コミュニティベースの情報発信を日本でも。吉田氏の新たなチャレンジ

 2015年8月22日に催された、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の正式サービス2周年を祝う14時間生放送。この放送の裏側で、『FFXIV』のブロガーやSNS等で情報を発信している人を集め、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とともに語らう“コミュニティーサイト座談会”が開催された。

『FFXIV』のプレイヤーが吉田氏と座談会! コミュニティーサイト座談会の模様をリポート_01
▲座談会に招かれた総勢18名。光の戦士ならぬ、光のブロガーだ。

 さて、どうしてこのようなイベントが行われたのか。少し長めの前置きにお付き合いいただきたい。

 昨年のgamescom(ドイツ・ケルンで毎年行われる、ヨーロッパ最大規模のゲーム見本市)に取材にいったときのことだ。『FFXIV』の宣伝チームに、こんな提案を受けた。

「今回、ヨーロッパのメディアのインタビューを逆取材しませんか?」

 逆取材。つまり、ヨーロッパのメディアが吉田さんに取材しているところに同席し、その模様を私たちが取材するというもの。おもしろそうなお話だったので、二つ返事で同席をお願いした。

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 実際に取材に入ってみると、ヨーロッパのメディアの質疑内容は、日本のメディアと多少の傾向の違いこそあれど、基本的に“新しいこと”を聞き出そうとするスタンスは同じ。ヨーロッパはPCゲームが盛んだし、PvPコンテンツも人気のため、そうした質問の比重が増えるが、根本的に気になることは世界共通ということだ。

 興味深く取材模様を眺めていると、ひとつ驚くべきことが起こった。なんと、フランスのコミュニティマネージャー(ユーザーグループの代表者)が取材現場にやってきたのだ。『旧FFXIV』のころから活動している“Secrets of Eorzea”というコミュニティのマネージャーで、それはもう手際よく質問をしていく。その質問の内容も、我々メディアのように新しいこと一辺倒ではなく、「他人の装備を修理できるようにならないか」とか、「友達招待キャンペーンで、すでに誘ってしまった人はどうなるのか」とか、とにかくプレイヤーの意見をダイレクトに伝えている印象。いやあ、これはすごいなあと、軽くカルチャーショックを受けた。

 これについて、取材後に吉田氏に尋ねてみたところ、欧米のMMORPGタイトルでは、コミュニティ(ユーザーグループ)はかなりの影響力を持っており、メディアと同等の扱いでインタビューが行えるとのこと。吉田氏は続けて、日本でも実施したいけど、日本ではメーカーとプレイヤーは敵対関係というイメージが色濃くあり、また匿名性の高いネット文化も相まって、目立つコミュニティが叩かれてしまうということを危惧していた。

 それから1年が経った。『新生FFXIV』の運営も2周年を迎え、新しい世代のプレイヤーも増えてきて、文化も変わってきたのではないか。そうした中で、今後の日本のコミュニティの進化を見据えた施策、それが今回の“コミュニティーサイト座談会”だ。

 当日招待されたのは、吉田氏を始め、開発チーム、コミュニティチームがお気に入りとしているブログやTwitterの管理者たち総勢18名。エオルゼアのありとあらゆるメガネを愛するブロガーや、スクリーンショットの加工職人、ハードなコンテンツの攻略系ブログを運営している人など、さまざまなジャンルのプレイヤーが集まった。まずは、座談会の趣旨が吉田氏より説明され、前述のような“日本のコミュニティに対する試み”であると同時に、吉田氏も『FFXIV』のいちプレイヤーとして参加する“オフ会”だと思ってほしいと伝えた。

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▲ブロガーたちが吉田氏を囲む。ファミ通から贈ったケーキがここで振る舞われた。

 座談会は、それぞれが自己紹介と、吉田氏に何かひとつ質問(ひとつではない人も多かったが(笑))するという形で進行。途中に休憩を挟みながらも、じつに約3時間の濃密な時間となった。ここで交わされた質疑応答は、参加者みずからが発信するルールとなっているため、記事化は行わない。“ff14 座談会”などの検索ワードでWebを巡ってみるといいだろう。

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▲質問のひとつひとつに真摯に回答する吉田氏。参加者の質問はどれも鋭く、オフレコになったものも多い。プレイの有利不利に結びつく質問については回答しなかった。

座談会参加者の6名にインタビュー

 座談会終了後、イベントに参加したたけおさん、あぐりさん、イシュさん、ふなっしーさん、もすぅちゃんさん、みいなさんの6名の方に残っていただき、感想を伺った。じつは、顔見知りのブロガーどうしもいたりして、かなりアットホームなインタビューとなった。以下、抜粋でお届けする。

──イベントに参加してみて、いかがでしたか?

