“ハルマ(天使)”、“ヴィータ(人間)”、そして“メギド(悪魔)”の3種族が重厚な物語を織りなす“フォトンドリヴン世界救済RPG”『メギド72』。リリースから約9ヵ月が過ぎ、1周年に向けてさらなる盛り上がりを見せる本作を手掛けたふたりのクリエイターに、インタビューを行った。プロデューサーの宮前公彦氏と、ディレクターの宍倉紀春氏が、『メギド72』のこれまでとこれからを、熱い想いを込めて語る!

ファンも運営も尋常じゃなく熱い! 『メギド72』開発者のこだわりと想いに迫るインタビュー_03

宮前公彦(みやまえきみひこ)

 DeNA所属、『メギド72』プロデューサー。スクウェア・エニックスでデザイナーとして活躍後、モバイルゲームの開発・運営に携わる。2014年にDeNAに入社以後は、本作の立ち上げ時からプロデューサーとして活動している。

宍倉紀春(ししくらきはる)

 メディア・ビジョン所属、『メギド72』ディレクター。スマートフォンRPG『マジック&カノン』(現在は配信終了)でプログラマーを担当。『メギド72』でも、開発当初はシステム設計を担当していたが、途中からディレクターに抜擢された。

こだわり抜いて作った意欲作、それが『メギド72』!

――まずはDeNAとメディア・ビジョンの2社が手を組んだ経緯と、お互いの強みがどう活きているかを教えてください。

宮前 開発前の段階で、DeNAとしてはオリジナルのヒット作を作りたいという思いがあり、メディア・ビジョンさんと新作を作ろうということもすでに決まっていました。そのタイミングで、DeNA側のプロデューサーとして僕が入りました。DeNAは、データを分析したり、プレイヤーの動向を見て中長期のゲームデザインを設計することに関しては比較的長けているので、強みを挙げるならそこだと思います。対してメディア・ビジョンさんは、開発技術もあるし、音楽もストーリーも作れるオールマイティーな会社で、組めばお互いの強みが活かせると思いました。

宍倉 メディア・ビジョンの強みは、技術力や、ゲームをしっかりと作り上げるノウハウです。僕らがずっと家庭用ゲームを作って培ってきた技術力を使えば、家庭用のクオリティーのゲームをスマートフォンのサイクルで作れるという自信はありました。ただ、やはりフリー・トゥ・プレイでのビジネスの経験が浅くて。今回、DeNAさんにそこはお任せしつつ、運営のコツをDeNAさんから学ばせていただいています。『メギド72』では、お互いの強みがきちんと噛み合いましたね。

――スマートフォンのゲームはトレンドの移り変わりが激しいですが、先を見越してゲームをデザインする難しさはありましたか?

宮前 世の中のトレンドよりは、自分たちが楽しいと感じて作っているものを、皆さんにおもしろいと思ってもらえるように出す、ということを最優先に考えています。

宍倉 そうですね。『メギド72』という世界は、自分たち作り手とプレイヤーの中の世界観があるので、「その中でのトレンドをどう作るか?」ということが大事だと感じているんです。『メギド72』の世界の中だったら、僕らはトレンドをある程度把握できるし、みんなが喜ぶものを先取りして感じることもできる。だから、世の中のトレンドを追い掛ける必要はあまりないと、関係者のあいだでも話しています。

――システムなどは、最初からいまの設計を目指して開発していたのでしょうか?

宮前 いや、作っては壊し、新しく作ってはまた壊し……というくり返しでした(苦笑)。

宍倉 システム設計は固定概念との戦いだと、僕は強く感じています。たとえば、「スマートフォンゲームのプレイヤーはストーリーを読まない、音楽も聴かない傾向が強い」といったアドバイスも受けました。そのような固定概念を、いかに跳ねのけるか。僕らは、「いいものを作れば正しく評価してもらえる」という意志を持って、真剣に取り組みました。

宮前 僕も、宍倉さんの姿勢や思想はいいと思っています。実際、物語を読まない人は読まないのですが、逆に言うと、しっかり読む人は物語が好きな人だから、その人たちが満足できるお話にしなくてはいけないんです。ヘッドホンをして遊ぶ人であれば音楽にすごくこだわるから、その人たちが満足できる音楽を作る、といったことも、家庭用ゲームの制作以上に気を遣うような心構えで取り組みました。

――ゲームのリリース前とリリース後で、本作に対しての感じかたは変わりましたか?

