ぶっ飛んだ世界観としっかりとした作り込みのバランスが光る1作

 2014年8月13日(水)~17日(日)の5日間、ドイツ・ケルンのケルンメッセにてヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2014が開催中だ。

 『ボーダーランズ プリシークエル』は、国内では2014年10月30日にプレイステーション3、Xbox 360で発売予定のFPS。トゥーンタッチのグラフィックやぶっ飛んだ世界観が特徴で、本作はストーリー的には『1』と『2』をつなぐ作品にあたる。gamescom 2014では、同作のプレゼンテーションが行われた。本作の詳細については、ファミ通.comですでにきっちり紹介しているが(【記事その1】、【記事その2】)、ここでは、改めての意味も込めてお届けしよう。まずは、最新映像からどうぞ。


 本作の舞台となるのは、前2作の舞台であるパンドラから見えていた月。前2作と同じ環境ではおもしろくないので、宇宙にいる感じを持ってもらうようにしたという。つまり、重力が低い。そのため本作では、『1』や『2』に比べてずっと高く飛ぶことができ、ダブルジャンプのようなこともできる。低重力は攻撃にバリエーションを加えることにもつながり、たとえば、上から落下して敵にダメージを与える……といったことも可能だ。ユニークな武器も本作の特徴のひとつだが、本作では相手を凍らせるといった新しい武器も登場。相手が弱くなっている場合は、凍らせて破壊できる。さきほど紹介した落下と凍結を組み合わせて、凍らせた相手を落下して破壊するといったコンボ技なども可能になるというわけ。本作から新たに登場するプレイヤーキャラは以下の4人だ。

『ボーダーランズ プリシークエル』は予想通りにならない世界観が魅力【gamescom 2014】_08

アテナ 究極のアサシン。ニンジャ+キャプテン・アメリカといったイメージ。敵から受けたダメージを吸収し、そのエナジーを使って反撃する。刀も持っている。
ウィルヘルム 『ボーダーランズ2』のボス。ふたつのドローンを持っている。ひとつは飛行するタレットで、もうひとつはシールドに。両方がいっしょになると強力だ。
クラップトラップ 周囲の状況を分析するソフトウェアを使う。ソフトウェアパッケージによっては非常にパワフルになる。サブマシンガンやスナイパーを近接攻撃に使うこともできる。混沌としたキャラクターなので、ときに失敗することも。
ニーシャ  カウガール。西部劇に出てくるようなキャラクター。ムチを使う。

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 プレゼンのあとは、ハンズオン(試遊)の機会があった。内容は、協力プレイで宇宙船を脱出していくというもの。記者が使用したのは、ウィルヘルム。短期間のハンズオンということもあり、なかなかぶっ飛んだ世界観を満喫……というわけにはいかないものの、実感させられるのは丁寧な作り込み。しっかりとした土台があるからこそおバカな設定も活きるというのは、考えてみれば当たり前の話で、30分間ゲームプレイに没頭してしまった。プレゼンにあったように低重力というのも本作にアクセントを添えており、ふわりとした感覚はリアルティーにあふれていた。触っていて楽しい……というのが率直な感想だ。

 さて、最後に本作の開発を手掛けたギアボックス・ソフトウェアのジェームズ・ロペス氏と2Kオーストラリアのジョエル・エルシャー氏へのインタビューの模様をお届けする。

『ボーダーランズ プリシークエル』は予想通りにならない世界観が魅力【gamescom 2014】_10
▲ギアボックス・ソフトウェアのジェームズ・ロペス氏(左)と2Kオーストラリアのジョエル・エルシャー氏(右)。

――低重力での操作が気持ちいいですね。

ジョエル 月を舞台にしたのは、最初リスキーな判断かな……と思いました。月は低重力なので、通常よりも高く飛べてしまうわけですから。ただし、結果として低重力という要素はゲームに新味を加えてくれました。キャラクターはよりパワフルになり、敵やクリーチャーもいろいろとおもしろいことをしてくれることがわかったんです。あとは、いかにシステムとマッチングするかで努力した感じですね。

――制作過程でけっこう試行錯誤があったのですか?

ジョエル 最初からツールとエンジンを用意していたので、速い段階から重力が低い状態でプロトタイプを作ることができました。そのため、そんなには苦労はなかったです。徐々に微調整していったのですが、その過程で低重力の魅力に気がついていった感じです。重力が低いのて、銃で撃っただけで反動で移動してしまうとか、プロトタイプの段階で気付いたことも多いです。

――『1』と『2』でベースができていたので、いかに応用すればいいか、というところだったのですね?

