのですが、複数ある候補の中から“できる・できない”がわからないので、とりあえず資料を集めるわけです。そのタイミングでは見つからなかったのですが、新たにSEGA AGES版を進めるにあたって、小玉から調査を依頼したところ発掘されました。

堀井なにぶん数十年前のモノなので、見つかるかどうかは運次第みたいなところがあるんですよね。引っ越ししたりすると、資料が廃棄されちゃったりしますし。

小玉そうです。奥成が依頼をかけてからは、みんな気にかけて探してくれてはいたのでしょけど、一箇所にまとまっていなくて「誰かのPCの中にあるかも……」というケースが多くて。今回問い合わせをしたところ、片岡 洋(セガ・インタラクティブ 第二研究開発本部 本部長)が、見つかったものを確保していてくれたんです。

堀井発掘あるあるですけど、ファイルネームによっては目の前にあるのにスルーしちゃったりしますからね。

オープニング映像誕生のヒミツ

――発売直後ということで、“SEGA AGES”のオープニングについてお伺いします。やはり気になるのは、キャラクターたちの存在なのですが。

堀井他意はないです。やりたいようにやった!

――他意はない(笑)。

堀井「今後のラインアップと関係があるのでは」と思われていても、それは“偶然の一致であり現実のラインアップとは関係ありません”というテロップを用意したいです。

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SEGA AGES起動時に表示されるオープニングムービー。ラウンドガールよろしく、パネルを持ったキャラクターたちが表示される。

――では、とくに勘ぐりはせずとも?

堀井してくれてもいいし、してくれなくてもいいです(笑)。“セガ3D復刻”や“SEGA AGES”を遊んでいる方は我々と同じ世代だよねという空気感で選びました。

下村奥成は、最初にあれを見たときには渋い顔をしていたよね?

奥成ええ。まさに勘違いされる恐れがあったので。エムツーさんから「オープニングを作って入れます」という話は聞いていて、ラウンドガールが出現する企画もおもしろいと思いました。ただ、直後に「キャラクターはランダムで変わるんです」と一覧を渡されたのですが、当初はすごいマイナーキャラばかり。とくに、8ビット時代の人たちは、イラスト化されたら「君、誰?」となること必至だろうと(笑)。ですので、買ってくれた人が「おお、懐かしい!」と言ってくれるくらいのキャラクターにしましょうと。でないと、“これを移植します宣言”に受け取られかねないので変えました。エムツーさんお得意の「もう書いちゃった」で収録されているキャラクターもいますけど、日本で発売されていないタイトルのキャラクターもいるので、解説がないと絶対何のゲームかわからないと思います(笑)。

小玉最終的な基準は、私や奥成が「これはきっとセガファンの皆さんなら知っている」というものですね。

――最後に登場するアレックスキッドがかなり目立っています。

堀井アレクがセガのキャラクターの中で不遇だよねって言われているのがウソのようですよね(笑)。アレクはメジャーキャラ!

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最後に大写しになるアレックスキッド。ちなみにイラストを描いているのはエムツーきってのアニメーションクリエイター、南向春風氏。BGM制作はchibi-tech氏だ。

小玉私も奥成も、アレクに関しては一言もツッコミを入れませんでした。

奥成それだけに、『アレックスキッドのミラクルワールド』はいつリリースされんだと気になっています。もしかして第一期のトリを飾るのは彼なのかもしれない。相変わらずエムツーさんは、アレクに試練を与えるなって(笑)。

堀井そうは言いますけど、10代のころにセガを応援していた人たちって、アレクにはひとかどならぬ思い入れがあるわけですよ。なにしろ、マリオのライバルとして生み出されたキャラクターですからね。

――キャラクターは何人いるのでしょう?

奥成ナイショです。もしかしたら1/10000の確率で出現するキャラクターがいるかもしれない(笑)。

堀井ネット上ではさっそく解析班の皆さんが「こいつが出た!」とリストを作ってくださっていましたね。

――オープニング自体がアップデートされる可能性もあったり?

堀井それをしないで何するんだって話ですよね! もしドリームキャストのタイトルが動いたら、うららや原崎望が出てくるかもしれない。

これからの“SEGA AGES”について

――9月20日に『SEGA AGES ソニック・ザ・ヘッジホッグ』と『SEGA AGES サンダーフォースIV』が配信となりましたが、今後の配信ペースはどうなりますでしょうか? 以前お伺いしたときには月に1、2本はリリースしたいとのことでした。

小玉絶賛……努力していただいています(堀井氏の方を見ながら)。

堀井(やや力なさげに)がんばっています。相当数のタイトルが動いていて、もうすぐβ版だねというところまでは来ているのですが、そこからまた苦労をしていまして。相変わらずワヤクチャです。

奥成たぶん松岡(毅氏。“セガ3D復刻プロジェクト”に続き、“SEGA AGES”でも開発ディレクターを務める)さん的には「奥成が悪い」と思っているじゃないかと。というのも、“SEGA AGES”は1本1本を作り込むよりも、バーチャルコンソールのときのようにたくさんのタイトルをコンスタントに出していきましょう、という形でスタートしているんですね。ですので、ローンチを充実させるために、これまでに移植をしたことがあるなどの“安心枠”を用意していたんです。ですけど……。

堀井そう、すばやく出せる料理を選んでいたはずなのに! でも奥成さんは必ず「ひと味足したいよね」っていうんです。

奥成僕が「『コラムス』じゃなくて『コラムスII』がいい」と言った瞬間に、新しい仕事になるわけですから。メガドライブで一度移植をした『コラムス』をNintendo Switchで動くようにするのと、C2ボードで動作している『コラムスII』を移植するのとでは、まったく別の仕事。

