話題の2Dアクションをインプレ

 カナダのインディーゲームデベロッパー、Studio MDHRが手掛け、2017年9月29日よりXbox One、Windows 10 PC向けで配信された2Dアクションゲーム『Cuphead』。1930年代のカートゥーンの影響を受けている本作は、その独特なグラフィックで配信開始以前から大きな話題を呼んでおり、多くの人がプレイできる日を楽しみにしていたことだろう。今回配信を機に本作を実際にプレイしてみたので、そのインプレッションをお届けする。

『Cuphead』プレイインプレッション カートゥーンアニメーションと絶妙な難易度の高さでプレイヤーの心を惹きつける_08

細部にまで見られる“1930年代カートゥーン”への愛情

 『Cuphead』はそのタイトル通り、カップ頭の兄弟・カップヘッドとマグマンを主人公としたタイトル。カジノでデビルとの賭けに負け魂を奪われそうになったふたりが、見逃してもらう代わりに、ほかの債務者たちの魂を回収するめの冒険に出るというのが大まかなストーリーだ。プレイヤーはカップヘッドたちを操作し、取り立ての旅へとくり出すことになる。

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 そんな本作を語るうえでまず欠かせないのは、先述した1930年代のカートゥーンの影響を受けた独特のグラフィックスだ。本作は1930年代のアニメーションの質感などを再現するために、各キャラクターの動きは1フレームずつ手描き、手塗りで表現されており、コミカルかつオーバーアクションを見せてくれる個性豊かなキャラクターたちは、表情豊かでとてもユーモラス。平成生まれの筆者としては、再放送などで放映されていた昔の海外アニメを見るような感覚でゲームを楽しめるという、いままでにない感覚を味わえた。

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 とはいえ、本作の“1930年代のカートゥーン”に対する思い入れが感じられる部分は決してそれだけではない。なんと、フィルムに入ったホコリやシミ、フィルムで映像を流す際に聞こえる独特のノイズ音さえも見事に再現されており、それらのクラシカルな要素が本作をより魅力的な作品へと引き立てているのだ。少し黄色味がかったロード画面に黒い線やシミが写り込み、ノイズ音だけが聞こえる静けさは、ひと昔前のフィルム映画が始まる直前のワクワク感を思い起こさせ、若輩者の筆者ですらどこか懐かしさを感じてしまうほど。上の世代の方がプレイすると、より懐かしさを感じられるのではないだろうか。

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トライ&エラーをくり返し、クリアーする快感は格別

 マップに点在するさまざまなステージを攻略し、先へと進んでいくのが目的となる本作。債務者たち(ボス)とのバトルを中心に、ステージによっては敵を倒しながらゴールを目指してひたすら進む“RUN & GUN”なども楽しめるのだが、すべてのステージに共通して言えることはとにかく難易度が高いということ。ぶっちゃけてしまうと序盤からとても難しく、少しでも油断すると秒殺されてしまうレベルだ。また、プレイヤーに求められる操作としては、ジャンプや射撃攻撃、前後へと勢いよく飛び出すダッシュなど非常にシンプルだが、そのぶんわずかな操作ミスが命取りとなる場面も多々ある。

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序盤の主人公は、3回ダメージを受けてると死んで天へと召されてしまう。ステージの途中に回復アイテムなどは出てこないので、一度ダメージを受けただけで冷や汗と手汗が止まらない。

 さらに、ボスは初見ではまったくと言っていいほど動きを読めない。ただ見ているだけならコミカルな動きをしていてとてもおもしろいのだが、そんなヤツらが奇妙奇天烈な攻撃をしてくるのだからたまったものではない。そこが本作のボス戦のおもしろいところでもあるのだが、人型のボスが突如動物に姿を変えたりなど、とにかく予想外の動きをしてくるのだからやっかいだ。

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城から、やっかいな敵を送り出してくるボス。……と思いきや、体力を一定以上減らすと今度は城ごと主人公に迫ってきて、「マジか!?」と連呼しているあいだに1デス。
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ボス戦の中には、飛行機に搭乗して戦う空中戦も存在する。

 しかし、理不尽なほど難しいかといえば、そんなことはない。何度もステージに挑んでトライ&エラーをくりり返し、敵の行動パターンと対処法さえちゃんと押さえられれば、充分クリアーは可能だ。いわゆる“死にゲー”というジャンルがあまり得意ではない筆者もクリアーできたので、そこは保証できるだろう。そして歯応えがあるぶん、何度も挑戦してステージを攻略できた際の達成感はとにかく大きい。とくに、ノーダメージでクリアーできたときの気持ちよさといったら……。

攻略の幅を広げるカスタマイズ機能

 歯応えのある難度も大きな特徴だが、そんな本作を攻略するうえで忘れてはいけないのが、主人公のカスタマイズ機能だ。先述したゴールを目指して突き進む“RUN & GUN”では、道中でコインを入手できるのだが、このコインを使えば、ショップで主人公を強化できるアイテムと交換が可能。あとは、カスタマイズ画面で購入したアイテムを主人公に取り付けると、射撃攻撃が敵を追尾したり体力の上限があがったり、ダッシュ中に敵の攻撃を受けなくなったりと、さまざまな恩恵を得られのだ。
 そして、アイテムの恩恵を受けているかいないかで、攻略の難度も大きく変化する。筆者の場合、自身のプレイスタイルに合ったアイテムを購入できたことで、何度挑戦してもクリアーできなかったステージをあっけなくクリアーできてしまった、なんてこともあった。
 ただし、主人公が装着できるアイテムの数には限りがあり、購入したすべてのアイテムの恩恵を得られるというわけではない。ステージによってアイテムを付け替え、どんなカスタマイズで挑むと攻略をしやすいか模索していく奥深さも、本作の醍醐味と言えるだろう。

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 このように、本作は1930年代のカートゥーンに影響を受けた独特のグラフィックスと、歯応えのある難度が大きな魅力のタイトルだ。正直、筆者は最初のステージで瞬殺された際、高難度のアクションゲームが得意ではないということもあり、「後半までいけるのか……」と不安を感じていた。しかし、トライ&エラーのくり返しで強敵を倒していく快感と、攻略の幅を広げてくれるカスタマイズ機能もあったことで、気付けば何度も死に目に会いながらも本作を夢中でプレイしている自分がいた。
 また上記で紹介した要素以外にも、ボス戦のステージでは低い難度を選択できるようになっており、本作はアクションゲームが苦手な方でも充分楽しめる内容となっている。そのほか協力プレイも可能なので、友人に協力してもらうのもひとつの手だ。興味を持った方はぜひ本作をプレイして、ゲームとしては新鮮で、しかし懐かしさも感じられるカートゥーン調の世界を存分に堪能してほしい。

 なお、本作はただいま英語版のみが配信されており、日本語を含む多言語対応は後日アップデートにて対応予定とのことだ。アップデートのスケジュールなどは明らかにされていない。