ソニー・インタラクティブエンタテインメントが2017年10月17日に発売を開始した『グランツーリスモSPORT』。2018年10月7日、東京・MEGA WEBライドスタジオにて、世界各国の地域どうしで勝利を競い、チャンピオンを決める“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア リージョンファイナル”が開催された。

 本大会は、FIA(国際自動車連盟)と、『グランツーリスモ』(以下、『GT』)が提案する新しいモータースポーツの一環として行われる選手権で、2018年6月〜9月の期間に開催されたオンラインバトル“ネイションズカップ”のポイントランキング上位30名が集結し、リージョンチャンピオンを決めるというもの。参加国は香港、台湾、ニュージーランド、オーストラリア、日本の5ヵ国。2018年10月6日には30名による予選大会が行われ、10名の決勝参加選手が決定した。
 各国の上位選手30名による熱い予選の模様は、以下の動画にて紹介されている。

 予選を通過した10名は、全員が世界一の『GT』プレイヤーを決める“ワールドファイナル”への出場権を獲得できているのだが、その中で最速の称号を持つチャンピオンを決める大会が、今回行われた決勝戦ということになる。

 予選を勝ち上がり、決勝に進出を決めた10名の中の誰が初代チャンピオンの座を獲得するのか。今回の大会は全10名が3戦のレースを競い合い、合計獲得ポイントで勝者を決めるものとなっている。順位による獲得ポイントは1位:12pt、2位:10pt、3位:8pt、4位:7pt、5位:6pt、6位:5pt、7位:4pt、8位:3pt、9位:2pt、10位:1pt(pt=ポイント)。なお、最終レースとなる第3戦は、獲得ポイントが2倍となっている。
 レースのスターティンググリッドは、決勝レース前に行われた予選タイムアタックによって第1戦の出走順位が確定。第2戦、第3戦は、その前のレースの決勝順位がそのままスターティンググリッドとなる。

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ステージに登壇した、10名の決勝参加選手たち。これから、熱く激しいバトルがくり広げられることになる。

 鈴鹿サーキットを舞台に行われた15分間の予選では、各選手が思い思いにタイムアタックをくり広げていたが、さすがに世界トップクラスの選手が集結しているだけあって、目立つミスや混乱はなく、高度な心理戦がくり広げられているよう。ハイレベルな攻防がくり広げられた結果、以下の通りの順位が確定した。

  • 1位:R.Kokubun・日本(2分19秒738)
  • 2位:J.Wong・香港(2分19秒889)
  • 3位:S.Yoshida・日本(2分19秒890)
  • 4位:T.Yamanaka・日本(2分19秒967)
  • 5位:Y.Shirakawa・日本(2分20秒629)
  • 6位:Y.L.Law・香港(2分20秒680)
  • 7位:C.N.Latkovski・豪州(2分20秒758)
  • 8位:D.Holland・豪州(2分21秒387)
  • 9位:A.Wilk・豪州(2分22秒513)
  • 10位:M.Simmons・豪州(2分22秒524)
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写真左よりR.Kokubun選手、J.Wong選手、S.Yoshida選手、T.Yamanaka選手、Y.Shirakawa選手
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写真左よりY.L.Law選手、C.N.Latkovski選手、D.Holland選手、A.Wilk選手、M.Simmons選手

 第1戦の舞台は鈴鹿サーキットで、使用マシンはN500クラスのマシンを使用。タイヤはスポーツハードで、8週をかけて争われる。必ず1回ピットインし、タイヤ交換を行わなければならないため、どの周回でピットインするかが、戦略上で重要なポイントになってくる。

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 全車の準備が整ったところで、ローリングスタートによってレース開始。レース展開は、ポールポジションからスタートしたR.Kokubun選手が安定した走りで後方を引き離す走りを披露。タイヤ交換も、中断勢に入るのをきらってギリギリまで伸ばした結果、最後まで1位をキープしたままフィニッシュ。そのまま初戦を制す結果となった。
 T.Yamanaka選手も猛烈な追い上げを見せ、最終週には2位を走行するJ.Wong選手とテール・トゥ・ノーズの接戦をくり広げながら、僅差で3位という走りを披露している。

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各選手の座る座席の背面には、現在の順位やピットインの状況が表示されるほか、バーグラフで走行スピードを表示。会場の来場者は、視覚的にどの選手が何位にいるのか、一目でわかるシステムとなっている。
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初戦を制したのは、R.Kokubun選手。第1戦の優勝インタビューでは「自分の走りに集中するので精一杯でした。序盤で引き離すことがいちばんのリラックスの方法なので、それができてよかったと思います」とコメント。

