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静かで速い競技。それがタイピングだ。

 東京ゲームショウ2017はeスポーツがひとつの軸。『Overwatch』や『World of Tanks』、タイピング、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)などの試合が、多くの来場者を熱狂させた。

 お気づきかと思うが、ビッグタイトルの中にしれっと“タイピング”を混ぜた。タイピングの日本一を決める大会“REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP 2017”がすごかったのだ。僕は興奮で震えた。

 これはeスポーツだ。派手な演出をしなくても、プロゲーマーがいなくても、高額賞金がなくても、間違いなくeスポーツだったのである。

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選手も観客もなかなかの熱気。

『Overwatch』や『PUBG』と同等の人気かもしれない

 本大会の主催は、自動車部品や空調機器などを製造する東プレ。代表的な製品として高品質キーボード“REALFORCE”シリーズがあり、データ入力の専門家や文筆業、PCゲーマーから愛されている。

 東京ゲームショウ2017ではゲーミングキーボード『REALFORCE RGB』を中心にブースを出展。オンラインでタイピング大会の予選が行われ、最終日の2017年9月24日に決勝トーナメントが開催されたというわけだ。

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“REALFORCE”ブランドとして、『Overwatch』で活躍するゲーミングチーム・Green Leavesのサポートも行っている。

 “タイピング”の、“日本一”が、“東京ゲームショウ”で、決まる。これまでに意識したことのない理論展開である。タイピング大会があることはぼんやりと聞き及んでいたが、それが目の前にやってくるとなると、頭の処理が追いつかない。

 いろいろなゲーム大会を取材してきた僕にとって、タイピング大会は初めてだ。主催者側としても、東京ゲームショウのような開場で実施するのは初めてではなかろうか。

 果たして盛り上がるのか。

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人がみっちり。

 杞憂だった。スタート10分前には関係者を含めて数十人がブース前に集結。この数十人を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだが、僕にはみっちり人が詰まっているように感じた。

 なお、14:00の大会開始と同時に、向かいのHyperXブースでは『Overwatch』や『PUBG』のイベントがスタート。人の波を見る限り、それらと同等の人気があったと言っても過言ではない。

 不安なのでもう一度書いておこう。過言ではない。

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PC関連のイベントに興味を持ってくれる人がこんなに。胸が熱くなる。
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解説は全日本タイピスト連合の代表を務める隅野貴裕氏(左)、実況はシンイチロォ氏(右)が担当。シンイチロォ氏はふだんは『ハースストーン』などを実況している。
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右側のスタッフは元Green Leaves所属で、『Overwatch』日本代表選考委員のサポートも務めたabara氏。実況とスタッフが完全にeスポーツガチ勢である。

 全日本タイピスト連合は2003年に発足した団体。ふだんは国内外の大会に出たり、タイピングのレクチャーをしているそうだ。

 隅野氏の「私も以前は選手として大会に出ていました。毎日ずっとタイピングしてましたよ」という言葉に、ハッとなった。そう、選手なのだ。彼らは“タイピングが速い”という一点特化型の能力を大会で競い合う。それはもうアスリートである。

 初めての感覚がつぎつぎと僕の脳を揺さぶる。まだ始まってもいないのに。

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静かな戦いを、実況と解説が盛り上げる。

 決勝トーナメントの各試合は、対戦型タイピングソフト『Weather Typing』を使った1対1のタイマン勝負だ。

基本ルール

・ランダムに表示される同じワード(文)を同時に打ち始め、先に打ち切ったほうがポイントを獲得
・どちらかが10ワード(決勝戦は30ワード)打ち切った時点でラウンド終了、ポイントの高かったほうの勝利となる
※正確性が95%未満の場合は、ポイントに関わらずラウンド敗北
・2ラウンド先取したほうがその試合の勝者となる

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真剣な目つきがかっこいい。

 1ポイント取るたびにセットが切り替わる感じだ。特筆すべきは試合展開の早さ。短文なら約2秒で打ち終わり、息つく暇なくつぎのセットへ。イベントの進行が高速すぎて、いつしか笑えてくる。

