◆NC ZERO タダのゲームじゃ終わらない

インタビューでさらに内容が明らかに!

 2015年2月25日に行われたメディア向け発表会の直後、各プロデューサーにインタビュー取材する機会をいただいた。これは当日の発表会の内容の補足となるものだ。以下にその模様をお伝えする。※発表に関する記事はこちら

『ブレイドアンドソウル』、『タワー オブ アイオン』、『リネージュ 2』……運営MMOタイトルの基本無料化を決定したエヌ・シー・ジャパンの各タイトルのプロデューサーに意図を尋ねる_01
▲これから発表されるサービス含め、大変革を語っていただいた御三方に感謝。左から合田真二『ブレイドアンドソウル』プロデューサー、三浦周Business Group チーフプロデューサー、中村直樹『リネージュ』プロデューサー。

◆無料化への経緯

――基本無料化という判断に至った経緯を教えてください。

三浦周氏(以下、三浦) 2014年に『ブレイドアンドソウル』を新しいタイトルとしてサービスを開始してから、NCソフトは大規模な4つのMMORPGを運用しています。いまのプレイヤー数をある程度増加させることで、そこから今後のモバイル関連の新しい施策であったり、新タイトルだったり、つぎのサービスにつなげたいという意向があったのですが、プレイヤーの皆さんが少しずついろいろなゲームに分散していらっしゃるという現状もありまして。昨年の後半くらいから検討し始め、今年に入ってから基本無料化について、正式に進めていこうという判断に至りました。

――年度始まりの4月ではなく、3月のうちに始まる意図は?

三浦 3月が、たまたまタイトルのアップデートがいちばん集中していた時期という理由があります。それぞれのタイトルは、長い開発期間がかかるものなので、アップデート時期を意図的に揃えるのは、なかなか調整が難しいんですよね。今回はたまたま3月に最新タイトル『ブレイドアンドソウル』のアップデートが予定されていたので、そこに合わせて進めるのが妥当と判断しまして。まずはそこから発表させていただき、4月の段階で、また新しいサービスを継続しながらチャレンジさせていただければと考えています。

◆ふたつのサーバーの違い

――とくに『タワーオブアイオン』と『リネージュ2』では、傾向の異なるサーバーが用意されるとのことですが、どういう住み分けになるのでしょう?

三浦 基本的には、どちらでも遊んでいただける内容になります。ふたつのサーバーを同じアカウントで行き来することはできませんが、ひとつのサービスのなかで、馴染み深いちょっと古いタイプのサーバーを選ばれて入るのも自由ですし、最新のストーリーをお楽しみいただくために現行のサービスに入るのも自由です。楽しみやすい形を選んで遊んでいただければと思います。プレイから離れられている方が戻ってこられるようなサービスとして想定させていただいてるので、そういった方が多く戻ってくるのでは、と予想しています。

――昔のアカウントを持っているプレイヤーの方が戻り、そのうえでどちらかのサーバーを選ぶ形になるのでしょうか?

三浦 そうですね。昔のシステムのサーバーが新規に立ち上がっていますので、昔育てたキャラクターがそのまま使えるというわけではなく、新たに最初からプレイしていただくというサービスになっています。

◆客層の変化

『ブレイドアンドソウル』、『タワー オブ アイオン』、『リネージュ 2』……運営MMOタイトルの基本無料化を決定したエヌ・シー・ジャパンの各タイトルのプロデューサーに意図を尋ねる_02

――無料化でプレイヤーの方が増えると、客層の変化も考えられると思います。そこに期待する部分や懸念などは、何かお考えでしょうか。

三浦 基本的には、違うプレイヤー層が取り込めると思っています。基本無料ゆえに軽めに遊びに来られるようなお客様もいらっしゃると思いますが、ガッツリやられるお客様とも、共存しながらやっていくような形になるのではと思っています。多少はローカルなマナーの面や、新旧プレイヤの皆さんの意識の違い、つまり基本無料化以降楽しまれる方と、定額でここまで楽しまれてきた方、あとはそこに紐付く年齢層の違いなどの懸念はいろいろと考えられます。いちばんの懸念は、基本無料化にすることで、不正利用者の流入です。そこに対しては対策を打ちながら進めていくようですね。

――とくに『ブレイドアンドソウル』は、月額3000円から基本無料化になりますよね。基礎額が高いことで、落ち着いた方々がプレイされていたところに、どういうタイプのプレイヤーの方が来られるかわからない部分があり、既存のプレイヤーの皆さんも懸念なさっているところがあると思います。それをぜひ払拭していただけるようなひと言をぜひ語っていただければ。

