BitSummitでのインディーゲームは年々クオリティーアップしている

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 2017年5月20日、21日に京都勧業館 みやこめっせにて開催されたインディーゲームの一大祭典“A 5th of BitSummit”。ここでは、会期中に行った、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏へのインタビューをお届けしよう。吉田氏と言えば、ゲーム好きにして、インディーゲームの理解者としてもおなじみ。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのインディーゲームへの取り組みや、プレイステーション VRのことなどについて聞いた。

――まずは、“A 5th of BitSummit”への感想からお聞かせください。

吉田 毎年思っていることなのですが、今年もまた出ているゲームのクオリティーが全体的に上がっていましたね。これまでは、どこか素人っぽい作品が混じっていたのが、それがどんどんなくなっていっていて、「このままふつうにリリースできるのでは?」というタイトルがほとんどでした。1個1個感心させられるアイデアの入っているゲームが多くて、「これ1本」ということが言えないくらい、全体のクオリティーが上がっているという印象を受けましたね。

――それは、インディーゲーム全体の開発が底上げされているということですかね。

吉田 そうですね。若い人もベテランの人も、より多くの人が参加してきているんじゃないかなと思います。あと、時間をかけて作っているタイトルは、年を追うごとにクオリティーがどんどん上がっていっていて、より練り込まれた形で出ているものが増えている傾向はあるかもしれませんね。

――今年もプレイステーションはブースを出展していますが、手応えはいかがですか?

吉田 ありますよ! さらに言えば、任天堂さんや日本一ソフトウェアさんも出展を果たしてしいて、そういった意味では業界全体を通して、インディーゲームに力を入れているという空気が伝わっているのではないでしょうか。盛り上がり感はあると思いますね。

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▲プレイステーションブースは、プレイステーション4リマスター版『パラッパラッパー』がプレイできる“デカコントローラー”なども展示され、大盛況だった。

――たしかに、任天堂もインディーゲームに積極的に取り組んでいるという印象がありますね。インディーゲームデベロッパーもNintendo Switchには積極的なようです。

吉田 すごくいいと思いますね。うちはインディーゲームクリエイターへのサポートを、これまで一生懸命やってきていて、すごくいいインディーゲームをたくさん出していただいているのですが、任天堂さんも、最近はすごくいいインディーゲームデベロッパーさんにアプローチされて、ミドルウェアのサポートもできるだけ早いタイミングで、ということで努力されているようですので、それはインディーゲーム業界にとってもすばらしいことだと思います。

――インディーゲームの活性化にもなると?

吉田 任天堂さんのユーザーさんとプレイステーションのユーザーさんは重ならない部分もけっこうありますから、それだけ多くのユーザーさんにゲームを届けることができるじゃないですか。Nintendo Switchは、インディーゲームデベロッパーからすると、移植がしやすいという側面もあるのではないかと思います。

――プレイステーションブースで、オススメのタイトルを教えてください。

吉田 本当にいろいろありまして……。今年はプレイステーション VRも出展しているのですが、VRで言えば『STIFLED VR』という、シンガポールのGattai Gameというスタジオのゲームに注目していただきたいですね。真っ暗な中で音を出すと反響で距離がわかるので、音を出してプレイを進めていきます。音は出してもしゃべってもいいのですが、そうすると周りに波形みたいなものが出て、まわりがほわっと見えるんですね。敵の場所なども察知できる。それで周囲を探りながら脱出していくという、サバイバルホラーアドベンチャーゲームです。でも一方で、音を出すと敵にも見つかってしまうわけです。それで隠れながら……という。すごくドキドキします。スリルがあるゲームで、敵もアーティスティックな線画のようなんです。テレビでも遊べるゲームなのですが、VRだとまさに自分がその空間に入っていったかのような恐怖感が増す感覚があって、『STIFLED VR』はすごくオススメですね。

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▲吉田修平氏の“A 5th of BitSummit”オススメタイトルその1 『STIFLED VR』 シンガポールの開発スタジオGattai Gameによる、一人称視点のサバイバルホラーアドベンチャーゲーム。プレイステーション VR版は2017年配信予定。

吉田 VR以外のゲームで言うと、私が見て「あっ」と思ったのは、スペインのデベロッパーが作っている『RiME』というゲームです。少年が海岸で何かを探して冒険するというもので、ゲームシステムが『ICO』を彷彿とさせるアクションアドベンチャーです。同作は、もう何年も作られているみたいなんですよ。たぶん発売が近づいていると思うのですが、同作がオススメですね。

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▲吉田修平氏の“A 5th of BitSummit”オススメタイトルその2 『RiME』 トゥーンタッチのビジュアルが特徴のパズルアドベンチャー。開発を手掛けるのはスペインの開発スタジオGrey Box。5月26日配信予定。

