Insomniac Games流、カラフルで能天気な終末世界

 『ラチェット&クランク』シリーズや『RESISTANCE』シリーズといった、良質なアクション・FPSで知られるInsomniac Gamesの手による『Sunset Overdrive』。色彩豊かな世界でド派手なバトルをくり広げる爽快なオープンワールド・アクションシューターだ。

 本作の舞台はアメリカにある架空の大都市サンセット シティ。この街を経済的に支配しているフィジコ社が発売したエナジードリンク“オーバーチャージ”の製品発表パーティーから始まる。オーバーチャージを口にした住人たちは突如おぞましいミュータント“OD”に変態、会場の掃除バイトを行っている主人公に襲いかかってきて、瞬く間にサンセット シティはODの巣窟と化してしまう。当のフィジコ社は事件(?)を隠ぺいするためなのか、街を封鎖、一歩も外へ出ることができなくなってしまった。主人公と生き残った数少ない住人たちは、力を合わせて街からの脱出を試みる……。

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 ストーリーのプロットだけ見ると、閉ざされた退廃的な街から脱出するためにさまざまな苦難を乗り越えるサバイバルホラーのように感じるが、本作はとにかく底抜けに明るい調子で描かれているのが特徴。軽口を叩きながらもNPCの頼みごとをこなしていく主人公、和風建築物が並ぶエリアでちょっと勘違いした感じの“モノノフ”集団を形成しているコミュニティー、ODに占領されたことで授業もなくなり、安全な施設内でだらだらと過ごす学生など、その危機的状況をむしろ楽しんでいるようにすら感じさせる。漫才のように軽快なトークでストーリーは進行し、果てはゲーム的なお約束まで突っ込みを入れる始末。そんな登場人物たちの明るさに合わせるかのように、画面の色使いも非常にハデ。「一般市民を巻き込んでしまうかも」といった後ろめたい感情を抱く必要なく、思う存分暴れ回ることができる。

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爽快感溢れる“移動”に重きを置いたゲームシステム

 本作の最も重要なファクターは、とにかくスピーディーに動き続ける必要がある点。のんびり道路を歩いていると、あっという間にODや(終末世界でお約束ともいえる)ギャングに囲まれてタコ殴りにあってしまうし、走って逃げようにも主人公は足が遅くすぐに追いつかれてしまう。そこで活躍するのが、本作ならではの移動システムだ。ガードレールや電線、建物の屋根の縁などでXボタンを押すと、スイーッとグラインドすることができる。また、道路に放置された自動車や屋上の換気扇、オープンカフェのパラソルの上などに着地することで勢いをつけて大きくバウンドしたり、壁に捕まって走ったりもできる(驚くことに一度捕まってしまえば壁が続く限り平行に走り続けられる)。グラインドやバウンドできる場所はフィールドのあらゆる場所に用意されている……というよりもできない場所を探すほうが難しいくらいなので、少し練習すればすぐに自由自在に街を跳び回ることができるだろう。
 この移動がとにかく爽快で楽しいので、広い街を移動するのが全く苦にならないのがいい。マップを開けば数ヵ所ある拠点へのテレポートも可能だが、インプレッションでプレイしている限りとくに使う必要は感じなかった。

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▲グラインドや壁走り、バウンドでこれだけの多彩な移動アクションが楽しめる。着水寸前にXボタンを押し続けることで、水面を滑走することも!

 戦闘で使用する武器はバールで殴りつける近接攻撃以外に銃器を8種類装備することができ、LBボタンで表示される武器ホイールからすぐに変更可能。この武器も、いわゆるふつうの“拳銃”である“ダーティーハリー”以外は破天荒な能力や見た目のものばかりで、爆発するテディベアを撃ち出すグレネードランチャー“TN テディ”や敵に当たると反射するレコード盤を射出する“ハイ=ファイ ガン”、敵を氷付けにする“フリーズボム”など、その種類は豊富。武器変更時にはスローモーションになるので、大量のODと戦いながらサクサク武器を切り替えて殲滅していくことができるのだ。

