2017年10月8日にパシフィコ横浜 会議センターで開催された“UNREAL FEST EAST 2017”。同イベントで行われた基調講演にゲームデザイナーの堀井雄二氏が登壇した。

“UNREAL FEST EAST 2017”に『DQXI』制作陣が登壇! Switch版の開発環境にも言及_01

プレイステーション4版の開発秘話がゆるゆる語られた1時間!

 2017年10月8日にパシフィコ横浜 会議センターで開催された“UNREAL FEST EAST 2017”。同イベントで行われた基調講演として、ゲームデザイナーの堀井雄二氏と『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(以下、『DQXI』)の主要スタッフが登壇する“堀井さんとゆるゆる話す『ドラゴンクエストXI』の製作秘話”が行われた。

 同コーナーで堀井氏とともに制作秘話を語ったのは、『DQXI』のプロデューサー齊藤陽介氏、『DQXI』のプレイステーション4版プロデューサーの岡本北斗氏、ディレクターの内川毅氏、テクニカルディレクターの紙山満氏。そんな5名が語る開発時のエピソードに会場に詰めかけた約1000人のゲーム開発者、学生らは興味津々の様子だった。

 また、イベント中にはNintendo Switch版『DQXI』についても言及。同作にはUnreal Engine 4を使って制作されていることが明らかになった。以下では、そんなステージの内容を簡単にお伝えしていく。

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紙山満氏(テクニカルディレクター)
内川毅氏(ディレクター)
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齊藤陽介氏(プロデューサー)
岡本北斗氏(プレイステーション4版プロデューサー)

開発当初にUnreal Engine 4で作られた『DQIII』はどうなる……!?

 まずは堀井氏の口から『DQXI』をUnreal Engine 4で作る前段階のテストとして、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、『DQIII』)を試作したことが告げられた。

 これは、かつて週刊ファミ通に掲載されたインタビューでも語られたエピソードだが、岡本氏から「パーティに仲間も入れられたし、ナジミの塔には行けるようになっていた」という補足も。このことから、少なくともアリアハン周辺はUnreal Engine 4で作られていたということまで判明した。そして、この試作『DQIII』を堀井氏に見てもらうことで、当時はFPSなどが多く作られていたUnreal Engine 4でどれだけ「『DQ』らしさ」を表現できるかを確認。その後、本格的に『DQXI』の開発を進めたという。

 ちなみに、Unreal Engine 4で作られた試作『DQIII』は、一時期公開することも考えていたそうだが、ブラッシュアップなどに時間がかかることも考慮して控えたそう。齊藤氏や岡本氏は「開発用のものという前提があれば、いまのままで見せてもいいのでは?」と語るひと幕も。しかし、登壇した開発陣の中でも賛否が分かれていたので、公開は「もしかしたら……?」程度に考えておいたほうがいいかもしれない。

『DQ』愛あふれる紙山氏のオンステージ!

 続いては、プログラマーとしては珍しく、堀井氏や内川氏とともに取材旅行に行ったという紙山氏が、取材中のエピソードを披露。その取材の成果として挙げられたのが下記のような部分だ。

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こちらが、取材先であるペルーのマチュ・ピチュの遺跡。デルカダール地方にある崖の上から見る景色のイメージと重なる部分も多いのでは?
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実際のゲーム画面はこちら。イシの村近くにあるフィールドは、確かにマチュ・ピチュの雰囲気そのままだ。
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○で囲まれているところにいるのが堀井氏。写真ではわかりにくいが、この手前は崖になっており、落ちれば命はないような危険な場所!!
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その体験を元に生まれたのが、こういったシーンだった! ちなみに、崖に描かれた紋様はナスカの地上絵にインスパイアされたものらしい。

 紙山氏は昔から『DQ』シリーズが大好きだったということで、取材旅行中はことあるごとに堀井氏に『DQ』愛をアピールしていたとのこと。そんな会話の中で固まっていったのが、“ふっかつのじゅもん”の仕様だった。

 紙山氏は堀井氏に「技術的には、サーバーを介すことでかなりの量のデータをプレイステーション4とニンテンドー3DS間で移動できます」と言ったが、それを実現するには多くの問題もあり、実際は悩んでいたのだそう。しかし、堀井氏の「だいたいでいいよ」という鶴のひと声で現在の仕様へと向かっていったのだ。

 なお、補足を入れた岡本氏によると、“ふっかつのじゅもん”システムは、堀井氏の中で優先度が高い順に

1.「じゅもんが ちがいます」がやりたい
2.『ドラゴンクエスト』や『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』のふっかつのじゅもんが使えるといい
3.だいたい同じところで再開できればいい

という3点だったそうだ。

 また、会場では紙山氏がどれだけ『DQ』ファンであったかを披露する場面も。『ドラゴンクエスト』を、ホビーパソコンで遊びたいという思いを持った高校生だったころの紙山少年は……RGB出力できるシャープのファミコンテレビC1から目コピ(見た目からコピーすること)でパソコンに移植した『ドラゴンクエスト』のプログラムを走らせ、遊んでいたのだそう! さらに、その経験から発見した、『DQ』間違い探しも披露することに!!

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これが高校生だった紙山氏の作った、『ドラゴンクエスト』の制作資料。ちなみに、スクウェアへの入社試験に挑んだ際には、これを制作物として送ったのだとか(当時、エニックスはライバル社)。結果は……面接まで到達するも不採用! そんな紙山氏が、紆余曲折を経て数年後にスクウェアに入社したことには因果を感じる。
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紙山氏が目コピ中に発見したものをもとにした『ドラゴンクエスト』の間違い探しクイズ。その違いに気付けるだろうか?
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正解はB。写真のようなほかのシーンでもわかるが、「~がよい。」と表示される場合のみ「。」がほかのものと違うことを、高校生の紙山少年は発見したのだ。
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その理由は、メッセージですらも辞書を参照するような形で圧縮していたことにある。「がよい。」の辞書を打ち間違えたがゆえの過ち。逆に言えば、こんな少しの文章ですら圧縮しなければならなかったのが『ドラゴンクエスト』なのだ!

Nintendo Switch版『DQXI』はUnreal Engine 4がベース!

 興味深くも長い脱線の後、話は再びUnreal Engine 4の話題に。Unreal Engine 4を開発したEpic Gamesがゲームエンジンを改良したおかげで、エリアをまたぐ際のロード時間が大幅に短縮。これにより、開発中のプレイステーション4版のみに実装されていた、通称“井戸ルーラ”(いったん井戸の中に着地し、井戸を登っているあいだに膨大なマップデータの読み込みを済ませるというもの)を無くせたというエピソードも披露された。また、バトルバランスの調整はUnreal Engine 4のほうがスピーディにできるため、そのデータをニンテンドー3DS版に反映させたケースがあったことなども内川氏が明かしている。

 イベントの終盤には、堀井氏みずからNintendo Switch版『DQXI』にもUnreal Engine 4を使っていることをうっかり(!?)公表。つまりその見た目は、プレイステーション4版に近いものになることが予測される。ただし、同じエンジンを使っているとはいえ、異なるハードの作品を作るにはほかにもさまざまな苦労があるようで、状況としては、 “鋭意開発中”なのだそう。今後明らかになる情報に期待したい!

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