書けない話、多すぎた

 2017年4月16日、東京・新宿ロフトプラスワンにて、『ダンガンロンパ』シリーズの生みの親・小高和剛氏(スパイク・チュンソフト)の著書『ダンガンロンパ小高~『ダンガンロンパ』を作りながらの890日~』の発売を記念したトークイベントが開催された。イベントの前売りチケットは、抽選で完売するほどの人気ぶり。ちなみに、特典として入場者には『ダンガンロンパ小高』の小高氏直筆サイン入り本が渡されるという、お得なイベントになっていた。イベントは小高氏に加え、ゲーム好きで知られる女優・タレントの結さんが司会として出演。結さんは、『ニューダンガンロンパV3』のキャラクター、春川魔姫のコスプレで司会を務めた。さらに、3部制でそれぞれゲストが異なるという豪華な内容……なのだが、新宿ロフトプラスワンで行われるイベントらしく、出演者がお酒を飲みながらトークをしたため、ヤバイ話題の嵐に……! そんなイベントを、関係者に怒られない範囲でリポートしていく。

『ダンガンロンパ小高』発売記念トークイベントリポート! ヨコオタロウ氏も飛び込みゲストで出演し、ヤバイ話マジ続出!!_01
▲写真左から小高和剛氏、結さん。

 第1部は、“『ダンガンロンパ』開発スタッフが本音をぶつけるクロストーーク!”。ゲストに、『ダンガンロンパ』シリーズプロデューサー・寺澤善徳氏(スパイク・チュンソフト)、『ニューダンガンロンパV3』ディレクター・佐々木駿氏(スパイク・チュンソフト)のおふたりを迎え、『ダンガンロンパ』の制作秘話が明かされた。

『ダンガンロンパ小高』発売記念トークイベントリポート! ヨコオタロウ氏も飛び込みゲストで出演し、ヤバイ話マジ続出!!_02
▲寺澤善徳氏、佐々木駿氏も加わり、みんなで乾杯!

 興味深かったのは、小高氏と寺澤氏の出会い。当時、スパイクに所属していた寺澤氏と、スパイクに入ったばかりだった小高氏は、合併前のチュンソフトの会議室で行われた交流会で出会ったのだという(兄弟会社であったスパイクとチュンソフトの当時の親会社が、チュンソフト側にあったため、そこで交流会が行われたとのこと)。寺澤氏と小高氏は、社内の人間にあたるわけだが、初対面だったことから名刺を交換し、小高氏はその場で「シナリオが書けます」と、寺澤氏にアピール。寺澤氏は、その会話が脳裏に残っていて、その後、とあるソフトのシナリオがあまりおもしろくなく、手直しをしなくてはいけなくなった際に、小高氏に手直しを依頼したところ、小高氏の手で劇的におもしろくなり、そこで小高氏の実力を目の当たりにしたそうだ。

 ちなみに、そんな小高氏は入社6ヵ月で佐々木氏の入社面接をしたんだとか。その後、ふたりは別のチームになるわけだが、『ダンガンロンパ』第1作(以下、『1』)の発売後、佐々木氏が自社のゲームを確かめるべく『1』をプレイして、「おもしろいけど、それ以上にいままでにない感覚を味わった」(佐々木氏)ことから、続編の開発時に佐々木氏が自分からチームに入りたいと立候補し、以後、『ダンガンロンパ』シリーズに関わり続けていくことになる。

 結さんの「『ダンガンロンパ』はシリーズとしてどこまで想定していたのか?」という質問には、小高氏は「『1』の最後にモノクマが起き上がるのは、続編フラグではなく、リドルストーリーを目指した結果」と回答。『1』の発売後、しばらく経って徐々に販売本数が伸びていってから続編が決まったため、続編開発のスタートまで時間がかかったという。ちなみに、『ダンガンロンパ』ファンならば気になるであろう『ニューダンガンロンパV3』のオチがああいう展開になった理由も述べられたのだが、その部分はネタバレになるので割愛。気になる方は、イベントで語られた内容と同内容のものが、現在発売中の“ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期 超高校級の公式設定資料集”内にある、開発スタッフインタビューに掲載されているので、そちらを読んでいただきたい!(宣伝)

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 続いて、第2部は“ミステリー作家と小高が語るトリック論”。ゲストに、ミステリー作家で『ダンガンロンパ霧切』の著者・北山猛邦氏、同じくミステリー作家で『ダンガンロンパ十神』の著者・佐藤友哉氏を迎え、『ダンガンロンパ』のトリックなどについて語られた。……のだが、北山氏は『ニューダンガンロンパV3』のトリック考案に深く関わっていることから、トリックに関するトークのほとんどがネタバレに。佐藤氏は、ユーザーとしての視点で『V3』のトリックについていろいろ語り、来場者からも共感や笑いを呼ぶ内容になっていたのだが、このリポート記事では伏せさせていただきたい。ごめんなさい。ひとつだけ書ける内容としては、「5章のトリックはまるごと変わった」(北山氏)というくらいだろうか……。

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▲第2部は、佐藤友哉氏と北山猛邦氏がゲスト。

 その後、スピンオフ小説の話題に。『ダンガンロンパ霧切』は、北山氏の中で最初から最後まで書くことを決めて書き始めていたそうで、「いまは全体の7割くらい」(北山氏)。霧切響子と言えば、手袋をはめているのが特徴的だが、『ダンガンロンパ霧切』ではまだ手袋をしていない。これに関して小高氏は、「手袋をすることになるくらいの何か、もしかしたら性格すら変わるくらいの何かがあったのかもしれない。それを想像するとイヤな気持ちになる(苦笑)」と発言。会場をざわつかせた。

