タッチペン一本で足りねーなら、ゲーマーとしてのぜんぶを賭けてでもクリアーするよ

 少年週刊ジャンプに連載中で、2015年4月から2クールでアニメも放送された『食戟のソーマ』。同作は、独創的な料理を題材にしつつ、友情・努力・勝利で突き進むストーリーと、食べたときの過激なリアクションでたちまち大人気となった作品だ。フリューからニンテンドー3DS版がリリースされるということで、毎週リアルタイムでアニメを視聴していたファンとして、本作をチェックしてみたいと思う。

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▲アドベンチャーシーンの基本画面。音声オンオフ、既読スキップや強制スキップ、クイックロード&セーブといったアドベンチャーゲームとしての基本的なシステムはひととおり備わっている。

 味体験料理バトルアドベンチャーというジャンル名のとおり、基本はアドベンチャーゲームとしてお話が進行し、イベント的に料理対決を題材にしたミニゲームが入る、という流れだ。ストーリー本編の外伝的な位置づけで、遠月茶寮料理學園の特別研修合宿がヨーロッパの孤島で行われる、というもの。もちろん合宿というからには料理対決があり、これに勝ち抜いていくことでゲームは進行する。

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▲基本はアドベンチャーゲームだが、随所に料理対決も盛り込まれている。

数限りないシナリオと数限りないボイス。俺は全部のミニゲームを試したい!

 プレイヤーは主人公の幸平創真(ゆきひらそうま)となり、合宿所での講義や街の実地体験などの研修をこなしてパラメータを上昇させていく。研修は1日6時限行われるので、パラメータ上昇値やキャラクターイベントなどを確認しつつ選んでいくことになる。

 ここでは創真のパラメータアップも大事だが、キャラごとに発生するイベントもストーリーを進めるうえで大事なポイントだ。お気に入りのキャラには積極的に絡んでいきたい。
 その場所1回限りのショートイベントだけでもアニメ数分ぶんのボリュームを感じさせてくれるが、これがキャラごとのストーリーイベントになるとゲーム全体を通して進行するストーリーになり、30分アニメ1本ぶんのボリュームは軽くありそう。これがキャラごとに多数用意されているのだから、すべて味わうには冬休みをフルに使わなければなるまい。

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▲背景と立ち絵の組み合わせだけでなく、専用のイベントグラフィックも随所に用意されている。
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▲マップで場所を選択。1日に6ヵ所の研修(イベント)をこなすことができる。場所によって登場キャラなどが違うので、行くまえによーくチェックしよう。

 前述のとおり、食戟はミニゲームだ。5種類用意されているが、基本は音楽リズムゲームのようにタイミングでボタンやタッチスクリーンを操作するタイプとなっている。これにいい評価で勝つと、原作同様のご褒美グラフィックが立体視でお出まし。創真に「おあがりよ!」と言われて出される料理は、実際に食べられるわけでなはないが、こちらのご褒美はありがたくちょうだい(?)することにしよう。

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▲切る:上画面の右から流れてくるボタンマークが、左側にあるサークルマークにピッタリ入ったところでボタンを押す。
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▲炙る:タッチペンで下画面をタッチし、つぎつぎに出てくる生肉をいい感じに焼く。
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▲加える:右側から流れてくる鍋やフライパンにタイミングよく調味料を加える。
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▲混ぜる:LRボタンかスライドパトで鍋を選び、タッチペンで鍋が書かれた下画面をぐるぐるかき回す。
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▲煮る:目標時間の「STOPTIME」にできるだけ近い時間でタイマーをストップさせていく。
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▲料理対決の結果によって、スペシャルなグラックの度合いも変化。ここに掲載している以上のレベルがもう一段階ある。けしからん!

けどさ、足りねーことにびびってたら永遠に1ゲームも出せやしない

 本作いちばんの見どころは、やはりそのシナリオだろう。アニメを見ていた人なら「そうそう、これだよ」というくらい、あの雰囲気のままで進行していくお話がたまらなくいい。もともとキャラごとの個性が際立った作品なだけに、シチュエーションを与えればあとはキャラが勝手に動き出す……という例を、そのまま体現したような展開だ。

 創真は女性キャラみんなから好意を持たれているのにまったく気がつかないし、田所はいつもワタワタしてるけど最後はちゃんとしっかりやるし、えりなや肉魅のツンデレっぷりは相変わらずだし、一色先輩はすぐ裸エプロンになるし、丸井の部屋は合宿中でもやっぱり宴会場になるし……と、まったくもっていつもの『食戟のソーマ』。このいつもどおりが嬉しいし、ついニヤニヤしてしまう。決して、ご褒美グラフィックだけにニヤニヤしているわけではない。

 フルボイスなのもうれしいポイントだろう。これだけ膨大なシナリオなのに、全編フルボイスなのはちょっと驚いた。主観視点のゲームのため、創真だけは通常のゲーム進行時に音声がなくなるが、トーナメントや大事なイベントではしっかりボイス入りになるので、松岡禎丞さんのファンも安心されたし。

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▲通常のゲーム場面では、創真のセリフはテキストのみで音声は流れてこない。創真=プレイヤーということでオフにしているのだろう。ここぞというイベントシーンなどではちゃんとしゃべる。

 キャラクターの個性がしっかり引き出されているので、原作やアニメにはなかった外伝的なお話を楽しむ、という意味では十分によくできたアドベンチャーゲームだ。
 ただ、『食戟のソーマ』におけるもうひとつの魅力、料理そのものに目を向けると、個人的には残念な部分も多少あったりもする。
 『食戟のソーマ』は、独創的な料理と、それがたまらなくおいしそうに感じられるところも大きな魅力のひとつだと思っている。この食材で、そんな料理の仕方でどのような味の料理ができるのか、このままでは負けてしまうんじゃないか!?ってときでも、まさかのアイディアとおいしさで大逆転するカタルシスがたまらない。そのおいしさを表現するためのお色気的な場面ももちろんうれしいが(うれしいんだよ!)、料理そのものが本気でおいしそうに思えるからこそ、お色気もより引き立つのである。
 このゲーム版では、そういった料理部分をすべてミニゲームで処理している。食材だの料理方法だのそういった大逆転要素はとくに感じられない。シナリオ部分で存分に盛り上がってしまうだけに、料理部分はミニゲームでサクっと終わっちゃうところがやや肩すかしを感じてしまった。アニメや原作なら数週に渡って展開される料理対決なのに、ゲームではタンタンタンとタイミングよくボタンを押していれば終わりだ。料理そのもののグラフィックも出てこない。
 たしかに料理部分を原作テイストでゲームに落とし込むの非常には難しいだろうし、むしろ割り切ってミニゲームにしたのは正解なのだろう。後半からはそういう心構えでプレイすることもできたわけだし。

 ともあれ、アニメ版『食戟のソーマ』ロスだった自分にとっては、今年の春夏の暑い時期を思い出すことができた、何よりのクリスマスプレゼントになる素敵な作品だった。『食戟のソーマ』が好きなら、キミもこのゲームを、「おあがりよ!」