すべてが“天下統一”につながる

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▲渡辺氏(右)と川又氏(左)。多忙ななか熱く語っていただいた。ちなみに渡辺氏が手にしているのは、GAMECITY限定特典の火縄銃レプリカだ。

 12年目に向けてリリースされる『覚醒の章』には、天下統一を目指す戦いを主軸として、さまざまな新要素が盛り込まれている。まずは拡張パック全体の、大きな狙いやコンセプトについて伺った。

――『覚醒の章』のコンセプトは“すべては天下統一のために”とあります。これは具体的には何を指しますか。
渡辺知宏氏(以下、渡辺) 本当に文字どおり、『覚醒の章』ではすべての行動が天下統一につながるというコンセプトになっています。『信長の野望Online』(以下、『信On』)の世界で何をやりたいかを考えると、いちばんの大きな目標はやはり天下統一だと思います。ここ数年の『信On』では、その天下統一への道のりを2年から3年という長いスパンでじっくり感じていただくことに主眼を置いて開発していましたが、一方で天下統一が大きな目標という認識が薄まってきているとも感じています。そうした状況のなかで、天下統一が『信On』の醍醐味のひとつであるとあらためて感じていただくために用意した拡張パックが、この『覚醒の章』です。
――“覚醒”という言葉には、どんな意味が込められているのでしょうか?
渡辺 まずは、まさに信長の覚醒が、ひとつのイメージになっています。信長が、天下夢幻、“ゆめまぼろし”のなかから覚醒し、天下統一に向かって動き出すのですが、そうはさせまいと、武田信玄・上杉謙信が立ち上がるビジュアルを現在製作中です。完成形は近々みなさんにお見せできると思いますので、ご期待ください。
 あとはゲームの中身としての“覚醒”です。今回はすべてのコンテンツに対し、前の拡張パック『天下夢幻の章』のコンセプトを引き継いで革新させるということを、ひとつのテーマとして持たせました。信長の変革、天下布武の精神をそのまま引き継ぐ形です。いままでの拡張パックはどちらかというと、まったく新しい要素をポンと出していくというイメージでしたが、今回は『天下夢幻の章』の流れを汲み取り、さらにそれをレベルアップさせるという試みです。『覚醒の章』という名前には、いままでの流れをしっかりと汲み取ったうえで、ゲーム自体を“覚醒”させていくということも意図として含まれています。
――このふたり(信玄・謙信)が、物語のキープレイヤーとして絡んできたりするのでしょうか?
渡辺 いいえ、実際には、ユーザーの皆さんひとりひとりがストーリーを作り上げていくのが『信On』ならではのおもしろさだと思いますので、あくまで信長に対峙する他勢力の代表者たちというイメージでとらえていただければと思います。

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▲上杉謙信と武田信玄。実際に信長にとって大きな脅威となっていた。

新しいゲームシステムの要素

 続いては新たな要素を4つに分け、詳しく内容を聞かせてもらった。要素の内訳は以下のとおりだ。
 (1)新・国勢システム
 (2)新たな合戦となる侵攻戦
 (3)稼業
 (4)大名物(おおめいぶつ)

