『ファンタジーライフ オンライン』の現場を束ねる潮田Dが語るゲームデザインのコツは“先を読む力!?【レベルファイブ初の学生向けカンファレンス完全リポート その5】_11

 2017年2月21日から2月28日まで、東京、大阪、福岡の3都市で開催され合計約1500名もの学生が参加した、 “大学・短大・専門学校生向け クリエイターを目指す者たちへのカンファレンス”。つぎつぎとヒット作品を生み出し続けるレベルファイブだが、いったいどのような人たちが、どんなふうに企画や開発をしているのかは、これまであまり表に出てこなかった。だがこのカンファレンスでは、「将来クリエイターになりたい!」と強く願う学生たちに向けて、同社のトップクリエイター陣がふだんは目にすることのできない開発の舞台裏を見せてしまうという、貴重なセッションが行われたのだ。

 取材を行った2017年2月26日に開催された東京会場では、昼と夜の2回に分けて同内容のセッションが開催されたが、それぞれ席を埋め尽くすほどの学生たちが詰めかけた。ファミ通.comでは、これら各セッションのリポート記事を紹介している。
 今回は、カンファレンスのうちのひとつである、『ファンタジーライフ オンライン』の開発に携わっている、潮田ディレクターによる講演内容についてお届けする。潮田氏からは、集まった学生たちに向けて、“いま”のゲーム業界における、スマホ用オンラインRPGにおけるゲームデザインのコツについて語られることとなった。

オンラインゲームの魅力とは?

 潮田氏は現在、スマートフォン用のオンラインゲーム『ファンタジーライフ オンライン』の開発を担当する実力派のディレクターだ。

 そんな潮田氏は、講演が始まると、集まった学生たちに向けて「プログラマーとはお医者さんに似ている」と話す。その理由は、「お医者さんは高い技術を持っている。だが、その技術以上に重要なのは“健康な人間の身体を知っている”こと」だと言うのだ。健康な状態を知っているからこそ、さまざまな症状に対して、「こう治療すればいい」と、“先読み”ができる。

プログラマーも同じだと潮田氏は位置づける。「僕らが作ろうとしているゲームって、どんなゲームなんだろう?」というように、自分たちが作ろうとしているゲームのイメージをわかるかどうかは、お医者さんが“健康な人間の身体を知っている事と同じくらい重要”なのだそうだ。

 そんな潮田氏が思うオンラインゲームの重要なポイントは、仲間同士の“コミュニティー”だという。通常のRPGを例に挙げると、ゲームをスタートすると自分のキャラクターを作って冒険に出るものが大半だ。そして、冒険の先には強い敵がいるもの。プレイヤーは、「こいつ勝てねーよ」と思いながらも、やっと倒してクリアーし、報酬を貰う。そしてまた、次の冒険に出る……といったゲームサイクルが一般的なRPGの基本となる。

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▲これがオンラインゲームの基本となるが、ここまではオンラインゲームのファンならば、イメージしやすいところだろう。

スマホ用オンラインゲームデザインの3つの軸

 キャラクターが成長し、ある程度強くなってくると、今度は知り合いやほかのプレイヤーに自分のキャラクターを見せたくなってくるという。むしろ、積極的に自慢したくて見せびらかす人も出てくることもあるだろう。これは、人間の根源的欲求なのでクリエイターとしては、しっかり受け止めることが大事だ、と潮田氏。

 さらに、オンラインゲームの冒険では、「やっぱりひとりじゃ、たいへんだよね」ということで、ほかのプレイヤーと協力してプレイすることになる。そうなると、次に出てくる欲求として「俺も強くなったけど、お前も強くなったよな? ……一体どっちが強いんだ?」という比較欲求が生まれるというのだ。ゲームによって異なるとは思うが、PvP(プレイヤー・バーサス・プレイヤー)の遊びが実装されていたとしたら、競争の要素も非常に重要になってくるはずだ。

その結果、プレイヤーには「俺、強い敵を倒したぜ」とか、「俺、プレイヤー同士のランキングで、10位に入っちゃったぜ」など……人に褒めてもらいたくなる心理が浮き彫りになると潮田氏は語る。つまり、協力要素だけではなく、競争要素も立派なコミュニティーなのである。

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▲だが、これでもまだ、オンラインゲームとしては要素が足りないらしい。何が足りないというのだろうか?

 潮田氏によると、ゲームの魅力の部分は話せたと思うのだが、まだ、“快適さ”と、“長期間設計”が足りていないらしい。

 この“快適さ”という要素に関しては、今回は『ファンタジーライフ オンライン』という、スマートフォンでプレイするオンラインRPGを題材にしているため、スマホでも気持ちよく操作できるようにするという点は、わかりやすい部分かもしれない。だが、快適に操作ができたとしても、スタートを押してからゲームが始まるまでに2分かかるだとか、バトルに入る前に、必ず1分かかる……としたら困ってしまう。

 潮田氏は、こうしたゲームプレイの快適性というものは、昔から考えられてはいたが、最近ではスマホゲームが世の中に普及して来たため、皆が思っている以上に、この快適さというものが重視されているのだと語った。

 そして、もうひとつの足りていない点として挙げられた“長期間設計”とは、どういうものだろうか。

 潮田氏はこう分析する。オンラインゲームの中でコミュニティが発達していくと、必ずその流れで仲良しのプレイヤー同士でプレイすることになるというのだ。そこはかけがえのない大切な場所となる。そうなると、せっかく仲良し同士で楽しんでいるのに、そのゲームのサービスが終わってしまったら悲しい。

 つまり、お客さんも長くこのゲームを遊びたいし、開発者も、長くゲームを遊んでもらいたい。だからこそ、長期間の設計が必要になってくるという。

 潮田氏は、オンラインゲームにおける、こうした長期間にわたる設計は、残念ながら、時間の関係上これ以上説明はできなかった。変わりに“魅力”“快適さ”といったところを深掘りしていくこととなった。

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▲オンラインゲームに必要なのは、上記の3つのキーワード!

“魅力”を深掘りしよう!

 ここで、なんと特別に、潮田氏たちが鋭意開発中の『ファンタジーライフ オンライン』の実機プレイが披露された。まずは、マルチプレイモードから見てみることに。

 元々『ファンタジーライフ』という作品は、ニンテンドー3DSで発売されていた。それが今回、スマホ用のオンラインゲームとして生まれ変わることとなったのだ。

 潮田氏が考える、本作の魅力とは、ズバリ“自由度”だという。本作では、プレイヤーは12種類もあるライフ(職業)を自由に選んで、“ファンタジール”という世界での生活が楽しめるのだ。さらに特徴的なのが、一般的なスマホ用RPGでは、バトル職のみが用意されているものに対し、『ファンタジーライフ オンライン』では、バトル職が4つあり、それ以外の職業も8つあるところだ。その職業選択の多さも、“自由度”に貢献しているといえる。

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▲職業的な楽しさだけでなく、マルチプレイで協力して、“釣り”までできてしまうという。

 また、『ファンタジーライフ オンライン』はスマホ用のオンラインRPGで、マルチプレイ中に自由にプレイヤーが出入りできるシステムを実装している。このアイデアはゲームの設計としては難しいのだが、『ファンタジーライフ オンライン』のテーマとして重要な“自由度”を持たせるために、採用したようだ。

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▲こんなにキラキラした目で提案されたら断れない! プランナーから、こういったおもしろいアイデアが飛び出してくるのも、全員が“どんなゲームを作りたいか”という、目標を共有しているからだろう。