スクウェア・エニックスのMMO(多人数同時参加型オンライン)RPG『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の初となるPvP(対人戦)公式大会“The FEASTリージョンチャンピオンシップ 2018”が開催中。本稿では、2018年9月8日、9日の2日間で行われた、日本リージョンのALIENWARE Presents The FEASTリージョンチャンピオンシップ セミファイナルの模様をお届けしていく。

『FFXIV』初の公式PvP大会のセミファイナルの模様をリポート! 実況・解説の岸氏と森口氏の独占インタビューも!!_03

 本大会は、『FFXIV』の4人対4人のPvP戦が楽しめる“ザ・フィースト”を用いた公式大会で、日本、北米、欧州という3つのリージョンでチャンピオンチームを決めるというものだ。2018年7月3日よりすでにオンライン予選が実施されており、そこで好成績を残した上位チームがセミファイナルに進出。見事、セミファイナルを勝利したチームは、各リージョンで開催されるファンフェスティバルに招待され、そこで初代リージョンチャンピオンの座をかけて戦いをくり広げる、というのが大まかな流れとなっている。

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 今回行われたセミファイナルは、オンライン予選を勝ち抜いたElemental、Gaia、Manaの各データセンターの上位3チームによる総当たり戦。BO3(2本先取で勝利)のルールで、決勝進出を巡り、白熱した戦いをくり広げた。

 セミファイナルの模様は、すべてストリーミングで配信。『FFXIV』のPvPを応援する公式番組『ALIENWARE Presents アドレナリンラッシュTV』(以下、『ARTV』)でもおなじみのプロジェクトマネージャーの森口翔太氏、ゲームキャスターの岸大河氏が実況・解説を行い、試合を大いに盛り上げた。

『FFXIV』初の公式PvP大会のセミファイナルの模様をリポート! 実況・解説の岸氏と森口氏の独占インタビューも!!_01
ゲームキャスターの岸大河氏(左)と、『FFXIV』プロジェクトマネージャーの森口翔太氏(右)。

 データセンターごとに行われたセミファイナルの結果は以下の通りだ。

◆Elemental
Regicide 2-1 Black Thunder
Arc'iris 2-0 Black Thunder
Arc'iris 2-0 Regicide
勝利チーム:Arc'iris

 予選ラウンドを89.5%という圧倒的な勝率で予選を勝ち上がったArc'irisが、PvPではあまり見られない召喚士を投入。予選2位のRegicide、予選3位のBlack Thunderを2-0のスコアで下し、見事にファイナルへの切符をつかんだ。
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◆Gaia
Team-ODAMARI 0-2 Dark-Knight
Dark-Knight 2-1 Waffle Waffle
Waffle Waffle 2-1 Team-ODAMARI
勝利チーム:Dark-Knight

 予選ラウンドでは3位だったDark-Knightが予選2位のTeam-ODAMARIを下すと、そのままの勢いで予選1位のWaffle Waffleとの大接戦をくり広げる。お互い一歩も譲らない展開だったが、最後はDark-Knightが押し切り、ファイナル進出を決めた。
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◆Mana
Outrage 2-0 Nerf PLD
勝利チーム:Outrage

 予選ラウンドで3位だったチームが出場を辞退したため、2チームでファイナルの出場権を争うことになった。Outrageはモンクと吟遊詩人、対するNerf PLDは忍者と機工士と、ほかのデータセンターでは見られなかったジョブ編成での戦いが展開。瞬間的な火力を出すことに秀でた構成のOutrageがその強みを活かし、Nerf PLDを2-0で下してファイナルへの出場権を獲得した。
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9月15日の敗者復活戦に注目!

