マニアだからこそのこだわりが込められた作り

 2017年8月16日に配信開始されたセガゲームスの『ソニックマニア』。ドット絵で描かれたクラシックソニック(メガドライブでリリースされたシリーズ作品)23年ぶりの新作ということで注目を集める本作だが、配信に先駆けて完成版を使ったタイトル説明、そしてシリーズプロデューサー飯塚 隆氏へのインタビューの機会を得た。『ソニックマニア』にどれだけのこだわりが込められているのかがよくわかるエピソードが満載なので、本作が気になっている人はぜひ一読いただきたい。

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 まずは、タイトル説明を受け持ったセガゲームス欧米事業推進部の近藤航平氏が、実機プレイを交えながら解説。複数のステージをソニック、テイルス、ナックルズのいずれかを使ってクリアーしていくストーリーモードに加え、クリアーまでの速さを競うタイムアタックや、ふたり同時プレイでの対戦モードがあるといった基本情報が語られていった。

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▲ローカライズなどを手掛けた、セガゲームス欧米事業推進部の近藤航平氏が実機でゲーム内容を説明。

 とくに印象的なのがリバイバルステージについてで、前半のACT.1はファンなら見知ったオリジナル準拠だが、ACT.2は(オリジナルの雰囲気は保ちつつ)エネミーやギミック、ステージレイアウトが本作のために作られたものに一変する。また、リバイバルステージのBGMは過去作のBGMをリミックスしており、とくにACT.2はより大胆なリミックスに仕上がっている。近藤氏の言葉を借りるなら「ゲームとしてはシンプルなジャンプアプションだが、ギミックやゲーム内容は今風」という説明が伝わりやすいだろうか。

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▲ドット絵で描かれているが、完全に新作として制作されている『ソニックマニア』。おなじみ(だけどちょっと違う)GREEN HILL(左)や、オリジナルステージ(だけどギミックはソニック的)のMIRAGE SALOON(右)といった全24ステージ+αが楽しめる。
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▲海外では『Dr. Robotnik's Mean Bean Machine』として発売された『ぷよぷよ』が突如ボス戦として始まったり(左)、触れるとソニックが小さくなってしまう仕掛け(右)があったりと、マニア考案ならではの仰天ギミックが多数用意されている。

 ボーナスステージやスペシャルステージについても説明がなされ、前者は『ソニック3』の“ブルースフィア”を再現したもの、後者は『ソニックCD』のスペシャルステージを彷彿とさせる3Dレースとなっていることが明らかに。また、ボーナスステージをクリアーするとサウンドテストといったオマケ機能をアンロックするためのメダルが、スペシャルステージではおなじみのカオスエメラルドが入手できるとのこと。と、くれば当然、隠しステージもあるのでは? と思ってしまうが、そのあたりについてははぐらかされてしまった。腕自慢のプレイヤーは、ぜひ自分の手で確かめてみよう。

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▲球状のステージで青いボールを集めていくボーナスステージ(左)と、逃げるUFOを追いかけて3Dマップを疾走するスペシャルステージ(右)。

アメリカの飯塚氏とテレビ電話インタビュー

 続いては、アメリカの飯塚隆氏とテレビ電話を結んでのインタビューセッション。本作誕生の経緯から見どころまでを存分に語っていただいた。

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▲『ソニック』シリーズのシリーズプロデューサー飯塚隆氏。現在はセガ・オブ・アメリカにある“ソニック・ピラー”とよばれる部門に所属し、全世界のソニック関連事業のクリエイティブ面をチェックしている。

――『ソニックマニア』が企画された経緯をお聞かせください。

飯塚 私がアメリカに赴任した直後、ソニック25周年の機会に「かつては好きだったけど最近のソニックは遊んでいない」といった休眠ファンに何かを届けられないかというテーマが投げられました。結果、2Dのソニックをモバイルに移植したプログラマー、クリスチャン・ホワイトヘッドと2Dのプロジェクトを立ち上げようということでプロジェクトを発足しました。当初はシリーズの移植という話も上がったのですが、本当にファンが求めているのは、昔の記憶にあるあのステージで、新しいオドロキや体験をしたいというのが望みだろうと思い、単なる移植ではなく、すべてのステージをアレンジして、まったく新しいソフトとしました。

――制作を終えての感想をお聞かせください。

飯塚 これまでいろんなスタッフや会社と仕事をしてきましたが、今回に関してはゲームデザイナーからプログラマー、グラフィックアーティストからサウンドまで、みんながインディペンデントなマニア。アメリカ、イギリス、オーストラリアの各地から、集まった先鋭チームだったんです。それだけに、決められた期間に決められたゲームを作るという枠に収まらず、スケジュール無視でとにかく作りたがるんです(苦笑)。もうβロムが出てるのに追加をいれてくるような手の焼ける人たちなんですけど、そのこだわりや熱意はゲームを遊ぶ人たちにも伝わる仕上がりになっていると思います。

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――開発スタッフの「これをやりたい!」という具体的な要望は?

