2017年9月23日、24日に行われた、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のオーケストラコンサート“交響組曲エオルゼア”。東京国際フォーラムで『FFXIV』の楽曲が演奏されるのは、2015年1月に行われた『FF』シリーズのコンサートツアー“Distant Worlds: music from FINAL FANTASY JOURNEY OF 100”以来約2年ぶりだが、同作単独のコンサートとしては今回が初となる。大勢の『FFXIV』ファンが国内最高峰のコンサートホールに集い、このうえなくリッチな『FFXIV』サウンドに心から酔いしれた。

 本記事では、『旧FFXIV』の試験運用が始まる前から記事を担当してきた古参ライターから見た、“交響組曲エオルゼア”をお届けする。個人的な経験に基づく感情や主観が多分に含まれるため、万人に納得いただける内容ではないかもしれないが、それを踏まえたうえで読んでほしい。また、場内及び出演者の写真は、一部を除きスクウェア・エニックスから提供された公式写真を使用している。一部、キャプションの記述と写真が食い違っている箇所があるが、なにとぞご容赦いただきたい。

涙と笑いと驚きに溢れた『FFXIV』オーケストラコンサート“交響組曲エオルゼア”リポート【ネタバレ全開】_01
涙と笑いと驚きに溢れた『FFXIV』オーケストラコンサート“交響組曲エオルゼア”リポート【ネタバレ全開】_02
開場15分前の東京国際フォーラム周辺の様子。コンサートが催されるホールAはJR東京駅の側にあるのだが、行列はJR有楽町駅のすぐ近くまで伸びていた。
入場の受付が早めに開始されたようで、これでも行列がかなり短くなったのだとか。
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誘導に沿ってスイスイ進んでいくと、ここで行列が途絶えた。もうすぐ建物の中に入れるのか!? とワクワクしていると……。
ホールAの入り口周辺に列の続きが。人混みが通路をふさがないよう、係員が行列を分けていたのだ。つまり、いまはほんの第1フェーズ。この時点で、自身がコンテンツに参加していたことにいまさらながら気付く(編注:記者の主観です)。
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スタッフの先導に従い、ホールAへ。ここからが第2フェーズだ。
通路を進み、自動扉の前でしばし待機。列の流れ自体はいたってスムーズなので、じれったい気持ちにはならなかった。
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いよいよ館内フェーズへ突入。人混みの向こうが受付口だ。ドキドキしてきた!
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入館手続きを済ませた来場者は、若干(?)急ぎ足で進んでいく。理由はもちろん、物販でお目当ての品を買うためだ。
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グッズ販売コーナーは黒山の人だかり。すぐに売り切れてしまった商品もあったようで、人気アイテムの購入難度はかなり高めだった模様。直前の行列フェーズを“真”とするならば、こちらは“極”といったところ。
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ロビーには、『FFXIV』となじみの深い関係者たちから贈られた祝花が多数展示されていた。
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ついに目的地に到着! 気持ちの昂りを抑えながら座席でじっと待つ。開演時刻になると奏者の方々が登場し、最後にコンサートマスターが着座。頭の中でなぜか『勝利のファンファーレ』が鳴り響いた。
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プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏が登壇し挨拶をすると、「よしだああああ!」のコールが。この掛け声に同氏は「変わらぬ弾幕ありがとうございます」と応じつつ、「僕が歌うわけではありませんので」と苦笑い。
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カーテンコールのひと幕。左から順に歌手のスーザン・キャロウェイ、『FF』サウンドの生みの親である植松伸夫氏、吉田氏、サウンドディレクターの祖堅正慶氏、指揮者の栗田博文氏。

 開演時刻を迎え、“交響組曲エオルゼア”がいよいよスタート! 『希望の都』のファンファーレが鳴り響くと、それまで緊張気味だった場内の雰囲気が一変。東京フィルハーモニー交響楽団が奏でる力強いメロディが、ホール全体を活気に満ちたウルダハの街へと変えていった。

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 曲に合わせて、ステージに設置された巨大スクリーンに名場面が映し出される。これを観ながら演奏に耳を傾ければ、不思議なほどハッキリと、そのシーンを体験した当時の思い出が頭をよぎるのだ。たとえば『静穏の森』が始まると、黒衣森:中央森林でアートマを求めてエリアを移動していた様子が目に浮かぶし、『試練を超える力』が流れてくると、大迷宮バハムート:邂逅編でアラガンロットを受け渡す緊張がデバフアイコンつきで蘇る。

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ムービーシーンは、どれも名場面揃い。『Dragonsong』では、あの“イイ”騎士が友をかばって散るシーンも……。

 祖堅氏はかねてより「サウンドはゲーム体験に寄り添った作りであることが重要」と語ってきたが、映像と生演奏の相乗効果によって、その“寄り添いっぷり”が想像をはるかに超えたものとなっている。この不思議な気分はおそらく会場でしか味わえないだろうし、個人的にはそれを体験をするだけでもイベントに参加する価値が十分にあると感じた。