 Elementalデータセンターの試合では、ナイトの起用やDPSのアディショナルアクションのチョイスも含めて“守り”を意識した構成が多く、一方のGaiaデータセンターの試合では暗黒騎士がスタンスを積極的に切るなど、超攻撃的な展開が印象的だった。Manaデータセンターではほかのデータセンターでは見られなかったDPSジョブが活躍を見せるなど、それぞれでジョブ編成や戦術などに大きな違いが見られた。そのあたりは森口氏、岸氏によってわかりやすく解説されているので、ぜひとも配信アーカイブをチェックしてほしい。

 このセミファイナルを1位で通過したチームは、2019年3月24日のファンフェスティバル 2019 in 東京で開催されるファイナルへの出場が決定。また、それぞれのデータセンターでの2位のチームは、9月15日に行われる敗者復活戦で、ファイナル出場の最後の1枠を巡って争うことになる。敗者復活戦はデータセンターの枠を越えて行われ、事実上、データセンター対抗戦とも言える。見応えのある試合になることは間違いない。もちろん、この敗者復活戦の模様も配信されるので、気になる人はぜひ試合の結果を見届けよう。

実況・解説のふたりに直撃インタビュー

 日本リージョンのセミファイナルを終えた直後に、試合の実況と解説を担当したプロジェクトマネージャーの森口翔太氏、ゲームキャスターの岸大河氏にインタビューを実施。セミファイナルの感想からPvPに対する熱い思い、岸氏と『FFXIV』の出会いまで、大いに語ってもらった。

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岸大河氏(きしたいが)

フリーランスのゲームキャスター。元トッププレイヤーという経歴を活かした、選手の目線を分かりやすく伝える実況が評価され、東京ゲームショウやニコニコ超会議では毎年多数の企業ブースに登壇。『ALIENWARE Presents アドレナリンラッシュTV』にもレギュラー出演中。

森口翔太氏(もりぐちしょうた)

スクウェア・エニックス所属。『ファイナルファンタジーXIV』プロジェクトマネージャー。『FFXIV』のPvPを応援する公式番組『ALIENWARE Presents アドレナリンラッシュTV』などで活躍中。

――まずは、日本リージョンのセミファイナルを終えての感想をお聞かせください。

森口わかってはいましたが、データセンターによってぜんぜん特徴が違うなと。ジョブ構成や戦術を含めて、各データセンターですごく色が出ているなというのが、今回のセミファイナルを通していちばん強く感じた部分ですね。

――データセンターごとに展開がまったく違いましたよね。

森口いままではモンクや吟遊詩人といった、瞬間的な火力を重視した構成が多かったんです。でも、プレイヤーのあいだでたくさん研究していただいたこともあって、セミファイナルでは瞬間的な火力だけではない構成、そして戦術をいろいろと見させていただきました。これは本当にありがたいなと。

アディショナルアクション(選択式のアクションのこと)もそうですね。とくにElementalは特徴が出ていて、ほとんどの人が“堅守(被ダメージ25%軽減)”と“快気(最大HPの25%分を回復)”という完全に防御寄りの組み合わせでした。そんなディフェンシブな相手でもバースト(瞬間火力を出すタイミングとターゲットを合わせて、一気に相手のHPを削ること)で倒し切っていたし、スタンされる前提で動いていたり、しっかりと考えられているなと。

――すさまじい連携で敵を倒していましたよね。

もしかしたら、そういうところがほかのデータセンターよりも一歩先にいっているのかもしれません。彼らが別のデータセンターのチームと戦ったときにどうなるのかというのも気になります。

――果たしてGaiaのチームの猛攻をしのげるのかどうか……。

あと、Manaの試合で遠隔DPSが“集中(スタン、睡眠、バインド、ヘヴィ、スロウ、沈黙、ノックバックを一度だけ防ぐ)”をセットしていたのも印象的でした。ほかのチームにはない、自分ならではの考えかたを持っていて、人に流されずに新しい流行を自分から作っていこうという考えを持つチームを見られたのもよかったです。この戦術が流行っているから使う、という雰囲気になっていないのがうれしいですね。

