玩具を始め、アニメやゲームなどへと拡がりを見せる『デジモン』シリーズ。ゲーム作品の新機軸としてNintendo Switchとプレイステーション4向けに開発中の『デジモンサヴァイブ』は、これまでの作品とは異なる世界観、ゲームシステムが盛り込まれている。本作のふたりのプロデューサーに、新生『デジモン』に込められた想いを語っていただいた。

『デジモンサヴァイブ』プロデューサーが語る新生『デジモン』の魅力とは?_04

羽生和正(はぶかずまさ)

数々の『デジモン』シリーズ制作に携わってきたチーフプロデューサー。本作でも現場の先頭で指揮を執る。

都築克明(つずきかつあき)

本作で初めて『デジモン』シリーズ制作に関わるプロデューサー。若手ならではの着眼点で本作の開発に注力。

新しい中に懐かしさも? 新生『デジモン』の魅力に迫る

――まずは本作のコンセプトや、開発の経緯、きっかけなどを教えてください。

羽生 ここ最近では『デジモン』のゲームは『デジモンストーリー』と『デジモンワールド』の二軸で展開してきました。そんな中、新しいシリーズを立ち上げることとなり、アニメで描かれていたような、人間とデジモンの心のつながりや成長によって、デジモンが進化していく要素を、ゲームで再現してみたいという発想が企画のきっかけですね。

都築 新しい『デジモン』のゲームを制作するにあたって、これまでのシリーズとは違う切り口で作れないかなということも、制作のきっかけのひとつですね。そうして生まれた本作のアドベンチャーパートは、わかりやすいライトな遊び感にすることで、物語の体験が手軽に楽しめるようにしています。そのうえで、戦闘パートはシンプルで王道なシミュレーションRPGとしました。なじみのあるゲームシステムで、『デジモン』の魅力を表現したいというのが、今回のコンセプトのひとつになっています。

『デジモンサヴァイブ』プロデューサーが語る新生『デジモン』の魅力とは?_01

――細かい独自システムが満載というよりは、バトル部分はわかりやすさ重視という感じになると?

都築 そうですね。バトルに関しては凝ったことはせず、オーソドックスなシステムを組もうと考えています。そのほうが、大勢の人に遊んでもらいやすいですから。

羽生 アドベンチャーゲーム+シミュレーションRPGは、『デジモン』のメインターゲットである25~30歳のゲームユーザーには慣れ親しんだ王道なジャンルかと思います。いまでいうと少し古臭いシステムかもしれませんが、逆に言うと説明をしなくても、だいたいのイメージが掴めるジャンルでもありますので、新しいシリーズとしてゲーム内容を理解してもらい易いかと考えています。もちろん、“進化”といった『デジモン』ならではの要素を入れることで、『デジモン』ならではのオリジナリティを出そうと考えています。

――シリーズの中で『サヴァイブ』はどういった立ち位置になるのでしょうか?

羽生 新しい『デジモンストーリー』もプレイステーション4ベースで開発中ですが、開発にはまだまだ時間がかかってしまいます。近年のハードスペックの向上や、ワールドワイドへの対応など行うと、1作品の開発に非常に時間がかかるようになっています。そうなると、来年や再来年はまったく展開のない状況が続くことになってしまうんですよ。コンテンツがない期間が続くと、大抵の人は興味が薄れてしまいます。ですので、そうならないようになるべくコンスタントに『デジモン』というキャラクターをゲームで届けていくことで、ファンの方を掴んでいきたいと思っています。まずは新たなコンテンツとして『デジモンサヴァイブ』をご提供させていただこうと。『デジモン』は最初の液晶ゲームでの人気はもちろん、テレビアニメが放送されたときにキャラクターとしての知名度が広がったということもあり、そこから入ってきたファンも含めるとコアなファンの方からライトなファンの方まで非常に多くいらっしゃるんです。ですので、継続的に『デジモン』を追いかけてくれているファンの方以外にも、久々に『デジモン』に触れる方、まったく知らない方が遊んでも楽しめるように、本作ではオリジナルの世界観を用意しています。そうすることで幅広い層のファンを取り込んで、本作が新しい軸としてシリーズ化できればうれしいですね。