 続く第2戦は、『GT』オリジナルコースとなるドラゴントレイル ガーデンズIIを使用。13週のレースで、タイヤはレーシングハード、ミディアム、ソフトの3種類を使用しなければならないため、2回のピットストップが必須となっている。スタート順位は、第1戦の結果を受けて決定のため、ポールシッターはR.Kokubun選手となる。

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 スタートは第1戦同様、R.Kokubun選手がホールショットを決め、そのまま後続を引き離す展開に。続く2位争いでは、スタート時に食いつきのいいソフトタイヤを装着していたT.Yamanaka選手が第1〜第2コーナーでJ.Wong選手のインに飛び込み、2位にポジションアップ。その後、そのまま膠着状態でレースが展開するかと思われたところ、1位のR.Kokubun選手がショートカットによる0.4秒ペナルティを受けることに。ストレートで強制的に0.4秒間のスロットルオフが科された結果、3位まで順位を落としてしまい、T.Yamanaka選手がトップに躍り出る展開となった。以降は2位:J.Wong選手、3位:R.Kokubun選手の順位のまま、レースは進行。このままレースが決着すると、1位、2位、3位が20ptと、同ポイントのまま最終戦を迎えることになる。レース展開的にも、このまま決するか……に見られたが、最終スティントで、T.Yamanaka選手がハードタイヤに交換したところ、J.Wong選手はソフトタイヤで猛チャージを仕掛ける展開に。残り2週でそのまま見事なオーバーテイクを見せ、J.Wong選手が逆転で第2戦を制す結果となった。

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第2戦の優勝選手は、J.Wong選手。「最初の週にR.Kokubun選手がペナルティを受けたので、これはチャンスと思い全力で走りました。レースの最後はみんなハードタイヤでペースが下がると思い、燃料が軽い状態ならソフトタイヤで勝負ができると思い、飛ばしました」と、J.Wong選手は戦略面まで考えての勝利であることを語っていた。

 ここで、ポイント上位3名に、最終戦の意気込みについて語ってもらうことに。それぞれのコメントは以下のとおり。
 T.Yamanaka選手「(第2戦は)最後、意地でも2位は死守したいと思い、守りきれました。最後は優勝して終わりたいです」
 R.Kokubun選手「とにかくひとつでもポジションを上げて、優勝を目指したいです」
 J.Wong選手「最終レースは、全力で挑みたいです」

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 最終戦となる第3戦の舞台は、富士スピードウェイ。19週という長丁場のレースで、タイヤ使用義務は第2戦と同様、レーシングハード、ミディアム、ソフトの3種類を必ず使用すること。使用するマシンはGr.1のため、これまでにないハイスピードバトルが期待されるが、それ以上にタイヤマネージメントが重要視されそうな展開が期待される。

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 現時点でのポイントランキング上位は、1位:J.Wong選手(22pt)、2位:R.Kokubun選手(20pt)、3位:T.Yamanaka選手(18pt)で、この3人は最終戦で優勝しさえすれば、ほかの選手の状況に関わらず優勝を決めることになる。
 今回、スタート時のタイヤはポールポジションのJ.Wong選手とT.Yamanaka選手がソフトを、R.Kokubun選手がミディアムタイヤを選択。T.Yamanaka選手は硬いタイヤでいかに序盤を食らいついていけるのか。3位のT.Yamanaka選手は早いうちにR.Kokubun選手を交わして、J.Wong選手に挑みたいところだ。

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 最終戦もローリングスタートのため、大きな波乱もなくレースがスタートを切られた。上位勢はそのままの順位で展開……していくかに見えたが、ミディアムタイヤのR.Kokubun選手が第1コーナーの起ち上がりでJ.Wong選手をかわして先頭に立つと、ホームストレートでT.Yamanaka選手が後続車の走行ラインをブロックし、コース外に追いやってしまったとのことで、3秒のタイムペナルティを受けるという波乱の展開に。T.Yamanaka選手は2周目のホームストレートでペナルティを消化した結果、4位に順位を落としてしまう。このまま優勝戦線から脱落するかに見えたが、3周目のホームストレートでスリップをうまく使い、3位にポジションを回復するも、上位の2台とはまだ5秒ほどの差がある状態。上位争いは、5周目にスリップを利用したJ.Wong選手がトップに浮上し、そのまま中盤戦に突入していった。