 スピードだけでなく、正確性も重要。打ち間違えて正確性が95%を下回ると負けになってしまうのだ(どちらも95%未満の場合はソフトがカウントしたトータルスコアで判定)。

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ひとりが10本連続で取ると、30秒ほどで試合終了。見ているほうにも力が入る。

 この辺で本大会がタイマン勝負を選んだ理由が活きてくる。『Weather Typing』は5人まで同時対戦が可能。ただタイピングスピードを比べるだけなら、まとめてやったほうが時間効率がいいのだが、1対1だとわかりやすく駆け引きが発生するのだ。

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勝ち負けでドラマが生まれ、天下一武道会みたいに対戦が盛り上がる。

 たとえば、圧倒的なスピードで9ポイント取ったのに正確性が94%に落ちた場合、そのまま10ポイント目を取ると、相手の正確性によっては負けてしまう。

 ここで待ちの姿勢にチェンジ。確実なタイピングを心がけ、最後のひと文字だけ残して相手が打ち終わるのを待つ。すると、ラウンドを長引かせつつ正確性を上げられる。95%を超えたところでスパートをかければいい。

 シンプルだけど深いぞ、タイピング。

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隅野氏はルール設定に感心していた様子。中にはそんなの気にせずにダカダカっと打ちまくるパワーファイターもいる。それもまたよし。

 記事がけっこうな長さになってきた。果てしなく続きそうなので、いくつか要点をまとめておく。

要点

・対戦が苦手な選手もいる
・オフラインならではの緊張感が指の動きにどう影響するか
・実況や解説、場の雰囲気が気になってミスをする場合も
・ローマ字入力に有利なワードもあればカナ入力に有利なワードもあるため、運も影響する
・相手より速いと落ち着いて打てるが、相手が同程度のスピードだと焦ってしまい、ふだんの力が出せない
・カナ入力は速いが、使用キーの範囲が広いため、正確度が低いことも

 駆け引き、少々の運、環境の違いから生じる緊張感。さっきからスポーツでよく目にする言葉がこれでもかとばかりに出てくる。

 合間を見つけて、何人かの選手や関係者に世界でのタイピングの盛り上がりについて聞いてみた。世界の中には盛んな国もあり、日本では大規模な全国大会“毎日パソコン入力コンクール”に数万人が参加している。また、強豪国はチェコらしい。強豪国!

 これ、本当にタイピングの話なんだろうか。

怒涛のような試合展開

 注目の第1試合で、いきなり予選1位通過のmiri選手が登場した。

 予選はタイピング練習サービス“e-typing”を使って行われ、ローマ字入力の上位13名とカナ入力の上位3名が決勝に進出している。miri選手はローマ字入力サイドで1位通過。スコアは2位以下に大差をつけていた。

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優勝候補筆頭には違いないが、慣れない環境でタイプミスをする可能性もある。
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指先を映すクローズアップカメラも準備。なめらかな指の動きを見たいもんな。
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大会の模様はTwitchで配信。

Twitchでの配信アーカイブはこちら

 大会はmiri選手の圧勝で幕を開けた。対戦相手のゆっきー。選手はタイピングの正確さこそ素晴らしかったものの、純粋な速度で一歩譲ってしまった。

 優勝候補がいきなり圧倒的な力を見せつける。マンガみたいな展開だ。そんなmiri選手は、試合が終わるとふつうのきれいなお姉さんに戻る。にじみ出る強キャラ感。バトルマンガだったら笑顔で敵を一蹴するタイプである。

 ちなみに、2回戦で彼女と対戦した選手は、そのスコアを見た途端に「指の感覚なくなったわ。あの速さ、何?」と、恐怖におびえる一般人みたいなコメントをくれた。

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スピードと正確性を両立させるmiri選手。正確性の項目がほぼ平坦、つまりミスがほぼない。
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これはわざとシャッタースピードを落とした写真。本当にこう見える。

 一方的な試合もあれば、ぎりぎりの接戦もある。正確性を無視した真正面からの殴り合いもあった(というか、わりと多い)。9ポイント対1ポイントという大ピンチに陥ってからの大逆転劇もあった。

