『鉄拳7』では、さまざまな展開を計画している

 2014年7月24日(木)~27日(日)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテインメントの祭典“Comic-Con International 2014”(略称:コミコン)が開催中。既報の通り、開催2日目に行われたセッション“BANDAI NAMCO FIGHTING PANEL”で、数々の新情報が明らかになった『鉄拳7』(⇒記事はこちら)。ファミ通.comではセッション直後の『鉄拳』シリーズディレクターの原田勝弘氏を直撃。『鉄拳7』の進捗について、がっつりと話をうかがった。

初心者にも楽しんでもらえるような仕組みを考えている

『鉄拳7』の原田勝弘氏を直撃 “最終決着”は開発陣の決意の現れ【Comic-Con International 2014】_02

――『鉄拳7』が正式発表されて2週間ほど立ちますが、反響などいかがですか?
原田 いつ発表しようか少し迷っていたのですが、EVO 2014で発表することになりました(⇒関連記事はこちら)。発表のやりかたなども少し考えたのですが、ファンの皆さんにも喜んでいただけたようで、うれしいです。今回ナンバリングタイトルということで、期待感がいままでと違うということはかなり実感しています。FacebookやTwitterとかでも、反応が大きいので。前作にあたる『鉄拳タッグトーナメント2』は、ふたキャラを扱うのが難しいということで、スキップしたという人が意外と多かったと思うんです。それに対して、『鉄拳7』は正統な続編ということで、“いままで自分たちがいちばん親しんできた『鉄拳』が戻ってくる”ということの期待感を、いま実感しているところです。

――『鉄拳7』はどんな作品にしたいですか?
原田 ふたつの側面があると思っています。いままで『鉄拳』って20年かけていろいろなストーリー展開をして、いろいろな布石を打ってきているのですが、意外とちゃんと決着をつけていないんです。今回『鉄拳』20周年ということもあるのですが、ストーリーを大きく動かして、決着をつけるところは決着をつけて……という形にして、キャラクター設定やストーリーに注目してくださっている方も、見応えがあるものにしたいと思っています。これは時間がかかると思いますが、いろいろな形で実現したいです。

――ナンバリング(正統続編)ならではの、ストーリーの決着ということですね。
原田 ゲームの側面としては、初心者はもちろんですが、久々にカムバックする人、たとえば「『鉄拳タッグトーナメント2』は難しいな」と思っていた人にアプローチできるものにできたら……と思っています。さらに言えば、『鉄拳』シリーズを難しく感じていて敬遠していた人とかにも、ぜひプレイしていただけるものにしたいですね。じつは、YouTubeで『鉄拳』シリーズの映像だけを見る……という方もけっこういらっしゃるんですね。ただし、ご覧になって「俺には無理だな」と感じている方も多いようなんです。そういう方でも楽しめるような、「自分でもできるんじゃないか?」と思っていただけるような、新しい仕組みを考えています。そういうファン層が入ってこられるようなものにしたいですね。

――初心者の方が入ってこられる仕組みというのは、どのような方向性のものを?
原田 『鉄拳』って、覚えないといけないことが意外と多いんですね。それを、“どこから覚えたらよいか”をフォーカスできないのが問題だと思っています。たとえば、2D格闘ゲームだったら、「この技を使えばいい」というところがあるじゃないですか。そういうところははっきりさせたいです。ゲーム上でも『鉄拳』は必殺技を出しても、どれが強かったのか、いまいちわかりにくかったと思うのですが、まず見た目にわかりやすくしたいです。

――わかりやすさ……ということですね。
原田 もうひとつは、言ってしまうとネタバレになってしまうのですが(笑)……いちばん大きいのは、対戦するときに、同じレベルの人と対戦できるのが、いちばんいいと思うんです。そのへんをなんとか、自分の似たような腕の人と遊べる仕組みというのを、アーケードでもできないかな……と考えています。そこは期待していてほしいです。

――なるほど。対戦のレベルの差は大きいですね。
原田 後はどこまで話していいかなあ(笑)。『鉄拳』にはいくつか特徴があるのですが、“難しい”というところで言うと、ダウンしたときにふつうのゲームは無敵になって起き上がれるのですが、『鉄拳』だと起き上がれないですよね。あそこは複雑なんです。逆にコアの方はおもしろい場所でもあるのですが、初心者の人は簡単にやられてしまう。ああいうところをいまちょっと工夫して、かなり大きく見直しています。コアな人も満足させたまま、ライトな人も入ってきやすいような仕組みを構築しています。

