『FFXV』は自分でもワクワクできる内容になっています(田畑氏)

 スクウェア・エニックスからプレイステーション4、Xbox One用ソフトとして発売予定の『ファイナルファンタジーXV』。東京ゲームショウ初日(2014年9月18日)には、『ファイナルファンタジー零式 HD』に同作の体験版『ファイナルファンタジーXV -EPISODE DUSCAE(エピソード ダスカ)-』のダウンロードコードが付属することやディレクターの変更などがアナウンス。大きく動き始めた『FFXV』について、田畑端ディレクターに訊いた。

[関連記事]『FF零式 HD』は『FFXV』の絵作りにかなり近く全体を写実的に! 田畑ディレクターに直撃


『ファイナルファンタジーXV』田畑ディレクターインタビュー――「このあたりまでに完成するだろうという時期は見えてきた」_01
田畑端ディレクター。

――今後は田畑さんがディレクターを務めるという発表があり、驚きました。まずは、その経緯をお聞かせください。

田畑 僕は2012年の7月から、当時社長だった和田(洋一氏)の要請により、『FF零式』チームごと『FFXV』の開発に参加することになりました。そのタイミングというのは、制作を『FF ヴェルサスXIII』のまま進めるか、『FFXV』に変更して進めるのかを決めるターニングポイントでもあり、結果、ハードを変え体制を変え、ゲームの方向性も改めて決め直すことになりました。

――そして昨年のE3で、ハードの変更と、田畑さんが開発チームに参加していることが公開されたのでしたね。

田畑 そうですね。僕が加わってから半年後くらいに、『FFXV』として開発した試作版が承認され、プロジェクトを正式に『FFXV』として動かすことになり、2013年のE3での発表に至りました。そういった流れを受けての今回の発表なので、ディレクター交代とは言っていますが、いきなり変わったわけではないんです。ハードを切り換えた段階で、すでにキャラクターや世界観の骨子は野村(哲也氏)が固めていましたし、ナンバリング『FF』として、どのような内容や手法で総合的に優れたゲームにしていくか、野村とも開発チームとも経営とも、何度も話し合って詰めましたしね。

――交代による影響はないのでしょうか。

田畑 開発的なデメリットはありません。ただ、『FFXV』を待っていたユーザーの方が不安になる可能性は当然あると思うので、東京ゲームショウではトレーラーだけではなく、ステージで実機デモもお見せすることにしました。体験版を『FF零式HD』に付けるのも、制作が進んでいるという事実を見てもらいたいという意図があります。実際にできているものを見て、触ってもらったほうが、安心してもらえるんじゃないかと。

――なるほど。では、ディレクターとして、田畑さんが『FFXV』を作るうえで大事にしているところや、コンセプトを教えてください。

田畑 “仲間”と“旅”ですね。そのふたつを活かすためのゲームデザインを、徹底的に行っています。ノクトが主人公ではありますが、仲間を含めたパーティーそのものを、ゲームのすべてのシーンで主人公として扱うよう意識しているんです。バトルも、いかに仲間と協力して戦うか、というものになっています。

『ファイナルファンタジーXV』田畑ディレクターインタビュー――「このあたりまでに完成するだろうという時期は見えてきた」_05

――バトルについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

田畑 攻撃や防御が連続でつながる、流れるようなムーブが特徴のアクション方式のバトルで、プレイヤーは、仲間とのさまざまな連携が自動で発生するパーティー連携システムと、ワープや魔法といった派手で強力な特殊能力を駆使して戦います。ただしあくまでRPGなので、システム的な攻略が可能です。戦っている最中にメニューを起動して、味方の作戦を変えたり、武器のセットを変えることで、ノクトやパーティーの戦いかたが変化するんです。武器のセットはデッキを組んでおくようなイメージで、あらかじめセッティングしておいた武器の中から、状況に応じて最適なものを選んで攻撃してくれるようになっています。

――カスタマイズ要素は深そうですね。“流れるような”とおっしゃいましたが、確かに、デモで見られたバトルは動きが自然で、滑らかに攻撃を避けている場面もありました。

田畑 “防御ムーブ”と呼んでいるディフェンス用のシステムですね。じつは防御用のボタンを押すだけで、ああいった動きが可能です。

――コマンドを入力して避けていたわけではないんですね。ボタンを押しっぱなしにするだけで、華麗なアクションを出せると。それから、ファイアによる火がすぐに消えなかったり、すさまじい威力だったのも新鮮でした。

田畑 火で燃えたら、ふつうは平気ではいられないですから(笑)。魔法はなるべくリアルにしていきたくて、たとえばファイアで発生した炎が燃えていると、その周りの敵も熱がって逃げるなど、ちゃんとあの世界に発生している現象として扱います。天候や時間といった概念も取り入れています。

