十数年前まで、FPSは家庭用ゲーム機で受け入れてもらえなかった!?

 現在の家庭用ゲーム機において、FPSは重要なジャンルのひとつだ。ワールドワイドで売上トップグループに位置するゲームメーカーは、毎年のように人気FPSシリーズを投入してくる。いまでこそ当たり前な人気ジャンルだが、13年前までは「FPSはパソコンで遊ぶものであって、家庭用ゲーム機には向いていない」とさえ言われていた。なぜ家庭用ゲーム機に不向きと言われていたかというと、それはエイミング……銃の照準を合わせる操作が困難だったからに他ならない。パソコンでFPSを遊ぶ場合、マウスで照準を合わせることができるため、狙いを定める動作が瞬時かつ簡単に行える。ところか家庭用ゲーム機だとどうたろう。マウスではなくコントローラで……つまり右スティックで照準を合わせることになるため、“面倒でやっかいな操作”と感じてしまう。ゆえに“向いてない”と言われてきた。

 90年代以降、3D処理に長けたゲーム機が登場して以降、いくつかのFPSタイトルが発売されたが、いずれもこの問題に対して正面から向き合ったタイトルはなかったように思う。そんな中、21世紀になってエイミング問題に明確な回答を打ち出したのが、2001年11月に初代Xboxと当時に発売された『Halo: Combat Evolved』(以下、『Halo: CE』)だ。

 『Halo: CE』は、それまでの家庭用FPSではあまり感じることができなかったチューニングがされていた。敵と照準が重なると少しひっかかるような動作になるなど、エイミングしやすいさまざまな工夫が施されていたのである。また、敵の配置や動きなどゲームデザインすべて込みで“適度な狙いやすさ”を目指した作りになっていた。もちろん、正確に狙えるように練習は必須で、むしろそれによって“練習すれば確実にうまくなる”という上達感が味わえる。上級者になれば、ピョンピョン飛び回る相手を正確にヘッドショットすることも可能だ。パソコンだとハードウェア性能がそのままゲームプレイに影響することもあるが、家庭用ゲーム機であるがゆえにハードもコントローラもすべて統一されているぶん、純粋にその腕が問われるわけである。

 これ以外にも、いろいろな部分でエポックメイキングなタイトルだった『Halo: CE』は、いまでも圧倒的なオンリーワンのゲームだと思っている。それがこうして、最新機種のXbox Oneで主人公マスターチーフの物語をまとめて遊べるのは、すごく嬉しい。Xbox 360でもひととおりプレイ可能だが、ひとつのタイトルになってていちいち起動し直す必要がないのはありがたい。

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▲起動したときのトップ画面。シンプルにロゴがドーンと表示され、おなじみのテーマ曲が流れている。

これまですべてのマスターチーフがHD化!

 『Halo』シリーズそのものの話が長くなった。ここからはXbox Oneの『Halo: The Master Chief Collection』の話題に移そう。もうすでに何度も記事になっていることだが、本作の特徴を簡単におさらいしておく。

・『Halo: CE』から『Halo 4』までの4作品がXbox Oneへ移植(リメイク)されて1本のタイトルに
・『Halo 2』は今回初のリマスター。そのほかの3作はXbox 360版をベースに移植
・1080pの60fpsで描画

 なかでも『Halo 2』のリマスターはまさに“待望の”、と言っていいだろう。オリジナルの雰囲気を損なわなずHD化に成功。新たに制作されたBlur Studio社によるイベントムービーは見応えアリで、このためだけに本作を買ってもいいくらいだ。Xbox 360版『Halo: CE』HDリメイク時と同様、ボタンひとつでいつでも初代Xbox画面とHDリメイク画面を切り替えることができるが、このイベントムービーだけはリマスターのまま見ることを強くオススメしたい。
 個人的に注目していたのは『Halo 3』と『Halo 4』だ。たとえば2年前の『Halo 4』は720pの30fpsだったのだが、これが1080pの60fpsになることでどう変わるのか? 早速起動してみたところ、第一印象で「うわ、めちゃくちゃキレイ!」だった。1080pなのはもちろんだが、僕としては60fpsのほうに感動してしまった。このヌルヌルな動きを待っていたんだよー! っていう気持ち、わかってもらえるだろうか。Xbox 360版も起動して比べてみたのだが、見た目というよっりは実際に動かしてみて「あ! 違う!」という印象だった。

