2018年6月9日(現地時間)に開催された『KINGDOM HEARTS Orchestra -World Tour-』にて発売日をアナウンスし、その後のカンファレンスや配信でつぎつぎと新情報を公開した『キングダム ハーツIII』(以下、『KHIII』)。同作のディレクターを務める野村哲也氏に、発表内容の気になるあれこれを直撃した。

 なお、インタビューについては週刊ファミ通2018年7月5日号(2018年6月21日発売)にて掲載。同号では、今回の発表内容を野村氏への取材でわかった事実とともに総括している。ファミ通.comでは後日のインタビュー完全版の掲載を予定しているが、本稿では先行して一部を公開!

野村哲也氏インタビューダイジェスト

――E3 2018ではいろいろな発表がありましたが、まずは発売日が、当初の2018年から少し先になった理由をお聞かせください。

野村 『KHIII』はタイトル規模が大きいため、発売日については以前より関係各所との調整を続けていました。その中で、年末年始は流通の都合や生産の面で制限がかかりやすく、ワールドワイドで展開するにあたって十分な体制を整えづらいということをうかがい、また、関連会社様や海外支社から、日本と発売タイミングをほぼ同時にしたい旨や、1月が望ましいという意向もいただいていました。一方で開発の進捗的にも、決して余裕がある状況でもなかった。そうしたいくつもの状況を踏まえて、最終的には会社判断となりました。

――複合的な理由だったということですね。では、今回公開されたPVや新情報についてお聞きします。『アナと雪の女王』が、ついに新ワールドとしてお披露目されましたが?

野村 ここでは、映画と同じ時系列で、作中で観られたシーンがそのまま目の前で展開します。あの『レット・イット・ゴー』も流れますよ。バトルの面では、アナやエルサたちはパーティーに加わらないのですが、エルサが魔法で作り出したマシュマロウが力を貸してくれます。雪山はもちろん、ラクシーヌが用意する氷の迷宮を探索したりといった場面もあります。

――『パイレーツ・オブ・カリビアン』のワールドの発表も衝撃でした。

野村 『パイレーツ・オブ・カリビアン』のワールドは、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』がベースになっています。今回お出しした内容はどれも注目していただきたいのですが、なかでもここは見どころが多いと思います。海に潜ってのバトルから、船を操って海戦をくり広げるシーン、ハートレスに乗っての空中戦など、このワールドは陸海空、すべてがシームレスにつながってバトルの舞台となっています。船を操縦して航海し、発見した島を探索するというような遊びもあります。なんでもできるワールドです。

――5月のメディアプレビューで試遊させていただきましたが、フリーランで壁を駆け上がるだけでワクワクしましたし、バトルでくり出せる技がとにかく多くて、遊びが詰まっているのが感じられました。

野村 走ることひとつとっても、“触っていて楽しい”作りになっていると思います。バトルでは、ソラの行動に応じて画面左に“シチュエーションコマンド”が表示されていきます。常設のコマンドのみではなく、時間制限のあるタスクが積み上がっていって、どれをどのタイミングで使うか自分で戦略を組み立てられる。今回、とくに実現したかったシステムです。

――コマンドが5個くらい出ることもありますが、時間制限があるので、使いこなせるか不安もあります。

野村 もちろん、ボタン連打でどんどん使っていってもいいんです。つぎつぎと違う技が出て、それだけでも強力ですし爽快かと。そのうち慣れてきたら、「この技から使おう」と選んでいけばいいので。これを使わなければダメ、というものではないため、アクションが苦手な方でも大丈夫ですよ。

――PVの気になるシーンについてお聞きします。ロクサスの復活について触れられており、ソラとしても真XIII機関としても、彼の復活を望んでいるようでしたね。

野村 とくにロクサスとつながりのあるソラが、彼の復活のために奔走します。ただ、すぐにどうこうなる問題ではないんですよね。

――もうひとつ気になるのが、ラクシーヌが言っていた“ニューセブンハート”という言葉です。

野村 新世代のセブンプリンセスのことです。『KH3D』で、マスター・ゼアノートの動きに関連して、もし7人の守護者が揃わなくても、代わりにセブンプリンセスを……という話がありましたよね。そのセブンプリンセスは現在、代替わりをしていて、カイリのみ引き続きその立場にあります。残り6人の候補として、ラプンツェルやアナ、エルサが狙われている状況です。

――ここまでシリーズが展開してきて、第1作の発売から年月も経ちました。複雑に絡み合うストーリーの記憶が薄れている、あるいはナンバリング以外はプレイしていないというユーザーもいると思います。そうした方へのフォローは考えていますか?

野村 何せ関連作やキャラクターが多く、すべてをゲーム内で説明していては話が進まないので、公式サイトでそこをフォローする準備をしているところです。いままでのストーリーをエピソード形式で5本の動画にし、チリシィのナレーションであらすじをまとめています。E3後、さほどお待たせせずに公式サイトで公開しますので、この動画を観たり、過去作のHDリマスター版を遊んだりして、発売までお待ちいただければと思います。なお、あらすじ動画は、調整がつけばになりますが、『KHIII』のロムにも実装を検討中です。

――『KHIII』の今後についてお聞かせください。たとえばメディアプレビューなどに用いられている試遊版を、体験版として配信するといった予定はないのでしょうか。

野村 試遊版と、体験版として配信するものとでは、制作の手法などが異なるため、それを体験版として配信する予定はありません。ただ、日本のユーザーの方は、東京ゲームショウで試遊の機会があると思います。そこでぜひ、新しい『KH』を体験していただき、期待を高めてほしいですね。今回は、発売を少しお待たせすることになって本当に申し訳ありません。ただ発売日が決まったいま、あとはそこへ向かって力を尽くすだけなので、もう少々お待ちいただければと思います。

野村哲也氏インタビュー先行公開『キングダム ハーツIII』E3 2018の発表内容に迫る【E3 2018】_01