 佐藤氏は、『ダンガンロンパ十神』について「十神は存在するだけで回りが動く。そんな、十神が御曹司としてカッコいいところを書きたかった」と発言。ちなみに、本当は“ダンガンロンパ山田”や“ダンガンロンパ葉隠”も書いてみたかったらしい。この『ダンガンロンパ十神』は、佐藤氏がとあるイベントで「『ダンガンロンパ』のスピンオフを書きたい」と言ったことから実現したそうで、“『V3』のスピンオフを書くとしたら”という問いには、「夢野秘密子のスピンオフを書きたい」と話し会場からは大きな拍手が起こっていた。そのほかにも、佐藤氏は「民俗学者が好きだった」と言っていたことから、もしかしたら真宮寺是清のスピンオフが……?

 第2部の最後には、北山氏が“『ダンガンロンパ』とはミステリーでどんなジャンルなのか”という点を解説。北山氏いわく、「『ダンガンロンパ』は発明が多い」。というのも、ふつうのミステリーでクローズドサークルものを書いた場合、たいていはひとりで複数を殺害するという、ひとりの犯人を描くことが多いそうだ。だが、『ダンガンロンパ』は犯人が複数で、なおかつ人が減っていくという、「あまり例のないことをやった、ミステリーとしての発明がある」と北山氏は語っていた。

 そして、最後となる第3部は“スパイク・チュンソフトの盟友・打越鋼太郎氏とア・ブ・ナ・イ話!?”。タイトルにもある通り、スパイク・チュンソフトの同僚であり、『ZERO ESCAPE』シリーズのディレクション・シナリオを担当した打越鋼太郎氏がゲスト。イベント冒頭から楽屋で呑みまくっていたという打越氏は、ベロベロに酔っ払った状態で登場。しかし、小高氏はふだんから打越氏と呑みに行っているうえ、各所でも打越氏と対談をしているため、「もう話すことないよ!」と言い出し、急遽特別ゲストを呼び出す。そのゲストとは、なんと一般客として実際にお金を払って会場でイベントを観覧していたヨコオタロウ氏! 呼び込まれたヨコオ氏が、客席からそのまま壇上へと登壇すると、会場からは驚きの声とともに大きな歓声と拍手が贈られ、急遽3人によるトークになった。

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▲いちばん左はベロンベロンの打越氏。ヨコオタロウ氏はこの後に参加。

 とはいえ、事前の打ち合わせもなくヨコオ氏が参加したため、何の話をするかを壇上で決めることに。世界中でヒットとなっている『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の話題、“嫌いなクリエイター”の話題(ヨコオ氏の提案。とある人から爆弾発言があったが、絶対的に全面カット!)などなど、いろいろなお話があったが、ここではお三方が興味のあるメディアについての話題をピックアップしたい。小高氏が挙げたのは“連ドラ(連続ドラマ)”。連ドラは、毎週、もしくは毎日のように続くため、継続して視聴してもらうための“引き”がとても大事になる。小高氏は、その“引き”を作ることをやりたいとのことで、「“来週まで待てない!”と思わせたい」(小高氏)と語った。ヨコオ氏が興味のあるメディアとして話したのは、「やっぱり“ゲーム”」(ヨコオ氏)。「ゲームが好きで、昔みたいに初めて見たときにドキドキするもの、いままで見たことのないものを作りたい」(ヨコオ氏)と語った。そして、打越氏が興味があるものは“リアル脱出ゲーム”。脱出ゲームを内包した『ZERO ESCAPE』シリーズを手掛けている打越氏だが、そのリアル版を行いたいという。ちなみに、打越氏は過去にタイムループを題材にしたリアル脱出ゲームを手掛けており、筆者も挑戦をさせていただいたことがある。いまでも記憶をなくして、再挑戦したいと思うほどおもしろかったのだが、ぜひああいったものの新作を作っていただきたい!

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 いろいろとヤバイ話を経て、話題は『ダンガンロンパ』に。『ダンガンロンパ』シリーズは、作品の方向性上、キャラクターの死からは逃れられないが、小高氏はTwitterでよくファンからキャラクターの死についてのリプライを投げかけられるという。リプライの中には感想や応援メッセージもあれば、過激な内容のものもあるそうで、そんなファンの反応を聞いたヨコオ氏は、ヨコオ氏もキャラクターが命を落とすゲームを手掛けつつも、自身にそういった反応が来ることはないと驚き、また「キャラクターの生死でファンが一喜一憂するというのは、その作品がファンのものになっている証拠じゃないでしょうか」(ヨコオ氏)と語った。

 いろいろと書けない話題はありつつも、最後には出演者全員で記念写真を撮り、イベントは無事に終了。小高氏は最後に、「今後も皆さんの期待に応えられるようにがんばります」とコメントを残していった。『ニューダンガンロンパV3』の後、小高氏はどんな作品を作るのか。今回のトークイベントは、これまでから現在にいたるまで、小高氏がどんな発想で作品に携わってきたのかがよく伝わるイベントだったように思う。もし、『ダンガンロンパ』シリーズをプレイして、小高氏の頭の中が気になった方は、ぜひ『ダンガンロンパ小高』を手に取ってほしい。

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▲みんなで記念撮影……のはずが、トイレに行った打越氏が戻らず、先行で撮影。その後、打越氏も戻り、無事にみんなで撮影できました。