サンフランシスコで行われたGDCで、VRヘッドセット“Rift”や“Gear VR”などを提供するOculusが、発売が近いと噂されるスタンドアローン型のVRヘッドセット“Oculus Go”のデモを初公開。記者も体験してきたので、インプレッションをお届けしよう。

200ドルでハイエンドPCも対応スマホもいらない、十分なVR体験。抜群のコストパフォーマンスを見せるOculus Go【GDC 2018】_04

Gear VRに互換しつつ、最新技術できっちり進化

 まず改めてOculus Goの概要をおさらいしておこう。VRを体験するには、一般的にそのVRヘッドセット以外に、PCのVRなら相応の処理能力を持ったそこそこハイエンドなPCが、ちゃんとしたモバイル系のVRなら対応スマートフォンなどが必要だ。

 Oculus Goをはじめとするスタンドアローン型のヘッドセットは、処理能力を内蔵しているためそれが必要ない。「これだけ買ってくればどこでも体験できる」という質の製品となる。付属コントローラーでは、ジャイロセンサーによるある程度のモーションコントロールも可能だ。

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付属コントローラーはGear VRコントローラーのようにタッチパッドとトリガーボタンがついている。

 製品としては、基本的には「対応スマホがいらないGear VR」というのが近いかと思う。ポジショントラッキングがないため、頭の回転の動きには反応するものの、上下左右前後の動きには反応しない。要はどちらかと言えば椅子に座ったままプレイするような類の製品で、身体を使って動き回るようなものではない。

 一方でGear VRから進化している部分もあり、周縁部の描画解像度を下げてマシーンパワーを節約する“Fixed Foveated Rendering”や、バッテリーの持ちなどに関わってくる動作クロックの調整機能などに対応。また表示に72ヘルツモードが追加され、Gear VR(60ヘルツ動作)より高速な描画も可能になっている。

「200ドルでこれはスゴい」

 さて、実際にデモ機を被ってみた感想と行こう。単刀直入に「この値段でこれならスゲーいいじゃん」である。こういった意見は実際に、GDCのプレスルームでも各誌記者から聞くことができた。

 Gear VRの蓄積もあって付け心地はちゃんとしていて、鼻の周囲の切れ込みなどもギリギリいいバランス。ぶっちゃけると、遮光はそこそこちゃんとしつつ、鼻を掻くこともできる。

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長時間使用を考えると鼻かゆい時に掻けるのマジ大事なんだぞ(多分切れ込みが入ってるのは通気性を確保して曇りにくくするためだけど)。

 さらに立体音響システムが入っているので、イヤホンをつけなくてもVR世界の音がちゃんと定位をともなって聞こえる(遮音性が欲しい時はヘッドホンなどを繋ぐこともできる)。VRのエントリーモデルとして、まったく申し分ない。

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公式写真より、ヘッドホンなしの人とアリの人がどっちも映っている写真。

 そりゃもちろん、ポジショントラッキングをはじめ、あれこれがないとか難癖をつけるのは簡単だ。でもOculus Goは、そもそもそういう位置づけの製品ではない(Oculusはポジショントラッキングがあるスタンドアローン型ヘッドセットとしてSanta Cruzプロトタイプを開発中で、GDCでも一部に公開していた)。ファミリーカーにカリカリチューンのレースカーの速度を求めても大して意味はないのである。

 Netflixなどの動画系コンテンツはこれで何の不足もないし、ゲームをはじめとするインタラクティブなコンテンツについては、Gear VRと互換しているおかげでタイトル供給自体は多いと思われる。何か特定のコンテンツをすごくやりたいという場合を除き、「いまのVRを家で体験してみたい」というぐらいの人には自信をもって薦められると思う。発売日と日本での価格が気になるところだ。

Rift/Gear VRとの3機種マルチ対応タイトルも

 対応コンテンツの中にはRiftなどと両対応のものもあって、今回体験できた中ではRift/Gear VRで配信開始された『Catan VR』がソレ。Oculus Goにはローンチタイトルとして対応予定だ。

 ゲーム的にはボードゲームの『カタン』(カタンの開拓者たち)のVR版で、Rift/Gear VR/Oculus Goのクロスプラットフォームマルチプレイに対応。道や家の建設などは、Go付属コントローラーで指し示す形で行う。ちなみにコントローラーはバーチャルな手ともなっていて、タッチパッドで手をジャンケンの形にしたり、親指を立てたりすることもできる。

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GoとRiftでマルチプレイでカタンVRする人たち。

 『Anshar Online』も同様に、3機種でマルチプラットフォーム対応予定のタイトル。ソロ・Co-op(協力)・PvP(対人戦)があるフライトシューティングゲームで、Goでは顔の動きを操舵代わりに使って飛ぶことができる(オフィスなんかにある回転椅子でのプレイがオススメ)。

 『They Suspect Nothing』は、「地球上の最後の人間として、ロボット社会に溶け込むためにロボのフリをして素っ頓狂な内容のテストに挑む」という、Oculus Go/Gear VR対応のコメディタッチなミニゲーム集(※この作品のみRift対応ではない)。

 コメディ映画『ホット・ファズ』で署長役をやっていたジム・ブロードベントが声優として参加している……という狭い情報を書いて何人がわかるのかわからないが、基本的にナンセンスなイギリス流ロボットジョーク満載の内容。

 ミニゲームのひとつにGoの付属コントローラーをジョイスティックに見立ててUFOキャッチャーのようなゲームをプレイするというものがあったのだが、かなり思った通りに操作できたのが印象的。すでに書いたように付属コントローラーでのモーションコントロールはジャイロセンサー等で行う簡易的なものだが、設計次第で結構やれることがあるのかもしれない。