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▲『Halo 2』の新規イベントムービーをクラシック(写真左:初代Xboxのときとほぼ同じ状態)とリマスター(写真右)で見比べてみると……当たり前だけど圧倒的にリマスターのほうがいい!
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▲ゲーム中における『Halo 2』のクラシック(写真左)とリマスター(写真右)。テクスチャーを張り替えただけではないことがよくわかる。

各メニューをチェック!

 さて、本作を起動したときのゲームメニューを確認してみよう。

・キャンペーン
・マルチプレイ
・プレイリスト
・オプション&キャリア
・エクストラ

の5つとなっている。

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▲メニューのトップ画面。どのモードにも行きやすい、洗練されたUIだ。

 キャンペーンはその名のとおり、『Halo: CE』から『Halo 4』までタイトルごとにキャンペーンをプレイすることができる。セーブも別々に行われるため、全タイトルのキャンペーンを少しずつ進めていくことも可能だ。
 マルチプレイは対戦などを行うメニュー。今回の記事では十分なプレイができなかったので(なにせプレイヤーがいない)、インプレッションは割愛する。発売後にあらためて記事にする予定なのでそれまで少し待っていてほしい。

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▲『Halo: CE』
▲『Halo 2』

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▲『Halo 3』
▲『Halo 4』

 プレイリストはマルチプレイでも用意されているが、今回はミッション プレイリストを説明する。各タイトルごとおよび全タイトルを縦断する形で、キャンペーンのプレイリストを遊ぶことができるモードだ。たとえば『Halo: CE』の“乗り物乗り放題”というプレイリストでは、乗り物に乗るチャプターだけをつないだプレイリストで、登録されている3つのチャプターを連続で遊ぶことができる。“LASOキャンペーン”なるプレイリストは超高難度モード。“LASO”とは“レジェンド オール スカルオン”の略で、ゲーム全体の難易度はレジェンド(最高難度)かつ、スカルがすべてオン(敵が固いとか弾数が少ないなどすべてのスカルがオンの状態)という、想像しただけでお腹が痛くなりそうなプレイリストだ。また、タイトルをまたいだクロスゲームのプレイリストでは、全4作全チャプターを一気にプレイすることができるものなどが用意されている。協力プレイにも対応しているので、この年末年始に友だちと協力しながら遊ぶのも楽しいだろう。

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▲各タイトルの最終チャプターをつなげたもの、ジャングルステージだけをつなげたもの、特定の武器を使うシーンを集めたものなど、いろいろなプレイリストが用意されている。

 オプション&キャリアの項目は、オンライン時の各種カスタマイズ、実績表示、コントローラ設定などを行うことができる。ここでとくに注目したいのは、コントローラ設定だ。オリジナルボタン配置だけでなく、4作統一のユニバーサル設定も用意されている。『Halo』シリーズは特徴的な操作がいくつかあり、中でもLトリガーにグレネードが設定されているのは珍しい。久しぶりに『Halo』シリーズを遊ぶと、狙いを定める一般的な操作をするつもりでLトリガーを引いてグレネードを投げてしまった……なんていう場面は『Halo』あるあるだろう。“しゃがむ”、“近接攻撃”、“走る”、“リロード”など、代表的な設定がいくつか用意されているので好みで使い分けるといい。 

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▲さまざまなコントローラ設定が容易されている。タイトルごとに個別設定が可能だ。

 実績に関しても触れておく。先日発表があったとおり(⇒関連記事はこちら)、トータルで4500Gものスコアが用意されている。パッケージタイトル1本につき1000Gが基本だったが、まさかの4500Gだ。過去作から実績内容を引きついでいるものもあるが、キャンペーン実績は大枠としてだいたい以下のような内容となっている。

