未知の惑星を舞台にしたシリーズ最新作

 文明を発展させて科学や文化、外交、軍事など、さまざまな方法で勝利を目指すターン制ストラテジーゲーム『Civilization』シリーズ。その最新作2KのPC用ゲーム『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』は、舞台を地球から未知の惑星へ移し、人類が新たな文明を築いていく過程を体験できる。ゲームシステムのベースは前作『Sid Meier's Civilization V』を受け継いでいるが、コロニー(自勢力)発展の指針となる“アフィニティー”や、過去から未来への一直線ではなく多方向へ進化するテクノロジーなど、まったく新しいコンセプトがふんだんに盛り込まれた完全新作だ。本稿では、シリーズ初登場の新要素を中心に、詳しくリポートしよう。

『シヴィライゼーション』シリーズ最新作『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』プレイインプレッション まったく新しいコンセプトが盛り込まれた意欲作_01
『シヴィライゼーション』シリーズ最新作『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』プレイインプレッション まったく新しいコンセプトが盛り込まれた意欲作_02
▲地球上での繁栄に限界を悟った人類は、新たなフロンティアを求めて同胞を送り出す。

人類の新たなフロンティアには未知なる危険がいっぱい!

 プレイヤーは、地球からの入植者を率いるリーダー。ゲームを始めるにあたって、まずは勢力をバックアップするスポンサー(本作における国のようなもの)や、入植者の種類、宇宙船の装備、貨物などを組み合わせて、成長させやすい分野や、プレイを有利にする各種ボーナスを決める。

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▲複数の要素を組み合わせて自勢力の特色を決める。

 一団が降り立つ惑星は、文明の存在しない未開の地。探検ユニットで未知のエリアの探索しつつ、都市を発展させ勢力を拡大していくという基本的な流れは、従来の『Civ』シリーズと同様だ。だが、惑星上のあちらこちらにはユニットにダメージを与える瘴気が漂っており、瘴気を消すテクノロジー(エイリアン生物学)を開発するまでうかつに近寄れない。また、在来生物のエイリアンも人類にとって危険な存在。『シヴィライゼーション』シリーズの蛮人に相当する敵だが、初期の貧弱な戦闘ユニットではまるで歯が立たない巨大生物まで出現する。エイリアンは陸だけでなく海にも存在するため、艦船ユニットで探索を進めていたら、突然複数のエイリアンに囲まれて沈没‥‥というハプニングも珍しくない。ほかのシリーズ作品と比べると、序盤に都市建設ラッシュを仕掛ける方法はむずかしいと感じた

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▲巨大生物シージワーム。
▲海を探索している最中にも、エイリアンに襲われることがある。

蜘蛛の巣状に進化するテクノロジー

 テクノロジーの研究も、勢力を拡大するうえで欠かせない大事なこと。新しいテクノロジーを獲得することで、強力なユニットが作れるようになったり、ゲームを有利にする建造物や遺産(世界でただひとつだけ建設できる特別な建造物)を建てられるようになる。従来の『シヴィライゼーション』シリーズでは、テクノロジーが過去から未来へと直線状に進化したが、『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』では、“テクノロジーウェブ”という新システムを採用。文字どおり、蜘蛛の巣状に多方面へテクノロジーを進化させていく。選択肢が多いので、「どのテクノロジーから研究すればいいの?」と、迷ってしまいそうだが、低い難易度でプレイしているときは、おすすめとして示されているテクノロジーから着手していれば問題なく進められる。難易度を上げると研究対象をある程度絞り込む必要があるので、重視するアフィニティー(コロニー発展の方向性)や、目指す勝利条件にマッチするテクノロジーを選んでいくことになる。

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▲他方向へ進化するテクノロジーウェブ。

コロニー発展の方向性を表すアフィニティー

 本作で初めて登場したアフィニティーという概念は、コロニーが発展する方向性を表す哲学・イデオロギーのようなもの。アフィニティーには“調和”、“至高”、“純血”と3つのタイプがあり、関連するテクノロジーを獲得したり、クエストを達成したりすることで、各アフィニティーの経験値が溜まってレベルが上がる。いずれかひとつのアフィニティーを選ばなくてはならないといった制限はないので、特定のアフィニティーを集中的に上げるのも、まんべんなく上げるのもプレイヤーの自由だ。

■アフィニティー
調和 ‥‥ 惑星の生態系との融合を目指すアフィニティー。遺伝子操作によって、人類を惑星の環境に合わせていく、

至高 ‥‥ 技術の進化を押し進め、人類の暮らしやすさを向上させるアフィニティー。高度なロボットや無人車両などを利用して安全を守る。

純血 ‥‥ 人類史上主義。人類を惑星の環境に合わせるようなことは行わず、テラフォーミングによって惑星の環境を変える。

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▲人類を新しい環境に適応させるべきか? 惑星そのものを作り変えるべきか?