――データセンターごとのカラーが出るというのは、トッププレイヤーたちの影響も大きいのでしょうか。

森口そうですね。自分の所属しているデータセンターの上位ランカーの方が使っているジョブに憧れて、同じジョブを使うというプレイヤーの方も多いと思います。そういった背景もあって、各データセンターでよく使われるジョブの傾向というものが生まれるんでしょうね。

――同じゲームを同じ国の人がプレイしているのに、違いが生まれるのはおもしろいですよね。実際、“守り”のElemental、“攻め”のGaiaでしたし。

Elementalの試合の後に、Gaiaの試合を見たときは衝撃的でした。「これは見たことがない展開だ」って(笑)。

森口実況や解説をする側からしても、ElementalとGaiaで試合展開が違いすぎて、まったく別のゲームを実況しているかのようなイメージでした。

Gaiaの試合では、お互いのチームの暗黒騎士が前面に出ることによって、戦う場が大きく広がっていたんです。だから、カメラでも追いづらくて、見ている場所とは違うところでノックダウンが発生していたり、かなり複雑な戦況になっていました。戦っているプレイヤーからしたら、すごく判断が難しかったんじゃないかなと。

――セミファイナルでは数多くの名シーンが生まれましたが、気になったプレイはありましたか?

森口特定のシーンというわけではないのですが、アドレナリンラッシュ(以下、AR)を使うタイミングが、戦局を大きく左右する要因のひとつになっていたと感じました。いままではそこにあまり意識が向けられていなかったんですけど、より重要になっているなという印象ですね。

僕の中では、とくに近接DPSとタンクのARが重要だと思っていたんです。ですが、いざセミファイナルの試合を見てみると、遠隔DPSのARが活躍しているシーンも多々見られました。遠隔DPSのARは、パッチで修正が入ったりして、なかなか扱いが難しいのですが、それを適確に当てていた。ウルフハート(試合中、特定の時間に出現するボックスから得られる強力なバフ)のボックス出現直前にARを使って、出現と同時に着弾させていたり、「そういう使いかたがあるのか!」と思わせるコンビネーションもあって。しかも、それがすべて敵のノックダウンにつながっているんですよ。

森口最近は相手のイージスブーン(タンクのAR。自身と周囲の味方の被ダメージを25%軽減するバフを付与)の効果が切れるタイミングでバーストするというのがセオリーになっているんですけど、切れる直前にキャスターのARで被ダメージ上昇のデバフを付与しているチームがいて、すごく印象に残っています。うまい連携だなと。

――運用法も高度になってきていますよね。黒魔道士のナイトウィング(睡眠効果のあるアクション)からのARも綺麗に決まっていました。

イージスブーンは、使うタイミングも重要ですね。デンジャータイム(一定時間、戦闘不能者が現れないと、被ダメージ上昇のデバフが全員に付与される)のスタック4で相手チームが使っても、必死にしのいで自分たちはスタック5になってから使うというチームもいて。言葉にすると簡単ですが、スタック4の時点でも被ダメージ上昇の効果はすさまじくて、ふつうはあんなに我慢できない(笑)。あの判断は、僕らにはできないですね。

森口だいたい、相手のチームがイージスブーンを使ったら、こちらが一方的に不利な状況になるので、イージスブーンをかぶせることが多いです。

イージスブーンを使った側は、なんとか効果があるうちに相手を沈めたいけど、効果が切れてしまうともう絶望しかない。自分たちのデバフのスタックは5、相手はイージスブーン発動ですから(笑)。あとは、ElementalのArc'irisで近接DPSを担当していたCondolさんの、“集中”を入れてからのバーストが早すぎて、追い切れなかったシーンがあったのも印象的でした。“集中”のクールダウンが見えた瞬間に相手が倒れていて、いったい何が起こったのかと……(笑)。Arc'irisは、ほかにも近接DPSがARを使うタイミングで、ナイトが“かばう”を使ってCC(Crowd Controlの略。相手の動きを封じるようなアクションを指す)をタンクが肩代わりしていました。

森口意図的にやっていたのかはわからないですが、ナイトの“かばう”をうまく活用して、自由に近接DPSが動けるという状況、言わば疑似的に“集中”の効果を生み出していましたね。