――「初心者向けも楽しめるように」というと、コアなゲームファンは「自分たちには歯応えがないかも」と心配になる方もいるかと思うのですが、そのへんはいかがですか?
原田 “深度”はちゃんと持っているべきだと思うんです。ただ、最初から相手の技が深いと、みんな入ってこられない。段階的にそこを深くしていく仕組みが必要だと思うので、最初のころはそこをあまり意識しなくても楽しめるようにしさえすればいいのではないかと。うまい人は最初からわかっているので、深いところをやればいいし、初心者の人は、そこを使わなくてもなんとかなるようにしてあげる、というふうに設計していくつもりです。そこのバランスはうまく取れるかなと。

――“ストーリーに決着をつける”とのことですが、“最終決着”は三島家の血筋のことであって、『鉄拳』シリーズの“最終決着”ということではないんですよね?
原田 でも、正直に言うと、『鉄拳』シリーズを1回、決着をつけてもいいくらいの気持ちで、我々のチームは作っています。そういう意味では、“最終決着”は、我々の決意の現れでもあります。やっぱり『鉄拳7』が非常に盛り上がってくれれば、もちろん今後もさらに続くでしょうが、毎回惰性で作るわけにもいかないので、1回1回が終わりという感覚で作っています。20年続いたからこそ、あえて戦場に向かう侍のつもりでやるんだという意気込みで、我々はあえて“最終決着”ということをキーワードにしているんですよ。「もう絶対に作らないよ」という話ではないですが、ファンの皆さんの期待にお応えするために、出し惜しみすることなく、我々ができることは全部やりたいです。お話に決着がつけられるところは決着するし、『鉄拳』というものに、ファンの皆さんをもう一度集めて、「これが『鉄拳』だよね」と一度言わせたいというのがあるので、そういう意気込みの現れだと思ってください。ストーリー的には「三島家の親子はどういう決着を迎えるのか」というところは、注目していただきたいところではあります。

――「何らかの形で一美が出る」とのことですが、これはプレイヤーキャラとして?
原田 何らかの形で出します! 詳細はまだわからないですね。ただ、ストーリーだけではなくて、僕らとしては、ゲーム中にも何らかの形で出そうと思っています。いまプレイアブルにできるかどうかは、お約束はできないのですが……。だいたいそもそも、「なんで死んだハズの一美が出てこられるんだ?」というところもあると思うので、そのへんもストーリーの設定も含めて、今後期待していただけたらと。

――ティザーに出てくる“謎の男”(一美の背後からシルエットだけ登場する)も、「正体がわかったら、皆さん驚かれると思います」とおっしゃっていましたが。
原田 たぶん、驚くと思いますね。

『鉄拳7』はユーザーといっしょになって作っていく

――今回、オープニングCGのディレクターを荒牧伸志監督が担当することが発表されましたが、荒牧監督を起用する経緯は?
原田 じつは、『鉄拳4』のときに社外の脚本家に手伝ってもらったのですが、あのときの経験で、内製のスタッフだと気づかないところとかにけっこう気づいてもらえたんですね。「『鉄拳』ってこうだよね」というのを20年やっているスタッフが多いので、客観的なメスを入れていかないと、リフレッシュされない部分もあるし、逆に僕らの知らない『鉄拳』の魅力を引き出せない。あえて外部の監督にやってもらったほうが、意外と『鉄拳』の魅力を引き出せるのではないか? との判断がありました。そこで、『鉄拳』なりCGなりに理解がある人というときに、その条件にうまく合致したのが荒牧さんだったんです。

――荒牧さんというと、何となく個人的には“メカ”という印象もありますが。
原田 それが、アクションのカメラワークも含めて、見せかたがとてもお上手なんですよ。今回のオープニングCGもすばらしいものをしあげてくれると思います。『鉄拳ブラッド・ベンジェンス』で、いいシーンを撮ってくれましたし。

