独特なタッチが印象的なシューティングゲーム

『Earth Atlantis(アース アトランティス)』生命の躍動、細密なドローイングで描かれた大海洋世界に宿れかし。【とっておきインディーVol.117】_20

 紙に描かれた世界が、動いている――タイの小規模なデベロッパーによって開発されている本作は、追求する視覚的リアリティーの方向性を“中世の探検家のスケッチ”に絞り込んだ、ユニークなコンセプトの海洋シューティングゲームです。操作方法や自機(潜水艦)のパワーアップシステムは、極めてシンプル。レーダーを頼りに“獲物”を追い求め、遭遇したらひたすら攻撃……というゲーム性は、レトロスタイルのアーケードゲームのようでもあり、昨今のハンティングアクション風でもあります。わかりやすい派手さこそないものの、過去と現在、そして、ゲームの舞台として描かれる未来が混然一体となったゲームプレイは、生き物としての根源に由来するノスタルジーを、呼び起こすかもしれません……。


GAME SYSTEM 獲物を求めて海底を探索するシューティング

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▲自機の潜水艦は4タイプ。ゲームを進めることでより強力なタイプがアンロックされる。

 オープンワールド型のマップを行き来し、遭遇する海洋生物型モンスターと戦闘し、出現する巨大なボスモンスターをすべて倒せばクリアーとなる。ゲーム進行はオートでセーブされるので、安心だ。

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▲画面左上のレーダーマップを頼りに、巨大ボスの出現場所をハシゴしよう。
▲アイテムは、メイン武器とサブ武器の強化用とダメージ回復用が、ランダムに出現する。

【世界の躍動を感じるアニメーション
 自機や、画面の奥と手前を優雅に行き来する敵キャラクターは、ローポリゴン3Dモデルで描かれている。

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【水没世界が醸し出す退廃的美学
 本作の舞台は、地表の大部分が水没した21世紀末の地球。ステージのそこかしこに見られる、人類の文明の残骸も丁寧に描き込まれているため、物語世界の奥行きを実感できる。

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【死の世界の暴君として君臨する巨大海洋生物
 登場する巨大モンスターは20体以上。それぞれ独自の攻撃法や特殊な弱点を持っている。全種類と戦うには、複数回のプレイが必要。

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開発者インタビュー:Anucha Aribarg氏(Pixel Perfex)

⊿古典的シューティング+αにこだわったゲームデザイン

──本作を開発することになったきっかけは?

''Anucha' 『Earth Atlantis』のアイデアが現在の形になるまでには、10年以上の歳月がかかっています。すべての始まりは2003年ころに描いた、未来的な潜水艦と、メカニックな海洋生物のモンスターのイラストでした。その時点では単なるイメージだったのですが、数年後には、14世紀ヨーロッパの探検家が記したスケッチブックのようなタッチの海洋シューティングゲームのアイデアが浮かびました。

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▲2003年ごろにAnucha氏が描いた、『Earth Atlantis』の開発につながるコンセプトアート。海洋生物とメカが融合したビジュアル世界が明確に打ち出されている。

──ドローイング(線画)スタイルのグラフィックが生き生きと動く、独特のアートスタイルが確立された経緯を教えてください。

Anucha 最初は、手描きのイラストをアニメーション処理させるテストをくり返したのですが、思った通りの効果が得られず、プロジェクトは一時放棄されました。それからしばらくして、プリレンダリングの3Dグラフィックスを試してみたところ、見た目はうまくいったのですが、データサイズがあまりにも大きくなってしまって、到底実用的といえるレベルではありませんでした。その問題を解決したのが、Unityでした。シェーダーのカスタマイズを駆使することで、低ポリゴンの3Dモデルでも満足いく表現が可能となり、いまから約2年前、やっと現在の形になりました。

──開発の際に参考したタイトルは?

