可能性を秘めるe-sportsコミュニティー

 発表会では、まず代表取締役社長の竹田芳浩氏が登壇。同社が手がけるe-sportsに関する戦略について語った。

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▲竹田氏は“Rize of e-sports”のキャッチフレーズのもと、2014年をe-sports元年とし、魅力、興奮、感動を伝えていくと宣言。

 e-sportsと呼ばれる、競技化されたゲームプレイは、サッカーや野球のように、そのコミュニティーやファンを含めてエンターテイメント要素を備え、海外では大きなスポンサーが個人やチームに付き、成立している。竹田氏は、日本では「まだまだの感もあるが、徐々に浸透してきている」と解説。同社が協賛している“LEAGUE OF LEGENDS JAPAN”(略称LJL)も盛り上がっており、ストリーミング放送では70000人の視聴者が訪れるほどの規模感、と今後のコミュニティー拡大への期待を語った。
 ここで話題は世界のPCゲーム市場の解説に移行。興味深いデータがいくつか紹介されていたので、写真とともにお届けしよう。

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▲PCゲーム市場は、ご覧の主要な大陸で、1年あたりすべて20%を超える成長を遂げている。「この原動力のひとつがe-sportsではないか」と竹田氏。
▲ゲームに引っ張られるように、世界のPCゲーミングデバイスの市場規模も着実に伸びている。
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▲日本のPCゲーミングデバイス市場は、2013年1年を通じて金額ベースで前年比150%。2014年は6月まででも122%と、引き続きの成長維持が期待される。
▲日本のゲーム別プレイヤー人口のグラフ。家庭用ゲーム機とソーシャルゲームが拮抗し、PCゲームは少し規模の落ちる約22.8%。国内外を問わず、e-sportsへのスポンサードやコミュニティーへの関わりを通じて、このカテゴリーをいかに活性化できるかがロジクールGのテーマだ。

 海外での取り組みが語られたのち、日本での取り組みとして、前述のLJL協賛に加え、株式会社マイルストーンの主催する“Japan Competitive Gaming”、通称JCGのレギュラーシーズン、そして『LEAGUE OF LEDENDS』のトッププレイヤーから初心者までのイベントサポートをし、ゲームの裾野を広げる活動をロジクールGは行っていると強調。
 また、e-sportsチームのスポンサーシップの一環として4月にマルチゲーミングチームDetonatioNのチーム内ユニットFORCUS MEと契約し、この発表会当日、DetonatioNの『BATTLE FIELD 4』チーム、DetonatioN BYCMと契約することを明かした。さらに、プレイヤーでもあり、ゲーム実況解説者としても知られるSTANSMITH氏をロジクールGアンバサダーに任命。氏の有するチャンネルを通じてコミュニティーに情報発信をしていく意向を語った。

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▲STANSMITH氏(左)とDetonatioN BYCMのDUSTLEBOX氏(右)。

ゲーミングキーボードG910の本気度

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 続いてロジクール社クラスターカテゴリーのマネージャーである古澤明仁氏が登壇。同社が満を持して放つゲーミングキーボードの新製品へと話題を移した。

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▲古澤氏は、製品の発表の前にまずロジクールのゲーミング機器の歴史を振り返った。2005年に初めてゲーミングブランドであるGシリーズが登場。2013年にはゲーミングマウス、キーボードで数量・金額ともにシェアナンバーワンを獲得している。

 いよいよベールを脱いだ新製品は、G910 RGB メカニカル ゲーミング キーボード。ロジクールGの現在のキーボードラインアップの最高峰に位置するモデルで、大きな特徴として、以下の3点が語られた。

