“討論型アドベンチャー”プロデューサーどうしによる対談が実現!

 2015年11月26日に発売されるプレイステーション Vita用ソフト『ネットハイ』。超格差社会への怒りの炎で、偽りのリア充の嘘を暴いていく、新しいアドベンチャーゲームだ。リア充に矛盾を突きつけるというゲームシステムから、ネット界隈では「『逆転裁判』と似ているんじゃないか?」という評判もちらほら聞こえてくる。それもそのはずで、本作の“非リア”プロデューサーを務める田中幸一氏は、『逆転裁判』シリーズの大ファンらしいのだ。その田中氏が『逆転裁判』の江城元秀プロデューサーとの対談を熱望しているとのことで、おそるおそるカプコンへオファーを出してみたところ、江城氏がこれを快諾し対談が実現! 『ネットハイ』が初プロデュース作品となる田中氏と、その田中氏から大いなるリスペクトを受けている『逆転裁判』シリーズ江城プロデューサーとの、アツイ対談の模様をお届けする。

炎上上等! 『ネットハイ』×『逆転裁判』、討論型アドベンチャーゲームを生み出すプロデューサー対談が実現!! 「パクリじゃないです、リスペクトです!」_10
(左)『逆転裁判』シリーズプロデューサー・江城元秀氏。(右)『ネットハイ』非リアプロデューサー・田中幸一氏。田中氏が持つタブレットには、“「異議あり!」風の「レッツ炎上!」”画像が。田中氏がこの日のために作ったお手製画像だ。

『逆転裁判』江城プロデューサーが『ネットハイ』体験版をプレイ! その感想は?

――江城さんには、事前に『ネットハイ』の体験版をプレイしていただきましたが、率直にどう思われましたか?

江城元秀氏(以下、江城) 「カプコンではなかなか成立させづらい、ギリギリなところを攻めている企画だな」と思いました。いろいろところから賛否両論が起こりそうなネタを使っていて、うちでは難しいというか、チャレンジングな内容やテーマですね(笑)。世界観からして「尖っているな」と感じました。それでいて、作るべき演出や見せかたなどの根本的な部分、ユーザーのテンションが上がる要素はよくできているというか、作りかたがうまいと思います。

田中幸一氏(以下、田中) 一見すると、とっぴな世界観に見えてしまうゲームでもありますので、演出やチュートリアル部分については、すごく意識して作ったんです。実際にプレイしてみるとシンプルな操作なのですが、丁寧に説明していくことにこだわりました。

江城 なかなか僕は『逆転裁判』以外のアドベンチャーゲームを遊ぶ機会がないので、クスクスと笑いながら遊ばせてもらいました。

――『ネットハイ』の企画立ち上げの経緯はどういったものだったのでしょうか?

田中 マーベラス社内で企画募集のタイミングがあって、そこに企画案を提出したんです。最初はゲーム内容も固まっておらず、“リア充爆発”がテーマだというところに難色を示されたのですが、「そのワケのわからなさがいい」と逆に評価されて、開発が始まりました。

――最初から討論アドベンチャーの骨組みもできていたのですか?

田中 そこまでは固まっていませんでした。企画当初は本当に、ゲームとしては意味が分からないものでしたね。リア充を爆発させたいという思いだけはこもっていましたが(笑)。

江城 ゲーム開始時に始まる“リア充診断”ですが、ふつうに答えていったら“リア充”と診断されて、そうしたら「リア充に用はない。電源切って外に出ろ」とキャラクターに言われて、ゲームオーバーになってしまいました。「マジかよ!」と声が出ました。「どんだけリア充が嫌いなんだよ」と(笑)。こんなことを言われたのは初めてなので、「すごいコンセプトだな」と思いました。いきなりゲームオーバーにされて、本当に衝撃的でしたよ!

田中 “リア充診断”は、企画当初から入れようと考えていました。まず、「インパクトのあるゲームだな」と思っていただきたかったので、その反応はうれしいです。“非リア充がリア充を爆発させる”というコンセプトから始まってるので、そもそも、リア充だとゲームを始められないという設定にしました(笑)。

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▲『ネットハイ』のプレイ開始時に行われる“リア充診断”。いくつかの質問に答えると、“リア充”/“非リア充”の診断が下される。結果は何パターンかあるので、いろいろ答えを試してみよう。

江城 ……自由ですね(笑)。ゲーム中には、開発陣が「これを入れたらおもしろいんじゃないか?」という内容がガンガン入っていて、いわゆる“大人の事情”というか、しがらみ的なものはこの際置いて、“やりたいことをやってやろう!”という、熱量を感じました。

田中 大人の事情があるものは、「大人の事情です!」とゲーム内で言っちゃっているんですよ(笑)。

江城 結構スレスレを攻めてますよね。“ツイイッター”とか。

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▲『ネットハイ』に登場する“ツイイッター”。ゲーム中では、あえて炎上させて情報を集めたりするのにも使う。

田中 じつは、あれもひと悶着あったんです。会社としてやるには、本当にギリギリなので、「万が一があったら大変だ!」と。英語綴りにすると“wi”がひとつ多いだけなので、「米国企業は万が一のときにやばいのでやめてくれ」と法務部から強く言われてしまいましたね。

――解決策はどうされたのですか?

田中 カタカナ表記にすることで何とか……「お願いですからこれでやらせてください」と懇願して、何とかしました。

江城 しかも、“ツイイッター”起動時に表示される画面のマークも、アレに酷似しているじゃないですか。「本当に大丈夫なの!?」と、同じ業界でゲームを作っている身としては、心配になるレベルでした(笑)。時事ネタやパロディーネタは『逆転裁判』シリーズでは、あえてやらないコンセプトで制作しているので、ある意味ちょっと羨ましいです。