それ以外にも、ナイトの“かばう”をちょい出しして、相手の気をそらしたり、いろいろな戦術が見られました。

――Manaの試合では、同点で残り時間が1分を切ったタイミングで、ARを活かして勝ち切ったシーンもありましたよね。

あのレベルになると、近接DPSがARを撃つタイミングをわかっているので、うまい人だと対応できちゃうんですよ。それでも、すぐさま別にターゲットを移してノックダウンするというのが、一枚も二枚も上手だったのかなという印象がありました。

――惜しくもセミファイナルで2位になってしまったチームは敗者復活戦に出場するわけですが、今回、敗者復活戦の仕組みを入れた経緯を教えてください。

森口『FFXIV』はグローバルなタイトルということで、ルールに関しては極力統一させたいという方針がありました。リージョンごとにデータセンターやワールドの数を考慮して、ファイナルに進出するチーム数を決めていき、日本リージョンでは4チームが適切だろうという話になったのですが、日本のデータセンターは3つです。「あと1枠をどうする?」となったときに、やはりルールの統一を重視して、4枠目は敗者復活戦で決めようと。それが、敗者復活戦を導入した経緯になります。

――なるほど。3つのグループからストレートに4組を選出するには、勝敗以外の評価軸(スコア差、キル数、試合時間など)が必要になりますものね。

森口さらに言えば、いままでデータセンターを越えて試合を行うことがなかったので、いい機会だなと。

――ファイナルの前に、データセンターを越えた試合が展開するというわけですよね。これは、相当意味のある前哨戦になるのでは?

森口もしかしたら、敗者復活戦をきっかけにして、いろいろな対策が始まりそうですよね。

結果によって悔しがるデータセンターも出てくるでしょうし、交流戦のようなものをやりたいという声も挙がってくると思います。データセンターを背負って戦いたいと。それが視聴者にも伝わっていけば、エキシビションマッチなども実現できていくのかなと。

ゲームキャスター・岸大河と『FFXIV』の出会い

――試合中はわかりやすい解説を交えて熱い実況をしてくださっている岸さんですが、そもそも『FFXIV』のPvPとの出会いはいつだったのでしょうか?

まず、『FFXIV』のプレイを始めたのは2014年の9月ごろですね。友だちに誘われてプレイを始めました。もともと僕はMMORPGが大好きで、15〜16歳のときからずっとプレイしています。『FFXIV』は基本的にひとりで遊んでいて、始めてから1ヵ月ぐらいで極蛮神討滅戦をクリアーしました。けっこうガチでプレイしていたんです。

――当時の状況で、1ヵ月で極蛮神クリアーとなると、日常生活の時間配分に調整が必要だったのでは?(笑)。

ですね(笑)。ただ、それからいろいろと忙しくなって、『FFXIV』から離れた時期もありました。そんな中、TOKYO MXの『eスポーツMaX』という番組で、「ウルヴズジェイルの大会をやるから、実況をしてくれないか」というオファーを受けたんです。でも、そのときはあまり満足にプレイできていなかったうえに、PvPの仕様もいまと違って、ある程度のやり込みが必要なものでした。

――当時はレベル上げはもちろん、ランク上げ、装備収集、ビルドもホットバーもPvP用にカスタムする必要がありましたからね。

けっきょく、ほぼ“無”の状態でウルヴズジェイルの大会の実況をしたんです。それはもう、僕の中では不完全燃焼でした。

――とても満足いくものではなかったと。

そのときのスタッフの方々の『FFXIV』に対する姿勢があまりに真摯で、「自分はこの現場にいちゃいけない」と感じたほどでした。仕事はお請けしたものの、100%の力を出せなかったという悔しさがあって、リベンジではないですけど、これは本格的にプレイしないといけないなと。そんな矢先、またザ・フィーストの実況のお話をいただいたんです。