堀井でも、奥成さんは打ち合わせで、「『コラムス』は『コラムス』じゃないですか」とか言うんです。控えめに言って、まったく意味がわからない。でもね、ネット上には「グラントノフ感(※)がほしい」とおっしゃる方がいるし、それに煽られる我々もいるんですよね。たとえば『アウトラン』なんて、Nintendo Switchのワイド画面で見るだけでかなり格好いいんですよ。

※:オリジナル版にはない新規追加要素。セガ・マークIII版『アフターバーナー』に追加された巨大戦闘機に由来する。

――たしかに「3D復刻と同じじゃないか」と、物足りなく思うかもしれません。

堀井ですので、メガドライブ版の新曲だった“STEP ON BEAT”がアーケード基板の音源で鳴っていたりするんですよ。よくないですね! すごくよくない(なぜか嬉しそうに)。

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『アウトラン』は3DS版を元にさらなる新要素を追加。合計3曲の追加曲も用意される。

奥成3D復刻がだいたい3ヵ月に1本のペースで出してきたのは、3D化の大変さがあったから。それと比較するのも少し違うんですけど、新しいゲームを移植する、新しい要素を入れるというのは、いかに手練のエムツーさんであろうとも手間取るということです。さらに遅延の軽減やサウンドの再現度アップといった部分には手間がかかる。

堀井ゲームごとでの調整になりますからね。

奥成そこを妥協できないので、気がつくと本来の締め切りを過ぎている。

堀井これまで支えてきてくださったファンの方々が「エムツーなら大丈夫」と言っていただけるのは、そこを積み上げてきたからだと思っていて、締め切りに間に合わせるためにそこを外すのは本末転倒。可能な限り、ワイヤレスコントローラーや画面出力の遅延を減らすなど、快適に遊べるための作業はやっていったほうが絶対にいいはずなんですよね。ネットでクラシックゲームを遊ぶ人の声をさらうと「昔より下手になった」、「なんか感覚が違う」と言われるので、そこはできる限りオリジナルの手応えを再現する。その分お待たせしますけど、申し訳ないですが努力させてくださいという気持ちでいます。

下村僕らとしてもそれを予想して多少のバッファは設けていたのですが、それはもうありません。ですが、堀井さんがおっしゃるように、このプロジェクトで一番大事なのは売り上げよりもユーザーさんの満足度です。「完全移植ですよ」と半分嘘をついて一時的な売り上げを高めるよりも、長く続けることでセガのラインアップをできるだけ多く復刻することが、このプロジェクトの課題ですので。経営視点からすれば「なんでこんなにペースが遅いんだ」と突っ込まれる部分はありますけど、そこをうまく調整するのが僕と小玉の仕事です。

堀井これまでこういう(インタビューの)場では明かしたことはないんですけど。僕らが“セガ3D復刻”や“SEGA AGES”で手掛けたタイトルが皆さんの目に触れて評判になったことで、セガさんが「それだけ人気だったら新作を作ろう」という運びになったら、復刻した甲斐があるだろう、という心持ちはあるんですよ。そうなるためにも、手触りとかはちゃんとしていないと真っ当な評価をいただけない。アーカイブにしていくというのはそういうことだと思います。

――気の早い話ですが、第二期のタイトル発表はいつごろになりそうでしょう?

奥成現在発表されている11タイトルが全部リリースされてからじゃないですかね。まずは『ファンタシースター』を出すところからですよね?(と堀井氏を見る)

堀井そうですねぇ……。追加仕様を入れていると、その仕様に対するツッコミが、たとえば「オートマッピングはどこまでオートにするの?」というのが来るので。モンスター図鑑とかもまるで攻略本を作っている気になりますけど、自分らが言い出したことですからね。

――ステージでは堀井さんが「ドリームキャストが動きそう」という発言もありました。

堀井現状、Nintendo Switch上で(ドリームキャストのソフトが動作するエミュレーターが)動きそうな目処は立ちました。ただ、エミュレーションをするのか、それともソースコードを拾ってリメイク的に作るのかで、移植作業はぜんぜん違ってきます。そこはタイトルごとにセガさんが選択すると思うのですが、エミュレーションもやっておいたほうが数は増やせますので。

奥成話を戻すと、そういう部分を含めての指針を左右するのが、今回のアンケート結果だと思うんです。まだ結論は出ていませんが、リストにあるタイトルをバーチャルコンソールのような素の状態で1本でも多く出すのがいいのか、あるいはグラントノフ感を加えての厳選した数本がいいのか。

――改めての確認ですが、“SEGA AGES”の方向性そのものが変わっていく可能性も?

奥成過去プレイステーション2でリリースした“SEGA AGES 2500”にしても、当初はリメイクが中心でしたが、原作に忠実移植をした『バーチャファイター2』が評価を得たことで、忠実移植に路線変更をしていった経緯があります。ですので、今回もお客さんが一番喜んでくれるのはどこなのかを見定めながら、進む方向を決めていきたいです。まずはリリースとなった『サンダーフォースIV』と『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の反響をしっかりと確認したいです。

――僕も思い違いをしていましたが、プロジェクトはスタートしたばかりなんですよね。

堀井はい、ようやく世に問えた感じです。

奥成ファンの皆さんも、そのくらいヤキモキしているでしょうからね。

――わかりました。今後の展開にも期待を寄せつつ、まずはリリースされたタイトルを楽しみます!