見た目だけではない『スターフォックス ゼロ』の新しさ

 2015年6月16日~18日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて世界最大のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2015が開催。任天堂 専務取締役を務める宮本茂氏に加え、『スターフォックス ゼロ』のディレクターを務める林悠吾氏(代表作:『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』、『Wii Fit U』など)そして、『スターフォックス ゼロ』の共同開発を務めるプラチナゲームズの橋本祐介氏(代表作:『ベヨネッタ2』など)による、本作のプレゼンテーションが行われた。本記事では、試遊プレイのインプレッションを中心に『スターフォックス ゼロ』の魅力をお伝えしよう。

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 『スターフォックス ゼロ』最大の特徴は、テレビとWii U GamePadのふたつの画面でまったく違った映像を映していること。テレビの画面はいままでの『スターフォックス』のように、アーウィンの後ろから映したもののほか、シネマティックなシーンが映ることも。ただし、どちらでもWii U GamePadの画面は、アーウィンのコクピットからの視点になっており、Wii U GamePadのジャイロ操作を使って、コクピットの中を覗いたり、照準を表示して弾を撃ったりできるようになっているわけだ。

Wii U GamePadを使った2画面ならではの新たな遊び! 記者が体験した『スターフォックス ゼロ』の魅力【E3 2015】_01

 新機能のひとつが、“ターゲットビュー”。これは、背後につく敵に注目して戦えるというもの。これまでは背後につかれても、なかなか後ろの敵を見ることはできなかったが、このターゲットビューという機能を使えば、後ろから迫り来る敵を確認できるというわけだ。また、敵が侵入したときなどは、自動でデモシーンに入るが、そのデモ中もWii U GamePadを操作して、コクピット視点を堪能できる。これまでも、ただ見るだけでないインタラクティブなデモシーンは数多く存在したが、それがWii U GamePadのコクピット越しに見えることで、より没入度が増しているように感じられる。

Wii U GamePadを使った2画面ならではの新たな遊び! 記者が体験した『スターフォックス ゼロ』の魅力【E3 2015】_02

 今回のアーウィンの操作は、Wii U GamePadのふたつのスティックを使った操作が基本になる。Lスティックは操縦桿のように、手前に引くと上昇、奥に倒すと下降。一方のRスティックは、アーウィンのスピードコントロールの機能を持つ。奥に倒すとブーストで加速、手前に引くとブレーキで減速をする。この2本のスティックを組み合わせることで、シリーズでおなじみの宙返りやUターンといったアクションが、より簡単にくり出せるようになっている。なお、ZRボタンが攻撃のレーザーで、2本のスティックとZRボタンの操作が基本となる。さらにZRボタンを押し続けることで、敵のロックオンが可能だ。

 これまでのシリーズからの大きな変更として、今回アーウィンは変形機能を持っている。それが、地上を歩く“ウォーカー”だ。ボタンひとつで変形するウォーカーは、アーウィンと同様の直感的な操作で動かせるため、アーウィンで空中からスピーディーに戦う、ウォーカーで地上からゆっくり戦うといった、選択の幅が生まれることになる。なお、このウォーカーは、スーパーファミコンで発売中止になった幻の“スターフォックス2”にあった要素なのだとか。しかも、いわゆるロボット変形にありがちな、強引な変形ではなく、まったくウソのない、正確な変形になっているそうで、こだわりが感じられる。難しいとは思うのだが、そんな変形可能なamiiboが発売されたら……と考えると、いろいろ妄想が止まらない。

Wii U GamePadを使った2画面ならではの新たな遊び! 記者が体験した『スターフォックス ゼロ』の魅力【E3 2015】_03

 『スターフォックス ゼロ』のストーリーやキャラクターは、『スターフォックス64』がベースになっており、いつものメンバー、ファルコ、フォックス、ペッピー、スリッピーが登場するが、リメイクというわけではなく、まったく新しいゲームとなっている。しかも、開発がプラチナゲームズだけに、『ベヨネッタ』シリーズのクライマックス・アクションならぬ、クライマックスな演出が数多く入っているそうだ。

 今回の試遊プレイでプレイできたのは、おなじみ惑星コーネリア。オープニングは、コクピットに座るフォックスたちのシーンから始まる。Wii U GamePadを覗き込むと、周囲のアーウィンに座るファルコ、ペッピー、スリッピーの姿が。オープニングでは、Wii U GamePadのジャイロ操作で彼らのほうに向き、カーソルを合わせることで、ゲームがスタートすることになるのだ。いざゲームが始まると、前述のようにテレビ画面と、Wii U GamePadの画面で異なる視点が表示されるのだが、どちらを見ても違和感なくプレイができるようになっている。そして、コーネリア防衛軍基地に到達すると、一定地域を自由に飛び回れるオールレンジモードに突入。

 コーネリア防衛軍基地で戦闘をくり広げると、ストライダーという敵が登場するデモが。塔に向かって攻めていくストライダーを逃すとゲームオーバーになってしまうため、アーウィンで高いところを飛びながら、ストライダーの弱点である上部を狙うことになる。そうこうするうちに、敵の巨大戦艦とのボス戦へ突入。

