今度の舞台はナチスに支配されたアメリカ本土! 怒れる男BJが再び立ち上がる

 ベセスダ・ソフトワークスがE3で発表したFPS『Wolfenstein II: The New Colossus』を海外プレスイベントで体験してきたので、プレイ動画を交えつつその模様をお届けしよう。なお使用されたのはPC版で、海外仕様のものなのをご了承頂きたい(またトレイラー映像などの日本語字幕入り版が公開されているものの、厳密には本作の国内発売はまだ発表されていない)。

 今回のイベントでフィーチャーされていたのは、E3でもプレイアブル出展されていた序盤のミッション“リユニオン”と、中盤のミッション“ロズウェル”。
 本作の世界観についてあらためておさらいしておくと、未知の技術により軍備を強化したナチスドイツが第二次世界大戦を勝利した……という架空の1960年代を舞台に、主人公B.J.ブラスコヴィッチ(以下、BJ)とレジスタンスたちの闘争を描く。シリーズの前作にあたる『Wolfenstein: New Order』ではヨーロッパでのレジスタンス活動を描いていたが、今回は舞台をBJの祖国であるアメリカに移し、第二次アメリカ独立革命を目指す戦いが描かれる。

まずは変則“車椅子FPS”で肩慣らし

FPS『Wolfenstein II: The New Colossus』のプレイを海外イベントからお届け。異色の車椅子FPSから巨大ナチスロボ、ブラックな風刺までテンコ盛り!_01
▲割とズタボロなBJ。フラウ・エンゲルには「これがヒーローだって?」と爆笑される。うるせぇ!

 “リユニオン”の内容についてはすでにE3会期中にリポートをお届けしているが、あらためてお伝えすると、前作のエンディングから続く内容。前作でデスヘッド博士の野望を打ち砕くも、重度の負傷により核攻撃前の脱出に失敗した主人公BJ。“リユニオン”は、死亡したと思われていた彼が、レジスタンスが鹵獲したUボート(潜水艦)“Eva's Hammer”で目覚めるシーンから始まる。実はBJは間一髪レジスタンスメンバーによって救出され、数ヶ月間昏睡状態にあったのだ。

 感動の再会と行きたいところだが、宿敵BJを追うナチスの女性将校フラウ・エンゲルの部隊が潜水艦を襲撃しており、まずは彼らを排除しなければいけない。しかし病床から復活したBJは、数年間植物人間状態にあった前作のオープニングミッション後と同様、体力が落ち、歩くのもままならない状態。そこで車椅子に乗りながら艦内に侵入しているナチス兵を撃退していくことになる。

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▲憎きフラウ・エンゲルの舞台に急襲されるレジスタンスの潜水艦(潜ればいいんじゃないかという気がしないでもない)

 ここで触れておきたいのが、前作および本作が、FPSの始祖のひとつ『ウルフェンシュタイン3D』を持つシリーズの作品として、オールドスクール(古典的)なスタイルの現代版を目指しているということ。
 例えば体力の自動回復はなく、回復はフィールドのあちこちに落ちているアイテムを取って行うことになる。また同様にアイテムを取ることでアーマーを強化し、ダメージ低減を行うことが可能だ。銃撃戦の合間に探索を行い、サブテキストを伝える手紙や書類なども拾いつつ、アイテムゲットで次の戦いに備えたり、戦闘を有利に進める隠し通路を発見したりするのが基本となる。
 そしてもうひとつが、(実際には『ウルフェンシュタイン3D』より後のデザインなのだが)基本のゲームプレイにひと味加えるギミックがもりもりなのも見逃せない。“リユニオン”で挑む“車椅子FPS”も当然そのひとつだ。

 というわけで車椅子でのプレイだが、止まった状態からの動き出しがスローなので、飛び込んで動き回るというわけにはいかない。複数の敵が登場する場面では、撃ち漏らした敵に比較的簡単に蜂の巣にされる。なので、気付かれる前に背後からのステルスキルなどで倒して数を減らすか、マップギミックを使って倒していくというのが基本戦術になるだろう。“正面から二丁持ちでドンパチ撃ちまくる”というイメージのある本シリーズだが、実は“まずはステルスで数を減らして、行く時は盛大に行く”というスタイルが正解。この“リユニオン”は、そんな感じのバランスをチュートリアル的におさらいするステージといった感じだ。

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▲車椅子なので、階段を滑り落ちることはできるが、登ることはできない。行ったら行きっぱなしなので、敵はきっちり片付けたいところ。

