「扱ってるのがシリアスでダークなテーマだから、見た目は真逆でポジティブな感じにするのもいいかなって」と開発者は語る。
スクリーンでは、パステルカラーが似合ういかにも80年代なふわふわ髪の女の子が、高校生の間にすらドラッグが蔓延し、エイズ禍が広まりはじめ、不法移民が押し寄せ、失踪者が耐えないという物騒な街を駆け抜けていく……。確かにダークで猛烈にポップ。そのゲームの名は『Ghosts of Miami』。
本作は、Pillow Fight Gamesによって開発された、1986年のマイアミを舞台にしたビジュアルノベル。PC/Mac/Linux版がSteamやitch.io、Humble Storeで配信されている。参考までにSteamでの価格は1480円。
対応言語は英語、スペイン語、繁体字中国語のみなのだが、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたインディーゲームイベント“IndieCade”で遭遇し、なかなか惹かれたので、この機会にご紹介したい。
主人公は、忙しすぎて手が回りきらない警察の代わりに、依頼人のための独自の調査を行う23歳の女の子Chelo(私立探偵というより便利屋に近い)。プレイヤーは彼女となって、自身の父親の失踪を含めた5つの事件に取り組んでいくこととなる。
最初の事件としてCheloは女子高生失踪事件に取り掛かることになるのだが、OGとして高校で聞き込みを行うやいなや、学生の一部でドラッグが流通していることが判明。
「え、もしかして先輩? あの時タンクトップでパフォーマンスしてましたよね、私見てました!」とかキャイキャイしてたと思ったら、そのままダークな話にシフトするので、最初はキョトンとするかもしれないが、次第に80年代マイアミの狂騒感に巻き込まれていくようで、なかなかいい感じ。
要は、ぱっと見は魔法少女アニメ風の絵柄なのに、やってる話はまるきりマイアミ・バイス(※)の世界なのだ。かくしてCheloは、ネオン輝くマイアミに隠された闇に迫っていくことになる。(※1980年代にアメリカで製作・放映された海外刑事ドラマ)
ちなみに、グラフィック面だけでなく、Casey Yatesと2 Melloによる80年代テーマのサウンドトラックも、軽妙でフレッシュ。個人的にはイタロディスコやニューエナジー感漂うテーマ曲入りのオープニングアニメーションのトレイラーを是非一度見て欲しいところ。
そんな感じにシリアスなテーマをあくまでポップに描いていく本作、実は恋愛要素もあって、5通りのロマンスルートが存在するという(もちろん現場でのデモではそこまで確認できなかったので、誰を攻略できるかは遊んでみてのお楽しみ。どうしても気になる人は海外Wikiなどをチェックされたし)。
また本作、IndieCadeでプレイヤーの多様性について考慮されたゲームが集められた“Gaming For Everyone”コーナー(インテルによるスポンサード)に出展されていたように、登場人物の人種の多様性が維持されていて(最初の事件の被害者グレースもアジア系アメリカ人)、LGBTQ+にフレンドリーな作りが維持されている。
さらに、色覚障害や弱視のプレイヤーなどからのアクセシビリティも考慮されており、テキストのハイコントラスト化や、テキストトゥスピーチ(読み上げ)オプション、コントローラーのボタン再配置などにも対応しているとのこと。
折角の機会なので開発スタッフに日本語ローカライズについて聞いてみたのだが、現時点での予定はないものの興味はあり、すでに英語以外にも2言語に対応しているためシステム上は可能で、もし反応が良ければ考えたい、とのことだった。というわけで「オッ」と思った人は、スタジオのTwitterアカウント(@pillowfightio)をフォローしたり、リアクションを送ってみてはいかがだろうか。