 焦るとミスタイプが増え、正確度を戻そうとするとスピードが落ちる。不慣れな環境でも集中力を切らさないことが勝利の絶対条件だ。

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9対1の状況でも諦めないことが勝利につながる。

 解説の隅野氏によると、正確性を重視する対戦型の試合は珍しいらしい。トーナメント序盤はこの形式に苦戦する姿も見られたが、2回戦に入った頃には定跡が見えてきた。

 その定跡とは、前半は正確性を重視して相手にプレッシャーをかけ、途中からスピード重視に切り替えて一気にラウンドを取りに行くというもの。ほんの20~30分で戦いかたが進化した。すごすぎないか。

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指のストレッチをして静かに闘志を燃やす。

 進化のスピードに驚きながら観戦を続けていると、今度は美しいスポーツマンシップに出会ってしまった。2回戦の第4試合、paraphrohn選手 VS 珠選手の対決でのできごとである。

 1勝1敗で迎えた最終ラウンド。優勢だったparaphrohnにトラブルが発生し、キーボードが反応しなくなってしまった。マウスの誤動作でソフトのウィンドウ外をクリックしたみたいだ。

 珠選手はそのまま打ち続ければ勝てるのに、指でバツを作って仕切り直しを要求。正々堂々と戦うことにこだわったのだ。うおー!

 この勝負をものにしたのは、平静を取り戻したparaphrohn選手。珠選手は「あー、残念だったな」と笑っていた。うわー、そんなの泣くに決まってるだろ! 誰か映画化してくれ! 早く!

参加選手にも個性が出る。スター選手はどこだ

 スポーツ(eスポーツ含む)の試合では準備の待ち時間が発生しがちだ。だが、REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP 2017の場合はキーボードをつなぎ変えるだけ。試合自体も短時間で終わるのでさくさく進む。

 キーボードを見てみると、REALFORCEを愛用する人が多かった。とはいえ、それでも選手の個性は出る。スター選手が生まれそうである。

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試合前にキーボードをセットして軽く練習。使わないキーはキートップを外している。
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ビニールに入れた状態で使用。彼にとってはこれが打ちやすいのだろう。
マスクをかけた彼はベルリンで開催された世界大会にも出場したそうだ。
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スポーツウェアを着た男性。いかにも速そう(足が)。
フードをすっぽりかぶっていて、妙に迫力がある。
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このときは女性同士の対戦。隅野氏は「ふたりとも(ミスを気にしない)乱打タイプです」と評していた。かわいらしい女子がゴリッゴリの肉弾戦タイプって最高ですよね。
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ピアノの鍵盤を弾くように素振りをする。かっこいい。
試合ごとにTシャツを変えるparaphrohn選手。国際大会での優勝経験もある実力派である。
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ジャケット腕まくり。そしてなめらかに動く指。めちゃくちゃセクシーだと思う。

ローマ字入力 VS カナ入力

 熱戦につぐ熱戦で、呼吸を忘れることもしばしば。僕が死ななかったのは、試合展開が早かったからだ。おかげでインターバルまで酸素がもった。ありがとう、タイピングが早い人たち。

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命の恩人です。

 さて、いよいよ最後の戦いだ。決勝戦に駒を進めたのは、“ローマ字入力の高速女王”miri選手と“カナ入力の爆発力”muller選手。思わず異名で呼んでしまった。

 決勝戦は30ワード勝負。3倍の集中力が要求される長期戦だ。正確性を落としても挽回しやすく、また後半は多少ミスをしても正確性が落ちにくいため、一気に畳みかけるスピードが重要となる。

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miri選手。
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muller選手。

 最初は互角だった。スピード、正確性ともに高レベルで拮抗し、シーソーゲーム展開に。

 1ラウンド目の中盤からmiri選手が乗ってきた。ノリノリである。クラブで踊るパリピくらいノリノリである。徐々にリードを広げ、2ラウンドを連取。スピードに勝るはずのカナ入力を、さらなる高速タイピングでねじ伏せてしまった。やっぱりこの人、バトルマンガの登場人物なんじゃないか。

