伝説を築いたあのシリーズがついに復活!

 2015年7月23日、いよいよ『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』がニンテンドー3DSで登場。ゲームジャンルは自軍のコマを動かして敵軍と戦っていく、戦術シミュレーションRPGだ。古参のゲームファンならば『ラングリッサー』シリーズはご存じかと思うが、復習の意味もかねて、まずはシリーズについておさらいしていきたい。

 初代『ラングリッサー』は1991年にメガドライブ用のシミュレーションRPGとして登場。美しい映像や魅力的なキャラクターデザイン、国家を巻き込んだ壮大なシナリオ、じっくり考えられる戦略性などで大きな話題を呼んだ作品だ。その後、人気作となった『ラングリッサー』はシリーズ化され、PCエンジンやスーパーファミコンなどメガドライブ以外の機種にも展開されていき、1998年にはナンバリングタイトルの5作目である『ラングリッサーV~The End of Legend~』がセガサターンで登場。以降、外伝的な『ラングリッサーミレニアム』も開発されたが、本編はこの『ラングリッサーV~The End of Legend~』を最後に音沙汰がなくなってしまった。

 時は流れて2015年、ファンの想い応え、ついに『ラングリッサー』シリーズが復活。その最新作が、今回登場した『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』というわけだ。

『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』インプレッション 昨日の敵は今日の味方となるか!?_01
▲伝説のシミュレーションRPGシリーズがついに復活。キャラクターデザインも一新され、新たな息吹が吹き込まれる。

“傭兵”を活用するのが勝利への近道

 『ラングリッサー リインカーネーション-転生-』の主人公は、アレスという地方領主見習いの青年。臨海都市ボルスレーヌにて生活していたが、突如都市が帝国軍に攻め込まれ、戦乱に巻き込まれていく……という導入だ。まずは、ゲームのキモとなるシステムから見ていこう。

 多くのシミュレーションRPGと同様に、本作のユニットにはクラス(職業)という概念があるが、おもしろいのは主人公のクラスが決まっていないこと。ゲームスタート時に性格診断が行われるのだが、この回答によって主人公のクラスや能力が大きく変化する。クラスごとに戦いかたは大きく変化するため、自分の好みに合ったクラスで戦えるのは嬉しいポイントだ。

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▲ゲーム開始時の性格診断によって、主人公のクラスや能力が変化。お気に入りの結果となるまでやり直すことも可能だ。
▲指揮官(キャラクター)にはそれぞれクラスが設定されており、クラス間で有利不利が存在する。たとえば騎兵は歩兵に強く、槍兵に弱い。

 本作のバトルは、四角いマスで区切られたマップ上で行われる。プレイヤーはコマとなる指揮官(キャラクター)のユニットを動かし、敵ユニットを攻撃するなりして、勝利条件を達成すればステージクリアーとなる。このあたりは一般的なシミュレーションRPGと大差ないため、シリーズの初心者でも戸惑うことなくプレイできるだろう。

 注目したいのは、本シリーズ独自のシステムである“傭兵”だ。指揮官は単体で戦えるが、さらに“傭兵”を雇うことで、扱えるユニットの数を増やすことができ、そのぶん有利に戦いを進められる。主人公自体が強化されるわけではなく、雇ったステージに限り“傭兵”ユニットが追加される、というのがポイントだ。

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▲指揮官ユニットに加え、雇った“傭兵”も操作可能。“傭兵”はステージごとに雇い直す必要がある。

 たとえば、主人公のクラスが騎兵の場合、“傭兵”を1体雇うと、主人公ユニットとその“傭兵”の、合計2ユニットを戦場で操れる。全指揮官で“傭兵”を1体ずつ雇えば、扱えるユニットの総数は2倍となるため、戦力を大きく向上させられるという寸法だ。

 ただし、デメリットもある。まず、“傭兵”を雇うにはお金のような“pt”が必要。何をするにも、まずは先立つものが必要というわけだ。また、“傭兵”は指揮官の周囲から離れると、戦闘力が大きく下がってしまう。このため、単独行動させにくい。単純に味方が増える、という考えかたで操作するのは少々リスクが高い。

 このように、“傭兵”には長所と短所が存在する。それぞれをしっかり把握し、最大限の力を発揮できるように運用していきたい。プレイヤーの腕の見せ所であり、本作における戦略で、もっとも楽しい部分のひとつだろう。ちなみに、“傭兵”が敵を倒した場合、その経験値は指揮官に加算される。“傭兵”が倒すと経験値が無駄になる、なんて心配は無用であることを覚えておこう。

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▲“傭兵”は、戦闘準備画面の傭兵ギルドで雇うことができる。ただしお金のような“pt”が必要で、雇える数も指揮官ごとに決まっている。
▲指揮官の近くで戦えば、“傭兵”の戦闘力は大きく向上する。つねに指揮官といっしょに行動していきたい。

 なお、敵の指揮官もこちらと同様に、“傭兵”を従えて攻めてくる。指揮官を倒すと、その“傭兵”もいっしょに消えてしまうため、素速く相手の戦力を減らしたい場合は積極的に指揮官を狙っていこう。