―─では、『FF零式HD』に付属する体験版についてお聞きします。“EPISODE DUSCAE(エピソード ダスカ)”というサブタイトルについて教えてください。

田畑 『FFXV』に、ダスカ地方というエリアがあるんです。そのあたりを切り出して体験版にするので、その名がついています。ダスカ地方を訪れるのは、物語の序盤のほうですが、いくつかのシステムが開放されている点と、かなり盛り上がる要素が含まれている点から、『FFXV』で体験できることが伝わりやすいと考えて選びました。オープンワールドのフィールドで、クルマでドライブしながら世界をめぐれる場所でもあります。クルマを降りて移動したり、バトルを楽しむこともできます。

『ファイナルファンタジーXV』田畑ディレクターインタビュー――「このあたりまでに完成するだろうという時期は見えてきた」_02
『ファイナルファンタジーXV』田畑ディレクターインタビュー――「このあたりまでに完成するだろうという時期は見えてきた」_03

――体験版のボリュームはどのくらいに?

田畑 通常のプレイで約1時間くらいのものになる予定です。世界をじっくりと探索して戦闘をしていけば、さらに長く遊べると思いますよ。たとえば、メインストーリーとは関わりがないですが、『FFXV』のダンジョンには、強い敵がわんさかいます。ナンバリングの『FF』なので、基本的にはすべてのプレイヤーがエンディングにたどり着けるように作っていますが、ダンジョンは容赦していません。相当腕を磨くかレベルを上げるかしないと、やられてしまいます。ちなみに、ダンジョンにいる凶悪なモンスターは、夜になると地上に出てうろうろしたりするので、中に入らずとも危険です。

――生態系みたいなものがあるということですか。

田畑 そうですね。世界を“陰と陽”というコンセプトで分けているのですが、陰のほうにはけっこう凶悪なモンスターが配置されていて、プレイヤーに対し殺意をビンビン放ってくる、怖い敵がたくさんいます。陽のモンスターは敵意はなく、基本的には近づいても攻撃してきません。

――デモで見せたような、時間の流れや天候の変化も体験版に入っているのでしょうか。

田畑 それらも体験できます。今後調整するかもしれませんが、ゲーム内の1日が現実世界の30分程度で、夜間に強敵と戦っていたら夜が明けました、なんてことも(笑)。天候については雨以外にも色々検討されていて、変化に応じてステータスが変わったりもします。

――やり込み要素としては、トレーラーに出ていたアダマンタイマイとも戦えるとか。これと戦ったら、相当時間が経ちそうですね。

田畑 ゲーム内時間で、30日くらいかかるんじゃないですかね(笑)。頭から尾までキロ単位という巨大な相手で、どこを殴ってもダメージを与えられはしますが、足踏みだけでやられてしまうかも……という具合に、リアルに戦うことを想定しつつゲームに落とし込むと思います。

――リアルさを追求するあまり、倒した敵を焼いて食べたりはしませんよね?(笑)。今回公開されたCGで、食事のシーンが描かれていたのはなぜなのか、というのが気になっていて。

田畑 じつはこのCGは、『FFXV』を象徴するすごく重要な絵として、ムービーチームに作ってもらったものです。詳細は伏せますがドラマ的にも、みんなで食事をするというのはすごく大事なことになっています。

――“リアル”というキーワードで、あれこれと予想するのも楽しいですね。ちなみに、PS4の体験版は、リモートプレイやSHARE機能に対応しているのでしょうか。

田畑 SHARE機能は使えることが決定しています。リモートプレイは未定です。製品版ではどちらも使用できます。なお、データの引き継ぎは、製品版にいろいろな制約がかかってしまうので、行いません。

――製品版の発売時期の目処はついているのでしょうか。

田畑 はい。だいたいこのあたりまでに完成するだろう、という時期は見えてきました。進捗は、55%といったところです。要素としては、全部ではありませんが、体験版を出せる程度には組み上がっていて、あとは物量をどうねじ伏せていくかというところまできています。どんなゲームになるか、という意味では、計画上は99%決まっています。

――いよいよ、という感じがしてきました。

田畑 そうですね。形になってきたことを『FF』ファンの皆さんにお伝えするために、体験版を制作します。『FF零式HD』を買っていただかなくてはいけないのですが、こちらも損をさせない作品になっていますので、ぜひ手に取ってみてください。余談ですが、僕は業界歴が長いせいか、最近はちょっとやそっとのことではワクワクしなくなっているんです。でも、『FFXV』は自分でもワクワクできる内容になっています。“自分がワクワクできるゲームにする”というのが、いまの『FFXV』チームのキーワードにもなっています。ユーザーの皆さんも、どうかワクワクしながら待っていてください。

 ※本記事未掲載の内容を含む田畑氏のインタビューは、週刊ファミ通2014年10月9日増刊号(2014年9月25日発売)に掲載!