飯塚 なにしろクラシックソニックの新作を作れるということにうれしさを感じていたので、完全新規のステージは、こだわりを持って多く入れたいという希望はありました。また、キャラクターが好きな人たちなので、ソニックやテイルス、ナックルズたちのアニメを新規で書き起こしていますし、空気を吸ったり“おっとっと”パターンといった細かいパターンが、勝手にどんどん増えていきました(笑)。あまりにこだわりが過ぎるあまりステージが減る可能性があったのですが、最後の最後までこだわったので、けっきょく当初予定していたとおりのフルボリュームで作り切りました。

――飯塚さんオススメのステージを教えてください?

飯塚 『ソニックジェネレーションズ』などでも過去ステージのリバイバルは行ってきましたが、GREEN HILLやCHEMICAL PLANTのような有名なステージが多かった。そこで今回は、隠れた名ステージ的なものを取り上げるようにしました。『ソニック3』のFLYING BATTERYは、開発当時、戦艦の中と外を行き来する構成が好きだったので、今回そういった部分をリニューアルして、当時よりも遥かに面白い形にできたのがよかったと思っています。
 新規のステージとしては、MIRAGE SALOONが彼らのこだわりが強く、とくにACT.1はソニックのときとナックルズのときとでステージ構成がまったく異なっています。また、ソニックのACT.1では「新規ステージのはずだけど、これ知っている!」と思えるような、過去作からのエッセンスを取り入れているところがおもしろいです。

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▲飯塚さんお気に入りのFLYING BATTERYステージ。エッグマンの空飛ぶ要塞の中を進んでいく。

――スペシャルステージにブルースフィアが導入された経緯は?

飯塚 じつは最初はリバイバルする予定はなかったのですが、スペシャルステージの参考として実験を兼ねて移植したところ、動いたので「どうせだったら入れよう」という流れで加えることにしました。スペシャルステージについては、開発の指標として“メガドライブ以上サターン以下”としたのですが、その上限にあたるモノとして用意しました。ですので、スクロール面を傾きと回転でコースにするという当時の技術で表現し、ソニックのモデルもあえてローポリゴンとしています。

――ストーリーについて教えてください。

飯塚 ハードボイルドヘビーズというエッグマンロボが自我に目覚めて、自分たちの目的のために動き出すという基本ストーリーはチームからの提案です。それに加えて、時代の異なるいろいろなステージが繋がる必要があるため、そのギャップを埋めるためにルビーの不思議な力をキーとして取り入れました。

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▲今回の騒動の中心人物(ロボ?)であるハードボイルドヘビーズ。中ボスとしてソニックたちの前に立ちはだかる。

――読者へのメッセージをお願いします。

飯塚 2017年にドット絵の新作ゲームを出すというのは、自分の中でもチャレンジングな企画でしたが、いざ制作してみたら懐かしさ、楽しさを感じました。昔遊んだことがある人なら「これ知ってる!」、「あのステージがこんなことに!」と、いままで出会ったことのないオドロキのソニックに出会えるのでぜひ遊んでみてください。価格もお手ごろで、気軽に遊んでいただけるタイトルです。

 飯塚氏のインタビュー後には実機プレイできる時間をいただけたので、簡単にインプレッションをしておこう。この取材でもくり返し言われているように、“知っているけどまったく新しいソニック”というのが全体の印象。リバイバルステージは、昔遊んだ『ソニック』とそっくりだけど、どこかが違っているし、新作ステージは見たことがないシーンなのに、実に『ソニック』している。それが当時そのまま+ドロップダッシュといった新アクションを加えた操作で楽しめるのだから、楽しくないわけがない。また、純粋な横スクロールアクションということで、ゲームに不慣れなビギナーでも楽しめるのでは。

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▲体験プレイはプレイステーション4版、Nintendo Switch版とで行ったが、ドット絵なこともあって両方での差異はまったく感じられず。Nintendo Switch版では、Joy-Conの片方を手渡してふたりプレイが楽しめるのがナイス!

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