 ローマ字入力とカナ入力の頂上決戦は、ローマ字入力の高速女王に軍配が上がった。

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優勝したmiri選手には特製のトロフィーとAmazonギフト券10万円ぶん、2017年10月6日に発売するREALFORCE(R2シリーズ)が贈られた。

タイピングはeスポーツになり得る

 優勝インタビューで、miri選手は「つねに自分と戦ってるので、これからも(実力を)伸ばしていきたいです」と語った。コメントが完全にアスリートである。

 この人が打っていたのは本当にキーだったのか。もしかしてホームランとか打っていたんじゃないのか。もしくは観客の心(うまいことを言いました)。

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miri選手のタイピング歴は7年ほど。ハンゲームの無料タイピングゲーム『歌謡タイピング劇場』で腕を磨いたそうだ。

 インターバル中のトークで、隅野氏は冗談めかして「手段と目的をはき違えた人たちがここに来てます」と話していた。文字を入力するためにタイピングするのではなく、タイピングそのものが目的になっている。

 きっと、何かを突き詰めるってそういうことなのだろう。プロ野球選手に「なぜ野球をやるのか」と聞くのは野暮だ。同じように、タイパー(タイピング技術の向上を追求する人たち)にタイピングを志す理由を求めるのはナンセンスなのだと思う。

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試合後に談笑するmiri選手とmuller選手。ふたりともすごかった。

 今大会を見て、タイピングはeスポーツなのだと改めて思い知らされた。1セットが2秒で終わる世界最速のeスポーツである。

 タイピングをeスポーツとして見ると、優れた点がたくさんあることに気付く。

◆シンプルでわかりやすい

 タイピングはすごさが伝わりやすい。ふだんからPCに触れている人は、高速タイピングの難しさを知っているからだ。プレイヤーの技術のすごさがゲーマー以外に伝わりにくいというeスポーツの弱点を、タイピングは最初からクリアーしている。

 わかりやすさは大切である。ウサイン・ボルトはなぜかっこいいのか。それは誰よりも速く走ったことがあるからだ。100メートル走と同様に、タイピングもシンプルでわかりやすい。

◆男女の差があまり出ない

 人体の構造上、男女で平等に競い合えるスポーツは少ない。eスポーツは男女差が出にくい競技だが、環境面が影響してか、男性のほうが競技人口が多い。本大会でmiri選手が優勝したように、女性が活躍しやすいのもタイピングの長所だ。

◆親が子どもを素直に応援できる

 若者がどれだけゲームに真剣に取り組んだとしても、無理解な親には遊んでいるようにしか見えない。親世代の理解を得られないことは、eスポーツ界の問題のひとつである。

 その点、タイピング技術は就職してからも有効なので、親も理解を示しやすいのではないかと思う。タイパーを卒業しても、得た技術が直接的に将来の役に立つのは素晴らしい。

◆将来を担う人材がうまれやすい(気がする)

 プロゲーミングチーム運営者の中には、次世代の選手が出てこないことを危惧する人がいる。つぎからつぎへとプロ志望者が出てこないのは困る。いまのトップ選手が引退したら、業界が一気に衰退するからだ。

 大会観戦者の中には少年の姿もあった。大会スタート前のトークショーを熱心に聴いている姿を見て、胸が熱くなる。子どもが競技に取り組めるかどうかは、親が作る環境にかかっている。PC関連の技術は小さい頃から学んで損はないと思う。親御さんたち、もしお子さんがタイピングに興味を持ったら、その気持ちを大事にしてあげてください。

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この子、実際にタイピングも速かったそうです。

 以上が、初めてタイピング大会を目の当たりにした僕の感想である。法律の関係上、日本では高額賞金が出せないからeスポーツが広まらないみたいな風潮もあるが、このタイピング大会は十分に見どころがあり、盛り上がっていた。

 賞金何百万円のド派手な大会もいいが、こういうのもいい。eスポーツの懐の深さを感じる大会だった。

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おつかれさまでした。