◆新・国勢システム

――国勢システムが一新されますが、具体的にはどういった内容になるのでしょう?
渡辺 先ほども申し上げたように、すべての要素が天下統一につながるというイメージです。生産であったり冒険であったり……、合戦は当然天下統一につながる直接の手段になります。いままでは、どちらかというと最終的に強くなって合戦で活躍し、天下統一をなすというシステムになっていました。今回は、生産や冒険をするだけで、国勢に影響を与えるようなポイントが貯まり、それによって国勢の変動が起こるので、よりユーザーの皆さんが直接的に勢力活動に関わるという形になります。無理やり勢力活動に入っていくのではなくて、いままでのプレイスタイルを変えることなく、すべてのコンテンツを楽しんでいけるような形で再構成していくというのが、新・国勢システムになります。
川又豊氏(以下、川又) 細かいところを説明しますと、国勢に関してはいままでは“天下分け目の決戦”という天下統一を決めるための戦いがイベント的に起こっていました。今後はこれが約半年間のスパンで実施されるようになり、天下人ランキング1位の勢力が盟主となり、天下分け目の決戦を起こせるようになるというのが、ひとつのポイントです。つまりプレイヤーの手によって、天下統一を決める戦いが起こせるという仕組みになっているんですね。
 ふたつ目は合戦の頻度と言いますか、国勢の入れ替わりをよりスピーディーにするために、合戦が起きること、軍資金が貯まること、献策することを同時にできるようにして、より合戦を起きやすくしています。あとは、合戦では一国や一領土を争って戦っていたのですが、今回は一度にふたつの領土を落とすといったこともできるようになるなど、よりダイナミックに国勢が変わるような仕組みになります。
 また、いままでは本拠地が落とされると滅亡してしまい、そのあと復興戦というものが起こる仕組みだったのですが、こちらを廃止しました。滅ぼされた勢力は滅ぼした側の下について、いっしょに戦うような仕組みを『覚醒の章』から導入しようとしています。さらに、いままではシーズン中に移籍ができていましたが、それをできないようにします。これにより、プレイヤーがより自分の勢力のために戦うことになり、たとえば敗北しても、どんどん大きな勢力と従属関係を結んでいき、最後まで争うことになります。勢力に関しては、天下統一までのスパンが終わればまた移籍できるという仕様を考えています。
渡辺 基本的には、天下統一を軸として遊べるということです。いままで冒険を中心に楽しんでいた方たちがいるかもしれませんが、そうした方々に、勢力活動に触れ、ゲームの醍醐味である勢力争いもしっかり楽しんでいただくというのが、新システムの意図になります。また、いままでは滅亡してしまうと、そのあとにすることがなくなってしまったと感じ、楽しめなくなっていた部分もあったかもしれません。しかし『覚醒の章』からは勝った相手に従属するような形でいっしょに戦ったり、外交で不戦条約を結んだりというような、勢力としての楽しみを小国でも天下統一までずっと遊べるようにします。滅亡でゲームが終わってしまわないように、最後の最後までみんながずっと天下統一に向けて楽しめるようなシステムに変えていくということです。
――そうした戦いが、半年のスパンで毎回リセットされるのですか?
渡辺 そうですね。もちろん変化をつけないとダメだと思うので、そのあとに新しい勢力が参入するなどの要素を加え、また新たな天下統一への道のりを楽しめる形を考えています。

◆新たな合戦となる侵攻戦

――新たな合戦となる“侵攻戦”では、町やフィールドが戦いの舞台になるのですか?
川又 いつもの町が一気に戦場に変わるというのは、もちろん大きなコンセプトなのですが、そのほかに武将という存在も重要になります。いままでの武将はただ戦場にいるようなイメージでしたが、今回の侵攻戦に関しては、武将とプレイヤーで部隊を組み、部隊単位で拠点を落としていくような遊びができるようになっています。見た目は武将が部隊を引き連れて、町の中を進軍していく形ですね。この武将をプレイヤーが誘導しながら、部隊の意思、攻撃する場所、進む方向を決めていくわけで、つまりはどう部隊を動かしていくのか考える楽しみが生まれます。
渡辺 “侵攻戦”では、武将のなるべく近くにいることで、恩恵が受けられるようになっています。つまりこの武将をどう動かすかという戦略が、非常に重要になってくるわけです。
川又 また、マップ上に見える旗は拠点といって、最初から置かれている陣地みたいなものなのですが、その陣地を武将とともにどのように占領して守っていくか、または攻め落としていくか。合戦の時間内に、より多くの戦果を稼いだほうが勝ちというルールになります。陣地を相手より多く維持することで継続的に入る戦果などもあるので、どう順番に落としていき、どこに罠を置いておこうかのようなことを、みんなで考えていくような遊びかたになります。
――武将がNPCで、周囲はプレイヤーという形ですか?
川又 いや、周囲のキャラクターにはNPCももちろん出ます。そのうえで、プレイヤーもいっしょに進軍し、戦いに巻き込まれたら戦闘することになります。
――資料のキャッチに“200 VS 200”とありますが、これは部隊の最大参加人数でしょうか?
渡辺 ええ、入れるプレイヤーキャラの数ですね。
川又 陣取り戦というのはいままでにもありまして、もっと大人数での戦いだったのですが、この拠点戦はどちらかというと数を限った、陣取り戦に比べたらやや中規模の戦闘。それだけに、仲間とのより濃い連携を考えなければならないと思います。
――中規模とはいえ、200人はそこそこの数ですね。
渡辺 ですので、けっこう難しい部分も最初はやっぱりあると思います。いろいろなことができるので、最初は試行錯誤といいますか、いろいろ試しているうちに戦術が確立されてくるのではと思いますね。