――確かに、『デジモン』は幅広いファンがいる、息の長い作品ですよね。新しい作品ということで、期待している人も多いと思います。

都築 そうなんです。ただ、ライト層というか、昔アニメを見ていた子どもたちの中には、『デジモン』から離れてしまっている人も多いです。今回は、そういう人たちをいかに呼び戻せるかも課題ですね。

――『サヴァイブ』というネーミングは、生き残りを懸けてという部分からですか?

羽生 はい。今回は異世界に迷い込んだ子どもたちが、現実世界に帰るために冒険するという話が軸になっています。率直にゲームコンセプトを伝えるにあたり、“サヴァイブ”という言葉がわかりやすいかなということで、今回のタイトルになりました。

――本作では“選択”が重要になるとのことですが、どのようにストーリーに関わってくるのか教えてください。

羽生 アドベンチャーパートではさまざまなエリアに移動して、そこにいるキャラクターと話したり物を調べることで、いろいろな情報を得られて物語が進行していきます。物語の中で主人公はさまざまな状況下に置かれ、そこでどんな選択を取るかで物語が変わっていきます。選択によっては死んでしまうキャラクターが出たりなど、アニメではなかなかできなかった展開も発生したりします。サバイバルの緊張感を、本作では“選択”というシステムに含めた形で体験できるようになっています。

――進めかた次第で死者が出てしまうというのは驚きですね!

都築 子ども向けアニメでは難しかった表現も、ゲームならできるのかなと。危険なモンスターがいる世界に人間、しかも子どもが迷い込んだらふつうはきっと殺されちゃいますから(笑)。そうした面でも、本作の選択は重要ですね。

――確かに(笑)。ちなみに、エンディングはマルチ方式に?

都築 そこまで多くの分岐があるわけではないですが、細かな選択肢の蓄積によって、途中からシナリオ分岐が発生する仕様になっています。現状では大きく分けて3ルートを想定していて、プラスαのルートも用意できればいいなと考えているところです。

『デジモンサヴァイブ』プロデューサーが語る新生『デジモン』の魅力とは?_02

――バトルパートにおいても、選択肢で変化する要素はあるのでしょうか?

都築 そうですね。たとえば物語の中で“仲間を助けることを優先する”のか“直接自分が敵を倒しに行く”のかなど、選んだ選択に応じて、敵や味方の状態だったり、勝利条件が変化するなどの展開も想定しています。

――戦闘でのモンスターたちの“進化”はどういった形で表現されるのでしょうか?

羽生 戦闘中は“エナジー”を消費することで進化を行います。いままでのゲームだと、進化したら基本的に進化しっぱなしでした。今回は、アニメでもあったように、進化することでエネルギーを消費して、エネルギーがなくなったら元に戻るという進化のマネジメント要素をゲーム中にも取り入れています。ですので、たとえばアグモンを戦闘中に進化させても、戦闘が終了すると成長期のアグモンの姿に戻ります。

――敵も進化したりするのでしょうか?

羽生 基本的にはしないです。イベントで進化する敵もいます。

――なるほど。それと、エナジーは、進化の要素にだけ関わってくるのですか?

都築 いえ、進化のほかに必殺技を使う際にもエナジーを消費します。また、本作では敵の属性値が見えるので、ちゃんと弱点の属性で攻撃したり、仲間との会話やサポートなど、戦闘中のいろいろな行動によってエナジーが回復するようになっています。いかにエナジーをマネジメントして進化を継続しながら敵を打ち倒していくかが鍵となりますね。そういう要素とは別に、ひたすらレベルアップをすれば最終形態まで進化させずともモンスターを強くすることはできますが、そこはあくまでやり込み要素です。

羽生 主人公の進化の発生タイミングはシナリオに合わせて強制的にどんな進化が出来るようになるかは、シナリオの選択肢によって異なるようになっています。戦闘は敵との属性での有利不利がありますので、そういう意味でも本作は、選択が大きな鍵となりますね。

――たとえば進化後に退化して、別の進化形態にすることはできるのでしょうか?