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▲実機は世界初公開。
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◆ROMER-G メカニカルキー
 オムロンスイッチアンドデバイス社と協同して2年かけて新規開発されたスイッチを使用したキー。一般的なメカニカルスイッチに比べ、アクチュエーションポイント(キーを押して反応する深さ)が最小1.5ミリという薄さになっており、最大25%の高速入力が可能という。
 耐久性に関しては、7000万回に耐えうるとされており、こちらは一般的なメカニカルスイッチに比べ、約40%強いことになる。
 また、操作の精度を上げるため、キーキャップも新規開発。これはファセットキーキャップと呼ばれ、ダイヤモンドのカットのようにキートップを角度の付いたすり鉢状にカットすることで、WASDなどのキーが指先を安定してホールドする仕組みになっている。これはキーによって角度もまちまちで、たとえば小指を滑らして押すことの多いTABキーなどは、ホールド部分がキーの左側だけになっており、ゲームプレイはもとよりあらゆる用途での快適さを追及しているという。

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▲キー接写。キーによって上左右、左右、左だけなど、切りかたが異なっている。

◆RGBイルミネーション
 マネジメント用のソフトウェアをダウンロードすることで、1680万色から好みのカラーに各キーのライトを設定可能。プロファイルが保存できるので、楽しむタイトルなどに合わせて一瞬で切り替えられ、設定操作もドラッグによる範囲指定など直感的になっている。

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▲ほかにも自分のタイピングを記録し、KPM(1分間あたりのタイプ数)計測や、キー別のタイプ頻度を確認し、自分に最適なキー割り当ての分析もできる。

◆ARXコントロール
 専用のアプリをダウンロードすることで、ゲーム内の情報やステータスなどをiOS、Androidデバイス上にセカンドディスプレイとして表示できる機能。デバイスをキーボードの奥側に立てて設置が可能。今回、SDK(対応ソフトウェアの開発キット)をパブリッシャー向けにリリース。ゲーム側が対応することによってさまざまな使いかたが現れるだろう。

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▲たとえばゲームを中断してセッティングソフトウェアを立ち上げずに、マウスのdpiセッティングを変更したり、ゲームがキーボードのSDKに対応すれば、イルミネーションをゲーム内の状況に合わせてブリンクさせたりなども可能になる。

 最後に発売時期と価格を発表。発売はクリスマス前今秋を予定しており、価格は20185円[税抜]。価格にも性能に対する自信が表れている。

●Logicool G910 未来を明るく彩る

本社ゲーミング・マーケティング部門のトップが語るG910への想い

 発表会の後、実機に触れながら本社ゲーミング・マーケティング部門のトップとアジア・太平洋・日本のシニアマネージャーにインタビューする機会に恵まれた。彼らがG910にかけた想いを以下に掲載しよう。

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▲ゲーミング・マーケティング部門のトップ、Brent Barry氏(左)とアジア・パシフィックのRegional Category Manager のMax Pan氏(右)。

――日本のe-sportsはほかの地域の規模に比べるとまだまだこれからですが、マーケティングの立場から、これをどうご覧になっていますか?

Barry e-sportsは、とくに欧米が非常に大きな市場で、それらの市場でe-sportsの最初のスポンサーだったのが我々です。その後e-sportsは非常に大きく発展しました。とくにEU、中国、韓国ですが、これらの国々はPCゲームが中心であったという背景があります。日本は家庭用ゲーム機が中心だったために、e-sportsがほかの地域ほど早くに成長しなかった状況がありますが、現在の日本のPCゲーム市場は伸びており、それはe-sportsとともに発展していくものだと、今後日本は世界とつながっていくことになると、我々は確信しています。
 e-sportsのムーブメントは、さまざまなストリーミングサービスが提供され、『LEAGUE OF LEGENDS』のトーナメント実況など、いまピークを迎えており、我々としてもその一部として参与したいと考えています。e-sportsに関わる人たちは非常に熱狂的で、チームとしての意識も非常に高く、観ていて楽しい。これはニッチや流行といったものではなく、若い人たちにとってこのマーケットは自然なもので、自分たちとともに育っていくものだと考えています。

――ストリーミングサービスによって、確かにプレイ人口は増えている気がしますね。

Barry 我々がパートナーとして取り組んでいる『LEAGUE OF LEGENDS』ですが、日本のプレイヤーは2年前は50000人で、彼らはアメリカのサーバーを使っていました。現在は6倍の30万人がプレイしていますが、いまもアメリカのサーバーを使わざるを得ないという状況です。このデータからも、いかに日本で急速にe-sportsが成長しているかがわかります。また日本サーバーが設けられたら、さらなるスピードで成長すると考えています。

――そのとき手もとにロジクールGがあってほしいということですね。先刻の発表以外で、このG910開発の思想などありますか?

