スタジオツアーから長尺インタビュー映像と最新デモの内容をお届け

 ベセスダ・ソフトワークスが海外で2017年にPS4/Xbox One/PCで発売予定の『Prey』は、『ディスオナード』を開発したArkane Studiosによる、一人称視点のSFサバイバルアクションアドベンチャーだ。今回、テキサス州オースティンにあるArkaneのオフィスにお邪魔して最新デモを見てきたほか、開発首脳陣へのインタビュー映像も収録してきたので、その模様をお伝えしよう。

SF版『ディスオナード』とでも言うべき完全新規タイトル

 すでにE3やQuakeCon等でのデモを紹介している本作だが、あらためて基本的な部分をおさらいしておきたい。まず『Prey』という同名タイトルとしては、かつてHuman Head Studiosが開発したFPSが存在し、海外では2K Gamesからリリースされ、日本でもスパイクからXbox 360版が、ズーから日本語PC版が発売された。
 かつてその続編が計画され、ベセスダ・ソフトワークスが権利を取得してHuman Head Studiosが開発していたものの、残念ながら完成することなくプロジェクトがキャンセルに。その後Arkaneが新たなSFゲームのコンセプトを固め、内容的に独立した、まったくの完全新規タイトルとして『Prey』の名が与えられたのが本作ということになる。

 ゲームの形式としては一人称視点のアクションアドベンチャーゲームで、ぶっ飛んだ性能の変態ガジェットや、人智を超えた存在によってもたらされた超常的能力を駆使した超絶アクションが可能という、いわばSF版『ディスオナード』的な内容。
 プレイヤーがさまざまな能力や装備を獲得して性能を特化させていき、さらにそれらのユニークな応用法や脇道からのルートを発見することで、複数の敵を相手に正面からバリバリ戦うアクションシューティング寄りのプレイにも、戦術を重視したややステルス寄りのプレイにもなりうる、自分なりの攻略法を編み出すのが楽しいタイプのゲームだ。

エイリアン襲来で地獄と化した宇宙ステーションでサバイバルする『Prey』の最新デモの様子を、ロングインタビュー映像とともにリポート_08
▲というわけで画面の見た目はSFのFPSだが、ゲームとしてのエッセンスは『ディスオナード』系。

 スタジオの代表にして本作のクリエイティブディレクターを務めるRaphael Colantonio氏は、Arkaneはある特定の領域のゲームに特化したスタジオだと語っていて、この傾向が意図的なものであるのがわかる。
 そのコンセプトは、アクション要素、探索要素、キャラクターの育成・特化などの広義のRPG要素が絡み合い、さらに特異な能力やアイテムの挙動を定めたルールに基づいたシミュレーションベースで設計されているというもの。一人称視点で世界に没入してもらい、それらを使ってどうプレイするかはできるだけプレイヤーの発想に委ねることで、創造性を刺激してクリエイティブにプレイしてもらおうというわけだ。
 実際、開発チームによるチェック中も本来の設計意図と異なるトリッキーなプレイを発見することがしばしばあり、それが面白かったので正式採用になったものもあるそう。

未知との遭遇が冷戦を終わらせ、ケネディが暗殺を切り抜けた世界

 本作で描かれる世界は、故ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺で死なずに、宇宙開発に投資し続けていたら……というifの未来。偶然発見された“Typhon”(テュポン)と呼ばれるダークマター状のエイリアンの脅威に対抗するために米ソが冷戦の枠組みを取り払って協力し、エイリアン研究を促進。時代によってメインの所有者を変えながらその最先端研究拠点として発展してきた、月の衛星軌道上を飛ぶステーション“Talos-1”(タロス・ワン)が冒険の舞台となる。

 テイストはSFホラーで、案の定と言うべきかTalos-1でコントロール下に置かれていたはずのTyphonが大量発生し、ほとんどの人間が死亡するという緊急事態に。主人公モーガン・ユウ(男女選択可能)は記憶障害を抱えた状態でそのさなかに放り出され、サバイバルしながら記憶回復と事態収拾を目指す……というのが基本的なストーリーだ。
 記憶喪失でありながら、Typhonの能力を取り込んで身体を変質させていくというサイコスリラー的な雰囲気もあって、後述する“ミミック”のようにパラノイアを促進させそうなTyphonも出現。少しずつ変化しながら同じシーンを繰り返しているように見える本作の初公開時のトレイラーも、そんなムードを反映したものとなっている。

エイリアン襲来で地獄と化した宇宙ステーションでサバイバルする『Prey』の最新デモの様子を、ロングインタビュー映像とともにリポート_01
▲主人公モーガンは男女両バージョンが存在。声やNPCの会話内容が変動するが、ゲーム的な性能は同一だ。

 ちなみにTalos-1のデザインは、居住区の内装はアール・デコ調をレトロフューチャーなデザインとミックスさせた“ネオ・デコ”をテーマにしていて、優雅でゴージャスな雰囲気を演出している。一方で、施設部分や外装などは宇宙開発競争の時代の金属箔やクッションを多用したシンプルで無機質なデザインで対照的。この辺りも、汚い路地と豪華な邸宅が対照的に描かれていた『ディスオナード』と似たアプローチと言えるだろう。

