“Indiecade”から日本関連のゲームをピックアップ

 10月9日から12日にかけて、アメリカのカルバーシティで行われた“Indiecade”(インディーケード)は、ビデオゲームに留まらず、インタラクティブアートや、ボードゲーム、「俺の考えた新球技」まで出展されるインディーゲームの総合イベントだ。

 出展作品の多くを占めるのはアメリカのクリエイターによるものが多いのだが、中には日本に住むクリエイターの作品もある。というわけで東京ゲームショウなど別の機会にすでに紹介やプレイリポートを掲載しているタイトルも多いが、あらためてインディーケードで見かけた日本関連のタイトルをご紹介しよう。

自ら出展者として乗り込んだ『ミリオンオニオンホテル』

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_05

 この小特集をiOSタイトル『ミリオンオニオンホテル』以外で始めるわけにはいかないだろう。オニオンゲームスの木村祥朗氏は、日本からの唯一の出展者だ。
 インディーケードに出展されるゲームは大きく分けて、地元消防署のガレージに出されるアワード候補作、メイン会場の中のテントに出るセレクション作品(及びテント外の屋外ゲーム)、そして任天堂やソニーなどのスポンサーテントでの出展に分けられるのだが、『ミリオンオニオンホテル』は堂々のセレクション作品としての出展。応募してみたところ通ったため、これも何かの機会と渡米することにしたそう。

 学生作品なども多い中に、業界のベテランがフラットにいるというインディーならではの光景だったが、「それ(周囲が年下になるのは)はどこでも変わらないから。むしろホールとかでやるより、こっちの方が合う」とニヤリ。カリフォルニアらしい雲ひとつない屋外でゆるい感じに行われるオープンな雰囲気が気に入ったようで、すでに別記事で紹介したVRカンニングゲームClassroom Aquatic』などと並んで積極的にデモを披露していた。

 気になる海外のプレイヤーの反応は、タッチ操作のわかりやすさもあって、記者が話を聞いている間も、熱中して連打する姿が見られた。現在は出展バージョンよりも開発が先に進んでおり、試遊の反応を「ハマってくれる人はすごいハマってくれる」と語る一方、「今のバージョンならもっと行けるはず」とも。国内リリースは「年内には」とのことなので、期待して待とう。

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_04

PC版はアーリーアクセス実施中の『Nom Nom Galaxy』

 奇妙なホテルの名物「マジックオニオンスープ」が登場する『ミリオンオニオンホテル』のお次に紹介するのが、スープ繋がりで京都のゲームスタジオQ-Gamesの『Nom Nom Galaxy』。プレイステーションのテントにPS4版がプレイアブル出展されていた。本作はPC版がSteamでアーリーアクセス(早期販売)中で、リリース自体はPS Vita版も予定されている。

 2Dのフィールドに降り立ち、大地を掘り進めながら素材を集めていくという部分が大ヒットインディーゲーム『テラリア』と似ている本作。しかし本作でのプレイヤーの目的はサバイバルより、異星の食材を機械にブチ込み、スープを生産して出荷すること!
 インディーケードは東京ゲームショウやE3と異なり、説明してくれる人がいないので、チュートリアルや説明が終わった途中からプレイしたりするとなかなかゲームのメカニズムがわからなかったりもするのだが、そこは筋金入りのインディーファンや関係者。なんとなくプレイして大体の仕組みを察した人はもりもりスープを量産していた。

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_06

その静かな美しさにスマートフォン/タブレット移植も期待したい『Pavilion』

 スウェーデンと日本で開発しているVisiontrick Mediaの『Pavilion』は、プレイステーションブースでの出。斜め上からの静謐とした美しさのある一枚絵の世界を、ライトを付けたり、オブジェクトを動かしたりして進んでいく2Dアドベンチャーゲームだ。

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_01

 プレイしてみると、やはり雰囲気とグラフィック面が素晴らしい。それほど操作が忙しいゲームでもないので、「これはソファーでゆっくりしながらタブレットで遊ぶのもいいなぁ」なんて思っていたら、クリエイティブディレクターのHenrik Flink氏(東京在住)にメールで話を聞いたところ、実際に当初はタブレットでのプレイを考えていて、その成果はPS Vita版にも活かされているとか。

 なお東京ゲームショウやビットサミットでの反応も良く、そもそもテキスト等の翻訳要素もほとんどないので、日本でのリリースはぜひ行いたいとのこと。またスマートフォンやタブレット向けのリリース予定もまったくなくなったわけではなく、現在進んでいるPS4/Vita版の開発が終わったらあらためてさらなる可能性を検討するそうなので、こちらも合わせて期待したい。

見かけによらず結構ハード。スペースシューター『Galak-Z』

 シアトルのゲームスタジオ17-Bit Gamesの『Galak-Z』をこの小特集で取り上げることに違和感を持つインディーファンもいるかもしれない。しかし代表のJake Kazdal氏は現在京都在住。ボストンで4月に行われたPAXで会った際に「みんなで京都引っ越そうと思ってるんだよー」と流暢な日本語(元セガで『Rez』や『スペースチャンネル5』に関わった)で言われた時には冗談かと思ったが、引っ越してきちゃったんだから仕方ない。

 話を戻すと、ゲームは『Nom Nom Galaxy』や『Pavilion』と同じプレイステーションのテントにPS4版のデモが出展されていた。本作もまた東京ゲームショウに出展されていたのでご存知の人もいるかもしれないが、どことなく昔のアニメの影響が感じられるキャラクターデザインなどのカジュアルな見た目に反して、これがなかなかのハードコアぶり。プレイする人が続々と死にまくっていた。

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_07

 ゲームとしては自動生成された宇宙で戦う全方向移動のシューティングアクションゲーム。動きに慣性がつくし、操作方法自体にもちょっとクセがあるので、まずはその辺に慣れるのが生存の秘訣か? プラットフォームはPS4以外にPCとPS Vita版が発表されており、リリース時期は年内を予定している。

視覚と触覚を音楽の中に突っ込むサウンド体験『Collider』

 新たな体験を探し求めるインディーケードなら当然と言うべきか、今年はOculus Riftを始めとするVR関連の出展が作品・メーカーともに非常に多かった。
 手の動きを検出してコンピューターの操作として使えるLEAP MOTIONもスポンサーとして独自のテントを出しており、京都在住のマルチメディアアーティストBaiyon(インディーゲームでは『PixelJunk Eden』、『PixelJunk 4am』などで知られる)がサウンドを提供しているFunktronic Labsの『Collider』がデモのひとつとして出展されていた。

ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_02
ジャパン・イン・インディーケード――アメリカ西海岸のインディー祭で見かけた日本のゲーム【Indiecade 2014】_03

 『Collider』は、LEAP MOTIONを使って、特定のジェスチャーによりビジュアルやサウンドに変化を与えられるオーディオビジュアルプログラム。BGMはBaiyonによるクラブミュージック“風”ではない本物のテクノサウンドで、Oculus Riftを被ってプレイすると視界がサイケデリックなCG世界に包まれて、聴覚・視覚・触覚と全身で音楽を体験しているようなヤバーイ感じに。ちなみにプログラム自体は無料公開されている。