 人類を惑星の環境に合わせるのが、調和アフィニティー。その逆で、惑星の環境を人類のほうに合わせるのが純血アフィティー。そして調和と純血のあいだに位置するスタンスが、至高アフィニティーといったところだ。各アフィニティーのレベルが上がると対応するボーナス効果が得られるほか、特別なテクノロジーを利用したり、ユニットをアップグレードすることができるようになる。また、特定のアフィニティーに特化することで、特殊な勝利条件を達成することも可能だ。

■勝利の条件
制圧による勝利 ‥‥ 全アフィニティー共通。他のコロニーの首都をすべて制圧する。

未知との接触による勝利 ‥‥ 全アフィニティー共通。惑星上に隠されている“シグナル”を発見・解読し、高度に進化したエイリアンと接触する。

超越による勝利 ‥‥ 調和アフィニティー限定。惑星の意識と接触し、人類との一体化を達成する。

解放による勝利 ‥‥ 至高アフィニティー限定。地球と行き来できる解放ゲートを建設し、軍事ユニットを送り込んで地球を旧体制から解放する。

約束の地での勝利 ‥‥ 純血アフィニティー限定。地球人を惑星に転送するための脱出ゲートを建設し、地球に残る人類を惑星に移住させる。

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▲いずれかの条件を目標にして、コロニーを発展させる。

つぎつぎに発生する多彩なクエスト

 本作では、自勢力の特色にマッチする勝利条件の達成を目指してコロニーを発展させていくのが基本だが、勝利条件の達成が見えてくるまでの道のりは長い。その過程でゲームプレイの指針となるのが、頻繁に発生するクエストの数々だ。クエストはプレイ中にランダムで発生し、特定の建造物を建てたり、ユニットに指定された行動を実行させたり、戦闘に勝利したりすることで達成できる。前作『Sid Meier's Civilization V』でも、都市国家(少数派勢力)との友好度を高めるためのクエストがあったが、本作におけるクエストは発生する頻度がより多く、内容や報酬の種類も多彩。クエストを達成すると、都市が産出する科学力や文化力、エネルギーなどにボーナスが追加されたり、各アフィニティーの経験値を獲得できるといった恩恵が得られ、ゲームプレイそのものが非常に有利になる。重要度が大幅に増した本作のクエストは、前作のクエストとまったくの別物と捉えたほうがいいだろう。

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▲クエストを達成するたびにさまざまなボーナスを獲得。報酬内容について二者択一を迫られることも。

シリーズ経験者にも未経験者にもうってつけの最新作

 好みのプレイスタイルやマップ、難易度にもよるが、本作『Sid Meier's Civilization Beyond Earth』では、戦闘ユニットをつぎつぎに大量生産して他の勢力を圧倒するよりというよりも、クエストを達成し、テクノロジーを計画的に進化させ、既存のユニットをアップグレードさせながら目標の勝利条件を目指すという印象。冒頭で述べたように、ゲームシステムのベースは前作『Sid Meier's Civilization V』を踏襲しているものの、実際にプレイしてみると、『シヴィライゼーション』シリーズの核となる遺伝子を受け継ぎつつも、まったく別物のゲームであるように感じた。重視するアフィニティーやテクノロジーの系統、クエストの報酬、ユニットのアップグレード内容など、プレイヤーがつねに選択を迫られ、プレイするたびに発展の方向性が無数に枝分かれしていく。

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▲“調和”重視でユニットをアップグレードすると、兵士ユニットが昆虫っぽい見た目に‥‥。

 「前作の派生タイトルでしょ?」と思っていたシリーズ経験者でも、舞台やコンセプトがまったく異なる本作を一度プレイしてみれば、まったく新しい印象を受けるはず。従来のシリーズ作品の必勝セオリーが通用しない部分が多いため、シリーズ未経験者でもとっつきやすいタイトルだと言える。

 シリーズ伝統の奥深さは健在……というより、ますます懐が深くなって中毒性が増しているので、ひとつのゲームにどっぷりのめり込みたい人にはうってつけのタイトルだ。やればやるほどハマるゲームなので、実生活にまで悪影響を及ぼさないよう、ゆめゆめお気をつけあれ!