Lionel Lovisa氏(りおねる)
本作のライン・プロデューサー。
Dan Efergan氏(だん)
クリエイティブ・ディレクター。Aardman Studio所属。
2018年8月21日~25日(現地時間)、ドイツ・ケルンメッセで開催されている欧州最大のゲームイベント“gamescom 2018”にて、バンダイナムコエンターテインメントから2018年発売予定のプレイステーション4/PC用アドベンチャーゲーム『11-11(イレブン イレブン) Memories Retold』の開発者にインタビューを行った。併せてプレイリポートもお届けする。
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テーマは戦争、ゲーム内容は平和
――2018年8月23・30日合併号(2018年8月9日発売)で第1報を掲載しましたが、改めて本作はどのような作品なのでしょうか?
Lionel本作は戦争をテーマにした、平和的なゲームです。銃を撃ち合うものではありません。
――アクションものではないと。
Lionelそうです。本作においてエイム(銃で狙いをつける技術)は必要ありません。
――完全にアドベンチャーゲームなんですね。『11-11(イレブンイレブン)』というタイトルにはどんな意味が……?
Lionel終戦記念日です。こちらも平和的な意味を込めています。内容も、ハリー、クルトというふたりの主人公の物語を楽しめるものになっています。
――そのふたりはどのような人物なのですか?
Lionelどちらも兵になることを志願するのですが、戦いを好んでいるわけではなく、たまたま戦争に巻き込まれてしまいます。カナダ出身のカメラマンであるハリーには好きな女性がいて、(周囲に対して)自分が一人前の人物だと証明するために戦場へ向かうのです。
――えっ、戦いを好まない性格なのに戦場へ?
Lionel物語の舞台となる1900年代初頭当時は、いまと比べて“戦争は恐いもの”ということを知らされていないんです。「戦争はいいものだよ」というプロパガンダを真に受けた、純粋な性格のハリーが戦場へ赴き、戦争の恐ろしさを知っていく気持ちをプレイヤーの皆さんにも共感していただきたいと思っています。
――もうひとりの主人公であるクルトは大人のように見えますね。
Lionelクルトには、戦争に行ってしまった息子がいて、戦争が大嫌いなんです。もちろん、人を殺すことはとんでもないと考えているのですが、息子が戦場で行方不明となっている報を受けて、息子を捜すために前線へ向かいます。
――ハリーは映画『ロード・オブ・ザ・リング』で有名なイライジャ・ウッド、クルトは数々の映画やドラマで活躍しているセバスチャン・コッホが演じていますよね。このキャストはすぐに決まったのですか?
Lionelイメージが合っている方にオファーしました。こちらからアレコレ注文しなくても、プロフェッショナルな彼らから「ここはこのような口調がいいのでは?」といった意見が出たりして、結果的にとてもいい音声が収録できたと思います。
――音声と言えば、BGMも気になります。
Lionelロンドンのフルオーケストラによる、壮大な曲が流れますので、ぜひそこも期待していただきたいですね。
――ゲームの雰囲気も、とても楽しみです。
Dan(資料写真を広げつつ)ストーリーのデザインでも、当時の人々がどのように生きたかをしっかりと後世に伝える内容にしています。
――戦争をいうものを深く考えさせられる内容になっているということでしょうか?
Danそうです。近年の戦争をテーマにしているゲームは、銃を撃ち合うシューターがほとんどですが、『11-11(イレブンイレブン)』は銃を持たない人々の心情を描いています。
Lionelそのおかげで、ゲームとしてどのようにプレイヤーを満足させるか悩みましたが(苦笑)。ただ、ふだんあまりゲームをしない層に遊んでいただけることを意識して、難度はグッと下げています。本を読んだり、映画を観る感覚でプレイできますよ。
Danそのあたりは操作にも気を遣っています。ふだんからゲームを遊んでいる方は、右スティックでカメラを操作することが自然と行えますが、そういった基本操作が慣習として身に付いていない方のために、カメラワークが自動で見やすく動くようにしているんです。
――細かいところまで気配りがある、まさに平和的なゲームですね。油絵のようなタッチのグラフィックからも“優しさ”が感じられます。
Danグラフィックのテイストは、1900年代初頭の空気を少しでも伝えるために導入しています。当時のアートスタイルがどんなものがあるのかを調べました。また、色づかいは、キャラクターの心情とリンクしています。
――心情……というと?
