今年のテーマはズバリディフェンス強化!

 エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム、FIFAシリーズ。今年度のバージョンである『FIFA 16』をプレE3イベントで海外メディアと一緒に対戦してチェックしてきたので、例年通りインプレッションをお届けしよう(ちなみに3戦3勝、ブラジルメディアにも勝ってきたぜイェーイ)。なおプレイしたのはPS4/Xbox One版。北米では9月22日の発売を予定している。

 着実に進化を続けることで、毎年追っているプレイヤーじゃないとちょっと違いがわかりにくい高みに進化してしまっている本シリーズだが、今年も「近年で最高のFIFA」と言わせて頂きたい。ボジョレー・ヌーボーの評価みたいに聞こえるかもしれないが、本当だ。正直、それまで毎日1時間は『FIFA 15』をプレイしていた記者だが、プレスツアーを終えて家に帰ってきてからはしばらく『FIFA 15』をプレイする気が起きなかったぐらいだ。

 昨年はオフェンス強めの調整の年と感じていたFIFAプレイヤーも多いと思う。このシリーズはオフェンスとディフェンスを交互に強化することで、より熱いフットボールの再現を模索してきた。そして今年はディフェンス強化の年だ。まずはプレゼンからわかった強化ポイントを説明しよう。

1.ディフェンスのアジリティ
 FIFAで遅いDFを使ってドリブラーを相手にしなければいけない時は辛い。一度間合いの詰め合いに失敗したら慣性がついたままフラフラ前に出てしまい、後はもうそのシーンからはいないも同然になることがある。
 だが『FIFA 16』では、相手選手に抜かれかけても、これまでよりクイックなターンをして再度食らいついていくことができる。サンプル映像では、メルテザッカーがすり抜けられかけた所から再チャレンジする様子が見られた(ゲームでのメルテザッカーは足の遅さが「メルテザッカーの方がFIFAサーバーより速いぜ」とフォーラムで皮肉に使われるレベル)。
 もちろん完全にスピードに乗った高速ドリブラーに追いつくのは厳しいだろうが、“次のプレイにモタついた相手選手に再度追いついて、体を当ててかっさらう”といったシーンが以前より増えるかもしれない。

 また、スライディングでのカットが成功しなかった時に、再度スライディングボタンを押すことで、すぐに立ち上がってディフェンスに戻るというオプションも追加。これがあることで、これまでならスライディングを使いたくなかった局面でもチャレンジできると思う(そのほか資料を見る限りでは△/Yでフェイクタックルがついたようだ)。

2.ユニットとして守る
 プレイしていても如実に実感できたのがこの要素。例えば「相手がサイドから中央にカットインして最終ラインとボランチの間のスペースを使ってきそうな時」に、AIがそれを察知して寄せていくといった動きをしようとする。
 これに加えてAIのインターセプトへの意識が高まっていて、マークする選手にパスが入る瞬間を狙ってチャージングして奪いに行くとか、自分の後方にいるポストプレイヤーに向けて蹴られたパスをスライディングで引っ掛けに行くといったアクションをするようになっている。このふたつの組み合わせにより、パスカットからカウンターになるシーンが多かったように感じた。

3.早くて低い勝負パス
 もちろんディフェンス強化一辺倒ではなく、オフェンス側の武器も増えている。R1+X/RB+Aで出るパスが、FIFA15のファンシーパス(トリックパス)から新アクションの“Pass With Purpose”に変更。これまでは強いスルーパスで代用していたような、切り裂くようなグラウンダーの勝負パスを出せる。バルセロナみたいに緩いパス回しからカットインしてきたウィンガーにキラーパスを出したり、少しサイドに流れたトップに入れるのに使ったり、使い所が面白そう。

4.ノータッチドリブル
 L1/LBで出す「蹴らないドリブル」。ドリブラーがボールを緩く転がしたまま抜きにかかるタイミングをはかる、あのアクションが使える。これがうまく決まるとめちゃくちゃカッコイイのだが、しくじってあっさり奪われると切なさしか残らないのは現実同様。調整されたディフェンスとの攻防が面白くなりそうだ。

5.試合中のトレイナー機能
 今年のEA Sportsの他タイトルでもついている機能で、試合中リアルタイムにオススメのアクションを表示するというもの(オンオフ可能)。やったことないホッケータイトルでも、この機能をオンにして、表示に従って操作するだけでそれっぽくプレイできたので、FIFA初心者でもこれに従ってプレイする内に、どの局面でどういう操作をすればいいか、遊びながら学べるのではないだろうか。

6.女子サッカー代表をナメちゃいけない!
 12の女子サッカー代表チームが登場。モーションも女子選手協力のもと収録していて、男子選手とはまったく違うプレイ感(ただし女子対男子はできないし、女子クラブチームは入っていない)。最初は「あぁ、男女平等のために入れるんですね」という程度の感触だったのだが、ナメてました。予想以上に面白い! あとワンバック姉貴が強い。
 ちなみに残念ながら、我らが女子日本代表は含まれていない。スタッフに懇願してきたのだが、「女子日本代表が強いのは知ってるし、僕らも入れたかったけど……」とのこと。ワンバック姉貴と澤選手の攻防が見たかったよ俺は!

こりゃもう体験しちゃったら戻れないッス。

 というわけで各国記者と対戦してきたのだが、すでに書いたとおり、パスカットやスペースを埋めに来たディフェンスの潰しが入る局面が多かった印象。
 だからこそノータッチドリブルで溜めを作りながら仕掛けるタイミングを探ったり、ボールを動かしながらPass with Purposeで一気に勝負を仕掛けたり、早めにサイドに展開してからのアーリークロスで勝負するといった選択肢が効いてくる感じ。特にPass with Purposeはパスサッカー好きの記者には嬉しい新機能。例年通り体験版が出たらぜひチェックしてみて欲しい。

 で、初物ということで対戦の際に女子サッカーマッチを希望するメディアが多かったのだが、これがまた、男子サッカーとはモーションや身体能力が違えば当然のように可能なプレイも違ってきて、ゲームのテンポもちゃんと違うように感じた。
 男子でもそうそうできない無茶なワンタッチパスの連発なんかはあんまり成功せず、トラップも考えながら勝負どころを決めて蹴るとそれは綺麗に行くという、ちゃんと「女子W杯で見たよこういう感じ!」になるのがいい感じ(ただこれはパラメーターが低めの調整だったからかも)。
 開催中の女子W杯に間に合わないのと、なでしこジャパンを含めて全出場チームが収録されているわけではないのは残念だが、ピッチで躍動する女性たちに捧げる、女子サッカーイヤーを締めくくるのにふさわしいプレゼントと言えるのではないだろうか(来年あたり、女子ブンデスリーガとか入れてくれませんかね? 岩渕真奈選手を使いたいんじゃあああ)。

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