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▲侵攻戦のマップ画面。敵軍のほか、オブジェクトの位置なども表示されている。
▲侵攻戦では武将とともに移動。敵に遭遇すればそのまま戦闘となる。

――戦場に櫓(やぐら)などを建てられる要素も、大いに注目です。こうしたオブジェクトは、事前に作ってから戦いに挑むのですか?
川又 いえ、戦いが始まるときには何も建っておらず、戦場で調達したアイテムを使って、敵の進軍などを想像しながら、オブジェクトを建てたり罠を置いたりしていくことになります。ちなみにこの侵攻戦には、索敵的な要素があって、たとえば櫓を建てると、その櫓を敵がどう攻めてくるかを自動的にマップ上に示してくれます。また大筒なら、自動的に相手にダメージを与えてくれたりする効果があります。
渡辺 ひとつの遊びかたとして、ユーザーさんどうしで連携し、索敵することが楽しみになると思います。ですので伝令兵とか、新しい役割も用意しました。そうしたところからユーザーさんどうしで助け合い、いろいろなことができるようになっています。
川又 罠は道の真ん中に置くとバレるので、端に設けておき、そこを敵が通ると発動する、という感じです。あとは味方用の仕掛けもあって、味方の通り道に、先に回復用の仕掛けを用意しておくことで、味方の支援をすることもできます。
――罠にはどのような種類があるのでしょうか?
川又 見た目で言えば、場所に合わせて設置できるものを何種類かご用意しています。たとえばフィールドですと、罠は木や石がバレにくいでしょうし、町中ですと、箱とかそういったものを自然に置いてみたり。その罠が味方用か敵用かは、パッとは見てもわからないので、それを解除する要素もあったりします。さらに、効果もいろいろと選べます。ダメージを与えたり、疲労度を増やしたり、味方を回復したり、プレイヤーが任意で選べる仕様になっています。

◆稼業

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――つぎは生産の新要素、“稼業”について。これはメインの8職とは別に、生産用に8職から選択できるということですか?
川又 少し違います。イメージとしては生産が本職と分離される形になるのですが、刀匠や数寄者といった、スキルというと少し語弊がありますが、新たな名前の18種類の稼業を『覚醒の章』開始時では実装します。その中からプレイヤーは、ふたつを自由に選べる仕組みです。いままでは職業が固定で、生産は侍ならコレ、僧ならコレみたいな仕組みだったのが、ちょっと次元が変わると言いますか……。そして、いままでは生産と採集が必ずペアだったのですが、今度は18種類から生産をふたつとか、採集をふたつとか自由に選べるようになります。またいままではずっと固定だったのですが、プレイヤーがプレイ中に生産用の職を変更することもできるようになります。そうした変化が、生産ではかなり大きな違いになるかと思います。
渡辺 やはり、いろいろな物を作れるなど、ひとつのキャラクターでできることをどんどん増やしていきたいという考えがありまして。そのなかでも、刀だったり鎧だったりという生産の各パーツに応じて稼業というものを設定して、それぞれプレイヤーに自由に選んでもらい、カスタマイズできるというのが今回のシステムです。
