着心地は最高? 侍の衣装で吉田氏が登場

 ドイツ・フランクフルトにて、2017年2月18日〜2月19日(現地時間)にかけて開催される、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の大規模ファンフェスティバル“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2017 in Frankfurt”。初日のイベント終了後、プレス向けの質疑応答が実施された。その模様をリポートする。

『FFXIV』にブリッツボールの企画が? 欧州ファンフェスで質疑応答を実施_01

 冒頭は、スクウェア・エニックスの代表取締役社長である松田洋祐氏が挨拶。「明日も楽しいプログラムを用意しておりますので、ぜひご覧いただければと思います」とコメントし、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターを呼び込んだ。

 吉田氏は、基調講演で披露した侍の衣装で登場。昨年10月のラスベガスから始まり、東京での開催を経て、今回の欧州ファンフェスで『紅蓮のリベレーター』の大きなフィーチャーについては伝えることができたと吉田氏は語ったが、きっとメディアも聞きたいことがたくさんあるだろうと、今回のような場を設けたという。質疑応答に参加したのは、世界中から集まったプレス、およそ100人といったところ。挙手制で吉田氏に質問をぶつけていくという形式で、約50分間、絶え間なく質疑が続いた。なお、ファミ通では別途インタビューを予定しているので、もう少しディープな内容についてはそちらを待っていただけると幸いだ。

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──3回のファンフェスを通じて、世界中のファンと交流した経験はどのようなものでしたか?

吉田 ファンフェスを行う意義に関しては、もちろんプレイヤーの皆さんに楽しんでいただくのが第一なのですが、僕も含め、開発チームのモチベーション、テンション維持ということも非常に大きな目的のひとつです。世界中のプレイヤーの皆さんと直接会うことができて、開発を続けていくエネルギーをもらえていると思います。ヨーロッパのファンの皆さんも、北米や日本に負けず、熱気あるパワーで僕らの背中を押してくれていると思っています。

──『紅蓮のリベレーター』の新エリアには日本や極東の文化が垣間見られますが、どのくらい東洋の文化を重要視しているのでしょうか?

吉田 今回、ひんがしの国、そしてドマという地域を舞台とするうえで、日本を意識しなかったわけではありません。ただ、日本という国も非常に歴史が古くて、皆さんが一般的に想像する日本というのが、江戸時代の人もいれば、かたや幕末だったり、もしくはもっと昔の戦国時代という人もいます。それらはぜんぜんビジュアルが違うのです。ですので、今回、ひんがしの国“クガネ”のビジュアルを作っていくときに、純和風というよりは、エオルゼアの世界のさまざまな国の文化が融合した“和”であると定義して、色の使いかたやオブジェクトの作りかたひとつひとつ、開発チームとディスカッションをして、こだわって作っていきました。ぜひ6月に、我々『FFXIV』チームがどのようにひんがしの国を作ったのか、注目いただければと思います。ひとつだけ補足しますが、ドマという国はひんがしにある国ではなく大陸側、現実で言えば中国やモンゴル地方といった位置関係にある国です。ドマを旅する中で、クガネとはまったく違う文化が見られると思います。

──『紅蓮のリベレーター』の新ジョブはふたつですが、2.Xシリーズで忍者が追加されたように、4.Xシリーズの中で3つ目のジョブが追加される可能性はあるのでしょうか?

吉田 いまのところ、予定はありません(苦笑)。僕自身プレイヤーなので、新しいジョブに期待するのはよくわかります。ただ、バランスの取れないジョブをたくさん増やしても、けっきょくプレイヤーの皆さんのストレスになります。今回、バトルシステムにかなり大きな変更が入るので、まずはバランスを徹底的に取って、どのジョブで遊んでも楽しめるように、というのが最大目標になっています。それが達成できた後、開発者チームの中にジョブ追加の声が出てくれば、検討していこうと思います。

──今後、クロスワールドに対応した機能(リンクシェルやフレンドリストなど)は追加されますか?

吉田 『紅蓮のリベレーター』のリリースタイミングにはちょっと間に合いませんが、ワールドを超えたフレンドリストはすでに開発が始まっています。フリーカンパニーとリンクシェルに関しても、仕様の策定は始まっています。どのくらい時間がかかるかわかりませんが、いずれ達成しようと思っています。

──いま吉田さんが着ている衣装ですが、着心地はいかがでしょうか? 今後、スタッフのやる気を高めるために、会社で着たりはしないのでしょうか?

