オリジナルストーリーで展開される、独立したスピンオフ作品
人気サンドボックスアドベンチャーゲーム『マインクラフト』専門のコンベンション“Minecon”で今年発表され、大きな話題を呼んだTelltale Gamesのアドベンチャーゲーム『Minecraft: Story Mode』。シアトルで先週行われたゲームイベント“PAX PRIME 2015”で初公開となるデモをプレイしてきたので、その模様をお伝えしよう。
よく誤解されているのでまず説明しておきたいのが、本作はあくまで『Minecraft: Story Mode』というタイトルの『マインクラフト』の設定や世界観を下敷きにしたオリジナルストーリーを楽しむゲームであって、『マインクラフト』本編にストーリーモードが追加されるわけではないということ。自由な遊びが特徴のものに対して、あえてオリジナルの主人公を設定してストーリーを展開するという原作との関係は、LEGOを題材にした映画「レゴ・ムービー」をイメージするとわかりやすいかもしれない(ちなみに『マインクラフト』自体に映画版の話もあったりするが、ややこしいのでここでは割愛)。
開発するTelltale Gamesは、アドベンチャーゲームを得意とするメーカー。「ウォーキング・デッド」や「ゲーム・オブ・スローンズ」などの人気ドラマやコミック、ビデオゲームではFPS『ボーダーランズ』など、さまざまな方面の人気IPをオリジナルストーリーでアドベンチャーゲーム化して、高い評価を受けてきた。
その特徴は、エピソード形式に分割してリリースするという配信手法と、各エピソード終わりにどんでん返しが仕掛けられ、またプレイヤーの判断が後のエピソードに影響するので、つい次が気になるという設計。エピソード1だけなら安価かつ幅広いハードウェアで始められるため、噂を聞いてプレイし始めるとつい先が気になってハマってしまうという、それこそ海外ドラマのような中毒性があるのだ。
というわけで『マインクラフト』という超人気ソフトを扱うにあたって、開発の経験は問題なし。重要なのはそれよりも、オリジナルの展開で高評価を受けた「レゴ・ムービー」のように、一個のストーリー作品として昇華させることができるかだ。
もちろんエピソード形式のストーリー重視のゲームの出来を、エピソード1の一部を切り出しただけのデモで判断できるわけはないのだが、実際遊んでみて、少なくともエピソード1はチェックしてみようと思わせるだけのものはあった。
王道の成長物語を丁寧に描くウェルメイドな会話劇
本作の物語は、主人公であるジェシーという若手冒険者が、友達連中と一緒にマインクラフト世界内のお祭り“EnderCon”に集まったところから始まる。しかし巨大な怪物がEnderConを襲撃し、楽しい祭りは一転して阿鼻叫喚の事態に。命からがら逃げ出したジェシーたちは秘密のアミュレットを託され、世界を救うべく、かつてエンダードラゴンを退治したという4人の伝説の冒険者“The Order of the Stone”を探すことになる。
Telltaleのゲームとしては初めて主人公キャラクターの性別や外見(というか肌の色)を選択可能で、ボイスも男ジェシーをPatton Oswaltが、女ジェシーはCatherine Taberが担当。なんせマインクラフトテイストのアバターなものでバリエーションは限られているのだが、できるだけ自分に近いジェシーでこの物語に入ってもらおうということだ。
繰り返しになるが、ゲームとしてはあくまでTelltaleお得意の会話劇を中心としたアドベンチャーゲーム。レシピに従って素材を並べてアイテムを作ったり、ゾンビやクリーパーが出てきたりと『マインクラフト』らしい要素も出てくるのだが、自由に動きまわって掘ったりクラフトするアクションゲームではない。
アクションパートではフィールドを歩くこともあるが、動けるエリアは制限されており、その中で気になる場所をチェックしてアイテムをゲットしたり謎を解いたりするといった程度。一方で選択肢パートでは“どうやってこのピンチを切り抜けるか”、“なんと言って答えるか”などを選んで、それがストーリーの分岐になっていく感じだ。カットシーンでは示されたボタンを押して事態に対処するQTEなども入ってくる。
話自体は、“何者でもない若者が運命によって選ばれ、世界を救う冒険に出る”という王道中の王道で、プレイヤーの選択によって仲間との絆が変化するTelltale流の仕組みを軸に、今後どう話が転がっていくのか気になるところ。
Telltaleいわく幅広いプレイヤー層を想定しているそうで、インターフェースはわかりやすく、また会話もTelltaleの旧作と比べてそれほど難しい言い回しは出てこないのだが、遊んでいるプレイヤーを見ていると、やはり会話劇がキモなだけに、話についていけずにギブしてしまう低年齢層の子も。対象年齢としては10歳以上といったところか。逆に上限については、しっかりと作られているので、こういう話自体が苦手という人でもなければ問題ないと思う。
本作は全5エピソードの構成で、海外ではXbox One/360/プレイステーション4/プレイステーション3/Wii U/PC/Mac/iOS/Androidで今秋エピソード1が配信予定。日本でも『マインクラフト』は人気なので、どこかローカライズしてくれませんかね……。