・チャプターごとのクリアー実績
・チャプターこどのスコア実績
・チャプターごとのクリアータイム実績
・スカル獲得実績
・ターミナル起動実績
・撃退累計実績
・タイトルごとの特徴的な実績(○○のシーンで○○した、など)

 また、日付に絡んだ実績もいくつかあるので、このあたり実績を気にするプレイヤーはしっかり確認しながらプレイするのがいいだろう。このほか、マルチプレイに特化した実績もあるが、これもまた後日掲載予定のマルチプレイに特化したインプレッションのときに触れたいと思う。

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▲実績は新規のものもあればXbox 360版から引き続き同じ設定のものもある。ゲーム内で実績の状況がひとめでわかるのはうれしい。

 エクストラは、その名のとおり“おまけ”的なモードだ。リドリー・スコット制作総指揮による実写ムービー『Halo: Nightfall』はここからチェックすることが可能だ。こちらも『Halo』ファンならばチェックしておかなければならないだろう。

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▲『Halo: Nightfall』はSF作品としてものすごく期待している。こちらは別アプリの『Halo CHANNEL』で視聴する仕様だ。

『Halo』シリーズをまとめて遊ぶとFPSの歴史がわかる!

 1作目から遊んでみると、家庭用ゲーム機におけるFPSの歴史を感じることができる……と言ったらちょっと大げさかもしれないが、ゲームバランスを追うだけでも、昔といまのFPS情勢の違いがはっきりとわかる。

 たとえばキャンペーン。いまどきのFPSのキャンペーンモードは、ジェットコースタースタイルが多い。ほぼ一本道で、つぎはここに行けという明確な指示が画面に表示され、特定の場所に到着するとハデなイベントが発生する……というスタイルだ。『Halo: CE』や『Halo 2』のころは、画面に方向指示はなく、ハデな演出も控えめで、どちらかというとマップを探求させることもゲーム性のひとつだった。いま遊ぶとやや複雑なマップが随所にあり、「あれ?ここはさっき通ったよな?」、「あら、ここは行き止まりかあ」、「つぎはどっちに行くの?」と迷うことも多い。あー、そうだよなあ、昔パソコンで遊んだFPSはこんな感じだっよなあ……なんて思い出したりする。そんなゲームデザインも『Halo 3』からちょっと変わって、行く方向もわかりやすくなる。2年前に発売された『Halo 4』ではつぎに向かうべき場所も明確に表示されるようになった。

 また、そうした歴史とともに、『Halo』シリーズが培ってきたゲームシステムやゲームバランスなど、その独自性にあらためて驚く。ゲームにあらたなチャレンジを加えるスカルなどはその代表格だろう。敵の体力が倍になる、モーショントラッカー(敵の位置がわかるレーダー)が使えなくなる、弾が少なくなるなど、ゲームの難易度がさらに上がるような細かいオプションをつけることができ、これによって得点倍率がかかって高得点を狙いやすくなるのだ。『Halo』シリーズはスコアそのものの考えかたに独特なポリシーを持っていて、一般的なFPSだと「キャンペーンは一度最後までプレイしたらもうあまりやらない」ような扱いが多いが、『Halo』シリーズはスカルによってむしろ「何度も遊んでくれ!」と言わんばかりな仕様なのだ。対戦が苦手な人でも、キャンペーンをやり込める要素をガッツリと盛り込んでいるのである。

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▲本編の遊びかたにさらなる深みを与えてくれるのがスカルだ。

 そういうわけで、ありきたりな言葉だが、「初代XboxからXbox 360でずっと遊んできた人はもちろん、まだ遊んだことがない人もぜひ!」な1本と言える。実績大好きな人もこれ1本で4500Gは嬉しいし(コンプリートするにはそれなりに時間と腕が必要だが)、何よりXboxプラットフォームで生まれ育ったゲームの総まとめタイトルなんだし、これは遊んでおくべき。専門用語が多いストーリー展開だが、そこを調べる楽しさも含めて非常に重厚なSFストーリーなので、2015年発売予定の『Halo 5』に備えて、おさらいも兼ねていま一度プレイしておこう