吉田 まず、着心地はものすごくいいです。じつは、もともと基調講演でしか着る予定がなかったのですが、あまりにも着心地がいいので、最後まで着ると伝えて、いまここにいます。僕としては非常に気に入ったので日本に持って帰りたいのですが、ドイツチームが一生懸命クラフターチームの方々といっしょに作ったので、日本のチームから「ドイツにちゃんと置いていけ」と言われました。残念ながら、持って帰ることはできません。ただし、もし僕がこれを持って帰って会社で着たら、彼らは喜ぶどころか、「吉田、遊んでるんじゃない」と怒ると思うので、しっかり仕事をがんばろうと思います(笑)。

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──冒険者小隊について、小隊でダンジョンをこなせるようになりますか?

吉田 仕様の作成は終了していて、小隊のメンバーがダンジョンの中でいっしょに戦うためのAI制作が始まっています。ただ、いまは『紅蓮のリベレーター』の開発に注力しているので、実装は『紅蓮のリベレーター』リリース後になるとは思います。

──今回の欧州ファンフェスで、つぎのファンフェスに活かせることはありますか?

吉田 まだ明日もありますからね(笑)。今回、ドイツで1日目を終えてみて、テクニカルの皆さん、エンジニアの皆さんたちに柔軟に対応していただいて、非常に質の高い1日目になったと思っています。当面の目標としては、明日の2日目、プレイヤーの皆さんに最高の笑顔になって帰っていただけるようにがんばろうと思っています。そのつぎの最大の目標は、さきほどご挨拶した社長の松田に、「つぎのファンフェスやってもいいよ」と言ってもらえるようにがんばることです(笑)。

──今回、新しいエリアを公開して、注目の的がアラミゴからドマやひんがしに完全に移ってしまったような気がしますが、アラミゴのことを忘れ去られないか、心配になりませんか?

吉田 アラミゴもけっこうフィールドを紹介していて、アラミゴの冒険もけっこう大きいですよ。基本的に、半分がアラミゴで、半分がドマ側だと思ってもらえればいいと思います。これ以上はシナリオに触れてしまうので、お答えしないでおこうと……。

──プレイステーション3のサポートが『紅蓮のリベレーター』のリリースと同時に終了となり、今後はハイスペックな『FFXIV』というものにもフォーカスできると思うのですが、プレイステーション4 Proへの対応パッチや、Nintendo Switchへの移植などはありえるのでしょうか?

吉田 プレイステーション4 Proについては、そのマシンパワーを4Kや解像度を上げる方向ではなく、パフォーマンスをよくするために使いたいです。正直なところ、テストは始まっているので、近いうちに何か正式なアナウンスが出せるのではないかと思っています。Nintendo Switchや、以前から質問されているXboxプラットフォームについては、僕としてはひとつでも多くのハードに対応していきたいと思っていますが、クロスサーバー、クロスマッチングという、どのハードで遊んでも同じ世界にログインできるということを目指しているので、そこが解決されれば可能性はあるとは思います。現時点で、これ以上言えることはないです。

──『紅蓮のリベレーター』で泳ぎや潜りのシステムが入りますが、“ブリッツボール”もありますよね?

吉田 正直に言うと、企画はしています。ただ、ちょっと難航しているのも事実で、おそらく『FFX』のブリッツボールをそのまま実装してほしいという人もいると思うのですが、1回遊んだらあまりプレイしなくなるのではという懸念があります。そこで、MMOならではのブリッツボールを作ろうというアイデアもあるんですけど、果たしてそれが皆さんの思い出の中にあるブリッツボールなのかという問題もあります。どういった形で『FFXIV』の世界にブリッツボールを実現するのがベストなのかというところで、いったん企画は止めています。ただ、せっかく水の中に冒険が広がるので、いずれ実現したいとは思っています。