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複数のルート、複数の解法。自分だけの攻略法を見つけ出せ

 一方、ストーリーの進行に合わせたミッションによってプレイが区切られていた『ディスオナード』と異なり、Talos-1は一種の小さなオープンワールドになっていて、(各所でゲートがロックされているので、最初からどこでも行けるわけではないが)ステーションの居住区域内の移動だけでなく、必要な装備や能力さえ獲得すれば無重力エリアを進んだり、宇宙に飛び出て船外活動を行ったり、これまでに公開された動画などに一瞬映っているスペースシャトルなどに入ってみることも可能。やってもやらなくてもいいサイドミッションなどもあるので、プレイの進行は人により幅が出てくるだろう。

エイリアン襲来で地獄と化した宇宙ステーションでサバイバルする『Prey』の最新デモの様子を、ロングインタビュー映像とともにリポート_05
▲無重力空間を進むための推進システムを開発すれば、物資移動用の“GUT”(グラビティ・ユーティリティ・トンネル)を通って CEOのオフィスがあるタロス最上部の植物園を目指せるようになる。

 もちろん、マップ上にもさまざまなサブルートが用意されていて、ある特定の目的に対して複数の解法が用意されているのがArkaneらしいところ。たとえばロックされたドアの先に進みたい時にも、“探索などで解錠番号を見つける”、“スキルを上げてハッキングで解く”、あるいは“迂回して近くのファンを停止した隙にそこから侵入する”といった感じにオプションがあって、プレイヤーの能力特化の方向性や、その時点での所持装備に応じていろんなやり方ができる。

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▲左上部に見えるファンも、どこかに繋がっているかも。もちろん回転している時は危険なので、停止する方法を探してみよう。

 ミッション攻略以外でも、障害物で塞がれた小部屋などにちょっとしたアイテムが置いてあるといったこともある。こうした時に、特殊グレネードの“リサイクラーチャージ”(周囲の物を吸い込んで素材に変換する)を使って道をこじ開けたり、特殊能力の“リモートマニピュレート”(念動力で物体を引き寄せる)や、“キネティックブラスト”(電磁爆発を起こす)をうまく反射させてアイテムだけを引き寄せるといった手、“ミミック”(擬態・憑依能力)で小物に憑依して狭い隙間をすり抜けるといった手があって、まさにプレイヤーの発想次第。

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▲このように炎が噴出している場所も、グルーガンを使ってパイプの断裂部を塞げば通行できるようになる。

エイリアンたちの奇怪な能力を取り込め!

 本作ではTyphonをスキャナー装置“サイコスコープ”で解析し、ニューロモッドと呼ばれる装置によってその能力を体に取り込むことで、一種のエネルギー放射攻撃や、念動力、擬態能力などを習得でき、意外な攻略方法を編み出せる。ここではまず代表的なTyphonを紹介しよう。

1.ミミック
さまざまなものに擬態して、獲物が接近するまで隠れている。なおミミックをはじめ、同種のTyphonでもいくつかのグレードがあり、デモでは“エリートミミック”も登場した。

2.シストイド
普段は“巣”に入っている小型のTyphon。接近すると爆発する。

3.ファントム
人型で非常に素早く、近接戦闘を挑んでくる。同じファントム系では、自らを複製して有害な毒煙を放出する“エーテルファントム”といったタイプもいる。

4.テレパス
浮遊する大型のTyphon。周囲の生物を操る能力を持つほか、精神波を爆発させて能力を封じてくることもある。

5.ポルターガイスト
擬態するミミックとは異なり、こちらはボディを透明化して奇襲を仕掛けてくる。

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▲ふよふよ浮いているテレパスは、こちらの能力を封じてきたり、周囲に湧いてくる他の敵なども厄介。

 そしてお次は、モーガンが習得できる特殊能力たちを紹介しよう。これらの能力の使用には“Psiモード”というものが用意されており、発動すると時間が完全停止。照準などを合わせるためにじりじり動くと、その間だけ周囲の時間も動くという仕様だ。これにより、エイリアンに囲まれるようなシチュエーションでも、能力を確実に狙った場所に放つことができるようになっている。

1.ミミック
周囲のオブジェクトに擬態し、身を隠したり、コップやグレネードなどの小物になって狭い所を通れるようになる。

2.スーパーサーマル
過熱プラズマトラップを仕掛け、効果範囲に炎ダメージを与える

3.キネティック・ブラスト
電磁爆発で効果範囲にダメージを与えるほか、オブジェクトを爆風で吹き飛ばせる。うまく反射させれば、少し遠くのアイテムをこっちに向かって飛ばすなんてことも可能。

