“次世代機”ではなく、あえて“上位機種”としてリリースする理由とは?

 E3 2017の会期に合わせて、マイクロソフトのゼネラル マネージャ フォー Xbox プロダクトサービスのデイヴ・マッカーシー氏に単独インタビューをする機会を得た。提供されたバイオグラフィーによると、デイヴ・マッカーシー氏は、Xboxオペレーターの責任者として、Xboxプラットフォームの戦略を立てる立場にあるようだ。スタジオとプラットフォームの仲立ちをする役割も担っているようで、Xboxプラットフォームの重要人物のひとりと言える。そんなデイヴ・マッカーシー氏にE3 2017で正式発表されたばかりのXbox One Xのことを中心に聞いた。

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Xbox One Xがユーザーと開発者にもたらすもの マイクロソフトのキーパーソンが戦略を明かす【E3 2017】_01

――“Xbox E3 2017 Briefing”を楽しませていただきました。

デイヴ そうですね、全体的に、いままでとは違うショーでした。アプローチが違いましたね。世界でもっともパワフルなコンソール、Xbox One Xをご紹介しただけでなく、42タイトルというこれまでで最大のラインアップをお見せできました。うち22タイトルはXbox Oneシリーズエクスクルシブです! インディーゲームからトリプルAタイトルまで、世界中のすべてのタイプのゲームファンにふさわしいタイトルを用意してお見せできたことは、すばらしいと思いました。

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――Xbox One Xに対して大きな手応えをお持ちのようですが、Xbox One Xがもたらすものとは、端的に言ってなんでしょうか?

デイヴ 真の4Kゲーミングです。市場にあるコンソールマシンに比べて、プロセッシングパワーが40%アップしています。6テラフロップのGPU、HDRワイドカラー・ガマット、スペシャルオーディオ(Dolby ATMOS)を搭載しています。800万ピクセルが画面に表示されるだけでなくて、ハイエンドタイトルから期待されるものはすべて提供します。それと同時に、Xbox Oneユーザーの皆さんがいまお持ちのゲームは、そのままの状態でよりよいゲームとして楽しめます。ロードタイムが速くなり、フレームレートが安定し、ダイナミック・レゾリューションによりテクスチャーが鮮明になります。『Gears of War 4』や『Forza Horizon 3』など、一部のタイトルは、無料で4Kアップデートされます。個人的には、私の好きなゲームのひとつ『Forza Motorsport 7』がオープニングアクトを飾ったのはうれしかったです。あと、エレクトロニック・アーツとバイオウェアの『Anthem』もよかったです。いずれにせよ、すべてのゲームが以前よりもよく見えることは確かですね。

――Xbox One XはXbox One用ソフトとの完全互換を謳っていますが、Xbox One Xにとってはそれが足かせになるということはないのですか?

デイヴ それは、今日では、多くのデベロッパーがすでにPCで行っていることです。デベロッパーは、さまざまなハードウェアの仕様に対応して開発しています。ハイエンドなグラフィックスカードなどの優位性を十分に利用しているんです。Xbox Oneでは、どのマシンを使っているかを判断して、特定の機能をアンロックするのです。異なるバージョンを作る必要はありません。ひとつのバージョンを作れば、マシンのほうで判断してくれるんです。これはPCでやっていることとあまり変わりません。その能力がコンソールに備わったということですね。デベロップメントパートナーからは、ほとんどの場合、開発中のゲームを1~2日でXbox One X上で動かせるようになると聞いています。したがって、デベロッパーは、彼らが必要と思うさまざまな能力にオプティマイズ(ソフトウェアが効率よく動くように調整すること)することに時間を使えるわけです。

――これだけハイスペックになると、“次世代機”でもよかったのではないかと思うのですが、なぜ“アップグレード版”という位置づけにしたのですか?