──グローバル版でのジャンピングポーション(キャラクターのレベルやストーリーの進捗をスキップできるアイテム)の導入検討について、その後の状況をお聞かせください。

吉田 いま開発チームで最終の議論をしているところなので、はっきりしたことは言えません。決まり次第、プロデューサーレターLIVE等でアナウンスする予定です。

──『紅蓮のリベレーター』で行われるバトルシステムの作り直しについて、何か言えることがあれば教えてください。

吉田 ご質問の“作り直し(revamp)”という単語が正しくないような気がします。まず、作り直しではありません。バトルシステムの改修については、大きくふたつの目的があります。ひとつは、3.Xシリーズで各ジョブのスキルローテーションが難しくなりすぎて、プレイヤースキルの高い人と、カジュアルなプレイヤーとの格差があまりにも大きくなってしまった。それを、カジュアルな人でもある程度使いこなせて、トップ層の人が使うともっと伸びるというような全体調整を入れます。これとほぼ同じ問題で、『FFXIV』はゲームパッドでプレイされている方が多いのですが、アクションの数が増えすぎて、使いこなすのが難しくなってきました。今回、レベル70にキャップが解放されますが、アクションの総数は変えず、使用頻度の低いアクション、使いづらいアクションなどを統廃合することで、より使いやすいジョブを目指しています。もうひとつは、あまりにもバフアイコンを見なければいけないシチュエーションが多くなりすぎたので、『紅蓮のリベレーター』からは各ジョブに専用のインジケーターを設けます。バフアイコンを見て遊ぶのでなく、それぞれのジョブの特性に合わせたユーザーインターフェースを見ながら戦うというように調整します。おそらく、これ以上の詳細をお伝えするには実際のゲーム画面が必要です。ギリギリまで調整するので、だいたい5月中旬から下旬くらいにならないとお見せすることはできませんが、ちゃんとお伝えするタイミングは作ろうと思っています。

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──今回のトレーラーでドマの街が紹介されましたが、アラミゴにはプレイヤーが入れる街はあるのでしょうか?

吉田 さあ、どうでしょうね(笑)。その答えは、皆さんがドマやアラミゴを奪還した先にあるお話だと思います。いまは帝国に支配されている街なので、そもそも入ることすらひと苦労で、帝国を追い払う必要があります。まずは、皆さんが解放者になるということを念頭に置いて、プレイしてみてほしいと思います。また、MMOらしからぬ新しい仕掛けを用意していますので、MMOでありながら、ストーリーをどっぷりと楽しめるように現在開発中です。

──MMOにはフリー・トゥ・プレイ(基本無料)やマイクロトランザクション(アイテム課金)など、さまざまなビジネスモデルがありますが、『FFXIV』はなぜマンスリーサブスクリプション(月額課金)を選んだのでしょうか? どういう利点があるのでしょうか?

吉田 この質問にまともに答えると1時間くらいかかってしまうのと、過去に何度か明確な回答をしているので、PRチームからそれを送るようにします。

──侍がDPSになった理由について、ジョブの数やバランス以外に理由はあるのでしょうか?

吉田 近接DPSを足そうとしてそこに侍を当てはめたわけではなく、侍を実装するならタンクではなくDPSだと何年か前からお話はしています。僕の中で、戦国時代の“将軍”はタンクだと思いますけど、幕末の侍はDPSというイメージでした。参考にしている日本の時代がちょっと違うのかなと。いい例があるのですが、開発チームで考えている侍は、黒澤明監督の『七人の侍』です。だから、タンクじゃないんです。

──ほかのMMORPGと比べて、『FFXIV』が優れている点、特徴は何だと思いますか?

吉田 おそらく、メジャーアップデートのスピードとボリューム、そしてエクスパンションを出してファンフェスが実施できるということかなあと思います。

──フィールド上のモンスターとのバトルが長く感じられますが、バトルシステムの改修とともに戦闘時間が短くなったりしますか?

吉田 どうでしょうね……。ちょっと3.Xシリーズではやりすぎたと思っているので、いまよりは多少短くなると思います。

──今後、モバイルアプリやゲーム内の機能によって、いろいろな人とコミュニケーションが取れるようになりませんか?

吉田 ゲーム内のフリーカンパニーやリンクシェル、フレンドと、エオルゼアの外でコミュニケーションが取れるアプリケーションをいま開発中です。『紅蓮のリベレーター』のリリースタイミングには間に合いませんが、それほど遠くないパッチのタイミングと同時にリリースできると思います。

──プレイステーション VRへの対応は?

吉田 テストはしましたが、VRの場合は最低でも60fps、できれば120fpsで描画しないと酔ってしまう(編注:酔いやすさなど、個人差があります)というのが最大の問題として挙げられます。ということは、VR専用のコンテンツを作らないと快適には遊べない。そうなると、プレイステーション VRを持っていないと遊べないコンテンツを、非常に高いコストをかけて開発することになり、それならば多くの人が「みんなが楽しめるコンテンツを作って欲しい」と言うはずです。そして、そのコストは誰が払ってくれるんだという問題もあります。以前、いくつかのメディアの方にVRについて聞かれて、そのときに答えたのですが、唯一可能性があるとしたら、どこかの建物の中にカッコいいミコッテとかわいいミコッテがたくさんいて、そのミコッテたちと仲よくなれる“ミコッテパラダイス”みたいなVRコンテンツを用意して、その入場料を5000円とかにすれば実現できるかもしれないと(笑)。この話を開発チームにもしているのですが、ゲームデザインチームから「それはオレがやります!」という人がまだ出てこないんです。まずは、そういうスタッフが出てくることを祈りたいですね(笑)。