宮前 やっぱり変わりましたね。当初はバトルゲームを作っているつもりだったので、システムには力を入れていました。ですので「どの層を取りにいくの?」と聞かれたら、確実に「バトルがおもしろいという人たちです」と言っていたんです。ですが、ここ最近は女性ファンが増えてきたりもして。RPGは女性ファンもつきやすいので、女性層も取れればいいなとは思ってはいましたが、いざふたを開けてみると要所要所、いろいろな部分で男女ともに受け入れてくださっているように見受けられるので、そこはリリース前といまでは、少し感じかたが違いますね。

宍倉 いいものを作れば、プレイヤーも理解を示して、いいという評価をしてくださる方もいるんだということはすごく感じましたね。作る前は「これ、ムダなんじゃないか?」とか、「このゲームに求められているものはこれとは全然違うものなんじゃないか?」という迷いがあった部分も多かったのですが、いまは「これはおもしろい!」と思って作ると、ちゃんとそれが届いているという実感があります。

――本作の特徴“ドラフトフォトンシステム”が生まれたきっかけも気になります。

宮前 2016年の8月にオープンβテストを行ったのですが、そのときはまだ、バトルのキャラクターを球のように表示して、それが飛んでいって攻撃しているように見せるという、抽象的な表現でした。それに対して多くのプレイヤーから、「3Dのキャラクターだったらもっと楽しいのに……」などとご意見をいただき、それを受けて3Dに作り直すということがあったんです。その際に、一部のプレイヤーから「おもしろいけど既視感がある」とも言われていたので、どうせならバトルそのものももう一度設計し直そう、ということでできたのが、ドラフトフォトンシステムです。フォトンという言葉もストーリーで出てくるので、場にあるフォトンという資源をうまく取り合うことで戦闘が進む仕組みができないか、と宍倉さんが提案してくれて、試行錯誤しながら作り上げていきました。

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戦闘はターン制で、画面中央の“フォトン”を敵味方で交互に取り合い、フォトンを取った人物が素早さの高い順に行動する。戦況をよく見て、どのフォトンを優先し、誰に与えるのかを吟味するのが醍醐味だ。

――3種類のフォトンのバランス調整は、すごくたいへんだったのではないでしょうか。

宮前 メッチャたいへんでした(笑)。

宍倉 当初から、“ラーメンを食べながら片手で遊べる思考型戦略バトル”にしたいと宮前さんがよく言っていました。プレイヤーをあまり悩ませすぎると、プレイしなくなってしまう。でも、じっくり思考させるおもしろさはきっとあるはずだ、という葛藤がありましたね。ライトさを保ちつつ、遊ぶ人ひとりひとりに対して思考の深さをどの程度求めるか、落としどころを探っていました。その時期に、僕の周囲でしっかり思考するゲームが盛り上がっていたので、「やはりみんな、戦略を練ることが好きなんだ」と感じたこともあり、思い切ってしっかり思考させるものに仕上げていきました。

宮前 たとえば、将棋はおもしろいですが、ガチの対局をやるとすごく時間が掛かりますよね。思考時間も長いですし。勝ったときは達成感があるけれど、終わってすぐにもう1局やりたいとはあまり思わない。継続的に遊ベるバランス感と、心地いい疲労感の両方をどう維持するかは悩みましたね。ザコ戦を軽めにしたり、ボス戦を少し重くしたりといった、バランス調整がしやすいシステムを作ろうという話は、スタッフ内でよくしていました。

宍倉 途中で、「ひょっとしてリアルタイム制もアリなんじゃないか?」という考えがよぎったこともありました。ですが、先ほどの“ラーメンを食べながら”にたとえると、リアルタイム制は片手で遊ぶのには適さないですよね。そういった細かい部分をすごく気にしながら、ひとつひとつ手探りしていました。

宮前 僕はずっと「ターン制でやろう!」と話していましたから(笑)。結果的にいまのバトルは、忙しすぎない感じで気に入っています。

――そうしたバトルに大きく関わってくる“マスエフェクト”のシステムなども、最初から考えられていたのですか?

宮前 マスエフェクトは、いまのゲームができあがったときにいっしょに作りました。編成があり、バトルへ進むという流れは、最初から決めていたんです。

宍倉 編成とバトルという、要は考えるポイントをふたつ作りたいという思いから来ていますね。これは宮前さんも最初からおっしゃっていたことですが、マスエフェクトはデッキ編成で何分でも、それこそもう1時間でも悩みたくなるようなものを目指して生み出されたものです。ただ、正直、慣れるまではわかりにくい要素でもあるので、「これほど複雑にしてしまって大丈夫かな?」という懸念もありました。ですが、そのぶんパーティー編成の悩みどころというか、考える楽しさにつながるかな、と。

――確かに、遊ぶうちに慣れてきて、配置をしっかり考えて効果を活かせるようになったときは感動しますね。マスエフェクトの効果とメギドの能力、その組み合わせかたを理解すると、編成を練る楽しさが増えました。

宮前 そうやって配置などを意識したり、マスエフェクトとメギドをどう組み合わせるか吟味するのも、『メギド72』のおもしろさです。まさにそうした気付きや、いろいろ組み合わせを考える楽しさも味わってもらえたらうれしいですね。