トンカツ? カツ丼?

 巷で話題のバトルロイヤルシューター『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズ・バトルグラウンズ)』。日本語版の勝利メッセージ、“ドン勝(かつ)”の謎に迫る。

意味は? 誤訳か? 『PUBG』を象徴する単語“ドン勝(かつ)”の謎に迫る_01

 ゲーマーのあいだで最近よく話題にあがる単語“ドン勝(かつ)”。ドン勝とは、Steamで配信中のTPS『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズ・バトルグラウンズ)』(以下:『PUBG』)にて勝利したプレイヤーの画面に表示されるメッセージ(日本語版)、「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」を指す。『PUBG』の開発を手掛けるのは、韓国のBlueHole。孤島に放たれた100人のプレイヤーが最後のひとりになるまで殺し合うという、高見広春の小説『バトル・ロワイヤル』を彷彿とさせるゲーム内容で、勝利時には「やった! ドン勝だ!!」と絶叫するプレイヤーも多い。同時接続数が20万人を突破するなど、大きな注目を集めているシューターであり、それゆえに“ドン勝”という単語が話題となっている。ただ、何も知らない人からすると“ドン勝”という聞きなれない単語には驚きを隠せないし、どんな意味があるのか気になるところ。そもそも誤訳なのではないのか、という疑問も残る。そこで、まずは英語版の勝利メッセージを調べてみることにした。

 英語版での勝利メッセージは「WINNER WINNER CHICKEN DINNER!」。このメッセージは有名なもので、カジノのブラックジャックで勝利したときに使われる言葉が由来となっている。なぜ「CHICKEN DINNER」と言うのかというと、昔はブラックジャックの最低賭け金が2ドルで、カジノのホテルやレストランではチキンディナーが2ドルで提供されており、勝敗がついた際にディーラーが「やったね、勝者はチキンディナーが食べられるね」と言い始めたのがきっかけのようだ。カジノで大金を稼いだという実話に基づくサスペンス映画『ラスベガスをぶっつぶせ』の中でも、ディーラーが「Winner Winner Chicken Dinner」と言っているシーンがあり、このセリフは多くの方が知るところである。

 話を戻そう。「Winner Winner Chicken Dinner」を日本語に訳す際、「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」になったと予想されるが、なぜ“ドン勝”となったのか? 語感で思い浮かぶのが「トンカツ」だ。日本では、受験生が“受験に勝つ”べく、ゲン担ぎで“トンカツ”を食べることがあることから、翻訳時に「夕飯はトンカツだ!!」とするはずが、“ドン勝”になってしまったのではないか。もしくは、“カツドン”を”ドンカツ”にしたのではないか? また、韓国ではトンカツのことを“Donkatsu”と呼ぶという説もあり、韓国語と日本語が入り混じって“ドン勝”となったのではないか、と考えている方もいる。

 ……しっかりとした答えが得られないまま、ドン勝の謎を追いかけ続けていたとき、Twitterにて衝撃のつぶやきがなされた。『PUBG』開発会社BlueHoleのLead Community ManagerであるSammie | poopieQueen氏は、ファンからの「ドン勝は正しくはカツドンです。でも私たちは“ドン勝”を愛しているから修正しないで」というつぶやきに対して、以下のように答えたのだ。

 「Yeah, it was intentional hehe. Mistranslated for fun! We won't change it. And now I'm hungry...」。日本語に訳すとつぎのようになる。「うん、それは意図的な間違い。楽しむために間違えたんだ!私たちはそれを変更しません。そしていま、私は空腹です...」。
 つまり、BlueHoleは誤訳だとわかっていながらも、日本のプレイヤーに楽しんでもらうためにわざと“ドン勝”にしたということになる。現在、日本の『PUBG』プレイヤーには“ドン勝”という単語が浸透し、『PUBG』自体を“ドン勝”と呼ぶ人がいるほど。コンソール版の発売も期待されているが、“ドン勝”もそのまま移植されることを多くの人が祈っていることだろう。