Anucha 私はクラシックスタイルのシューティング、とくに横スクロールタイプのシューティングゲームが好きで、ゲーム開発者として、そういうゲームを作りたいと思っていました。本作が『グラディウス』(KONAMI/1985年)や『Gダライアス』(タイトー/1997年)といった多くの名作からインスピレーションを受けていることは否定しません。しかし、私はそれらとは何か違うものを作りたかったのです。私はとくに、シューティングゲームのボスラッシュ(ステージ)が好きでした。そこに、ひとつの大きな舞台を自在に動き回って巨大な敵をハンティングするという、『モンスターハンター』(カプコン)の要素をかけ合わせることで、本作ならではのゲーム性としたんです。

──本作の舞台は、地表の大部分が水没した未来の地球とのことですが、プレイを進めることで進行するストーリー要素はあるのでしょうか?

Anucha 本作のストーリーはシンプルです。『グラディウス』や『R-TYPE』(アイレム/1987年)も短いイントロダクションしか提示されず、プレイヤーはそれらを知らなくても遊ぶことができますよね(笑)。私もそういうゲームを目標にしています。

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──ゲームモードなど、本作の具体的な構成について教えてください。

Anucha メインの“ミッションモード”の目的は、登場するすべての巨大モンスターを倒すことです。巨大モンスターは、1体倒すごとにつぎのターゲットの居場所がレーダーマップ上に表示されます。ゲーム進行は自動的に保存され、ゲームオーバーになってもリスタート地点から再開できるので安心です。ミッションモードをクリアーすると、ランダムで出現する巨大モンスターをひたすら倒して最高記録を競う“バウンティハンターモード”がアンロックされます。それぞれのモードには難易度を3段階用意しているので、ゲームの腕前に合わせて楽しめるようになっています。

──リプレイの動機づけなどは?

Anucha ミッションモードでは、操作できる潜水艦の種類がプレイ結果に応じてアンロックされていくので、当面はそれが目標となるでしょう。また、20種類以上用意しているすべての巨大モンスターと遭遇するには、少なくとも2~3回クリアーする必要があります。各モンスターはそれぞれ独特の攻撃法を持っていて、中には特殊な弱点を持っているものもいます。それらをいかに攻略していくかも、大きな楽しみのひとつです。ゲーム終了時に表示される、合計プレイ時間や倒した敵の数、コンティニュー回数などのリザルト画面がモチベーションになるでしょう。

⊿A 5th of BitSummitで最新バージョンを体験せよ!

──本作のゲーム開発体制について詳しく教えてください。

Anucha 私がリードデザイナーとして所属するPixel Perfexは、タイのバンコクを拠点とするアプリケーション開発会社です。『Earth Atlantis』はどちらかというと個人的なプロジェクトで、デザイナー兼ディレクター兼プロデューサーの私とプログラマーひとりがメインメンバーの、非常に小さなチームです。必要に応じて、フリーランスのプログラマーやアーティストに手伝ってもらいながら、開発を進めています。Pixel Perfexは、ゲーム開発以外にもデザインスタジオとして活動していて、国内でいくつかのアワードを受賞しています。

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▲デザインスタジオとしてのPixel Perfexの成果物の一部。CGアニメーションやキャラクターデザイン、児童図書のイラストレーションなど多岐にわたって活動している。

──『Earth Atlantis』はすでに世界中のインディーゲームイベントに出展され、昨年釜山(韓国)で開催されたBIC Festival2016では優秀賞を受賞するなど、注目を集めるタイトルとなっています。国内外での評価を受けての感想は?

Anucha 正直なところ、私はこのゲームのアイデアのユニークさに自信を持っていました。イベントで実際に見た人が本作に惹きこまれていく様子をみるのは、非常によい気分でしたね(笑)。先月(2017年3月)のPAX East 2017にも出展しましたが、やはり多くのプレイヤーに楽しんでもらえました。

──現在も開発中とのことですが、リリース時期などの最新情報をお願いします。

Anucha 開発は最終段階を迎えていて、2017年度の第3四半期(10~12月)のリリースを目標にしています。プラットフォームはPC(Steam)ですが、パブリッシャー経由でのコンソール版のリリースも予定しています。まずは今年5月のBitsummit(※2017年5月10・11日に京都市みやこめっせで開催されるインディーゲームの祭典“A 5th of BitSummit”)に、最新バージョンのプレイデモを出展する予定ですので、日本のゲームファンの皆さんも楽しみにしていてください!

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Earth Atlantis(アース アトランティス)
メーカー Pixel Perfex
対応機種 PCWindows
発売日 2017年配信予定
価格 未定
ジャンル シューティング