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 8周目の第1コーナーの飛び込みで、ふたたびR.Kokubun選手が首位を奪還。上位2台が激しい順位争いをくり広げている間にT.Yamanaka選手もひたひたと距離を縮めていき、気がつけば同一画面に捉えられる位置までポジションを回復し、レース終盤はこの3台による優勝争いの様相を呈していくことに。
 最後のスティントは、ソフトタイヤで逃げるR.Kokubun選手に対し、2位のJ.Wong選手と3位のT.Yamanaka選手はハードタイヤで追う展開で進行。14周目の第1コーナーでは、ついにT.Yamanaka選手がJ.Wong選手を捉えて2位浮上を果たすが、以降は2位、3位が激しいデッドヒートをくり返し、その間にR.Kokubun選手は徐々に後続を引き離していく。
 ソフトタイヤの消耗が心配されたR.Kokubun選手だが、後続勢のバトルに巻き込まれることなく、終始自分のペースで走ることができたためか、最終的には後続に約5秒の差をつけてフィニッシュ。“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア リージョンファイナル”初代チャンピオンの座を獲得した。

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 3戦を終えての最終的なポイント結果は、以下の通り。

  • 1位:R.Kokubun(44pt)
  • 2位:T.Yamanaka(38pt)
  • 3位:J.Wong(38pt)
  • 4位:S.Yoshida(26pt)
  • 5位:C.N.Latkovski(22pt)
  • 6位:Y.Shirakawa(20pt)
  • 7位:Y.L.Law(15pt)
  • 8位:M.Aimmons(12pt)
  • 9位:A.Wilk(11pt)
  • 10位:D.Holland(6pt)

※同ポイントの場合は、最終戦の結果で順位が確定

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見事、総合優勝を果たしたR.Kokubun選手は、「序盤から最終戦まで神経を研ぎ澄まし、汗だくになって疲れましたが、優勝した瞬間、その疲れが吹き飛びました」と、優勝のよろこびを語っていた。

 表彰式に移る前に、『GT』シリーズプロデューサーの山内一典氏が登場。「これまで何度か国際大会を行ってきましたが、公式戦の国際大会は今回が初めてです。今日、この日がe-モータースポーツのスタートです。僕はつねづね、優秀な選手がプレイしてくれて初めて、『GT』が完成すると思っていました。今日の戦いを見て、本当に『GT』を作ってよかったと思います。皆さんのがんばりが、僕と開発チームにエネルギーを与えてくれました」と、今回のレースを総括。表彰台に上がった上位3選手は、「表彰台に上がれて、すごくうれしいです。でも、すごく悔しい。ワールドファイナルは、今回と同じように全力で挑みます」(J.Wong選手)、「今回戦った人たちは仲間でもあり、ライバルでもあるので、その中でいい戦いをして、つぎこそは自分が頂点に立てるようにがんばりたいです」(T.Yamanaka選手)、「このような大会に参加したのは初めてですが、こんなところに立っていいのかなという思いと、うれしい気分でいっぱいです。ワールドファイナルは全力で取り組みたいと思います」(R.Kokubun選手)と、レースを終えての喜びと、ワールドファイナルに向けた意気込みを語っていた。

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『グランツーリスモ』シリーズプロデューサー 山内一典氏
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表彰台でよろこびを爆発させる3選手。

 表彰式では上位3名の選手にはそれぞれ優勝トロフィーが与えられ、さらに優勝者のR.Kokubun選手には、FIA グランツーリスモ チャンピオンシップのオフィシャルタイムキーパーである、TAG Heuerのウォッチもプレゼント。また、今回の大会に参加した全30名の選手が舞台に登壇し、全員に参加メダルの授与が行われ、記念すべき第1回e-モータースポーツ大会の初戦は幕を閉じることになった。

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今大会に出場した全参加選手
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ワールドファイナル進出を決めた10名の選手たち
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最後は優勝者のR.Kokubun選手を中心に、T.Yamanaka選手(左)とJ.Wong選手(右)