羽生 選択肢の回答の蓄積でも進化のルートが解放されるので、可能といえば可能です。ただ、1度のプレイで全進化のルートが開放されることはありません。周回プレイ時に進化の条件の蓄積は引き継ぐので、ぜひ周回して遊んで、いろいろな姿で遊んでいただけたらと思います。

『デジモンサヴァイブ』プロデューサーが語る新生『デジモン』の魅力とは?_03

――そうした進化も含め、登場する総数も気になるところです。それと、本作で初登場となるモンスターや、新しい進化を遂げるモンスターはいますか?

羽生 初登場や新たな進化を果たすモンスターがいるかどうかはまだナイショで……(笑)。モンスターの総数は100体+αという感じです。最近のデジモンゲームの中では少ないほうだと思いますが、『デジモンストーリー』では、たくさんのモンスターを集めて楽しむことに重きを置いていた一方、今作ではパートナーのモンスターとのドラマを描いていくことに重きを置いたため、企画コンセプトが他のシリーズと違っており、ゲーム性としてモンスターの数を重要視していません。それよりも、世界観の雰囲気に合ったモンスターをチョイスすることを優先しています。今回の舞台は、デジタルな要素はあまりなく、自然の多い廃墟の無人島のような場所が舞台となっており、そうした世界観に合うモンスターに絞っています。ちなみに野生のモンスターの中には、条件を満たすことで仲間にできるものもいます。そうしたモンスターを自分で育てる楽しみもありますよ。

――登場するモンスターを予想するのも楽しそうですね。最後に『デジモン』ゲームの今後についての展望や意気込みをお聞かせください。

羽生 今後も、ゲームは独自で『デジモン』の世界観をしっかり広げていけたらいいなと思っています。『デジモン』はアニメや玩具などシリーズが多いタイトルになっており、とても複雑化しています。ですので新しい人が入りにくい状況かもしれませんが、ゲームの分野では『デジモン』を知らない人が遊んでも、ゲームの中で知ることができて楽しめる……。そんな作品をお届けしていきたいと考えています。また、だいぶ先の話になってしまうと思いますが、オンラインを活用したデジモンのゲームも考えていければと思っています。ただ、ゲームが複雑になるほど敷居が高くなってしまうので、僕としてはライトな人でも楽しめるゲーム性や遊びやすさを大切にしたいですね。もちろん、表現やキャラクター性、世界観というのをもっと魅力的に作っていけるような意識も、大切にしていこうと思っています。

都築 まずは『デジモンサヴァイブ』をしっかり遊んで、楽しんでもらえたらうれしい
です。僕自身もアドベンチャーゲームやシミュレーションゲームが好きでよく遊んでいますし、デジモン誕生時の直撃世代でもあるんですよ。ターゲットにしている世代のユーザーさんが遊びやすいもの、手に取りやすいものなどを、ある種のファン目線を持ちつつ鋭意制作中ですので、これからも『デジモン』の応援をよろしくお願いします。

羽生 僕自身、シリーズに長く関わりすぎていて、視点がどんどんマニアックなファン視点になってきているんですよ。それにどうしても自分の考えが強く出てしまう。僕自身、まだまだデジモンゲームには関わるつもりでいますので、都築プロデューサーには僕の真似をするのではなく、「こういう『デジモン』のゲームを作ったらおもしろいんじゃないか」という、自分ならではのデジモンゲームを企画してほしいですね。ファンも新しいものを求めている部分があると思うので。そうやって、これからも『デジモン』の世界がどんどん広がっていくといいなと感じています。

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