光と音に合わせて踊るもよし、世界最強のジェットコースターで絶叫するもよし
ヨーロッパの街並み。チューリップやバラに代表される四季折々の花々。1300万球を超える世界最大級のイルミネーション……。長崎・ハウステンボスと聞いて思い描くイメージはじつに多彩だ。しかも、ハウステンボスにはゲームファンが興味を抱く、日本最大の施設がある。それは、VRアトラクション施設。意外に思われるかもしれないが、園内には約30種類のVRアトラクションが常設されており、2017年3月からは“VRの館”、”VR心霊百物語~廃病院~”、“DRAGON WORLD TOUR”の3施設がオープン。アトラクションに応じて、OculusやHTC Vive、FOVEなど、さまざまなHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を採用。特筆すべきはファミリーでも楽しめる点で、8歳以上であればお子さんも体験できるVRアトラクションが充実しているのはハウステンボスならではと言えるだろう。さらに、この夏には新たなVRアトラクション“バハムートディスコ”と“VR-KING”が登場。本稿では、VRアトラクションを中心に、実際に訪れてわかったハウステンボスの魅力を紹介していこう。
ちなみに、ハウステンボスでは2014年7月にゲームミュージアムをオープンしている。詳細はコチラの記事を参照してほしい。
■ゲームの現在・過去・未来が一挙集結! “ハウステンボス ゲームミュージアム”オープン初日の様子をリポート!
・光と音に合わせてビートを刻む新感覚VRアトラクション“バハムートディスコ”
ハウステンボスとスクウェア・エニックスの共同開発による体感型音楽VRアトラクション、“バハムートディスコ”。ヘッドマウントディスプレイを使わずにVR体験が楽しめる新感覚のアトラクションで、前後左右の360度、そして下面の90度を加えた“450度”の映像空間を舞台に、音楽に合わせて踊るように楽しめることが特徴だ。VR空間の中、光と音に合わせてビートを刻んで遊ぶ、と言えばわかりやすいかもしれない。年齢制限はなく、最大4人でのプレイが可能で、それぞれ赤、青、緑、黄色の4色のいずれかのスティック型デバイスを片手に装着。画面に表示された自分の色のターゲットをデバイスを振って“斬る”ことで、ターゲットが破壊されて消える仕組みとなっている。
プレイがスタートすると、前後左右、そして下面に一体化された映像が映し出され、光と音に包まれる。ヘッドマウントディスプレイを装着していないにも関わらず、没入感は非常に高く、違和感はまったくない。まるで宇宙空間に自分がいるような感覚でプレイが楽しめるのだが、ターゲットは目の前はもちろん、四方八方に動きまわるので、腕を振るだけではなく、プレイヤーが移動しながらターゲットを補足する必要がある。この仕組みが絶妙で、最初は機械的な動きで腕を振るだけなのだが、慣れてくると踊るようにアクションを行えるため、まさに“ディスコ”状態で楽しむことができる。女性どうしやカップル、家族連れでプレイすれば楽しさは倍増することだろう。楽曲については、覆面EDMユニット“CTS”がサウンドプロデュースを手掛けており、プレイ時にはアレンジが加えられた『LIFE』、『奏(かなで)』、『気分上々↑↑』、『ヘビーローテーション』、『残酷な天使のテーゼ』、『千本桜』の中からランダムで2曲が流れる仕様となっている。2017年7月1日にプレオープンとなり、7月15日から本稼働となっている“バハムートディスコ”。2時間ほど取材をさせていただいたのだが、訪れる客層は家族連れが多く、またどのお客さんも部屋から出てきたときに笑顔となっていたのが印象深い。
“バハムートディスコ”の制作経緯や反響について、開発を手掛けたスクウェア・エニックス プロデューサー伊藤一紀氏とディレクター 永井裕也氏に話を聞いた。
――まずは“バハムートディスコ”開発の経緯についてお聞かせください。
伊藤一紀氏(以下、伊藤) スクウェア・エニックスは家庭用ゲームソフトやスマホアプリを中心に作っておりますけども、ロケーション型の、場所で楽しめるアトラクション体験をお客様に提供したいというのが会社としてというよりも、チームとしてありました。いっしょに取り組めるパートナー様を捜していたのが約2年前でして、その中でハウステンボス様が「ぜひいっしょに」と手をあげていただいて。それからはスピード感を持って取り組みさせていただいています。
――“バハムート”と“ディスコ”という組み合わせはすごく斬新ですが、コンセプトはすんなりと決まったのでしょうか?