4.遠隔操作(リモートマニピュレート)
念動力で離れた場所のものを引き寄せたり、遠隔で装置を操作できる。

5.リフトフィールド
重力場を発生させ、即席の重力エレベーターにしたり、敵を捕らえるといったことができる。

6.サイコショック
(機械など以外の)生物系ターゲットに対して精神波攻撃を放つ。一定時間能力を封じることができる。

7.レバレッジ
重いオブジェクトを持ち上げ、投げつける

 なお、単発でもユニークで強力な能力を持つが、複数の能力を組み合わせて、“ミミックで小さいものになってからキネティックブラストで自分を吹き飛ばして高所に移動”とか、“リモートマニピュレートで引き寄せたものをレバレッジで投げつける”といったコンボを生み出せるのも重要なポイント。

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▲Psiモードでは時間を一旦停止できるので、じっくり狙おう。ただしモーガンが動いた分だけ周囲の時間も進むので注意。

未来のわくわくガジェットもアイデア次第で強力な効果を発揮

 しかし、どんどんTyphon化していけばいいとも一概に言えない。リードゲームデザイナーのRicardo Bare氏によると、ニューロモッドで能力をインストールしていくとTyphon度が上昇していき、ステーション内に設置されたタレット(自動機銃)などがモーガンをエイリアンとして認識して攻撃してくるようになるというのだ。

 ちなみにColantonio氏に聞いてみたところ、その逆、Typhon能力を一切取得しないでプレイすることも可能で、専用の実績/トロフィーも用意されているそう。能力をゲットしないでどうするかと言えば、装備アイテムのバリエーションで乗り切ることになる。

 装備には、レンチ、ピストルやショットガン、非殺傷系のスタンガン、ロボット系の動作を停止させるEMPグレネードといったFPSでおなじみの武器以外に、すでに簡単に紹介した“グルーガン”(発泡フォームを放って壁に足場を作ったり、敵を固めたり、破断したパイプを塞ぐといったことが可能)、“リサイクラーチャージ”(一定範囲内のオブジェクトを吸い込んで素材アイテムへと分解してしまう)などのユニークなガジェットがあるほか、スーツを改造することでホバリングなども可能になる。
 Typhon能力に投資する代わりに銃関連などの非Typhon系スキルツリーに投資していき、素材を集めてアイテムを積極的に開発していくことで、Typhon能力メインで行った場合とは別のサバイバル方法が切り拓けるという寸法だ。

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▲ロボット系と正面から戦いたくない時は、EMPやリサイクラーなどの特殊グレネードで無力化してしまうというのもアリ。

生存者をどれだけ救えるか? 人間を殺さない非殺プレイも可能

 スタジオで見せてもらったデモの中で記者が面白かったのは、乗員の居住区画を舞台にしたもの。ここでは個人に割り当てられた部屋が複数あり、さまざまなミッションが隠されているほか、出てくるTyphonもバリエーション豊かだ。

 メインミッションは死亡したと思われる女性乗組員ダニエル・ショーの音声データを集めて、彼女がかけた音声認証ロックを解除しようというもの。音声ログはいろんな場所に落ちていて、中には“テーブルトークRPGを遊んでいた時の音声記録”なんていうユニークなものも。破損しているデータなんかもあって、ハッキング能力が高ければ修復して収集率を上げられるという仕組みだ。この、“ほとんど人がいないのに、そこにいた人間を感じさせる”という仕組みが渋くてなかなかいい感じ。
 ラストでは、音楽スタジオに保存されていた彼女が参加していたバンドのテープを再生すると、音に惹かれてTyphonが大挙して襲来し、爆音で曲が流れるなか大騒動になるという、ほとんどギャグのような展開になる(ちなみにこの曲は Colantonio氏とサウンド担当氏によるもの)。

 またサイドミッションも複数存在し、無線で連絡を取ってくるロシア人コックの頼みに応えたり、道中のどこかでルームキーを拾っていれば、ショーとは別の乗員の部屋に入って新たなサイドミッションが始まることもある。

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▲かつてTalos-1の研究者たちの憩いの場であったろう居住区画。今やわずかな生存者を除けば、死体とTyphonしかいない静かな地獄だ。

 ゲーム中では、このロシア人コック“ウィル・ミッチェル”のように、メインミッションやサイドミッションに関連して別の生存者に会うこともあれば、Typhonによる精神操作を受けてうろついている人間なども存在する(倒すこともできるし、スタンガンで気絶させることも可能)。ゲームはひとりも人間を殺さずにクリアーすることが可能で、どれだけ生存者を救えたかによってエンディングにも影響が出てくるそうなので、より高みを目指したい人は非殺プレイにチャレンジしてみるといいかもしれない。

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▲今回見たデモでサイドミッションに関連して出てきたロシア人コック、ウィル・ミッチェル。信用していいのかわからない絶妙な怪しさ。

 そんなわけで本作『Prey』は、『ディスオナード』で好評を博したプレイヤーの創造性を刺激するゲームプレイを発展させた、Arkaneらしい新作タイトルとなっている。プレイヤーの好みによってプレイスタイルや攻略法が変わってくるので、早くじっくり遊んでみたいところ。(すでにいくつかのPR動画が日本語化されていたりするが)まずは日本展開の確定に期待したい。