ギミックに触るだけでとにかくワクワク

 2018年10月14日にベルサール秋葉原にて開催予定の“UBIDAY2018”。“UBIDAY”といえば、ユービーアイソフトが毎年開催する単独イベントとしてすっかりおなじみ。毎年同社の最新作が試遊できるとあって多くの来場者を動員している。今年も『アサシン クリード オデッセイ』や『ディビジョン2』など、そうそうたる注目タイトルが出展されるわけだが、今年記者がひときわ注目しているのが『スターリンク バトル・フォー・アトラス』だ。

 『スターリンク バトル・フォー・アトラス』とはどんなタイトルなのだろう……ということで改めて簡単にご説明しておくと、同作はビデオゲームとフィギュアがリンクしたアドベンチャーゲーム。今年6月に行われたE3 2018で任天堂の『スターフォックス』とコラボが発表されたことでも大きな話題を集めたが、コントローラーにつけた専用のアタッチメントにガッチャンコとばかりにフィギュアを装着すると、ゲームの中に現物のフィギュアと同じ機体が出現。そのまま遊べるというゲームだ。機体にはそれぞれパーツが用意されており、実際にパーツを組み替えるとゲーム中の武器もチェンジするという趣向になっている。

 と、軽く説明しただけでご理解いただけるかと思うが、このギミックがとにかく楽しい! 記者が『スターリンク バトル・フォー・アトラス』をプレイさせてもらったのは、8月末に行われたgamescom 2018においてだったのが、取材陣のために用意された機体やパーツがずらりと並んでいるさまを目の前にしたときは、まるで大好きなおもちゃを目の前にした子どものようにワクワクしてしまい、同行してくれた通訳のMさんに少し呆れられてしまったほどだ。

 とはいえ、こういったフィギュアの数々を見て、何も感じないで済ませろというほうが土台無理な話で、この手のものは、男の子が本質的に突き動かされる何かを刺激するのかもしれない。イマジネーションとか、男のロマンとか……(違うか)。いずれにせよ、ここぞとばかりにワクワクしながら試遊に励んだのは言うまでもない。

『スターリンク バトル・フォー・アトラス』話題のフィギュア連動ゲームのレビュー&クリエイターインタビューをお届け。ロマンとセンス・オブ・ワンダーに溢れた1作_05
ずらりと揃ったフィギュアの数々。心が騒いでしまっても無理からぬところ。

正統派のSFジュブナイルなのかも

 とはいえ、ワクワクしてばかりいても話は先に進まないので、gamescomのプレス向け試遊会のときに受けた、クリエイティブ・ディレクター、ローラン・マルヴィル氏のプレゼンをもとに、『スターリンク バトル・フォー・アトラス』の概要を紹介していこう。

 ユービーアイソフトのトロントスタジオ初のタイトルとなる本作は、約100人の体制で数年間をかけて開発しているオープンワールドのアクション・アドベンチャーゲーム。この“スタジオ初の”というところが若干ミソで、「ほかにはない斬新なものを」ということが、本作に結実したようだ。

 本作のストーリーラインは、主人公は宇宙各地から集まったパイロットたちのリーダーとして、アトラス星系の探索を行いながら、謎の敵である“忘れ去られしレギオン”と戦うという、骨太なもの。SFファンの記者からすると、それだけでわくわくの二乗となる。

 本作では、まずは複数いるキャラクターから自分のパイロットを選択する。当然のことながら、各パイロットは人となりも使えるアビリティーも異なる。たとえば、Chaseは非常にスピードのある操縦を得意とし、エイリアンチームのひとりであるJudgeは、自機以外の機体の動きを遅くできるので、弾や敵を避けて進むことができるといった具合だ。「キャラクターはプレイ中にいつでも変更できるので、いろいろなパイロットを試してみてほしいです」とは、ローラン・マルヴィル氏の言葉。さらに言えば、キャラクターによってストーリーへの関わりかたも異なるようで、異なるキャラクターだと、異なる視点からストーリーが楽しめるようになるようだ。

 パイロットのつぎは宇宙船の選択で、いくつかのクラスに分かれており、それぞれ長所があるようだ。俎上に載せられたのは、長く攻撃を継続できる“High Energyクラス”、 スピードと操作性のバランスが取れていて、敵のあいだを素早く移動できる“Performanceクラス”、動きは遅いがダメージに対する耐性がある“Tankクラス”、素早い移動が身上の“Rocketクラス”など。

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 最後は武器。武器はエネルギーの種類によって炎系のものであったり、氷系のものであったりとバラエティーに富んだ方法が用意されている。ちなみに、敵の属性などにより相性などもあるようで、「この敵だったらこの武器で」といった具合に、適宜武器を切り替えるのがゲームプレイの基本となる模様。せっかくパーツを組み替えるギミックがあるんだから、楽しんでもらいましょうということだ。まあ、武器を切り替えて攻撃方法が変わるのは、実際のところかなり楽しいです。

 さて、本作で就航可能なのは7つの惑星。それぞれの惑星はシームレスに移動でき、自由に探索できる。惑星には産業探査や科学探検の基地もあり、“植物採集”や“クリーチャーのDNAサンプルの採集”などといったミッションも用意されており、達成すると“エレクトロン”という貨幣がリワード(報酬)としてもらえる。そのリワードは、宇宙船のアップグレードに使えるというサイクルだ。