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ファンフェスティバル2016 in TOKYOで演奏したKeikoさんも、ピアニストとして参加。

 “交響組曲エオルゼア”のすごさはそれだけではない。たいていの曲目に共通して言えることだが、楽曲は意図的に2ループぶん演奏され、1ループ目はゲーム内のBGMをなるべく忠実に再現。2ループ目ではオーケストラならではのアレンジが加えられるのだ。単なるくり返しではなく、ひとつの楽曲で異なる表情を楽しむことができる。

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こちらは“交響組曲エオルゼア”のために編成されたミィ・ケット合唱団。『絢爛と破砕 〜クリスタルタワー:シルクスの塔〜』と『白銀の凶鳥、飛翔せり』でのソロは、ゲーム内で聴くのとは別格の存在感! 『英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜』のコーラスも再現度が極めて高く、鳥肌ものだった。

 また今回は、『忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜』が弦楽四重奏で楽しめたり、アンコールで『そして世界へ』と『天より降りし力』の2曲が奏でられたりと、サプライズ要素も多数用意。そうした“ギミック曲”の代表格こそ、『メビウス〜機工城アレキサンダー:天動編〜』だ。この楽曲がクライマックスに差し掛かると、突然演奏が一斉に止まり、指揮者の栗田氏を始めとする奏者の方々全員が、まったく動かなくなるのだ。

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 まるで時間が止まったかのような静寂が場内を包み込む。すると、「いち、にぃ、さん!」という楽し気な掛け声とともに客席の扉が開き、吉田氏と祖堅氏に加え、植松氏までもが楽器を手に現れた! その様子は、さながら黒衣森に住まうモーグリ族の行進のよう。

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演奏が止まっているあいだ、楽器を打ち鳴らしながらお三方が笑顔で客席を通り過ぎていく。

 この仕掛けを目の当たりにしたオーディエンスは大喜び。そうして3氏が役目(?)を終えて退場すると、栗田さんのタクトが再び息を吹き返し、何事もなかったかのように演奏が進んでいった。これぞまさに、アレキサンダー・プライム戦ならではの時間停止ギミック。吉田氏たちの粋な計らいに感激しつつ、数分のあいだ完全に動きを停止していた奏者の皆さんの徹底した“ロールプレイ”にも驚かされた。

スーザンの生歌を聴いた記者は……?

  “交響組曲エオルゼア”最大のお楽しみは、何と言ってもスーザン・キャロウェイの生歌が堪能できること。会場で聴く彼女の歌声は、力強さと透明感に満ち溢れており、ゲームやアルバムなどで慣れ親しんだものとは比較にならないほど心に響いた。

 この日彼女は『Answers』、『Dragonsong』の2曲を熱唱したのだが、個人的にもっとも印象的だったのはやはり『Answers』。筆者はこの曲で涙腺が崩壊することを予期していたので、冒頭はまだ余裕があった。ところが、いわゆるサビ(ゲーム中でバハムート・プライムがアク・モーンを放つあたり)に突入すると、押さえつけていた感情がついに爆発。吉田氏と祖堅氏が、かつて同曲の生演奏を聴いて涙したときのような思いが、どうしようもなく込み上げてきたのだ。

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バハムートの怒りとハイデリンの悲痛な叫びが、スーザンの歌声を介して場内に満ちていく……。

 個人的な話で恐縮だが、思い返せば2010年12月10日に『FFXIV』の開発体制変更が発表された際、当時の編集者に「記事作成チームも解散になってしまうのでは」と不安をぶちまけたときは、本当にやるせない気持ちになった。その後『旧FFXIV』がグランドフィナーレを迎えた直後に行われたインタビューで、吉田氏からねぎらいの言葉をいただいたときは、すべてが報われたようで泣けるほどうれしかった。そうした、ゲーム内外で味わったさまざまな喜怒哀楽が脳内で映像として蘇り、激しく心が揺さぶられたのだ。スーザンが歌う姿を目に焼き付けるべく可能な限り目を開き続けてはいたのだが、曲が終わった後も涙で周囲がほとんど見えなかった。

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動揺のあまり、サビの終わりで“フライング拍手”しそうになった。毎日のように『Answers』を聴いているのに……くっ。
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『Heavensward』演奏後に登壇した植松氏は「声に説得力がある」とスーザンの歌唱力を絶賛。吉田氏も「スーザンは僕の中ではマザークリスタル、ハイデリン」と話していた。
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スーザンは聴衆に向けて「本当に楽しかったです。ファンのおかげでここに立てています」と感謝の言葉を述べた。

 『FFXIV』記事担当者としてだけでなく、ひとりのファンとしても、“交響組曲エオルゼア”は非の打ちどころがない内容に感じられた。今回来場した合計約20000人の光の戦士たちも、涙と笑いと驚きの連続に、きっと同じ思いを抱いたことだろう。この充実した記憶が、時間の経過とともに薄らいでいくのがすごく寂しい。オーケストラコンサートの風景が収録されたアレンジアルバム、『Eorzean Symphony』の発売(2017年12月20日)が楽しみでならない。

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