これからも“ゴジラ”が続いていくために──

 1989年より“平成ゴジラ”シリーズの特技監督に就任し、数多くの作品で日本の特撮映像を牽引してきた川北紘一氏が、2014年12月5日に逝去されました。謹んでお悔み申し上げます。週刊ファミ通2014年12月25日号(12月11日発売)では、生前の川北氏にインタビューをさせていただき、本日(12月18日)発売となったプレイステーション3用ソフト『ゴジラ-GODZILLA-』などについてお話をうかがいました。その全文をここに掲載いたします。

【謹んでお悔み申し上げます。】平成ゴジラ特技監督、故・川北紘一氏インタビュー/『ゴジラ-GODZILLA-』発売にあたり_01
▲川北紘一氏
1942年生まれ。東宝に入社し、特殊技術課の特殊撮影係を経て、特技監督の円谷英二氏、有川貞昌氏、中野昭慶氏に師事。1972年のテレビ特撮番組『ウルトラマンA』で特撮を初めて演出し、『ゴジラvsビオランテ』でゴジラシリーズの特技監督に初就任。2003年にドリーム・プラネット・ジャパンを設立し、代表を務めてきた。
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▲プレイステーション3用ソフト『ゴジラ-GODZILLA-』より。
バンダイナムコゲームスより本日(12月18日)発売。

川北監督が感じ取ったゲームならではの狙い

──インタビューの前に『ゴジラ-GODZILLA-』を試遊していただきましたが、川北監督から見て、このゲームはいかがですか?

川北紘一氏(以下、川北) これまでにもいろいろなハードでゴジラのゲームが発売されたけれど、いまのゲーム機でゴジラを動かせるというのは、グッとくるものがあるね(笑)。怪獣のダイナミックな動きに、派手な光線の表現や、コントローラの振動と視覚の一体感もあって、すごくいい臨場感がある。

──おお、川北監督から太鼓判が……!

川北 もちろん、ゲームと映画は娯楽として別ものだから、単純に映画との違いを指摘しようと思ったらキリがないよ。たとえば、映画のゴジラはゲームほど俊敏に動いたりしないし、煙やスパークもゲームのほうが多い。映画では、もうちょっと煙を抑えて、シーンによっては後方からの照明も駆使して、怪獣のシルエットがいっそう映えるように撮っていた。でも、ゲームが無理に映画と合わせる必要はなくて、ゲームとしての爽快感や派手さを重視した結果だと思うから、そういう狙いが画面からしっかり伝わってくるものであれば、僕はそれでいいと思うんです。

──なるほど。怪獣の造形に関しては?

川北 よくできている。このゲームの怪獣は酒井(酒井ゆうじ氏。多数のゴジラ映画やフィギュア商品の制作に携わってきた原型師)の造形をもとにしているんだよね。ジオラマで好きなように撮影できるモードもおもしろい。きっとゴジラ映画のファンから喜ばれるんじゃないかな。

──このゲームを遊ぶと、映画の思い出なども蘇ってくるものでしょうか。

川北 映画の撮影はどの作品もたいへんだったね(笑)。でも、振り返ってみれば、どれもあっという間だった。お客さんに楽しんでいただくことが第一で、その点は映画もゲームも同じだと思うから、今回のゲームはいいものに仕上がっていると感じましたよ。

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──ちなみに、今回は映像編集室にうかがってインタビューさせていただきましたが、何の作業をされていたのですか?

川北 映画『GODZILLA ゴジラ』の完全数量限定生産5枚組の特典ディスクに収録する、『怪獣プラネット ゴジラ』の監修です。

──テーマパークのアトラションで1994年〜1997年に公開された映像ですね。劇場未公開なので、未見のファンも多いと思います。

川北 今回、初めて3D対応でディスクに収録しているので、ぜひ観てほしいですね。アトラションで公開した当時の3Dは、ふたつの映像と音のシンクロなどをすべてアナログで手作りしていたから、いまよりもずっとたいへんだったんだ(笑)。この映像では、改装される前の東京駅や銀座を舞台に、ゴジラやモスラたちが大バトルをくり広げます。

──楽しみです! ところで、監督から見て、『GODZILLA ゴジラ』はいかがでしたか?

川北 ゴジラがスクリーンに登場するまでがちょっと長くて、待ち遠しかったな(笑)。人間ドラマも、もう少し子どもにわかりやすくしたほうがよかったかもしれない。でも、ゴジラの動きは鈍重さと力強さが感じられて良かったし、モーションキャプチャがうまく駆使されていて、スーツアクションさながらの生物感と迫力があった。海外でもゴジラの人気がますます高まっているみたいだし、次回作がいまから楽しみになったね。

──『GODZILLA ゴジラ』は、数年後に続編が作られることが早くも発表されましたね。日本のゴジラ人気も根強いですから、生誕60周年を迎えた後も、映画やゲームなどで盛り上がりが続いてくれるとうれしいです。

川北 今年のアニバーサリーは、近年稀に見る盛り上がりになって、僕もうれしくなったと同時に、これからも“ゴジラ”が続いていくために僕たちができることはないか、考えていきたいと思いました。ゴジラは強大な“力”の象徴にして、僕たちに“夢”を与えてくれる存在。僕にできることがあれば、これからも全力でがんばっていきますよ。

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※取材とお写真の撮影は2014年10月30日に行いました。

 
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