 ただし、敵の“傭兵”を倒しても経験値を入手できるため、自軍の指揮官を成長させたい場合は、できるだけ敵の“傭兵”から倒していきたい。ただ、敵は指揮官から先に行動してくるため、反撃でいきなり指揮官を倒してしまうことが多い。そのため、なかなか思い通りに敵の“傭兵”を倒せないのが実情だ。どのようにユニットを動かせば上手に“傭兵”から倒していけるのか、アレコレ考えながらプレイするのがかなり楽しい。このあたりの試行錯誤は、シミュレーションRPGの醍醐味と言えるだろう。

勢力間の戦いを描く重厚なシナリオ

 続いて、ストーリーやキャラクターについて触れていこう。主人公たちは、臨海都市ボルスレーヌの自警団という立場だ。これに、大陸のほぼすべてを掌握している巨大国家の“帝国軍”、その“帝国軍”に抵抗している教会を中心とした組織“光輝の軍勢”、さらにほかの勢力から迫害されている“闇の勢力”という、4つの勢力が存在する。

 物語は臨海都市ボルスレーヌが“帝国軍”の襲撃を受け、自警団はそれに抵抗しつつ逃げる……という導入は、序盤で解説したとおり。その逃走中に、“光輝の軍勢”が助力してくれたり、“闇の勢力”が立ちふさがったり、という展開となる。

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▲“帝国軍”、“光輝の軍勢”、“闇の勢力”という3つの勢力が登場。序盤は“光輝の軍勢”が助けてくれるという展開だ。
▲主人公アレスは、逃げ延びた先の教会で聖剣“ラングリッサー”を入手。このことが“帝国軍”に追われる原因のひとつとなる。

 じゃあ“光輝の軍勢”が味方で、“帝国軍”と“闇の勢力”が敵かというと、じつはそうではない。序盤は確かにそんな感じなのだが、本作は途中でルートが分岐し、いずれかの勢力として戦うことになる。つまり、“光輝の軍勢”といっしょに戦うルートも、“帝国軍”に助力するルートも、“闇の勢力”に接近するルートも用意されている。

 どのルートを選ぶかによって、味方となる指揮官が変わるため、あるルートで味方だった指揮官は、ほかのルートで敵として登場する、なんてこともありえる。はっきりと善悪が決まっているわけではなく、各勢力の立場に立って戦っていく、そんな戦史物のような物語を楽しめるワケだ。さらには、上記の3つ以外のルートも存在するらしく、この隠しルートを探す楽しさもある。

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▲ゲームを進めると、選択肢によってルートが分岐する。どのような未来を描くのかは、プレイヤーの手に委ねられている。

 このように勢力間の戦いが本作の大筋となっているのだが、デモはステージ間で表示されるだけではない。戦闘中にもキャラクターがしゃべったり、場合によっては援軍が現れたりして、物語を盛り上げてくれる。味方だけど操作できない“友軍”が登場することもあり、マップ上には多量のユニットがひしめき合うことも多く、“大軍対大軍”の戦いに参加している高揚感もたっぷり味わえるのは魅力だ。

 また、キャラクターどうしの関係も深く掘り下げられる。ステージ間の出撃準備画面では、味方の指揮官と会話することが可能。上手に会話を進められると、親密度が上昇していくため、お気に入りのキャラクターと仲よくなる楽しさも味わえる。

 ただし、1ステージで会話できるのは3回までで、しかも同じキャラクターとは1度しか会話できない。そのため、誰とどのように会話するかが、じつに悩ましい。親密になるといいことがあるらしいので、ぜひお気に入りのキャラクターと仲よくなることを目指してみよう。

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▲敵味方問わず、戦闘中に増援が現れることも。戦局が大きく変わり、盛り上がる瞬間だ。
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▲仲間キャラクターと会話を重ね、親密になっていくことも可能。お気に入りのキャラクターと接近しよう!

本作からでも十分に楽しめる作り!

 本作は『ラングリッサー』シリーズの最新作だが、シリーズにおける特徴の多くはゲームシステムに引き継がれている。物語は過去作の続きというわけではなく、新しいストーリーが始まるため、これまでの作品をプレイしていなくとも十分に楽しめるだろう。

 ただし、聖剣“ラングリッサー”をはじめとした世界観の一部は引き継がれており、さらに過去作に登場した名物キャラクターも一部登場する。シリーズのファンだからこそニヤリとできる仕掛けも用意されているワケだ。

 キャラクターの育成やルート分岐など、じっくり楽しめる要素がたっぷり詰め込まれた本作。特徴的なゲームシステムは若干多いが、徐々に登場し、しかも丁寧に解説してくれるため、シリーズ初心者でもすんなり楽しめるだろう。ファンはもちろん、シミュレーションRPGに興味がある人もぜひ試していただきたい仕上がりだ。過去作はバーチャルコンソールやゲームアーカイブスで配信されているため、本作で『ラングリッサー』に興味を持ったら、そちらもプレイしてみるといいだろう。

筆者紹介 喫茶板東
ファミ通.comを中心に、あんな記事やこんな記事を寄稿しているフリーライター。『ラングリッサー』といえば、トレカを熱心に集めていた記憶が蘇ります