伊藤 コンセプトは苦しみましたね。ハウステンボス様からは、20代から40代の女性をターゲットにしたいとご提案をいただきました。「スクウェア・エニックスらしさを出してほしい」というご提案も同時にいただきまして、思考錯誤した結果、音と光の空間を舞台に“バハムート”を取り入れ、このようなアトラクションとなりました。
――遊ばれた方の反響はいかがですか?
伊藤 おかげさまで好評をいただいています。ネガティブな意見がほとんど出ていないのはありがたくもありますし、少し怖いところでもあります(笑)。
――子どもも楽しめるVRアトラクションということで、家族連れのお客様が多いですね。
伊藤 ヘッドセットを付けたままですと行動が制限されたり、お子様がプレイできないという制約がありますが、お子様からお年寄りの方まで、幅広い年齢層の方が体を動かして楽しめるアトラクションを提供したいという考えがありました。
――楽曲はどのように決められたのですか?
伊藤 誰でも知っている曲、という狙いがありました。ターゲットの20代から40代の女性層になじみのある曲にしたいということもあり、EDMのアーティスト“CTS”にアレンジをしていただいています。
――プレイすると思った以上に汗だくになりますね(笑)。
伊藤 なかなかここまで体を動かすタイプのゲームはないと思います。
永井裕也氏(以下、永井) 声を出して楽しんでもらえればと思います。
――ゲームエンジンにUnreal Engine 4を採用されていますが……。
永井 グラフィックの表現を一段階上げるためにUnreal Engine 4を選ばさせていただきました。
――ヘッドマウントディスプレイを装着せずに遊ぶVRアトラクションというのは当初のコンセプトにあったのでしょうか?
伊藤 いえ。最初に決まっていたのは、5面で遊ぶアトラクションを作りたい、ということでした。
永井 “450度”の映像空間を活かすためですね。ひとつの画面だけを使うと、いわゆるふつうの音楽ゲームとなりますが、せっかくの5面空間ですので、アトラクションのような体感を得ながらリズムに乗って楽しめる、5面すべてを使った音楽ゲームという形にしました。
伊藤 システムとしておもしろいものになったと思います。5面を使ってお客様が体を動かして遊ぶ。この仕組みはいろいろなところで広めていきたいですね。
――最大4人でのプレイというのはアトラクションとして意識されたのですか?
永井 人数に関しましてもいろいろと試行錯誤しました。結果、いちばんバランスがいいのが4人だったんですね。また、アトラクションということで4人家族で楽しんでいただけるものにしたかったという考えもありました。
伊藤 アトラクションという意識としては、回転率も考慮しています。
――予想外だった反応はありましたか?
永井 予想外にご好評をいただいていることですね(笑)
伊藤 ネガティブな声が出てないないことでしょうか。そのほか、“バハムートディスコ”にはスクウェア・エニックスのゲーム曲を入れていないので、そういったものがほしいという要望はうかがっています。……意外だったのは、大人の方よりもお子さんのほうがスコアが高いことでしょうか(笑)。
永井 “バハムートディスコ”をより高いスコアでクリアするいちばんの秘訣は、体を動かして楽しんでもらうことです。お子様のほうがより直感的に、より体を動かして楽しんでいただいているのかもしれませんね。
――楽曲の追加は予定されているのですか?
伊藤 曲は増やしていきたいですね。たとえば、クリスマス時期にはロマンティックな曲を追加する、ですとか。
――ハウステンボスは海外からの観光客も多いですが、海外のお客様の反響はいかがですか?
伊藤 ゲーム中の言語は日本語しかありませんが、問題なく楽しんでいただけていますので、直観的な遊びというのは国内外問わず受け入れられると感じました。
――100%クリアー(完全クリアー)を達成された方はいるのでしょうか?