 それから稼業には、レシピの簡略化というもうひとつの目的があります。サービスが10年を超え、実装されている生産のレシピも多岐にわたり、それぞれの生産に必要な材料などが、どうやって取ってきたらいいのかわからない、といった状況も発生していました。そうしたところも含め、生産を誰でもが楽しめるものに変えていこうというのがコンセプトです。稼業を自由に選べるようにして、レシピもわかりやすくすることで、また生産にトライしてみようという人を増やしていきたいという意図で作っています。
川又 稼業に関しては、追加の職も計画しています。最初は18種類なのですが、徐々に増やしていき、いろいろなことができるようにしていこうと考えています。
――システムの見直しで、生産技能がより上がりやすくなるなど、影響はあるでしょうか?
川又 生産の敷居は年を追うごとにどんどん高くなっています。その大きな原因が、生産の潜在能力という仕組みです。このため、かなりやり込まないと商売にならないと言いますか、いい物が作れません。まずそこに至るまでの道のりが、新参の方には非常に壁になっていた、という事実があるので、これを廃止してある程度みんな平等なところからスタートできるようにしようと考えています。
 とは言え、システムとしては稼業レベルというステータスが新しくできるのですが、いままで潜在レベルを貯めていた方のぶんがなかったことになったり、全員同じにされたりするわけではなく、この稼業レベルに補填や移管をさせていただく形になります。この稼業レベルは高いといいものができやすくなるなどわかりやすい仕組みになるので、いままでより生産に手を着ける壁は確実に低くなり、皆さんが楽しめるものになると考えています。
渡辺 生産潜在というものが、稼業レベルに置き換わり、稼業経験値という形で蓄積することでレベルアップするシステムになるわけです。ここはしっかり移行させないと「潜在能力をどうしてくれるんだ!」という話になりますからね。そこはちゃんと、いままで溜めてこられたプレイヤーの皆さんのぶんは保ちますので、ご安心ください。
川又 それから、いままでの生産は、材料を集めたらあとは運しだいというやりかたでしたが、今回はミニゲームのような要素を入れています。
渡辺 もっと生産を楽しんでもらおうというところですね。いままでは、本当にランダムだったんですが、それをミニゲームという形にして、ちょっと頭を使うと、より高性能な物が作れるという仕組みにしました。
川又 いままでは“入魂”という、生産のときにパラメータをアップさせる要素があったのですが、これにプレイヤーの工夫やミニゲームの結果によって、順当に付与値が上がるようなシステムを新たに追加しています。基本ルールは、いらない玉を砕くと、待機している玉が下りてくるような、落ちものパズルゲームみたいなイメージですね。規定の回数だけ崩すことによって、いかに並びのコンボを集めるか。たとえば“腕”を並べて5連にするとか、いくつコンボを作れるかが、そのままボーナス値として生産品に入るようなものになっています。それから稼業のレベルを上げていくことにより、たとえば一気にふたつの玉を崩すとか、好きな玉を1ヵ所だけ入れ替えられるとか、そうした能力が特別に使えるようになります。この要素により、いままで作っていた生産品よりも、結果的にいい生産品が作れる可能性が増えていくわけです。ミニゲームはほかにも採集系のものなど、いろいろなタイプがあり、大きく分けると4タイプになりますね。
渡辺 いまはスマートフォンやdゲームでもプレイできるような準備を進めていて、ちょっとした時間で遊べるような内容も提供していきたいと思っています。これはその一環といいますか、生産や採集は短時間でもできる遊びなので、そういった要素をゲーム中のサイクルのひとつとして楽しんでいただければと思います。