 今回のレースは、各国のトッププレイヤーが集結しているだけあり、激しいバトルや派手なクラッシュなどはほとんどなく、かなり上質なバトルが展開されていたが、一時も目を離せない展開は通好みのレースと言えるかもしれない。
 今回の決勝戦に進出した10名は、このあとに世界を欧米代表を相手にするワールドファイナルへの参加権が与えられるうえ、そこで優勝を遂げると、FIA主催レースの各カテゴリーの上位入賞者が表彰される、FIA表彰式(2017年はフランス・ベルサイユ宮殿で行われ、F1ワールドチャンピオンのルイス・ハミルトンや、WRC:世界ラリー選手権のチャンピオン、セバスチャン・オジェなども参加)で、いっしょに表彰されるという栄冠を手にすることができる。
 今回のファイナリストである10名は、この栄えある2018年FIA表彰式への参加挑戦資格を得ることになった。だが、今後も継続して“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ”は行われていくため、この先『GT SPORT』で腕を磨いていけば、この大会を見ているユーザーにも夢の舞台に立てるチャンスが訪れるかもしれないというわけだ。
 まずは第1回ワールドファイナルで、今回上位進出を果たした日本勢が、夢の舞台で活躍してくれることを期待したい。

  なお、白熱の決勝戦の模様は、以下の動画にて視聴が行える。これまでにないハイレベルなeモータースポーツバトルをぜひ、堪能してもらいたい。

 レース終了後、上位3名の選手と、山内氏にお話を聞く機会が得られたので、最後にその内容を紹介する。まずはJ.Wong選手、T.Yamanaka選手、R.Kokubun選手の3名。

−−レースを終えて、いまの気持ちを教えてください。

J.Wong選手 トップ3の目標を達成できて、すごくうれしいです。もし、もう一度ラストレースがあったとしたら、最初のコーナーは絶対にミスしないで、もっといいレースがしたかったです。

T.Yamanaka選手 今日を振り返ると、予選で少し失敗してしまい、その流れを最後まで戻せませんでした。つぎのワールドファイナルでリベンジできるようにがんばりたいです。

R.Kokubun選手 こんな舞台で優勝できて、本当にうれしいです。今回の優勝を誇りに、ワールドファイナルにも挑戦したいです。

ーー毎日、どのくらい練習をされているんですか?

J.Wong選手 時間があるときは4時間くらいです。忙しいときも、1時間は走るようにしています。

T.Yamanaka選手 僕は夜遅くまで仕事をしていることもあるので、2〜3時間の練習を週に2回くらいしています。

R.Kokubun選手 平日は基本的に2時間程度、休日は多くて4時間くらいやっています。

−−今回のレースで、いちばん印象に残ったところを教えてください。

J.Wong選手 1戦目で、T.Yamanaka選手との接戦が厳しかったですが、これがいちばんよかったレースだと思います。

T.Yamanaka選手 予選で最後の一周に賭けようとしていたんですが、時間配分をミスしてしまい、最後のアタックができませんでした。それがなければポールポジションを獲れていたんじゃないかって感触もあったので、それが残念でした。

R.Kokubun選手 最終戦ではタイヤ戦略の駆け引きがあり、抜きつ抜かれつの戦いになりましたが、それが熱かったです。

−−皆さんの『GT』歴はいつ頃からですか?

J.Wong選手 初めて遊んだのは5歳の頃、『GT2』からになります。

T.Yamanaka選手 僕は4歳のときに最初の『GT』を遊んでから、21年になります。

R.Kokubun選手 僕は3歳のときに『GT』を遊んでいましたが、本格的にプレイし始めたのは、『GT SPORT』からになります。

−−将来的に、本物のレーサーになりたいという気持ちはありますか?

J.Wong選手 いつか本物のレーサーになりたいと考えていますが、今日はその一歩を踏み出せたのかなと思っています。

T.Yamanaka選手 本物のレーサーになりたいという気持ちは持っていましたが、正直難しいなと思っているところもあります。でも、『GT SPORT』は誰でも参加できる分、ある意味本物のモータースポーツよりも競争率が高いかもと感じています。そんな世界でこうやって競争できることは僕にとっての生き甲斐です。また、これからの若い世代にもっとクルマを好きになってもらいたいので、そのための活動ができればいいなと思っています。

R.Kokubun選手 僕は免許も持っていないので、いまのところはesportsに全力で取り組んでいきたいと思っています。

−−世界大会に向けて、どのような戦略で挑みますか?

