片渕監督が語る『この世界の片隅に』にかける思い

『この世界の片隅に』片渕須直監督に訊く 「ヒットの要因はお客さんがすばらしかったから」【舞台挨拶リポート&インタビュー】_07

 2016年11月12日に、全国63館という劇場数で公開されるやたちまち話題になり、またたく間に全国規模で公開劇場が拡大。以降、5ヵ月にわたるロングランヒットを記録している長編アニメーション映画がある。片渕須直監督の『この世界の片隅に』だ。こうの史代さんの同名マンガを原作とする同作は、第二次世界大戦前後の広島を舞台に、主人公すずと、すずの家族たちの日々が丁寧に綴られており、鑑賞後、深い余韻を残す1作となっている。第90回キネマ旬報ベスト・テンにて、日本映画のベストワンに輝くなど、極めて高い評価を獲得している。
 今回、ファミ通.comでは、“島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭”で舞台挨拶を行った片渕須直監督に、単独インタビューをする機会を得た。ここでは、舞台挨拶の模様と併せてお届けしよう。

※“島ぜんぶでおーきな祭”とは、映画、お笑い、音楽、スポーツ、ファッション、そして豪華ゲストが登場するレッドカーペットなど、さまざまなイベントで沖縄全島を盛り上げる、沖縄の一大イベント。

『この世界の片隅に』片渕須直監督に訊く 「ヒットの要因はお客さんがすばらしかったから」【舞台挨拶リポート&インタビュー】_01
『この世界の片隅に』片渕須直監督に訊く 「ヒットの要因はお客さんがすばらしかったから」【舞台挨拶リポート&インタビュー】_02
▲波の上うみそら公園で行われた、オープニングセレモニー。
▲沖縄全土各地で、吉本芸人によるイベントが開催されている。

 女優・のんが主人公のすずの声を務めたことで注目を浴びた『この世界の片隅に』は、戦争をテーマに描いた作品。広島出身の主人公・すずが呉に嫁ぎ、次第に激しさを増す戦争の中で、持ち前の明るさと強さで生き抜いていく様が描かれる。戦争という重いテーマを扱っているが、ユーモラスな部分が多く、鑑賞後は温かい気持ちになれる映画だろう。なお、本作はこうの史代氏のマンガが原作となり、クラウドファンディングで出資を募り、片渕監督が監督・脚本を務めてアニメーション化。昨年11月12日に公開されて以降ヒットを記録し、全国のさまざまな劇場で現在も上映されている。

『この世界の片隅に』片渕須直監督に訊く 「ヒットの要因はお客さんがすばらしかったから」【舞台挨拶リポート&インタビュー】_08

 舞台挨拶に登壇した片渕監督は、始めに「72年前の今日4月21日は、伊江島がアメリカ軍に占領された日。戦争が起きる前は、どんな幸せがあったのかを大切にしたい」と語りかける。
 会場には、『この世界の片隅に』の熱狂的ファンで、お笑いコンビ“バッファロー吾郎”竹若元博も登場。本作を3回見たそうで、「押し付ける感じがない。当時、そこで暮らしている人たちがリアルに描かれていて、考えさせられるというよりも、感じることができた映画だった」と感想を述べた。
 話題は、劇中ではすずが祖母に、「傘について聞かれたら、“はい。新なのを1本持ってきました”と言うんで」と指導される(新婚初夜の婿とのやり取りを指導されている)シーンについて移る。これについて聞かれた片渕監督は、「“柿の木問答”というものが、新婚のあいだで交わされていた地方があり、さらに地域によっては別の儀式があって、それが傘のやり取りだったそうです。すずの祖母は広島より北の出身なので、その“柿の木問答”を知っているのだろうか」と解説してくれた。
 続いて、竹若より「映画を勧めるときに「とりあえず観て」という以外思い浮かばない。どう言ったらいいでしょうか?」との質問に対し片渕監督は、「とりあえず2回見てください。2回目見ると、また印象が違って見えるという意見がある」と本作をアピールした。
 最後に片渕監督は、「映画を映画館で見ることが楽しい体験になって欲しい」、「DVDやブルーレイはすぐには出せません(笑)」と呼びかけ、舞台挨拶を締めくくった。

『この世界の片隅に』片渕須直監督に訊く 「ヒットの要因はお客さんがすばらしかったから」【舞台挨拶リポート&インタビュー】_06