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▲生産のミニゲーム。同種類の玉を多く並べるほど、その能力のパラメータがアップする。
▲採集では、一定回数掘り起こして、より価値の高いアイテムを狙う。ミニゲームはほかにもいくつか用意されている。

◆大名物

――アイテムをめぐる新しい遊び、“大名物”も導入されますね。
渡辺 基本的にこの大名物というのは、国勢に関わる触媒のような働きをするものです。取った人にももちろん恩恵がありますが、冒険要素を国勢に紐付ける意味があります。大名物は毎週ひとつずつリリースされていく形になっていて、毎週イベント的に大名物が出てきて、それを取り合うという遊びかたが追加されます。
――実装数はどれくらいになるんでしょう?
川又 サービス開始時はいまのところ、20個程度を予定しています。
――入手方法は、具体的にどんな感じなんでしょうか?
川又 毎週、大名物ごとに用意されるミッションを達成し、未鑑定の物を手に入れたプレイヤーが発見物を勢力に献上します。するとその週の終わりに、NPCの千利休が開く大鑑定会で、どれが本物の――たとえば平蜘蛛なのかという鑑定が行われ、そこで初めてプレイヤーが見つけた発見物が大名物かどうか判明します。
 見つけるのは困難ですが、瓦版というデイリークエスト的な要素を達成していくことで、大名物がドロップしやすくなるレートを、その勢力ごとにみんなで上げていくことができます。大名物に関する噂を集めることで、入手確率を上げていくイメージです。
 これは入手困難なこともあり、大名物を自分の物にできるとすごい恩恵を受けられます。いままでユーザーさんから「天下一品と何が違うの?」という質問もいただいていたのですが、天下一品よりもはるかに能力が強化され、さらにそれを自分のものとして1週間使うことができるんです。
渡辺 パラメータでいえば生命力+300とか、オール+70とか、ふつうではありえないような数値です。
川又 まあ世界に1個なので、それにふさわしいようなパラメータを設定しています。天下一品は対人で奪い合う要素があり、みんな倉庫にしまってログインしなくなってしまうこともあったんですが、今回は奪い合いの要素はなく、1週間我が物にできる仕様になっています。そして装備すると、かなりど派手なエフェクトが発生します。これを持って合戦場へも行けるので、大活躍ができるはずですよ。
渡辺 注目の的になって盛り上がると思います。
川又 さらにですね、この大名物は取引可能です。
渡辺 ほかのユーザーに渡すこともできます。自分のキャラクターが使えないというか、やはり武器の属性に影響してしまう部分もあるので、そうした場合は他人に渡したほうがいいということもあります。
――それは、職によっては持てないということですか?
川又 装備じたいは可能なんですが、ベストではないというか……。
渡辺 能力的な上昇は問題なく受けられるのですが、武器としては使用できなかったり、そういうことですね。
――パラメータ上昇やエフェクトをみると、かなり入手が厳しいイメージがありますね。
川又 誰かはもちろん手に入れると思いますが、なにしろ世界で1個ですので。全プレイヤーのなかでひとりだけという。
渡辺 見かけただけで「見た?」と話題になるくらいの話ですよね。
――国勢とは、どう関わっていくのでしょうか?
川又 1週間プレイヤーが使ったあと、大名物は自分のお殿様に献上することになりますが、その後に外交で使えるようになります。外交というのは、たとえば、「大名物を差し出すから攻め込まないで」とか、合戦で国を取るのではなくて大名物を取るための合戦を起こすとかですね。大名物が加わることによって、勢力としての外交が、今回かなり大きく変わるところかなと思います。いままでは領地を取るしか、天下統一を目指せなかったのですが、大名物も特定の種類を集めることによって大きく国勢のパラメータを上げるような効果があったりするので、「一国を落とすよりも、この大名物のコンボを揃えたほうが上にいけるんじゃないか?」など、そうした外交的な戦略を考えることが生まれる要素になっています。
渡辺 冒険で得た大名物が国勢に影響する形で存在して、勢力が動いていくので、冒険をメインにしているプレイヤーの皆さんは、プレイスタイルはこれまでと変わらずに勢力活動に貢献していくことができます。

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▲常識外れのパラメータアップが可能な大名物。さすがに世界でひとつの貴重品だ。
▲大名物を装備した際のエフェクトの一例。合戦でもひときわ目立つこと間違いなしだ。

――現在、新たな章を開発しているなかで、苦労している部分はどのあたりですか?
渡辺 新システムを入れるに当たって、昔からあるシステムを紐解くのがたいへんですね。生産など、いろいろ複雑化しているので、そうしたデータベースをどう再構築するかなど、イチからの作業になりますから。いろいろな過去追加されたコンテンツが、繋がり合ってしまっているので、単純に外せません。ひとついじると全部直すことになり、それがすごくたいへんなところです。
 簡単に直せると思って手を出すと、「アレ、ここも直すの?」みたいな部分がどんどん出てきて。皆で考えたすえに、最初は1だったボリュームが10くらいになっていることがあります。そこを少しずつ紐解きながら、もっと簡略化しつつ、また新たなコンテンツを入れていく土壌を作っていく必要があるのかなと思います。
――デモ映像を見ていても、調整にかなり時間をかけられているような印象を受けます。
渡辺 ゲームのシステムもですが、デザインに関しても、当社じたいがものすごいこだわりを持って作る会社だと思っていますし、ビジュアルブックを見ていただければわかると思いますが、かなりリテイクをくり返しています。見ていただければ、ひとつひとつ苦心して作り上げているんだなというのを、実感していただけると思います。
川又 いままでの拡張パックは、ひとつ前が終わったのでつぎの新しいコンテンツだよ、という作りになっていたのですが、今回の『覚醒の章』は、しっかりと今後も主となるコンテンツを育てていく、という方針が根本にあります。新しく作るほうが簡単だったりもするんですけど、そこが本当に今回の苦労でした。
渡辺 いままで本当に手を入れたかった部分に着手できたということで、念願が叶いました。合戦も前回の『天下夢幻の章』ではリニューアルしましたが、中身を直しても、大枠の国勢が直ってないと、基本的に半分も直ってないことになります。けっきょく、全体の遊びかたはそこまで変わることができない。単純にコンテンツのリニューアルでしかなかったわけですけど、今回の『覚醒の章』では、しっかりと、ゲームの大目標となる天下統一というところが見えてきた形になってきたと思います。