Danたとえば、ハリーが戦争へ行く前の平和な日常を描いたシーンは、暖色系の色で描いています。逆に、主人公が不安を抱くようなシーンでは、灰色や濃い青などを多く使うといった感じで。戦場のシーンでは、前線から離れれば離れるほど色彩が豊かになり、最前線へ行くと主人公が感情を押し殺すため色数を抑えたタッチになります。
――単にいい雰囲気を演出するだけでなく、そういった効果があるのですね。話は変わりますが、ゲーム面でのシステムはどのようなものがあるのですか?
Lionelハリーはカメラを持っているので、写真を撮れます。ミッションとして写真を撮るシーンもありますが、いつでも自由に撮影ができますよ。写真も絵画のようなタッチなので、絵として鑑賞するのもおすすめです。
――撮影した写真をコレクションする楽しみもあるんですね。クルトにはどんな要素が?
Lionel技術者である彼は、さまざまな機械を操作します。ただ、そこもできるだけわかりやすくしているため、謎解きがわからず何時間も先へ進めないということはありません。
――ますます楽しみになってきました。最後にひと言ずつお願いします。
Lionelいままでにないタイプの作品となっていますので、どなたでも新鮮な気持ちで楽しめます。ぜひご期待ください。
Dan独自のアートを通じて、第一次大戦の物語を皆さんにしっかりお伝えしたいです。お楽しみに。
gamescom 2018出展バージョンをさっそくプレイ!
記者はインタビューの後、gamescom 2018出展バージョンを実際にプレイしてみた。まずはハリーの日常パートから始まるのだが、第一印象は“動く絵画”。モーションキャプチャーで動くキャラクターはとても自然であり、どのシーンをスクリーンショットに収めても芸術品として成り立つほどの美しさ。プレイヤーの目的は画面上部に随時表示され、迷うことなくストーリーを進められるものの、何気ない会話やオブジェを発見するという楽しみもあり、隅々まで探索してしまった。その際、ハリーが手にしたクラシックカメラであちこち撮影しまくった。油絵タッチの風景を写真に収めるとモノクロになり、ますます味わい深いものに……。コレはクセになる!
少し物語を進め、ハリーが軍に志願する場目になると“一方そのころ……”と場面が一転。有名な飛行船であるツェッペリン号を製造する工場で働くクルトのシーンに。製造中のツェッペリン号は非常に巨大で大迫力! Lionel氏が説明した通り、クルトのパートではレバーを倒してツェッペリンのパーツを動かしたり、ラジオを修理したりと、機械を動かすシーンが多い。数十メートルの高さの足場(幅30センチくらい)をヒヤヒヤしながら歩く場面もあったが、そのままストーリーを進行していくうちに、クルトも行方不明の息子を捜すため、戦場へ向かう流れになった。
銃弾が飛び交う戦場のシーンでは、弾切れで困っている仲間に弾薬を運んできたり、怪我をした仲間を助けたりと、右往左往することに。主人公みずからは戦わないものの、これはこれで緊張感溢れる作りだ。
さらに物語を進めると、(ネタバレのため経緯は伏せるが)なんとプレイヤーキャラクターがハリーでもクルトでもなく“猫”に! 鳥を追いかけ、塹壕の中を進む猫が向かった先には……? というところで試遊は終了。うーん、続きがとても気になる! 2018年発売予定とのことなので、発売日が楽しみだ。