吉田 それと、『ABZÛ』。こちらは海外ではリリースされているのですが、『風ノ旅ビト』を作ったチームのアートディレクターが独立して立ち上げた、ジャイアントスクイッドというデベロッパーの1作目となります。海の中を旅する『風ノ旅ビト』的な作品で、美しい青だとか緑だとか、ものすごくきれいなところを泳いでいって、アイテムなどをアンロックして、自然を浄化して……というゲームです。ゲームシステム的には『風ノ旅ビト』よりは『 Flowery(フラアリー)』も汚れてしまった土地をキレイにして、花を咲かせるというシステムだったのですが、それに少し雰囲気が似ていますね。その音楽を、オースティン・ウィットニーという『風ノ旅ビト』ですごくいい曲を書いた作曲家が担当しているんですよ。ですから、非常に美しいビジュアルと、キレイな音楽ですごく気持ちよく遊べるというタイトルが、日本でもいよいよリリースされます。

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▲吉田修平氏の“A 5th of BitSummit”オススメタイトルその3 『ABZÛ』 美しい水中世界を自由に探検できる夢のようなダイビングアドベンチャーゲーム。国内での配信は2017年夏予定。

――吉田さんがオススメになると、いずれも楽しそうで、全部遊びたくなってしまいますね……。

吉田 いえいえ(笑)。本当にゲームの話しをするのが好きなので。あと、私は気づいてなくて、今回ここへ来て、「あっ!」と思ったのが『Tokyo42』というタイトルです。上からの見下ろしビューで、3Dのサンドボックスのようなゲームで、すごいスタイリッシュ。あれ、おもしろそうですよね。すごい目立つというか……。すごく気になるゲームですね。あまり遊ぶ時間はなかったのですが、もう少しじっくり遊んでみたいです。

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▲吉田修平氏の“A 5th of BitSummit”オススメタイトルその4 『Tokyo42』 犯罪の濡れ衣を着せられた主人公が隠された陰謀を暴くために、東京の街を探索していくアクションゲーム。開発は兄弟で作ったSMAC Games。配信は6月予定。

――そういう良質なゲームがつぎつぎとプレイステーション4に集まってきている感じなのですね。

吉田 デベロッパーさんは、最初はPCベースで開発するかもしれないのですが、プレイステーション4も全世界的に普及してきているので、“リクープ”ということを考えたときに、つぎはプレイステーション4とか、プレイステーション VRで……といった感じで、考慮していただいているようなんですね。プレイステーションプラットフォームを選択肢に入れていただいているのは、すごくありがたいです。

プレイステーション VRは品薄状態は解消されつつある

――せっかくの機会なのでお伺いしてしまうのですが、プレイステーション VRの現状に関してはどのように思っていらっしゃいますか?

吉田 昨年は“VR元年”として、業界として初めて入っていくというのもあったので、盛り上がりはありましたが、実際の需要という意味では、我々の想定を越える需要があったんですね。それで「買えない」ということで、購入を希望される方にご迷惑をおかけすることになってしまいました。

――たしかに相当な品薄状態でしたね。

吉田 途中で製造数を増やしていったので、我々が昨年の発売前に想定していた規模は優に超えているんですね。4月くらいから数を増やしてきているので、今後は供給不足も少しずつ解消していくのではないかと思っています。いまは、毎月1回、まとめて出荷しているのですが、私もその日に量販店に足を運んでみたりしているんです。そのときに、抽選の“当選者発表”が張り出されますよね?それを見ると、3月までは“1、7、10……”みたいな感じで、相当狭き門だったのが、4月以降は買えている人がかなり増えてきている印象です。今後さらに増やしていくので、さらに買いやすくなるのではないか、と期待しています。

――昨年が“VR元年”だとすると、今年はどのような位置づけなのですか? まあ、単純に言えば2年目ですが……。

吉田 これはプレイステーション4も同じなのですが、システムソフトの面では、さらにアップデートしてよくしていきますし、どんどんソフトの新しい体験を提供する年になりますね。

――6月には『Farpoint(ファーポイント)』などを始め、プレイステーション VR用タイトルが数タイトルリリースされ、6月はさらに盛り上がりそうですが。

吉田 そうですね。『Farpoint(ファーポイント)』は海外では5月16日に発売して、日本では6月22日に発売します。それに合わせて、新しいペリフェラル(周辺機器)の“PlayStation VR シューティングコントローラー”を発売します。あれを持ってプレイすると、まさに思っているそのままの動きが体験できて、すごく遊びやすいんですね。『Farpoint(ファーポイント)』は“PlayStation VR シューティングコントローラー”で遊ぶと、“そこにいる感”、“センス・オブ・プレゼンス”がさらに高まります。体験としてさらにランクアップするんです。ここはひとつ盛り上げどころというか勝負どころとして捉えていますし、すごく期待しています。

――最後に少しE3のことを……。いよいよE3が間近ですが、今年のE3も期待していい感じですか?

吉田 E3はお祭りみたいなものですよね。すごく注目していただけますし、スタジオのメンバーもがんばっていますよ。ですから、期待していただいていいと思います。

【A 5th of BitSummitインタビュー】
※須田剛一氏に聞く リメイク版『シルバー事件25区』に対する思いとは?「2018年にはリリースしたい」
※任天堂のインディーゲーム担当に聞く 「Nintendo Switchに興味を持ってくれるインディーゲームクリエイターは多い」