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 武器や主人公の強化には、“アンプ”、“オーバードライブ”の2種類。アンプには武器に装着するものと主人公が装備するものがあり、敵を倒すと大爆発を起こしたり、倒した敵の周囲にミサイルを出現させるもの、さらにはプレイヤーの周囲に雷を落とすものなどバリエーション豊か。ただしアンプは装備するだけでは発動せず、画面の右上に表示されている“スタイルメーター”のレベルを上げる必要があるのだが、このレベルを上げるためには前述のグラインドやバウンドなどスタイリッシュな行動をくり返しながら敵を倒しコンボを稼いでいく必要がある。敵の攻撃を回避するための行動が攻撃力アップに直結するという寸法だ。ちなみに、アンプの入手には街中で手に入る数種類の素材アイテムが必要。この素材アイテムも、街灯に巻き付いたトイレットペーパー(!)、電線にぶら下がった臭いスニーカー(!?)など、「こんなものが素材になるの?」と笑えるものばかり。素材アイテムの位置はショップで地図を買うことによってマップに表示されるので、ミッションの目的地への移動中に寄り道して獲得していくといいだろう。

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 オーバードライブは特定の敵に対する攻撃力や防御力を上げたり、スタイルメーターのゲージ上昇率を上げるものなど、主人公の基礎能力をアップさせる効果がある。グラインドやバウンドなどの行動や一定数の敵を倒すことでそれぞれの行動に合わせた“バッジ”が手に入り、それを消費することでアンロックしていく形となっている。

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 とにかく、電線やガードレールを飛び移りながら縦横無尽にフィールドを駆け回りクールな行動をキメる達成感が、そのまま主人公や武器のパワーアップにつながるので非常にわかりやすい。

ボリューム満点のキャンペーン、サイドクエスト

 本作のゲームプレイの流れとしては、コミュニティーを作ってODの襲撃から生き延びているグループを巡り、彼らの依頼を達成しながらストーリーを追っていくキャンペーンと、街のいろいろな場所で受けられるサイドクエストがちりばめられているという、オープンワールド系のゲームでは一般的なものとなっている。もちろん、どのクエストも本作の世界観を象徴するようなぶっ飛んでおバカなものばかり。通信妨害をしているフィジコ社の妨害装置を破壊するキャンペーンでは、絶えず軽口を叩き続ける巨大なフィジコ社のマスコットと一戦交えたり、ファンタジーRPG世界にどっぷり漬かったグループのリーダーを治療するために、ヒルのうじゃうじゃいる池に飛び込んでヒルを身体中にくっつけたり(彼らが言うには病気の治療のためにはヒルが必要なのだそうだ……)。オープンワールド系のゲームの宿命として、どうしても“お使い”的なクエストが多くなってしまうものの、NPCの反応がいちいちおもしろく、テレビの前で突っ込みながらプレイすることができるし、なにより移動が爽快でいろいろなルートを試したくなるので、飽きることなく遊び尽くすことができるだろう。

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 広大なマップを地道に移動して世界の広さを体感する……といったオープンワールド系ゲームの一般的なイメージとは違ったアプローチで楽しめる『Sunset Overdrive』。その移動の自由度の高さから、余計なことを考えずに目的地のマーカーに向かってまっすぐ進んでいくこともできるので、オープンワールドアクションの入門用としても最適だ。ぴょんぴょこぴょんぴょんツイツイーッと移動する快感や、底抜けに明るい一風変わった終末世界に少しでも魅力を感じるならプレイしない手はない。

 ちなみに常にハイスピードで移動しながらの戦いとなるため「銃での照準操作が難しいかも」と思う人もいるだろうが、照準補正がかなり強力に働くので適当に敵を狙って撃っても問題なし。実際、筆者はFPS・TPSはあまり得意ではないが、ストレスを感じることなく敵を吹っ飛ばすことができた。3Dアクションゲームにシューターのエッセンスを加えたものというイメージの方が近いかもしれない。

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 なお今回は、ゲームシステムを中心にインプレッションを行ったが、本作には最大8人で協力してODの襲撃からエネルギーポッドを守る“カオス自警団”というCo-opモードも用意されている(⇒東京ゲームショウ 2014でのプレイリポートはこちら)。このモードをプレイすることでアンロックできるアンプもあるようなので、リリースの暁にはぜひ仲間といっしょにプレイしてみていただきたい。