Barry 古澤の説明のくり返しになるかもしれませんが、このG910を開発するにあたって、開発初期から数えると2年の時間がかかっています。なぜそれだけかかったかというと、開発全体が反復のプロセスだったためです。アイデアを設計に入れ込み、それを形にして、そのうえでプレイヤーがどのようにプレイするのかの検証をくり返すわけです。プロのユーザーに、通常のゲームユーザーに、さらにタイピングがメインの方たちそれぞれに検証を行ってもらっています。
 それは、オムロンさんと協同で開発したこのキースイッチやパーフェクトなファセットキーキャップもそうですし、またキーの位置についてもそうです。たとえば、G710pではG1キーがESCキーの近くにありましたが、誤って押さないようにGキー全体を一段下げ、半分を離して横並びに置いています。このほうがプレイしやすいということが、データによって見えたからです。アクチュエーションポイントもキーを押す頻度やエリアによって異なります。さらにゲーマーの方々は左手をよく使うので、左手の動きをとくに検証してきました。ロジクールとしては科学的なデータを積み上げて開発を行い、それによってパーフェクトなメカニカルゲーミングキーボードを作りたいと考えていたわけです。
 それから我々自身がゲームを愛しているという点や、ゲームをプレイするうえで勝ちたいと思っている点は外せません。我々自身も『LEAGUE OF LEGENDS』を始めとするさまざまなゲームを楽しんでいますし、自分たちが開発したデバイスによって、ゲーマーの皆さんに勝ってほしいという想いが強くあります。だからこそe-sportsに参与することで大きな自負を持ちたいと考えていましたし、プロチームからフィードバックをもらって開発を進めてきたのです。

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▲ESCの左にあったG1キーが手前に下がっている。左上の4つはゲームモードを切り替えるキーだ。
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▲本体右側。やはり多用するカーソルキーには、指先の当たる奥側にストッパーとなるカットがなされている。

――実際に触ると、力が要らないですね。自分のプレイがこれでどれだけ変わるのかが楽しみになるキーボードです。

Barry 私自身、以前のラバードームのキーボードからG710に変わった時点で「これはいままでにないものだ」と感じましたが、G910に触れると「さらにいい」と感じます。ゲームをするときにも快適ですし、タイプをするときでも違いがわかります。また北米のチャンピオンチームからも非常にいいフィードバックをいただいており、「これ以外でプレイしたくない」という言葉もいただきました。

――これだけ突き詰めて作ると、ロジクールのキーボードはつぎはどこへ向かうのでしょう?

Pan 確かにG910は我々のフラグシップではありますが、一方でゲーマーの方々には大小や軽重など人それぞれの好みがあります。それはマウスも同様。キーボードにおいてはROMER-G メカニカルキーは採用していきますが、たとえばRGBイルミネーションについては採用しない商品もあるなど、異なる市場のニーズに応えるために、タイプを今後に追加していくことは考えられます。

――ARXドックに置いたデバイスは、どうやってPCやキーボードとリンクするのでしょうか。

Barry PC本体とはWi-Fiでつながります。こちらのARXコントロール(モバイルアプリ)については、ダウンロードしていただくと、別にこのキーボードでなくても使える商品です。我々の製品を使っていただいたうえで初めからできることとして、RAMの使用量やデバイスの温度を確認できたり、ゲームをプレイ中に中断することなく、マウスのdpiを変えたりなどがあります。