 このステージでは動きが制限される分、さらなるギミックとして、設置された場所を通る人間を爆殺するマイクロウェーブ発生機が各所に用意されており、敵の動きをうまく見計らいながらスイッチを入れていけば、それなりに敵を減らすことができる(まぁ元々そんなに敵が出てこないため、ちょっと活用しづらいんだけど)。

 ラストでは、愛するアーニャとBJの感動の再会の後、カットシーンがしばらく続いて、最終的にBJとレジスタンスメンバー2名がフラウ・エンゲルの取り調べ室にとらわれてしまうという展開に。前作でBJ一行が捕まり、ひとりが処刑されたシーンの再現だ。ここでフラウ・エンゲルは処刑を止めようとした彼女の娘に対し、逆に彼女に処刑を行わせようとするのだが……というところで画面が暗転してエンド。

政治的風刺をぶっ込みまくりな“ロズウェル”潜入

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▲レジスタンスを率いるファンキー姉ちゃん、グレース。ちなみにアメリカ史的には60年代は公民権運動とベトナム反戦(時間軸的には本作よりもうちょい後)で盛り上がるはずなのだが、本作の世界ではナチスがいるのでそれどころじゃない、というのもポイント。

 “ロズウェル”のデモは、まずレジスタンス一行の会議のシーンから始まる。どうもニューメキシコ州ロズウェルにナチスの地下秘密基地があり、エイリアン由来とも言われる反重力テクノロジーを研究していることが判明。BJは消化器に偽装された小型核爆弾を手に潜入することになる。

 ここで注目したいのは、マックス・ホス(「マックス・ホス」しか喋れないが、実は鋭い直感を持つ心優しい大男)などおなじみのメンバーが集合する中、“リユニオン”ではナチス側として登場したフラウ・エンゲルの娘が会議に加わっていること。どうもこのふたつのミッションの間に、彼女が“Eva's Hammer”に身を寄せることになるようだ。
 とはいえ、リーダーのグレースにスパイ疑惑をかけられたり、なかなか悲惨な境遇な模様。このシーンは、“反差別が強まりすぎて、本来味方になる筈の人物まで「あいつら側」と糾弾してしまいがち”という現実の問題が下敷きになっているように感じた(ちなみにBJは「彼女はいい子だよ」とフォローする)。

 一方ロズウェルの町では、“白い三角頭巾のコンビ”(もちろんKKKイメージ)がナチスの警備兵に「おまえらドイツ語勉強してるか? ちょっと“ありがとうございます”って言ってみろ」「ダンケ……シューン?」「違う! やり直し!」とかわいがりを受ける言語ギャグ(アメリカ人には恐らく結構な屈辱。ちなみに正解はダンケシェーン)、将校にすり寄ろうとして適当にドイツ人以外をけなしまくったところ「総統閣下はオーストリアの生まれである! 私の祖母もそうだ!」と怒られるお嬢さんなど、キツい政治的ブラックジョークをいたる所で目にする。
 さらに映画館ではレニ・リーフェンシュタール(実在した映画監督で、ナチスのプロパガンダ映画で有名)の新作がかかっているし、白三角頭巾のコンビの会話から前作にも登場したバンド“Die Käfer”(ナチ世界版ビートルズ)が健在なことも判明するし、道端ではフラウ・エンゲルの著書が売られている。架空文化ネタが好きな人にはたまらない空間だ。

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▲市内は兵士にバレるとゲームオーバーだが、小ネタがいろんなところに仕込んであるので探索がオススメ。

 とまぁそんな感じに、この“ロズウェル”ミッション、現実の社会情勢を下敷きにした風刺とブラックジョークを盛り込みまくったハードコアな内容。しかも今回は“ナチスに占領された1960年代アメリカで、ベトナム反戦運動じゃなくて独立革命を狙う”という、二重にも三重にも捻った政治ネタなんである。

 ただし本作が発表された際に、アメリカでは現政権が何かとナチを例に持ち出されて批判されることを念頭に「ナチス狩りのゲームを作るなんて、あてつけか!」といったようなトンチキな怒り方をした人々がいたようなのだが、ご存知の通り『ウルフェンシュタイン』は1980年代からナチ殺しのゲームシリーズだし、時間的にもアメリカ大統領選の結果を見てから話を作れるわけがない。昨今アメリカだけでなくヨーロッパでも勃興するネオナチや白人至上主義、外国人排斥の気運を察知して組み込んでいるだけなのだ(ちなみに開発するMachine Gamesはスウェーデンのスタジオ)。

