続編の開発が頓挫してしまった、伝説のディメンション・アクションパズル!

『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_02
▲小さな村で暮らす主人公のゴメズは、啓示を受け、外の世界を知る! “立方体”を失い、崩壊する世界を救う冒険の旅が始まる。

 ゲームファンの皆様に、とっておきのインディーゲームをご紹介する本コーナー。今回はまさにそのコーナー名にふさわしい、まさにとっておきの作品であり、ある意味では……“インディーゲームの伝説”になってしまったとも言える『FEZ』をご紹介します。
 いまをさかのぼること3年前の2012年に、Xbox 360のダウンロード用ソフトとしてカナダのインディーメーカー・Polytron Corporationより発売された本作は、なんとその年の“IGF(Independent Games Festival)”の大賞をかっさらっただけでなく、各メディアのレビューでも、軒並みほぼ最高点をマーク。のみならず、2014年にはなんと販売本数が100万本を突破。この名声と実績、まさに伝説のインディーゲーム。
 ですが、もうひとつ悲しい伝説も。じつは本作は、続編の開発が発表されていたのですが……作者ととある記者とのあいだの口論が発端となり、なんとイヤ気がさした開発者自身がゲーム業界を去ってしまうという衝撃の結末を迎えました。
 その影響で続編も開発中止に……。本作は世界を魅了するほどの圧倒的な世界観とゲーム愛、そして“発見”の楽しさに満ちたものだっただけに、その続編を望むのがほぼ絶望的となってしまったいま、ゲームファンにとっては、名実ともに“伝説”の一作になってしまったかのようです。嗚呼!
 そんな本作ですが、昨年にはPS4・PS3・PS Vita版もリリースされるなど、作品に触れる機会は広がっています。「最近PS4を買ったよ!?」なんて方には、ぜひともこの機会に『FEZ』を知っていただき、このステキなゲームを遊んでいただきたい。そんな気持ちになり、今回あえてご紹介させていただきました。
 
 ちょっとヘビーなお話になってしまいましたが、なににせよ……こうしてさまざまなプラットフォームでリリースされ続けるということは、どんな悶着があろうとも「『FEZ』がおもしろいゲームだから」という点に尽きます。それがすべて。

 その証拠に、本作には世界中のゲームファンを魅了した、ゲーム愛のようなものを感じずにはいられない手触りがあります(触って操作しているだけで、随所にレトロゲームのような、思わず笑顔になってしまうようなテイストが満載なのです)。
 百聞は一見にしかず・ささ、涙を拭いて、あなたもどうかダウンロードして遊んでみてください。

『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_01

●“メタ”な魅力 ゲームを揺るがす視点の表現

 ゲームでしか体験できない楽しさとは、いったいどんなものだと思いますか? そのひとつにはプレイヤーが自分自身で探索し、考えることで、自分で“気づいて”、新たな道を発見する楽しさがあるのではないでしょうか。

 すばらしいゲームを遊んでいるあいだは、ちょっといつもと違う非日常=別世界を体験します。ゲームを遊び終えると、なんだかその世界が現実にダブって見えたりすることさえありますが(わたしだけ?)。ゲームというメディアは、見ているだけではなく、プレイヤーとして操作して進んでいくからこそ、“世界を自分自身で冒険する”没入感が生まれるもの。だからきっと、ゲームを終えていつもの日常に戻ってくると、まるで旅から帰ってきたかのように……自分の考えや行動に新しい“視点”を与えてくれる。古今東西、すばらしいゲームには、なにかしらそういった部分があるように思います。

 今回ご紹介する『FEZ』は、“気づき”と新しい“視点”を体験できる、すばらしいアクションパズルです。何はともあれ、画面をごらんください。どーですか! お客さん! ワクワクしてきたでしょ! しない? いやー、する! するね!
 一見すると、レトロな2Dアクションゲームのようなビジュアルの本作。チップチューンなBGMに、滑らかに動くドット絵のキュートなキャラクターは、見ているだけでゲームが好きなら心が躍らずにいられないはず。その見た目にふさわしく、本作にはどこかレトロゲームを遊んでいるかのような感覚があります。

 舞台は小さな村。そこで暮らす主人公のゴメズにとって、世界はその村だけ。ですがある時、不思議な啓示を受けたことで、なんといままで見えなかった……世界の裏側と外の世界の存在を知ることに! そんな真実の世界は、なんと“立方体”を失い、崩壊の危機に瀕していました。四散した立方体を集めて世界を維持するため、ゴメズの世界をぐるぐると巡る冒険の旅が始まります。

 このゲーム、どこから見てもドット絵の2Dマップですよね。しかし“視点”を変えて世界を見ることができるようになったゴメズは、ボタンひと押しでマップをぐるりと90度ずつ回転させることができるのです。2Dのマップが3Dのようにぐるぐると回せてしまう。世界を違った“視点”で見ることで、新たな道や行く手を阻む数々の謎を解くためのヒントに“気づく”……未知なる広大な世界を巡るゴメズの体験は、あなたの体験と完全にリンクします。本作で味わう、世界中を旅しながら目の前の謎に挑む感覚は、もしかしたら久しぶりに“主人公はあなた自身だ”と気づかせてくれる、どこか懐かしいゲームだからこその体験に満ちています。そんな本作は2012年に発売され、いまでは100万本を突破するセールスを記録し、数々の賞にも輝きました。納得です。
(※ちなみに、かの名作『ゼルダの伝説』の主人公“リンク”という名前には、主人公の謎解き体験とプレイヤーの試行錯誤がリンクするといった意味が込められているとかいないとか……。じつは、本作には『ゼルダ』シリーズを彷彿とさせる演出がちらほら……ファンの方は“気づいた”かしら?)

『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_06
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_07
▲黄金の立方体と遭遇したことで、2Dから3Dへと高次元の啓蒙を受けるゴメズ。
▲案内役のドットに導かれて未知なる世界へ。
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_08
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_12
▲崩壊する世界にはブラックホールが……。
▲ゴメズの自宅には、なにやら『ゼルダ』っぽいポスターが?
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_09
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_11
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_10
▲刻々と移り変わる、ドット絵で描かれた美しい風景は、見ているだけでうっとりしちゃう。
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_13
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_14
▲神秘的な遺跡も?
▲爆弾を使って行く手を阻む岩盤を破壊!

●2D⇒3D !? 次元を超えて謎を解こう

『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_03
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_04
『FEZ』 世界が絶賛した伝説のディメンション・アクションパズル!【とっておきインディーVol.33】_05
▲ボタンひと押しで、ステージがクルリと回転。いままで見えなかった横、裏側が新たに出現する。

※関連記事:2Dに見えてじつは3D!アクションパズル『Fez(フェズ)』プレイインプレッション


FEZ
メーカー Polytron Corporation Inc.
対応機種 X360Xbox 360 / PCWindows / PS4プレイステーション4 / PS3プレイステーション3 / PSVPlayStation Vita
発売日 配信中
価格 PS Vita版、PS3版、PS4版は各1143円[税抜](各1200円[税込])、Xbox 360版は953円[税抜](1029円[税込])、PC版は933円[税抜](980円[税込])
ジャンル アクション・パズル