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▲ドックを本体から引き出し、立てかける形だ。

――SDKについて、さらに想像が膨らむような使い道があれば教えてください。

Barry 弊社の製品にゲームパネルが付いていた時代がありましたが、そのときもゲームのデベロッパーやコミュニティーに独自にカスタム化したソフトを開発していただいていました。これは私のアイデアであり、現実に話が動いているわけではありませんがしていただけることの例として、SDKもデベロッパーの方やゲーミングコミュニティーの方がミニマップやキャラクターの健康状態を表示させたりなど作っていただけることでしょう。ほかにも掲示板のような使いかたをして、友だちからのメッセージを受け取ったり、あるデベロッパーの方に興味を示していただいているものに、インゲームストアとして使う方法などがあります。アイデアさえあれば、やれることは無限にあるわけです。

Pan 我々としても今後ARXコントロールをアップグレードしていくことで、できることがいくらでも広がっていきます。たとえばRTSにおいてはKPMが気になってくると思います。それをシステムで分析して、自分のパフォーマンスを評価することなども可能になると思います。

――キーボードのマネージメントソフトでも、そのお話がありましたね。ソフトの操作が視覚的でわかりやすいです。

Barry そのロジクールゲーミングソフトウェアは使いやすさを重視して、専門のチームが開発しています。ご覧になっていただくとわかりますが、操作に対してキーボードの反応がたいへん速く、すぐにカスタマイズを形にできます。また、最適なゲーム体験をするためにキーをセットすべき場所もテストして分析できます。

――分析などは、家庭用ゲーム機ではなかなか考えられない仕様ですよね。依然として家庭用ゲーム機やモバイルの強い日本の市場へのメッセージはありますでしょうか。

Barry 家庭用ゲーム機やモバイルでのプレイがメインの皆さんにPCゲームをプレイしていただきたい、というのが私のメッセージになります。ロジクールはゲームを愛し、情熱を持って、PCにおいて最良の商品を提供しています。それをゲーマーの方々に使っていただきたいですし、科学の力によってそれができると信じています。PCゲームは世界中でコミュニティーができている大規模なもの。その楽しさをぜひ体験していただければ、家庭用ゲーム機に初めて触れたときの興奮をPCゲームでも体験していただけると思っています。

Pan 日本市場は我々にとっても非常に重要なマーケット。ロジクールGは日本のゲーマーの方々のことを非常に考えています。だからこそ今回東京ゲームショウに大きなブースを出展し、東京でグローバルな発表をしました。今後もぜひロジクールに注目していただきたいと思いますし、我々も日本の皆さんの声を聞いていきたいと思います。

 製品名  ロジクール G910 RGB メカニカル ゲーミング キーボード
 品番  920-006425
 価格  オープンプライス(ロジクールストア 20185円[税抜]/2014年9月現在予価)
 発売予定日  今秋以降
 保証期間  2年間

 本体サイズ

 幅505.5ミリ×奥行243.5ミリ×高さ35.5ミリ(大型パームレスト装着時)
 本体重量  1530グラム
 ケーブル長  180センチメートル
 カラー  ブラック
 キーレイアウト  108キー 日本語レイアウト
 キー構造  メカニカル
 キーピッチ  19ミリ
 キーストローク  3±0.2ミリ
 押下圧  45.0±20グラム
 角度調節機能  あり
 ショートカットキー  バックライトスイッチ、ミュート、再生/一時停止、停止、前のトラック、次のトラック、ボリュームダイアル
 Gキー数  9
 マクロモード数  3
 ゲームモードキー  あり
 複数キー同時押し  対応(最大10)
 バックライト

 対応(RGBバックライト)

 ソフトウェア  Logicoolゲーミングソフトウェア、ARXコントロール モバイルアプリ(iOSまたはAndroid)
 その他機能  全キーアンチゴースト、スマートフォン&タブレットスタンド、ARXコントロール
 必要システム  Windows Vista、Windows 7、Windows 8/HDD 70MB以上の空き容量/USBポート
 接続インターフェイス

 USB