デイヴ ふたつのよいところを取ろうとしたためです。まずは、いまのハイエンドPCから得られるパワーとパフォーマンスをすべて提供したいと思ったんです。デベロッパーは、ハイスペックなPCの機能を活かして、クリエイティビティーを発揮できますが、それをコンソールでもやりたいという要望をいただいていました。“次世代機”と呼ばない理由は、モデルを変えて互換性を持たせて、ライブラリを維持していただきたかったからです。音楽やビデオ、電子書籍はデバイスが変わってもそのままコンテンツは使えます。ゲームもそうであってほしい。今回初代Xboxの『クリムゾンスカイ:ハイ ロード トゥ リベンジ』がXbox Oneでもプレイできるようにしたのも、そのポリシーに連なるものです。Xbox One Xは異なるモデルです。全体的にその思想はPCの世界で親しまれてきたものに近いと思っています。とにかく互換性は維持したかった。それが価値のあるものだからです。

――今後の家庭用ゲーム機は、“次世代機”ではなくて、“アップグレード版”として、ハードは発売されていくということでしょうか?

デイヴ 将来のことについてはわからないのですが、Xbox One Xを開発しているときに、デベロッパーの皆さんにうかがったときの意見は明確でした。「真の4Kに向いたい」と言われたので、それを取り入れたのです。それがトレンドかどうかは別にして、自分がワクワクしていることは確かです。未来のことはわかりませんが、いろいろなタイプの人たちによって、さまざまなゲームが支持されています。コミュニティーを大々的にフィーチャーしたゲームもいままでよりも増えていて、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』は、そのよい例です。PCユーザーにあいだで話題を呼んでいる同作は、コンソールゲーマーにはあまりなじみがありませんが、これから大人気を獲得するはずです。

Xbox One Xがユーザーと開発者にもたらすもの マイクロソフトのキーパーソンが戦略を明かす【E3 2017】_03

――金額設定が499ドルで、少し高めという印象がありますが、金額設定についてはいかがですか?

デイヴ ユーザーの皆さんに選択肢を提供することは重要です。現在市場に出ているXbox One Sは、HDRゲーミング、4Kストリーミング、4K Blu-ray(Ultra HD Blu-ray)をサポートしています。これで価格は249ドルです。ちなみに、いま明確になっているコンソールで4K Blu-rayのサポートを謳っているのは、ふたつのハードだけです(Xbox One XとXbox One S)。
 一方で、Xbox One Xはプレミアムなゲーミング経験をお届けするハードです。これまでハイエンドPCのみが提供できたことを、コンソールで実現したわけです。この価格で、これだけのパワーとパフォーマンスを提供しているハードは市場にはありません。そのうえで、互換性を実現することで、すぐにでも遊べるゲームと使えるアクセサリーがたくさんあります。価値観によって購入するものは違ってくるわけですが、まずはXbox One Sを遊んで、そのあとで上位機種に移行しても、同じソフトで遊べるわけです。

――クリエイターがXbox One X向けにゲームを開発するのは、そんなにたいへんではない?

デイヴ 最初のころのフィードバックでは、開発が早く始められると聞いています。これまでもPCベースで開発作業をしていたので、4K用のアセットをすでに持っており、お披露目する機会を待っていた状態です。早いフレームレートでゲームを動かすエンジンも持っています。これから、クリエイターがさらにマシンのポテンシャルを引き出す努力をしていくと思います。これまでの世界中のデベロッパーの反応はとてもいいですよ。

――『Gears of War 4』や『ファイナルファンタジーXV』が、4Kアップグレード対応を無料で行いますが、これは技術的にたいへんなことなのですか?

デイヴ 4K用にアセットの書き直しを行うだけで、けっして難しくはありません。対応するかどうかはデベロッパーが決めることですが、エンジンが4Kアセットに対応できるかどうかにかかってきます。多くのゲームエンジンはサポートしていますが、そうではないものもありますので……。ファーストパーティータイトルも、すべてが4Kにアップデートされるというわけではありません。ちなみに、ユーザーさんはダウンロードすればいいだけなので、簡単ですよ。

――Xbox One Xは、日本市場にどのような影響を及ぼすと思いますか?

デイヴ 日本のデベロッパーは、つねにイノベーションの先駆者だったと思います。“Xbox E3 2017 Briefing”では、『ドラゴンボール ファイターズ』や『CODE VEIN』などをご紹介させていただきました。日本のデベロッパーコミュニティーが、これからXbox One Xで何をやってくれるのか、楽しみにしています。日本のゲームにはストーリーテリングの豊かな歴史があり、没入感が高く、プレイヤーを引き込むゲームにつながっています。日本のデベロッパーは奥の深いサスペンスを描き出す非常にすぐれた才能を持っており、Xbox One Xは彼らに有益なものをもたらしてくれるはずです。

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