合田真二氏(以下、合田) 私自身、『リネージュ 2』のプロデューサーだった時期にも、やはり同じことを言われていました。3000円というハードルを越えてきた社会人プレイヤーの皆さんが多く、濃い方たちだけが残ったようなことを言われ……。そこで基本無料化にしたら、「年齢層の低い方たちが集まり、ある意味カオスになるのでは?」と言われ、僕自身も一時期そういう懸念を持ちましたが、むしろいまのある程度固定されたプレイヤーの方のみがいらっしゃるような状況より、そうではない方たちが流入することによって生まれるカオスめいた部分も楽しみにしたいという思いがあるんです。言ってみれば、カンフル剤のようなものです。やはりワールドが停滞してしまうと、プレイヤー視点からするとおもしろくないんです。いつも決まった人といつも決まったプレイをして、いつも決まったように落ちていく。そうではなく、たとえばいきなりチャットで急にあおりだすような方が出てきたりだとか、むしろそういう突発的な、ある意味、お客様みずからがイベントをしてくださっているような、そういったものを期待したいんです。新しいものをお客様が運んできてくださるのではとじつは期待しています。

『ブレイドアンドソウル』、『タワー オブ アイオン』、『リネージュ 2』……運営MMOタイトルの基本無料化を決定したエヌ・シー・ジャパンの各タイトルのプロデューサーに意図を尋ねる_03

――『リネージュ』が先行で基本無料になっていますが、そのときの状況についてや、今回の施策に何かフィードバックした点があればお聞かせください。

中村直樹氏(以下、中村) 『リネージュ』はそれこそ基本無料化したらワヤクチャになるのではと言われていたのですが、じつはそういうことはまったくありませんでした。『リネージュ』の世界を壊そうとして入って来る新しいお客様などまったくいなかったんです。逆にたとえ月額課金を保っていても、ほかのプレイヤーの方とトラブルを起こしたり、いたずらをするお客様というのは、必ず一定数いらっしゃるものでして、増えたプレイヤーのぶんだけ、そういう方の絶対数は増えたのですが、割合そのものは変わらなかったんですね。なので、そういうところで心配なされているお客様がいらっしゃるようでしたら、その心配はまったくないと私は感じています。何度かほかのプロデューサーの方からも、「無料化してどうだったの?」と聞かれましたが、本当に「賑やかになった」という程度のことですね。

――賑やかになり、プレイの感覚はそのまま変わらないと。

中村 そうですね。いたずらするプレイヤーがいれば、そこから人を守ろうとするプレイヤーも増える。結果的にゲーム内の環境は、賑やかになっただけで保たれている。ほかのタイトルも、そいうふうになるんじゃないかと予想しています。

◆新しいサービス

――先刻の発表会の内容でどうしても気になるのが、“龍翔会”や“VIP システム”といった部分です。プレイヤーの方々も、その内容や、開始時期、金額など気になるところだと思いますが……。

三浦 内容はいま検討をくり返しているところです。もちろんプレイヤーの皆さんに楽しんでいただくことが主眼ですので、そこであまり大きなご負担をかけないよう協議しています。ただ、僕らだけではなく、グローバルでそうしたサービスに対する価値などを協議しないと決まらない部分もありまして、なかなか短い時間で決めきれず、本日発表には至らなかったとご理解いただければ幸いです。

――であれば、発表自体はいつごろになりそうでしょう? 大きな時期だけでも教えていただければと思います。

三浦 おそらく3月中には詳しい内容をお知らせできると思います。
中村 『リネージュ』の場合、“VIP システム”は4月1日に実装予定で動いています。内容も詰めていて、たとえば同一アカウント内で取り回しが利く便利な経験値アイテムや、複数のステータスがアップするアイテムの提供など、さまざまな企画をしています。

――基本、“龍翔会”も“VIP システム”も、さらに深い楽しみかたをしていただくための、プレミアムサービスとして捉えればいいのでしょうか?

三浦 そうですね。

――韓国と連動する部分などはあるのでしょうか?

三浦 今回発表したものは、日本独自のサービスとして展開します。韓国では行われません。韓国のサービスを参考にした部分もありますが、日本用にアレンジしているものが多いですね。

合田 韓国のアップデートから、時間をおかず実装できるように、日本のためにあらかじめ引っ張るというか、そうした形で導入しているものが多いですね。

――それはたとえば今回の『ブレイドアンドソウル』の場合、どのあたりになりますか?

合田 新クラスです。少し前に呪術師というかシャーマンというか、韓国ではそういう形で出ていたのですが、それがこの時期に日本でも実装されるとなれば、プレイヤーの皆さんにとっても、「あ、こんなに早いんだ!」という印象を多分与えていると思います。

◆プレイヤーの方々へ

――あらためて振り返ると、基本無料化の施策に加え、いまの新クラスのような大型アップデートの話など、今回はかなりインパクトの強い発表会でした。プレイヤーの皆さんの期待も、かなり膨らんでくると思います。

三浦 NCソフトと言えば、月ごとの定額というイメージが強かったと思います。そういう印象を持たれている方たちからそれを払拭する機会として、今回はアップデートと同時に基本無料化をアピールし、そうすることで、インパクトを与えられるのではと考えました。

――ロードマップを拝見すると、語られている展開は5月あたりまでですが、その先のお話がまた伺えるとしたら、いつころでしょうか?