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 ちなみに、ストーリーは本作でも力を入れているポイントらしいのだが、ローラン・マルヴィル氏によると大きなテーマはふたつあるという。ひとつは“大人になること”。そして、ふたつめは“チャレンジを乗り越えるための協力”。SFでは人気のカテゴリーのひとつにジュブナイルがある。それらでは、多くは少年が冒険を経て大人へと成長していく物語が描かれるのだが、マルヴィル氏の話を聞く限りでは、『スターリンク バトル・フォー・アトラス』は正統派のジュブナイルなのだろうと思わせた。

プレイ動画をお届け、『スターフォックス』が超クール

 セッションでは、自由に『スターリンク バトル・フォー・アトラス』を体験できた。前述の通り、記者がプレゼンを受けたのが8月下旬。国内では2019年発売となる同作だが、海外では10月16日にリリースされることになっており、試遊バージョンはほぼ完成相当だったと思われる。せっかくの機会ということで、そのプレイ動画をお届けしよう。なんとなく適宜カットしているものの、そこかしこに見える至らぬ腕前はご愛嬌として(徐々に腕前が上達していくのは成長物語の証)、動画を見ると世界観の一端と、魅力的なゲームプレイがご確認いただけるのではないかと思う。途中で日本語に対応していることに気づいたりと、撮影環境が一定しておりませんが、ご容赦ください。補足しておくと、日本語版向けに完全ローカライズをするとのことだ。

 試遊のために用意されていたのは、Nintendo SwitchバージョンとXbox Oneバージョン。Nintendo Switchバージョンといえば……もちろん、同ハードだけの要素となる、任天堂『スターフォックス』とのコラボ。当日はフォックス&アーウィンでのプレイも体験できた。マルヴィル氏の「E3で発表したときはワクワクしましたが、宮本さんの前でとても緊張しました。『スターリンク バトル・フォー・アトラス』にとっては、大切な瞬間でした」との言葉に、『スターフォックス』とのコラボが持つ重みがうかがえるが、アーウィンでの操作は極めて爽快。ちなみに、アーウィンにも『スターリンク バトル・フォー・アトラス』に登場する武器はつけることができるが、「オリジナルの雰囲気を楽しみたいのならば、何もつけずにプレイすることをおすすめします」とのことだ。また、前述のクラス分けでいうと、アーウィンは“Performanceクラス”となる。

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アーウィンがかっこいいんです。

【動画解説】以下の2本の動画はNintendo Switch版にてプレイした、フォックス&アーウィンのプレイ動画。動画を編集していてふとプレイ時のことを思い出したのだが、惑星に突入するまでの宇宙空間でのドッグファイト(360度)と、惑星に降り立ってからの地表を中心としたゲームプレイとの対比がすばらしい(惑星では重力の影響からか、そこまで地表から離れで飛行はできない)。また、コックピットと遠隔地とのキャラクターどうしのやりとりにも注目されたし。宇宙ではこうでなくっちゃね!

【動画解説】Masonを選択しての、最初の惑星であるHavenに突入するシーン。順次宇宙船が乗り代わっているのはご愛嬌ということで……。そしてこれも動画を編集して思い出したのだが、プレイして感じたのが“センス・オブ・ワンダー”。センス・オブ・ワンダーは、昔はSFなどでよく使われていた表現だったのだが、新たなものに対する驚きみたいな意味合いだろうか。未知なる惑星に降り立ってのワクワク感は、まさにセンス・オブ・ワンダーに満ち溢れていて、「ほかの惑星はどんなふうなんだろう」と気になってたまらなかった。ちなみに、動画では大気圏に突入するシーンが収録されているが、SFと言えば何といっても大気圏突入! これもワクワクしますな。

 さて、2017年に『スターリンク バトル・フォー・アトラス』が発表されたとき、記者は個人的には「フィギュアやパーツもあるし、商品の管理がたいへんそう。日本で発売されるのは相当敷居が高いのでは……」と思ったものだった。それが、そういったギミックも含めて日本で発売されると聞き、「やるな!」とびっくりしたものだが、実際のところ『スターリンク バトル・フォー・アトラス』は、フィギュアやパーツがなくても十分快適にプレイできる。とはいえ、より楽しく遊ぼうと思ったらフィギュア&パーツでのプレイを激しく推奨したい。ガチャガチャ入れ替えながらプレイするなんて、そこには男の子のロマンがあるではないか。

 そして、腕前が下手くそな記者だからこそ気づいたフィギュア&パーツでのプレイのメリットがある。本作では、敵から攻撃を受けると自機が使用不能になってしまうのだが、フィギュアを取り替えることで自機もチェンジし、フレッシュな状態でプレイできるのだ。つまり、たくさんフィギュアを持っていれば、それだけその時点からのやり直しが効くということ。試遊も佳境に入ったときに、とにかく敵が手強くて、自機を破壊されては乗り換え、さらに壊されては乗り換え……としているうちに、いつしかどれが無傷の機体がわからなくなり、あたふたして同行してくれたMさんに苦笑される……なんてひとコマも、それはそれで楽しい。

 ジュブナイル風ストーリーに、意趣を凝らしたフィギュアとの連動と、とにかく『スターリンク バトル・フォー・アトラス』ワクワクさせずにはおかない1作だ。

 というわけで、おつぎはクリエイター陣のお話に耳を傾けることにしよう。『スターリンク バトル・フォー・アトラス』の魅力を語ってくれるのは、クリエイティブ・ディレクター、ローラン・マルヴィル氏、リード・ナラテエィブ・デザイナー、ジョシュ・モーハン氏、アート・ディレクター、ダニエル・エバンクス氏の3名だ。