ジョエル とはいえ、技術面はまったく新しいですよ。アートもストーリーもすべて新規ですし。

――ぶっ飛んだ世界観が魅力の本作ですが、「こんなばかなことをしています」みたいなフィーチャーを1、2教えてください。

ジェームズ 何かが起こると予想しても、その通りにはならないことが『ボーダーランズ』シリーズの世界観の魅力です。その考えかたを象徴しているのが、クラップトラップです。彼はランダムで、あるときはとてもパワフルですが、まったく役に立ってないように見えるときもあります。ところが、じつはちゃんと目的があったりする。大砲を撃てる海賊船になったと思えば、ゴムのアヒルを身につけて飛び跳ねたりする。バカバカしく見えることもありますが、敵にスラムダウンを食らわせたりと、使えるキャラです。

――ユニークなキャラクターも本シリーズの魅力ですね。

ジェームズ そうですね。たとえばハンサムジャックは『ボーダーランズ2』の悪役ですが、ダークなユーモアの持ち主であり、それをおもしろいと思ってくれるファンの方も多かったです。今回は悪役ではありませんが、尖ったユーモア感覚を見せてくれますよ。まあ、『ボーダーランズ』ユニバースにいるキャラクターたちは、危険な環境に身を置く屈強な人々なので、サバイバルのためにダークなユーモア感覚が必要なんです。

――とはいえ、ぶっ飛んだことをするためには、真面目な努力が必要ですよね。

ジェームズ これはアクシデントで盛り込まれた要素なのですが、月の住民がオーストラリア人になりました(笑)。どういうことかといいますと、ゲームの開発をする際には、ミッションの進めかたやキャラクターのコンセプトをまとめた書類を作ったのですが、ギアボックス・スタジオと2Kオーストラリアの2社共同で作成したんです。で、“キャラクターの声はこんな感じ”というのを、オーストラリア人がアメリカ英語を真似て読んだところ、めちゃくちゃに酷かった(笑)。ただ、とても楽しくて、アメリカ英語とは、また違うものになったんです。今回の舞台は月です。シリーズでおなじみのパンドラではなくて、違う場所だと感じてもらうには、違うアクセントがいいのではないか、とのことで、月の住人にオーストラリア訛りを入れることになったんです。

ジョエル 『Bio Shock』シリーズに10年ほど関わってきましたが、シリアルでダークな世界観に落ち込むこともあります。ですが、『ボーダーランズ』シリーズはユーモアにあふれていて、楽しいですね。チーム全体でアイデアを出し合って作るのは楽しかったです。

――ちなみに、あまりにバカバカし過ぎて、ボツになったアイデアなんてあります?

ジェームズ むしろ、バカバカし過ぎることをやってほしいと思っていました(笑)。ストーリーはシリアスですが、ほかの部分は楽しいというバランスも大事です。ストーリーは、地球が絶滅するという深刻な事態ですが、一方で、やたらと声を出してやっかいで、スピードも落ちるけど、非常にパワフルなガンがあったり、文句をつけてくるスナイパーライフルがあったり……と、非常に楽しい。本当にバカバカしいミッションもありますが、それがかえって素晴らしかったりします。「こんなバカバカしいものは見たことがない、ならば早速取り入れよう」となる。まずは楽しくなくてはダメなんです。とはいえ大切なのは、ゲームの価値を下げないこと。クラップトラップのアビリティーはとてもバカバカしいしいものですが、楽しくてゲームをパワフルにしてくれます。ゲームの価値を下げるものではないんです。そうそう。本作には“Boganella”というガンがあリますが、Boganとは、オーストラリアのスラングでレッドネック(教養のない差別的で偏見をもった人)のことを指します。いっしょに仕事をする同僚にマークという人がいて、彼はBoganではありませんが、話しかがそっくりなので、大笑いしてしまいます。彼のために“Boganella”を作ったようなものです(笑)。

――最後に、オススメの攻撃方法を教えてください。

ジョエル 私はアテナの“チェーンアタック”が好きです。まずは、高くジャンプして、シールドを使って敵の撃った弾や攻撃を吸収します。で、敵のあいだにシールドをリバウンドさせて、全員を驚かせて大きなダメージを与える技です。相手を凍らせて上からスラムダウンすることもできますが、一気に粉砕することもできます。5秒間で満足感が得られますよ。

ジェームズ 私は、トラップを仕掛けるのが好きですね。たとえば樽。敵を引きつけて追わせ、樽を撃って凍らせるか、粉砕します。あとは、橋から吹き飛ばしたり、爆破させたりするんです。低重力のために、敵は永遠に飛んで行くことになるというわけです。

――まったくもって気の早い話ですが、『ボーダーランズ』の世界はこのあとどうなっていくのでしょう?

ジェームズ 『ボーダーランズ プリシークエル』は、これまででシリーズ最大のゲームで、作っていてとても楽しいです。いまは、ベストで最大のゲームを作ることに集中しています。

『ボーダーランズ プリシークエル』は予想通りにならない世界観が魅力【gamescom 2014】_09
▲2Kのビジネスエリアには、コスプレイヤーたちも集結。欧米でも『ボーダーランズ』は人気が高いようで。

(取材・文 編集部/F)