三浦 ここ1ヵ月くらいに海外とも話を進める機会があるので、ここひと月ほどで細かい部分が決まってくると思います。その後になりますが、時期を見て発表できるかと思います。

――楽しみです。では最後に、プレイヤーの方々にとくにお伝えしたい部分をあらためてお話いただければと思います。

『ブレイドアンドソウル』、『タワー オブ アイオン』、『リネージュ 2』……運営MMOタイトルの基本無料化を決定したエヌ・シー・ジャパンの各タイトルのプロデューサーに意図を尋ねる_04

合田 『ブレイドアンドソウル』に関してですと、2014年に始まった最新のタイトルで月額3000円のものが、1年以内で無料化になりショックが大きいと思うんですね。ただ、無料になったからといって、できることが減ったり、制限されたりは、基本的にありません。一部のステータスで、恩恵が弱くなるところはありますが、そこは“龍翔会”というサービスでカバーする形で動いています。そういう動きのなか、基本無料になって、本当に安心していまと同じようなクオリティーで遊べるということが、いちばん伝えたいことです。そのうえでアップデートを重ね、新しいサービスやイベントをどんどん投入し、ロードマップもお見せして、安心してサービスを受けていただけるようにしていきたいと思っています。

三浦 MMOタイトルは、長い時間をかけてアップデートをくり返しますが、その過程で失われるものもあり、プレイスタイルがけっこう変わっていくんですね。『タワーオブアイオン』ですと、新しい地域を追加することでプレイヤー層が分断されたり、『リネージュ 2』でいうと、いろいろな職業がどんどん増え、シンプルな職業が単なるその振り分けもとになったり。アップデートをくり返すことによって、新しい刺激は楽しめるけど、「昔懐かしいあのころのバランスがよかったね」という側面もあり、今回はそんないちばん評価の高かった部分を抜き出し、長い時間のあいだ離れていかれたプレイヤーの方々にも、再び楽しんでいただける内容と信じています。ぜひそこを楽しんでいただくために、基本無料でご提供させていただきたいという気持ちです。

――ここまでアップデートを重ねてきたものに対して、昔のある時期のバランスに似たような何かを再現するって、けっこうめずらしい試みですよね。

三浦 そうですね。どうしてもMMOというタイトルの場合、やっぱり飽きがこないように、どんどん新しい地域を開拓したり追加したりしますが、それによって新しい地域に行って最新の情報で遊んでいるお客様と、距離を置いてしまった「あのころがよかったね」というお客様と、プレイヤーが分断され、それが原因で離れられたりするんですよね。つねに新しめのプレイヤーさんが走り続けた結果、残っているのが現状ですので。それであれば、NCソフトのタイトルを古くから、楽しく体験されてきたお客様たちに、せっかくの機会なので再現するからゲームの世界に戻っていただきたいな、という思いがあります。まず韓国で試みとして始まり、その結果、多くの古くからのプレイヤーの方々に「あ、このときのバランスってよかったよね」という形で受け入れられました。ちょっと不思議な感覚なんですけど、アップデートをくり返すMMOというものに対するアンチテーゼというほどではありませんが、そういうバリエーションがあるものもあっていいんじゃないかと思います。“もうひとつの世界”ではありませんが、ひとつのゲームの中でふたつの楽しみをご提供できるのだったら、せっかくだったらそうしよう、ということです。

中村 各タイトルが基本無料化ということで、お客様としても「じゃあほかのNCソフトも無料なら、どれも遊んじゃおうかな」と思われると思うんですよ。それに対して『リネージュ』としては、「ほかのタイトルを遊んでいるヒマなんてありませんよ!」というくらいのつもりでいろいろとご提供していきます。まず『ブレイドアンドソウル』の無料化のときにはアップデートがあり、さらに5月には新しいクラス、さらにすでに今年は3つの大きなアップデートを予定していまして、まだまだ『リネージュ』はこれからも走り続けていきます。着いてきてくださいといいますか、楽しんでいただければと思っています。

――いまお話にもありましたが、4タイトルが基本無料化となることで、同社内でプレイヤーの奪い合いということもあるのでしょうか?

三浦 じつはそこがいちばん気にしている部分でもあります。とはいえ基本的にはうちのタイトルですので、多少の行ったり来たりは、いろいろなゲームを体験されるいい機会だとも思います。そうしたお試し期は、たぶん1、2ヵ月単位で続くかなと予想していますが、その先もずっと続けて遊んでいただくという部分については、お互いがそれぞれのゲーム性を高めてサービスを提供していきますので、なるべく食い合いのないような形を目指していきたいとは思っています。

――どうもありがとうございました。