伊藤 すでにいらっしゃいます。Twitterでつぶやいていらっしゃいました。
――(笑)。ゲーム終了後、記念撮影できるのもアトラクションらしくていいですね。
伊藤 “バハムートディスコ”のプレイ空間は異空間だと思いますので、魅力的な写真が取れると思います。
永井 写真はゲームプレイ中に、ひとりずつ4枚を撮影しています。プレイ後は全員で記念撮影ができるものです。写真の背景は曲によって異なっており、バリエーションが3パターンありますので、ぜひ揃えてみてください。
・世界最高、世界最速、世界最長! ライド型VRアトラクション“VR-KING”
2017年8月1日にプレオープンするライド型VRアトラクション“VR-KING”は、世界最高、世界最速、世界最長を同時に体験できる、世界ナンバーワン、世界最強のジェットコースター。オープンに先駆けて特別に体験をさせてもらったのだが、まず驚いたのがその高級感。ソフトウェア、ハードウェアともに老舗のジェットコースター制作会社が手掛けていることもあり、作りは本物そのもの。また、体感も本物のジェットコースターそのもので、VRの映像とともにシートが前後左右に傾くことに加え、車体自体がレールを前後に移動するため、ジェットコースーターならではの振動や風を感じられるようになっている。そのため、没入感、臨場感はとても高く、体験会に参加した女性記者が絶叫していたほど。
ヘッドマウントディスプレイに映し出されるのは、ビル街や渓谷、花畑や森林、洞窟や水上といった、通常のジェットコースターではなかなか考えられないような特別なシチュエーションとなっており、“VR-KING”だからこその体験が味わえるようになっている。ハウステンボスが掲げる“ナンバーワン、オンリーワンの体験”をまさに具現化したアトラクションと言えるだろう。“VR-KING”は8歳以上が対象年齢となっているものの、それ以外の制限はない。“通常のジェットコースターのように身長制限に引っかかるから子どもといっしょに乗れない”、ということはないので、家族連れの方にぜひ体験してもらいたい。
いずれもハウステンボスでしか体験できないアトラクションなので、夏休みにどこに行こうか悩んでいる人は、訪れるのを検討してみてはいかがだろうか。せっかくなので、以下ではこの夏オススメの、そのほかのハウステンボス施設を写真とともに紹介していこう。
・日本最大級の水遊び“水の王国”(開催期間:2017年7月1日~9月10日)
さまざまなウォーター施設が立ち並んでいることも、夏のハウステンボスの魅力のひとつ。なかでも注目は、日本最大級となる約100メートル×50メートルの巨大な海上アスレチック施設、“海上ウォーターパーク”。約50個のフロートが用意されており、フロートの上で飛び跳ねたり、ジャンピングスライダーから海にダイブしたりと、子供から大人まで“水の遊び”が楽しめる。そのほか、場内には日焼けを気にせず夜に遊べる“光るナイトプール”があり、こちらは女性どうしやカップルにオススメ。
・夜空を彩る動くイルミネーション“ドローン・ショー”(開催期間:2017年7月22日~8月5日)
300機のドローンが夜空を彩る、日本初となる近未来“インテル(R) Shooting Star(TM)ドローン・ライトショー”。これは、本当にすばらしかった! 記事を書いておいてこんなことを言うのは問題があるかもしれないが、写真では魅力はほとんど伝わらないだろう。ぜひハウステンボスにて実際に自身の目でこの体験を味わってもらいたい。花火とも夜景とも違う、まったく新しい光のエンターテインメント。それが“ドローン・ショー”だ。近未来を感じさせる内容で、たとえるならば目前で良質のSF映画を観ているような、これまでに感じたことのない不思議な感動が味わえる。ホワイト、ブルー、レッドなど、色鮮やかなLEDの光を宿した300機のドローンが空を舞う姿は圧巻のひと言。ハウステンボスを訪れた際は必ずご覧ください!
・長崎ならではの味
最後に、ハウステンボスでの食事について述べたい。オススメは、長崎ならではの味。取材中の2日間、筆者が食したメニューを紹介する。
自家製えび油香る うちわ海老ちゃんぽん(ちゃんぽん専門店 悟空)
レモンステーキ(ステーキ&ハンバーグレストラン ロード・レーウ)
佐世保バーガー(佐世保バーガー認定店 エバーカフェ)