休刊から14年……最盛期に28万部を売り上げた伝説の雑誌のトークイベント

1980年代にゲーム少年を夢中にさせた“ベーマガ”のイベントに1100人が集結、“ALL ABOUT マイコン BASIC マガジン II”リポート_01
読者におなじみのくりひろし氏によってキャラクター化された出演者がメインビジュアルに。

 1982年創刊の『マイコン BASIC マガジン』(電波新聞社/愛称“ベーマガ”)は、パソコンがマイコンと呼ばれていた時代、そして、まだゲーム専門誌のなかった時代に、少年たちの心の拠り所となっていたホビーパソコン&ゲーム情報誌だ。投稿プログラムの紹介に多くのページを割いた読者参加型の誌面構成と、アーケードや家庭用も含めたゲーム記事の充実ぶりが特徴で、最盛期には28万部を売り上げたが、2003年に惜しまれつつ休刊となった。

 そんな、かつてのベーマガ読者を対象としたトークイベント“ALL ABOUT マイコン BASIC マガジン II”が、2018年1月14日、よみうりホール(東京)にて開催された。この日集結したかつての読者は約1100人。全席指定であったが、開場を待ちきれない読者が列を作り、会場は朝から熱気を帯びていた。

 会場ロビーには、22年にわたって刊行されたベーマガの表紙や、PC-8801mkIISRをはじめ往年のホビーパソコンが展示され、終始人だかりが。また、同誌のバックナンバーを扱うレトロPC・ゲーム専門店BEEPや、2月22日発売予定のCD『ナムコサウンドミュージアム from X68000』を先行販売するSweep Recordなどの物販ブースも並び、賑わいを見せていた。

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会場ロビーにはベーマガと伝説の別冊付録『スーパーソフトマガジン』の全表紙、そして往年のホビーパソコンを展示。
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かつての読者1100人が詰めかけ、会場には熱気があふれた。

架空の人物とも噂されたアイドル編集者“つぐ美ちゃん”登場!

 イベントは6時間、全4部構成の大ボリューム。プロデュース及び司会・進行を務めたのは、ベーマガにて“チャレンジ! アドベンチャー・ゲーム”などの人気コーナーを担当し、また、テレビ番組『パソコンサンデー』にレギュラー出演していたことでも知られる、山下章氏だ。

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山下章氏。

 第1部は“ベーマガ編集部 再集結!”と題し、解説マンガ『Dr.Dと影のパソコン・レクチャー』を連載していたくりひろし氏によってキャラクター化され、誌面に登場していた名物スタッフを中心に登壇。同誌のマスコット的存在であり、架空の人物とも噂されていた“つぐ美ちゃん”もはじめて読者の前にその姿を現し、清楚な佇まいでファンを喜ばせた。

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左から大橋太郎編集長、及川健氏(編さん)、増田克善氏(影さん)、南雲津久美氏(つぐ美ちゃん)、齊藤清氏(出版販売部長)。

 このパートは、ベーマガ誕生~全盛期の裏話がつぎつぎと飛び出す展開に。大橋太郎編集長は、“子ども向けのマイコン雑誌”としてどうしたら子どもに興味を持ってもらえるかを試行錯誤し、アマチュア無線仲間であったハドソン創業者・工藤裕司氏にも相談していたことを明かした。読者投稿のゲームプログラムが主軸となったのは、工藤氏の「ゲームがいいよ」という言葉からヒントを得た面もあったそうだ。

 “編さん”として親しまれた及川健氏によると、全盛期にはとてもすべてに目を通せないほどの投稿が送られてきたそうだが、「入社して最初に言われたお仕事が投稿プログラムの仕分け」だった“つぐ美ちゃん”南雲津久美氏は、「私、ちゃんと全部見ていました」と証言。そして、“影さん”こと増田克善氏は、毎月ベーマガ発売翌日から数日間は「プログラムリストを打ち込んだが、エラーで動かない」という電話への対応でたいへんだった、と回想した。掲載プログラムはBASICなどのプログラミング言語で記述されており、読者はこれを自分のパソコンに入力して実行するのだが、1文字でも打ち間違えると正しく動かないうえ、どこを間違えたのかは見つけにくく、マイコン少年泣かせだったのだ(編集部泣かせでもあったわけだ)。

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読者による投稿プログラムがメインコンテンツだった。

 さらに、全盛期の人気を示すエピソードとして、出版販売部長の齊藤清氏が挙げたのが、人気連載を書籍化した『チャレンジ!! パソコン・アドベンチャー・ゲーム』の著者サイン会。池袋の西武百貨店屋上で開催され、朝から並んでいた若者たちが、開店と同時に駆け上がってきた光景が印象的だったそう。著者の山下氏は当時弱冠21歳で、「広告に“山下先生サイン会”なんて書かれていて、お店側も「どんな先生が来るんだろう」と思っていたんでしょうね。著者席に座ろうとしたら、西武のひとに「キミ、入っちゃダメだ!」と止められて(笑)」と思い出を語った。

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山下氏の人気連載を書籍化した『チャレンジ!! パソコン・アドベンチャー・ゲーム』。