 クエンティン・タランティーノ監督の映画「イングロリアス・バスターズ」からの影響を感じる場面もあって、BJがダイナーで協力者と落ち合おうとするシーンでは、「うーん、ストロベリーミルクシェーキはいいね」と世間話をしながら、消防夫の扮装をしたBJに対して「ところでキミの顔に見覚えがあるんだが、どこの署の所属かな?」とじわじわ締め上げていくという、同映画に出てきたハンス・ランダ大佐のような男まで登場する(すぐ後ろにBJの手配書が貼ってあるのになかなか気付かないというギャグつき)。

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▲ナチスの科学力によって作られたルンバもどきが床を掃除していたりする。

ロズウェル奥地でナチスの巨大ロボを見た!

 ストーリー面の話が続いたので、そろそろ戦闘の話に移ろう。ロズウェルの戦闘パートは、研究施設“Area 52”(もちろんロズウェル事件で知られるロズウェルに絡めたUFOネタ)へと繋がる地下列車の強奪パート、列車内での掃討パート、そしてArea 52爆破に向けた潜入パートと、3段階のフェーズに分かれている。

 “リユニオン”で触れたように、本作は敵の攻撃が激しいので、まずはステルスアクション的にプレイして敵の数を減らすのが有効だ。特に優先して倒しておきたいのが、警報を鳴らして警備を増強してくる将校たち。
 前作に引き続いて、同じエリア内に将校がいる場合は彼らが発するシグナルを検知して、大体の方向と距離を知ることができる。シグナルを頼りに見つけ出して倒しておけば、後はドンパチしても増援が呼ばれず、比較的楽に進めるというわけだ。

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▲奥にいるのが将校。こうなった状態だと、もちろん増援を覚悟しなければいけない。

 敵の警備網をかいくぐってステルスで進んでいくのはなかなか緊張するが、一度見つけてしまえば、あとは超絶痛そうなステルス攻撃で倒したり、一撃必殺のハチェット(小型の斧)を投げたり、武器アップグレードでサイレンサーを装備したピストルやサブマシンガンで片付けたり、あるいは粘着式のグレネードを貼り付けておいて起爆したり、方法はいろいろある。

 そして厄介そうな連中を先に片付けきったり、あるいはヘタを打って侵入がバレたりしたら、覚悟を決めて圧倒的な火力で一掃するお時間。両手マシンガンや両手ショットガンで弾をひたすら撃って、とにかく倒す、倒しまくる。Machine Gamesによるウルフェンシュタインシリーズは、このステルス系の緊張から一気にテンションを爆発させる緩急が気持ちいい。

 ラストでは、ようやく施設最深部に核爆弾をセットしたところで、巨大ナチス・ロボが登場。逃げ回りながら壮絶な銃撃戦を展開……してもいいのだが、実は横をすり抜けて扉を開けて逃げることができる。「我が軍とっておきの秘密兵器いよいよ投入!」という所で無視できるという、とことんジョークを忘れない作りなのだ。

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▲一撃必殺のハチェット攻撃も重要な選択肢。
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▲進むに連れて、装甲兵は出てくるし、アンドロイド的なのも出てくるし、しまいには巨大なナチス・ロボが……。

 そんなわけで本作、シリーズ久しぶりの復活として好評を受けた前作へのセルフオマージュも捧げつつ、アメリカ激動の1960年代をナチバージョンで描き直すという表現面での挑戦もあり、ブラックジョーク増量で、敵や武器のバリエーションももちろん増えているという、実に正しい続編となっている。果たしてBJは生まれてくる我が子のためにアメリカを奪還できるのか? フラウ・エンゲルとの決着はどうなるのか? まずは日本発売の確定を待ちたい。

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▲本作では、それぞれ異なる主人公をフィーチャーした3本のDLCシリーズ“The Freedom Chronicles”の配信が予定されており、海外のプレオーダー特典では“エピソードゼロ”として序盤を体験できる模様。

※『Wolfenstein II: The New Colossus』は1960年代の仮想世界に基づくフィクションです。各名称、登場人物、団体、場所、事象は架空のもの、またはフィクションに基づく描写によるものです。本作品のストーリーとコンテンツはナチス政権の信念、イデオロギー、事象、行動、党員、行為の解釈、称賛、是認を意図するものではなく、またナチス政権による戦争犯罪や虐殺、その他人権に反する犯罪を矮小化する事を容認するものではありません。