J.Wong選手 レースの状況は刻一刻と変わると思うので、その場の状況に合わせていければと思っています。

T.Yamanaka選手 今回は事前にある程度のシミュレーションをし、予備のプランも用意してレースに挑みました。ワールドファイナルでは相手の動き、走っている位置等をしっかり把握し、しっかり対応できるような確実な作戦を練り上げていきたいです。

R.Kokubun選手 とにかく、自分のペースを維持することがいちばんだと考えているので、周りの状況を見ながらも、ペースを保った走行を心掛けたいです。

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 続いて、山内氏にレースを終えての感想などを聞いてみた。

−−“FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2018 ネイションズカップ アジア・オセアニア リージョンファイナル”を終えての感想を聞かせてください。

山内 この選手権の構想は、僕らの手で未来のモータースポーツを作ろうということで、6年前にスタートしたのもです。それから5年の歳月を経て『GT SPORT』ができ、それから1年間各地で大会をやってきて、今日初めて公式戦を行いました。最初に構想してから長い時間がかかりましたが、それだけに今日この日を迎えられたというのは、本当にうれしいです。

−−いま、esportsが話題になっていますが、FIAと話を進めてこられた経緯を教えてください。

山内 もともとはFIAの皆さんからお声がけをいただいたことで始まりました。FIAは120年も前からモータースポーツをやってきていますが、彼ら自身がこの先の新しいモータースポーツを作っていきたいということで提案を受け、進めたものになります。スポーツをするためのゲームを作り上げていくのは時間がかかるもので、いまでもパーフェクトだとは思っていませんが、とにかくこうして始められたことは大きいと思います。

−−今回の決勝大会で活躍した選手たちを見て、どのように感じられましたか?

山内 『GT』のシステムであったり、グラフィックやサウンドは、スポーツをやるうえでは、裏方なんです。主役は選手です。今日は初めて大会に参加した選手が優勝しましたが、つぎの大会に出るときは、まったく別人のように成長していると思っています。スポーツには、そんな人を成長させ、輝かせる力があるんです。そういったことが今後起きていくと思うと、ゾクゾクしますね。

−−昨年『GT SPORT』をリリースして、1年でこれだけの大会の開催にこぎ着けました。ここまでの盛り上がりは想像していましたか?

山内 「こういう未来を作りたい」ということと、「実際にそれが起きる」ということはまったくの別物です。ただ、すごく大事なことは、そこで価値のあることが行われている。その事実が大事だと思っています。いま、その手応えは感じています。

−−ワールドファイナルでの日本人の活躍は期待していますか?

山内 『GT』の世界で、日本人のプレイヤーが高いパフォーマンスを持っていることは10年以上前からわかっていました。でも、これまではその腕前を披露するチャンスがなかなかありませんでした。でも、今回FIA公式戦が全世界規模で行われることで、日本人の選手が世界の舞台で活躍する舞台が整いました。今日のレースでは日本勢が強かったですが、欧米諸国にも強力な選手はたくさんいます。そんな中で、どんなレースを見せてくれるのか、いまから楽しみにしています。

−−現時点で、優勝予想国はありますか?

山内 先日、オーストリアで12ヵ国36名のオンライントッププレイヤーを招いたエキシビションマッチをやったのですが、そのときはハンガリーの方が優勝しました。イギリスもかなりの強豪国でした。また、日本人は単独で走っていると速いんですが、ヨーロッパの選手は競い合いのときの瞬間の判断が鋭いなどの特徴もあります。ですので、どこが勝つのか予想するのは難しいですね。

−−今後さらに大会を大きくしていくために、スポンサーをつけてプロ化を目指したり、賞金制の大会を開催するプランは考えていますか?

山内 僕らには最初から壮大なビジネスプランがあって、それを進めているという感覚はなくて、まず目の前にある「選手たちに楽しんでもらう」あるいは「それを見ているお客様に楽しんでもらう」ことから始めていく。いまはそのことに集中すべきだと思っています。僕はこれまで何度も言ってきていますが、いきなりF1やNBAのような高度な大会をやりたいわけではありません。今日参加した選手の方たちも、普段仕事をしながら、空いている時間で練習していると言ってましたが、本来のスポーツはそうあるべきだと思っています。スポーツって、つねに人生に寄り添って、たまに輝きを与えてくれる。まずは、そんな存在になれればいいなと思っています。

−−ずばり、10年後の『GT』はどうなっていますか?

山内 これまで『GT』は20年の歴史がありますが、それは実質的にビデオゲームの進化とともにありました。今後の『GT』の方向性は、今回スポーツを始めたことでもわかるように、グラフィックやサウンドの進化だけではなく、どうやって楽しんでもらうのかといった部分に注力しながら、変化していくと思います。

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