真実味のある舞台がゲームプレイをさらに盛り上げる

 2014年7月24日(木)~27日(日)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテインメントの祭典“Comic-Con International 2014”(略称:コミコン)が開催中だ。

『Far Cry 4』の舞台となる架空の山岳地帯“キラット”は、いかにしてリアリティーを獲得したか?【Comic-Con International 2014】_01
▲中央がユービーアイソフトのクリエイティブ・ディレクター、アレックス・ハッチンソン氏。右がバイスメディアのプロデューサー、クリシュナ・アンドリュー氏。左は司会役を努めたdestructoid.comのディレクター、マックス・スコービル氏。

 開催初日にあたる24日には、ユービーアイソフトによるパネルディスカッション“The Inspiration that Brought FarCry 4’s Kyrat to Life and the Quest for Everest”が行われた。『Far Cry 4』の舞台となるのは、架空の山岳地帯“Kyrat(キラット)”。オープンワールドの『Far Cry 4』にとって、舞台設定がひときわ重要……ということで、いかに“キラット”を構築するためのインスピレーションを得たかを語ったのが、本パネルディスカッションの趣旨となる。おもなパネリストは、ユービーアイソフトのクリエイティブ・ディレクターのアレックス・ハッチンソン氏と、バイスメディアのプロデューサーであり、編集者でもあるクリシュナ・アンドリュー氏のおふたり。まずは、『Far Cry 4』の世界観を掴んでいただくために、コミコン会場でも流されたE3のトレーラーをご紹介しよう。


 シリーズごとに独立した世界設定となる『Far Cry』。続きのストーリーではないぶん、まったく個別のゲームを作ることができるが、共通しているポイントもいくつかある。“オープンワールド”、“自由度の高さ”、“休みにどこかにいく”という設定だ。勢い舞台設定が非常に大切になり、「場所は真実味があり、リアリティーに溢れ、現実の世界にフィットしないといけない」(アレックス)という基準があったという。今回その基準を満たしたのが、ネパール。

 架空の都市“キラット”はネパールをモデルにしているのだが、ネパールにした理由について、アレックスは「ヒマラヤの奥深くに入っていけたらおもしろいと思ったんです。独特の環境があるし、ワイルドライフを満喫できる。ヘリコプターを駆使して谷間を飛行するのも魅力ですし。それに動物もたくさんいる」とのこと。確かに、何やらワクワク楽しめそうだ。

 もちろん、“キラット”の構築にあたっては、開発陣は実際にカトマンズに足を運んだようだ。その模様をドキュメンタリーとして制作したのが、クリシュナ氏だ。「まずはカトマンズに行き、そこの匂いや感覚を掴みました。細い山道を分け入って、ドローンカメラを使って撮影したりもしましたね。大きな鳥がドローンを攻撃してきたりして、リアルな映像が撮れました」(クリシュナ)とのこと。一方で、カトマンズは現在、埃や騒音などの環境汚染に悩まされており、美しい部分と相反することを認識できたのも、実際にカトマンズに足を運んだ収穫だったという。さらに、ネパールには市民戦争による血なまぐさい歴史もあり、そういった歴史も、ゲームのバックボーンにしっかりと盛り込まれているのだとか。そういった設定にも、舞台に“真実味”を盛り込むための取り組みの一端をうかがうことができる。

 コミコンでは、クリシュナが制作したドキュメンタリー“Far Cry 4 Vice Developer Diary”のパート1が世界初公開された。こちらは3部作の1作目となる。以下にご紹介しよう(英語です)。


 ちなみに、ただいまユービーアイソフトでは、“Far Cry 4 Quest for Everest”を実施中らしい。優勝者はエベレストに行って、特別な装置を使って『Far Cry 4』をプレイできるのだとか。応募資格は、“自分がなぜもっともヒマラヤに行く資格があるかをYouTubeにアップロードすること”。何ともスケールの大きなコンテストだ。


 さて、象を乗り物として使えるということでも話題を呼んでいる『Far Cry 4』。もうひとつの注目は個性的なヴィラン(悪役)のPagan Min。週刊ファミ通のヘイ昇平も、以前ファミ通.comの記事で、Pagan Minに対する注目度の高さを語っていたが(⇒記事はこちら)、コミコン来場者もPagan Minのことは気になるようで、最後のQ&Aでは「Pagan Minはどのようにして造形されたのか?」との質問が。それに対してアレックスは「いままでにない新鮮な悪役を作りたいと思いました。感情表現豊かな精神病質者といったところでしょうか。ピンクのスーツは目立つだけでなく、プレイヤーにチャレンジを挑むキャラクターらしい服装です。カリスマ性があり、自分の顔に血が付いていても気づかず、死体は誰かに片付けさせて、“さあ昼食だ”というような人物です」とのこと。

 マルチプラットフォームタイトルとして、北米では2014年11月18日に発売される『Far Cry 4』。ふと、週刊ファミ通のスケジュール表を見ると、国内発売タイトルとしてラインアップされていない。「あら!? 日本発売は決まってないのか」と思いつつも、きっと日本でも遊べるに違いないと信じつつ、“Far Cry 4 Quest for Everest”に参加するためのネタを考える記者なのでした。

(取材・文 編集部/F)