――岸さんのプロ魂に火を付けられたわけですね。

この現場にいる以上、本当に妥協はできないなと。そもそも仕事で妥協しちゃいけないんですが、ほかの仕事にもこういう意気込みで取り組めるようになったのも、『FFXIV』のスタッフの方々の真剣さに影響されたというのが、正直ありますね。

――以降、プレイを続けられていると。

ひとつ問題なのが、自分でプレイするのと、観戦するのとでは、ぜんぜん違うんですよ。自分はモンクと機工士を使ってPvPコンテンツをプレイしているのですが、大会の実況となると、いろいろなジョブの知識が必要になります。個人的になじみがなくても知識は不可欠なので、『ARTV』用のキャラクターを触らせていただいて、アクションとその効果、エフェクト、効果音のチェックをしています。

――それにしても、実況中によくアクション名を正確に言えますよね。

正直、アクション名を覚えるのがいちばんたいへんです(笑)。

森口PvPアクションに絞っても100以上のアクションがありますからね。

――実況者ならではの苦労といいますか……。

ほかにも、観戦画面のインターフェースと、ふだんの自分のHUD(ヘッドアップディスプレイ。画面配置のこと)がぜんぜん違うのも最初は戸惑いましたね。実況をする立場だと、両チームのバフやデバフ、ARの状況など、見るべきポイントが多いんです。そう考えると、自分でプレイするよりも、“観戦すること”に慣れていったほうが、実況者としてはいいんだろうなと。そういったこともあって、最近はPvPの配信やアーカイブを見たり、そちらのほうに重きを置いていますね。

『FFXIV』のPvPを盛り上げるにはプレイヤーの声が必要

――PvPコンテンツは、やはり最初の一歩が踏み出せないという人も多いと思うのですが、楽しむためのポイントなどはありますか?

森口『FFXIV』プレイヤーで、一度もPvPコンテンツをプレイしたことがないという方もいると思います。そういう人がいきなりザ・フィーストに飛び込むのはなかなかハードルが高いのですが、『FFXIV』には多人数対多人数のPvPであるフロントラインやライバルウィングズといったコンテンツも用意しています。まずはそちらから入っていただくのが、導入としてはいいのかなと。

――大規模のPvPコンテンツは、ひとりに対する責任が分散されて、気軽に遊べていいですよね。

森口そこでPvPの楽しさを少しでも感じてもらえればと。

――PvPの魅力とはなんでしょう?

森口PvPは、相手がNPCではなく生身の人間なので、決まった動きをしないというのが、ほかのコンテンツでは味わえない魅力だと思います。あとは、PvE(CPUが操る敵とのバトル)では装備を強化していくという楽しさがありますが、PvPでは逆に装備差なしというフェアな条件下で、いかに自身のプレイヤースキルを磨いていくかという挑戦の要素もあります。

確かに『FFXIV』のPvPには魅力がたくさんあります。ですが、まだまだ課題はあると思っています。

――課題ですか。詳しくお聞かせください。

PvEは“初心者の館”で基本的な仕組みが学べますが、PvPにはそれがないんです。だから、PvPへの導入として、初心者の館のPvP版のようなものがあればなと。ほかにも、みんなで観戦するシステムがあればうれしいですね。ザ・フィーストで戦っている人たちのまわりに観客席があって、そこで応援できる仕組みです。さらに言えば、そこで勝利チームを予想してギルを賭けられるとか。もちろん、アビューズ(八百長)の対策なども必要でしょうけど、とにかくPvPに触れるきっかけを増やしてほしい。

――確かに、雰囲気が少しでも感じられるような場を作れば、実際にプレイしてみようと思う人もいるかもしれませんね。

僕は外の人間なので、好き勝手に言うだけなんですけど(笑)。でも、こうやってフィードバックとして意見を伝えることも重要だと思っているんです。僕だけじゃなくて、PvPコンテンツのファンの方も、どんどんフィードバックをしましょう! カウントダウンの機能なんかも、フィードバックがあったからこそ実装されたわけですし。

――フィードバックをして、よりよいコンテンツを作っていこうと。

ほかにも、チームカラーが設定できると観戦しやすくなるとか、チームのユニフォームが欲しいとか、観戦画面だとARのコメテオをどっちのチームが撃っているのかわからないとか、いくらでも要望はありますよ(笑)。

――だそうですよ、森口さん!