――今回ゲストアーティストも発表されましたが、人選の方針はどのような感じだったのですか?
原田 外部のアーティストさんを起用するにあたっては、いくつかの方向性があると思うんです。まったくゲーム畑ではない人に頼むのも、ひとつのおもしろいアイデアですよね。それはいままでもできていました。一方で、いままで海外のアーティストさんとも組んだことがあるのですが、それもおもしろかった。ただ、今回『鉄拳7』を作るにあたり、ストーリー的にも、僕らの意気込みにしても“最終決着をつけるんだ”という気合いでやるからには、日本人の本気をクリエイティブとして見せたい、という気持ちが強かったんです。そのときに、我々だけではなくて、有名な日本人のアーティストにもお願いしたいと思いました。しかも、ゲーム畑で育ってきたり、いまゲームのジャンルで活躍されている方にお願いしたかった。そういう意味では、“ゲーム畑で活躍している、尖ったデザインができる日本人クリエイター”というのがセレクトの基準でした。

――それで、島崎麻里さんを始めとする4名が?
原田 はい。あと、今回そういう意味では、コスチュームだけではありません。オールドキャラはコスチュームだけになってしまいますが、新キャラに関しては、コンセプトからアイデアもお互いやりとりをしながら、お互いいっしょに作っていくという新しい試みをしているんです。そのことで、内製スタッフだけでは出なかった魅力が引き出せるんじゃないかと期待しています。

『鉄拳7』の原田勝弘氏を直撃 “最終決着”は開発陣の決意の現れ【Comic-Con International 2014】_01

――“お互いがいっしょに作る”という点では、『鉄拳7』はユーザーともいっしょになって作り上げていくということをうかがったのですが……。
原田 いままでだと、「これ、新キャラです」と出して、「使ってくださいね」だったのですが、その結果いろいろなことがわかりました。日本のプレイヤーさんだと、たとえばスペイン人のミゲルとかを出しても使ってくれるのですが、「スペイン人のキャラです」と言ったときに、スペインの人はあのコスチュームとかを見ても、「こんな闘牛士みたいな格好をした人はいないよ」という反応になるんです。ちょっと違和感があったというご意見があったりしたわけですが、フィードバックをいただいたときには遅いわけです。なので、今後FacebookなどのSNSを駆使して、ある国籍のキャラとかは、その国のファンの人たちに「いまコンセプトスケッチができ上がりましたが、こんな感じです。どう思います?」というやりとりをしたいということを考えています。それをオープンにするか、クローズドにするかは検討中なのですが、コミュニティーに直接フィードバックをもらいながら、ちょっとアップデートをして、また出していって……というのを、一部でやっていきたいと思っています。さすがに全部というわけにはいかないですし、我々作り手側からの提案やサプライズも期待されていると思いますので、そこはうまくバランスをとっていきたいなと。

――そうやって、ユーザーの意見を取り入れていくということですね?
原田 もうひとつは、ゲーム自体もフィードバックを受けたいと思っています。開発途中にクローズドで何人か『鉄拳』ファンの方を呼んでみたりとか。それは日本に限らず世界中でやってもらって、意見をいただく。それもロケテストの前に実施しながら、作ってみたいという思いはあります。これは、作り終えるまでではなくて、作り終わってからも必要なことで、アップデートを重ねるためのフィードバックをもらうということは、発売後もやっていこうと思っています。そういう意味で、皆さんといっしょに作りたいですね。

――気になる稼働日はいつくらいに?
原田 まだ言えないです。稼働日に関してはまだ言えないですが、おそらくみんなの前にテストでお披露目するのは、けっこう近いタイミングになると思っています。

――そこから、皆さんの意見を聞いて作り上げていく?
原田 まさにそうです。

――これもファンが気にしていると思うのですが、コンシューマーでの展開は?
原田 まだ言えないです。ただ、いろいろと計画していますので、楽しみにしていてください。

――では、つぎに『鉄拳7』の情報がアップデートされるのはいつくらいに?
原田 東京ゲームショウの前後になるかな……という感じですね。1ヵ月くらい間が空くかもしれませんが、FacebookやTwitterをご覧になっていただくと、ちょいちょい情報を出せるかもしれないので、ファンの皆さんは質問などありましたら、どんどんください。

(取材・文 編集部/F)