 ここで最大のポイントであるボス戦に。テレビ画面では、ずっとボスにカメラが向かったままだが、Wii U GamePadでは周囲の敵へ照準を向けている。これが、まさにテレビ画面と手もとの画面の2画面を使った重要な部分で、上から落下してくるものをWii U GamePadで見ながら避けたり、背後から飛んでくるミサイルを誘導して敵にぶつけたりと、テレビとWii U GamePad、ふたつの視点があるからこそできるゲーム性になっていた。

 続いてのステージは、コロニーという完全新規の舞台。コロニーにはいろいろな秘密があるようだが、そこへ突入する前に、シリーズでおなじみのライバル・スターウルフたちがやってきた。本作では新たな敵が数多く追加されているほか、そもそもたくさんの敵が表示できるようになったため、コロニー前の戦闘では50機が入り乱れるドッグファイトが実現。ちなみに、スターウルフのピグマが乱入するデモシーンがテレビ画面で表示されているあいだ、手もとのWii U GamePad画面ではそのままゲームが続けられる。また、敵のピグマ、デンガーあたりは、撃退時に関西弁をしゃべるといった、シリーズファンならニヤリとする演出も。通信を使った音声が、Wii U GamePadのスピーカーから聞こえたりと、ニンテンドウ 64版などのシリーズ作を遊んだ人ほど、この進化には感動するかもしれない。

 また、同じステージでも飛行型のアーウィン、地上タイプのウォーカー、そして、おなじみのランドマスターといろいろな手段で攻略するようなミッションもあるとのこと。ちなみに、ランドマスターも変形して、飛行形態になるという。さらなる新機体としては、作業用ヘリのような“ジャイロウイング”。狭いところをゆっくりと侵入する特徴のほか、“ダイレクトアイ”というロボットを格納しており、ダイレクトアイをさらに狭い所に下ろして探索していくという遊びも楽しめるようだ。一度ステージをクリアーすれば、いろいろな変形が楽しめるという情報からも、ひとつのステージでも、かなり多くの攻略方法が楽しめるのかもしれない。

Wii U GamePadを使った2画面ならではの新たな遊び! 記者が体験した『スターフォックス ゼロ』の魅力【E3 2015】_04
Wii U GamePadを使った2画面ならではの新たな遊び! 記者が体験した『スターフォックス ゼロ』の魅力【E3 2015】_05

 今回、試遊をしてみて感じたのは、60fpsで描かれるとてもなめらかで美しい世界。正直、スターフォックスチームの4人が惑星コーネリアに降下した場面では鳥肌が立つほどだった。懐古発言のように思われるかもしれないが、スーパーファミコンの初代『スターフォックス』から22年、ニンテンドウ 64の『スターフォックス64』から18年(ニンテンドー3DSのリメイクなどもあったが)の時を経て、この4人が一堂に会すシーンが見られるとは……。でも、鳥肌が立った理由はそれだけではない。ムービーシーンでWii U GamePadを傾けると、その方向を眺めることができる。この臨場感が半端ではない。文字にすると「ふーん」という感想で終わってしまうかもしれないが、Wii U GamePadに映し出されるコックピット視点は、後ろでプレイを見ている人たちが思わず体を動かしてしまうほど。

 通常、テレビ画面には、アーウィンの後方までが確認できる視野の広い画面が表示される。だが、Wii U GamePadのマイナスボタン(SELECTボタン)を押せば、テレビとWii U GamePadの画面を入れ換えられるという要素が。入れ換えてみると、あら不思議。プレイ感覚がまったく異なるものになる。より没入感が上がると言えばいいのか。実際に操縦桿を握っているような感覚に陥る。コックピット視点がメインとしてあり、サブカメラの映像が端末(Wii U GamePad)に表示されるという設計の戦闘機に実際に搭乗している感覚……。間違いなく言えるのは、ほかのゲームでは味わえない新たな感覚で、最初こそ戸惑うものの、慣れれば確実に操作がしやすくなる設計だ。

 そうなる理由は、それぞれの画面と操作にジレンマがあるからこそ。つまり、コックピット視点ではジャイロ操作によってすばやく敵に照準を合わせたり、一定方向に機体を移動させながら見る方向だけを変えられる。だが、機体の移動は難しく、視野も狭いため、敵に背後を取られたり、見えない場所から攻撃を受けるという危険もはらむ。一方、サブ視点は視野が広く、自機周辺の地形や敵をすぐに認識できるというメリットこそあれ、照準が合わせられるのは画面内に写るものだけ。このジレンマがあるからこそ、最終的に唯一無二の臨場感と没入感を備えた操作性を生み出しているというわけだ。

 任天堂とプラチナゲームズ。『ベヨネッタ2』でタッグを組んだ2社が、まさかの『スターフォックス』で再び手を取るというのは驚きだ。映画のようなド派手な演出&アクションでカタルシスを生み出すプラチナゲームズと、インタラクティブな気持ちよさにこだわる任天堂。『スターフォックス ゼロ』では、テレビ画面でシネマティックな演出が映し出され、Wii U GamePad側の画面では、主観視点によるゲーム画面が映し出される。この客観視点のカメラと、主観視点のカメラを操作する2画面の『スターフォックス ゼロ』の仕様こそ、演出とインタラクティブが融合するという、任天堂とプラチナゲームズのタッグが本領を発揮するゲームなのかもしれない。