森口そうですね……(苦笑)。自分自身もプレイもして、観戦もしているので、いろいろと課題があるのは認識しております……。

――こうして、ざっくばらんに意見を言ってくれる人が近くにいるのはいいですよね。

森口そうですね、本当にありがたいです。

でも、やっぱりプレイヤーの皆さんの協力がないと、コンテンツとして広がっていかないと思っていて。“絶”や“零式”などの配信や攻略ブログは盛況ですし、ハウジングやミラージュプリズムを楽しんでいる方のスクリーンショットもいろいろなところで目にします。でも、PvPに関しては、そういう風に広げようとする方がそれほど多くないんです。『ARTV』でもよく言わせていただいていますが、試合に参加している人たちが、SNS上でもどこでもいいんですけど、PvPの魅力を伝えたり、プレイしてもらえるような環境を作ったりしてほしいという気持ちがあります。「配信でカスタムマッチを開くから、初心者の方おいで〜」と、参加を呼びかけたり。そういった下積みが必要だと思うんですよ。

――確かに、コミュニティに火が付くというのは重要ですよね。

僕たちが火を付けるのはなかなか難しいんです。薪は置くことはできるけど、火を付けるのはコミュニティの力だと思っています。

――では最後に、ファイナルに向けての思いをお聞かせください。

今回、出場されている方は、ほとんどがザ・フィーストの最初のシーズンからずっとPvPをやられているのではないでしょうか。データセンターを越えて戦い、初代王者を決するという、皆さんの夢が詰まったイベントになるんだろうなと思っています。プレイヤーのひとりとして、そういう舞台が用意されているのは、すごくうれしいです。いい試合も期待したいですけど、選手にはとにかく楽しんでもらいたい。「またこの舞台に来たい」と思ってもらえたらいいですね。

森口セミファイナルを終え、各データセンターのトップチームが決まったわけですが、ファンフェスティバルまでまだ時間があります。データセンター内で一致団結して戦略を練るなど、コミュニティの活性化につながればいいなと思います。あと、大会というと、どうしてもプレイヤーだけに目がいきがちなのですが、観戦してくださる方もすごく重要だと思っています。PvPプレイヤーのコミュニティから、観戦する側に向けてどんどん情報を発信してもらえるとうれしいです。

じつは前回のファンフェスティバル 2016 in 東京のとき、ちょっと悔しい思いをしたんです。というのも、PvPのイベントが始まる直前に袖から客席を見たら、けっこう空席があって。そんな光景を目の当たりにして、「絶対に盛り上げてやる!!」という異様なテンションで臨んだんですよ(苦笑)。

――相当悔しい思いをされたと。

その熱が伝わったのか、いざいざ試合が始まったら、席がどんどん埋まって、最後は歓声が上がるほどで。その後のTHE PRIMALSのライブが冒頭から大盛り上がりだったのは、僕の実況があったからなんて言われたりもしましたけど(笑)。つぎのファンフェスも、とにかく皆さんに見てもらいたいという思いが強いです。

森口今回は、ファイナルの前にセミファイナルのストリーミング配信ができたのは、けっこう大きいと思っています。アーカイブも残っていますので、いまからでも見ていただいて、ファイナルへの注目度を高められたらいいですね。

――積み重ねは大事ですよね。

森口『ARTV』も2年半やってきて、どうしてもPvPというハードルの高さを感じるときがあります。いまでも課題が山積みだと思うんですけど、よく吉田(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)と「いまは継続することが大事なのかもしれないね」という話をしていて。一気にコミュニティが広がるというのはなかなか難しいものなので、できることを着実にやっていければと思います。