たけお 今回のイベントで思ったのは、ネットでいちばん話題になりやすいバトルコンテンツ以外にも、開発の方が興味を持っているということです。今回は、そうした方面で活動している人たちを中心に集められたような感触がありますね。それがうれしかったです。

あぐり 『FFXIV』の新生以降、ニコ超に出席したりファンフェスをやったり、プレイヤーとコミュニケーションを積極的に取る姿勢を感じていました。なおかつ、『FFXIV』のゲーム外で活動している人たちにフォーカスして、そういう人たちとコミュニケーションを取るという試みはすごく励みになりますね。自分たちの活動は自己満足の部分が多かったりするけど、それを開発の方が見てくれていて、「やっていてよかった」と感じられました。

イシュ 僕はコアなブロガーではなく、カジュアルにブログをやっています。こんな機会に呼ばれるなんて想像していなくて、GMさんからtellが来たときは本当にびっくりしました。開発チームがプレイヤーに対して直接アポイントを取ってくるなんて、思っていなかったんです。ものすごく衝撃的なことでした。僕は自分の趣味の範囲で遊んでいただけですが、そういう人にもこういう機会があるのはプレイヤーからしてみたらすごく可能性があることですね。

ふなっしー 『FFXIV』にはメーカーとプレイヤーのふたつの立ち位置があって、いちばんもったいないのはミスコミュニケーションだと思います。メーカーがプレイヤーの要望をわかっていない、聞いてくれていないと思い込んだりして。そこを、自分たちが直接話を聞いてツイートする。そういうことだけで、メーカーはわかってくれているんだと、プレイヤーは安心できるわけです。こういう場を設けてもらって、ブロガーが緩衝材のようなものになれるといいのではないかなと思います。

もすぅちゃん 吉田さんをものすごく近くに感じることができました。生放送の会場では最初は緊張していたのですが、開発メンバーに少しずつ話を聞いて、自分のブログを見てくれている人が多いことがわかり、びっくりすると同時にうれしくて。これからもがんばろうと思いました。

──またこうした座談会に参加できるとしたら、何をしたいですか?

たけお 開発の健夫さん(鈴木健夫氏。リードデザイナー)と話がしたいですね。立場ごとに言えることって違ってくると思うんですけど、プロデューサーとしてまとめている人の言葉と、開発している人の言葉って違うと思うので、そういうところでのやり取りもしてみたいです。

みいな 世界設定とか好きな人もいると思うんで、そちら方面のコアスタッフと話してみたいというのはありますね。

──座談会は正味2時間半くらいでしたが、満足できましたか?

みいな 正直足りない(笑)。

たけお 自己紹介だけで時間の3分の2が過ぎちゃいましたからね。

みいな 自己主張が強い人たちが集まっちゃったんで、仕方ないと思いますけど(笑)。

たけお それにしても、いろいろなジャンルの人が集まりましたよね。画像加工からトリプルトライアドの話まで飛び出したりして。

──吉田さんと実際に話してみて、いかがでしたか?

もすぅちゃん 本当に素晴らしかったです。自分の質問に誠実に応えてくれました。答えてほしいことをちゃんと“答え”として返してくれました。質問側としてはすごくありがたいですね。

あぐり それぞれの質問に対して言葉でしか伝えられないので、実際どうゲームに反映されるかを伝えるには限界がありますよね。吉田さんの立場で発言したことというのはかなり重さがあって、それが正確に伝わらないかもしれないという危険性は、吉田さん自身がいちばん理解していると思います。ですので、言葉を選んで、ゲームに対して悪影響を与えないように、そして開発の姿勢を正しく伝えるために、すごく慎重にやられているという印象を受けました。

──今回の座談会を受けて、今後の活動方針に変化はありそうでしょうか?

たけお 方針は変わらないです。私はメガネを追い続けるので。

あぐり 方針が変わる人は、たぶんそんなにいないでしょうね。内容がガラっと変わることはないでしょうけど、“たがが外れる”というか、自由奔放になりそうな気もします。開発の方も見てくれているという安心感というか、信頼感というのでしょうか。やりたいことを突き詰めていく、そういう方面に先鋭化していくのかなと思いますね。

<<関連リンク>>
座談会に参加していただいた方のブログ、SNS

たけおさん:めがねや!

あぐりさん:Aguri Greygoose

イシュさん:ヒマワリのタネ

ふなっしーさん:ぶらりFF14

もすぅちゃんさん:FF14 もすぅちゃん日記☆ミ

みいなさん:Moon Gravity